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ずっとそばにいたい……
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<side尚孝>
グリのために買ったものを会長の家に届けに行って、私たちは早々に車に戻った。
「一度、私の家に寄って必要なものを取ってもいいですか?」
「もちろんです。明日はお仕事ですから、スーツも必要ですよね」
うちにあるものはなんでも使ってくれて構わないけれど、流石にスーツは僕のとはサイズが違いすぎる。
唯人さんって、着痩せするタイプだもんな。
抱きしめられた時に逞しい身体をしているとは思っていたけど、昨日裸を見て実感してしまった。
僕はどれだけ鍛えてもなかなか筋肉もつかないのに、あれだけ逞しい身体になれるなんて本当に羨ましい。
荷物をまとめている間は車の中で待っていようと思っていると、
「ええ。少し荷物をまとめる間、尚孝さんはゆっくりお茶でも飲んでいてください」
と笑顔で誘われてしまった。
「僕も、家に行ってもいいんですか?」
「もちろんですよ。他の誰も入れたことはないですが、尚孝さんは私の大切な恋人で家族ですから」
「――っ!!!」
そんなことをサラリと言われてドキドキしてしまう。
ああ、本当に僕は唯人さんの恋人になったんだ……。
「ここ、ですか……?」
「ええ。地下に駐車場があるのでここから入りますね」
五階建ての低層マンションだけど、明らかに高級感が漂っている。
だって、横に広いマンションなのに四階までは二部屋、最上階に至っては一部屋しかないのだから。
あまりにもグレードが高すぎるマンションに、気後れしてしまう僕をよそに唯人さんは地下駐車場に車を進めていく。
数部屋しかないマンションなのに、地下の敷地いっぱいに駐車場があって、たくさんの車が止まっている。
どうやらここの人たちに一部屋に車一台といった常識は当てはまらないみたいだ。
手慣れた様子で車を降りると、あまりの凄さに茫然としている私をエスコートして降ろしてくれる。
「あ、ありがとうございます。あの、車……いっぱいですね。もしかして、唯人さんも何台かあったりするんですか?」
「そうですね、ここから先に置いてあるものは全て私の車ですよ」
「えっ?? ここから、先って……」
軽く10台はありそうだけど……。
「ええ、用途ごとに使い分けた方が乗りやすいですからね。今日は荷物をたくさんのせる予定でしたから、これにしましたけど、次に尚孝さんとデートする時にはデート用の車で行きましょう」
「で、デート……っ」
確かに唯人さんと銀座デートだって喜んでいたけど、唯人さんの口からデートだって言われるのは、さっきの恋人、家族発言と相まってドキドキしてしまう。
「ふふっ。尚孝さん、顔真っ赤ですよ」
「もう、揶揄わないでください」
「ふふっ。じゃあ、部屋に行きましょうか」
そういって、僕の腰に手を回しピッタリと寄り添いながら、エレベーターホールに向かうと三基あるエレベータの中で一基だけが少し離れた場所にあるのに気づいた。
唯人さんは手前のエレベーターを通り過ぎ、その一基に近づいていく。
「ここが好きなんですか?」
「ふふっ。いえ、このエレベーターは私の部屋専用なんですよ」
「えっ? せん、よう?」
「ええ、他の階には止まらないから便利なんですよ」
そういうと、唯人さんはエレベーターの柱に手を翳す。
すると、エレベーターの扉がサッと開いた。
「わっ! すごいっ!!」
「指紋認証になっているんですよ。さぁ、入りましょう」
中に入ると、ボタンが三つだけあった。
五階と、一階ロビー、そしてこの地下駐車場の三つだ。
「えっ、もしかして……唯人さんのお部屋は最上階、ですか?」
「ええ。隣がいないから気楽でいいですよ」
いやいや、そんな問題じゃなくて……こんなすごいマンションの最上階に住んでいる人って、初めて会った気がする。
しかもそれが、僕の、恋人なんて……。
もしかして、僕……不釣り合いなんじゃ……。
いや、貴船コンツェルンの会長秘書で弁護士なんていうところから不釣り合いだとは思っていたけれど、まさかここまですごい人だなんて思わなかった……。
大丈夫かな、これから……。
「……たかさん? 尚孝さん? どうかしました?」
「えっ、あっ、なんでもないです」
「尚孝さん、隠し事はダメですよ。何か気になることがあるのなら教えてください」
「唯人さん……」
「ねっ、教えてください」
「はい……あの、こんなにすごい人が恋人だなんて……ちょっと不安になってきて……本当に僕なんかで、いいんですか?」
「尚孝さん……不安にさせてしまったんですね。でも、僕なんかなんて言わないでください。私は尚孝さんだから好きなんです。尚孝さんさえいてくれたら他の誰もいらないんですよ。だから、尚孝さんは心配しないで私のそばにいてくれたらいいんです」
エレベーターの中で抱きしめられて、気がついたらもう五階に到着していた。
そのままサッと抱きかかえられてエレベータを降りると、見たこともないほど豪奢な扉が目の前にあった。
唯人さんはそのドアに手をかざし、サッと中に入ると、素早く靴を脱がしてくれて奥へ進んで行った。
大きな窓から見える綺麗な景色に出迎えられ、唯人さんはそのままソファーに腰を下ろした。
ギュッと抱きしめたまま僕を下ろそうとしない。
「あの……」
「尚孝さん、ずっとそばにいてくれますか?」
「唯人さん……」
「離れないでずっとそばにいるって言ってくれないと、ずっとこのままですよ」
唯人さんの真剣な表情にどきっとする。
僕は今まで彼のどこを見ていたのだろう。
あんなに好きだと言われていたのに、唯人さんがすごい人だってわかった途端、不安になるなんて……。
「ごめんなさい……」
「えっ……」
「僕、唯人さんの隣にいて不釣り合いなんじゃないかって思ってしまって……でも、離れたくないです。ずっとそばにいたい……」
唯人さんの胸にギュッと抱きつくと、
「あぁーーっ」
と大きな声が聞こえた。
びっくりして唯人さんを見ると、
「ごめんなさいなんて言われたから、振られるんだと思って心臓が止まるかと思いましたよ」
と心底安堵した表情を向けられる。
「あっ、ごめんなさいっ、あっ!!」
「ふふっ。今日はお仕置きですよ」
「えっ、お仕置き?」
「ええ。もう離れようだなんて思わないくらいたっぷりと愛し合いましょうね。もう手加減は抜きです」
「ひゃっ!!」
耳元で甘く囁かれて、僕は一気に力が抜けてしまいそうになっていた。
その時、唯人さんの胸元でブルブルと振動を感じた。
「あっ……」
「すみません、もしかしたら会長からの連絡かもしれません」
「あの、どうぞ……」
そういうと、唯人さんは申し訳なさそうにしながらスマホを開いた。
「そういえば、帰る時に会長が何か仰ってましたね」
「ええ、その件のようで――ええっ!!!」
「わっ!!」
スマホ画面を見つめていた唯人さんが突然大きな声をあげる。
何事にも動じなさそうな人だと思っていたから、びっくりして僕も声をあげてしまった。
「すみません。予想だにしてなかったことだったのでつい大声を……」
「い、いえ。何かとんでもないことでも?」
「あ、いえ。それが……」
なんとも言いにくそうな表情に僕が聞くべきことではなかったのかもと思い、慌てて唯人さんを制した。
「あの! 僕に知らせたくないことなら気にしないでください」
「――っ、違います。本当に予想外すぎてどこから話そうか考えていただけなんです」
「そんなにものすごいことが?」
「ええ、実は……ひかるさんの、本当の両親が誰だかわかったそうです」
「え――っ!!!!!」
「しかも、それが……櫻葉グループの会長夫妻だそうですよ」
「――っ!!!!!」
唯人さんが言葉に詰まったのがよくわかる。
実の両親が見つかった、それだけでもすごいことなのに、その両親があの櫻葉グループの会長ご夫妻だなんて!!!
「あ、でも……確か、会長の奥さまは……」
「そうです、お子さまを出産してすぐに亡くなられました。ですが、会長はまだご健在でいらっしゃいますので、明後日ひかるさんとお会いになるそうですよ」
「そうですか……」
奥さまが亡くなられたときは、私もまだ小学生くらいだったけれど結構な騒ぎになったのを覚えている。
「あの、ひかるくんの話では施設に捨てられたって……」
「それも違ったようですよ。ひかるさんは生まれたばかりの病院から誘拐されて施設に連れて行かれたそうです」
「な――っ!! じゃあ、無理やり?」
「ええ、そういうことになりますね。櫻葉会長はずっと行方を探していらっしゃったそうですから、今回お会いできることになって喜んでいらっしゃることでしょう」
辛い思いをしてきたひかるくんも、大切な我が子をずっと探していた櫻葉会長も、ようやく幸せになれるのか……。
「ああ……っ、よか、ったぁ……」
ひたむきに頑張ってきたひかるくんが本当に幸せになれるんだという嬉しさと、実の親に捨てられたんじゃなかったという
喜びが溢れてきて、気づけば僕は涙を流していた。
「尚孝さん……他人のためにこんなにも涙を流せるなんて、あなたは本当に心が綺麗で優しい人ですね……。そんなあなたが大好きですよ」
「んんっ……!!」
唯人さんに優しく抱きしめられながら、ゆっくりと唇が重なった。
泣いている僕に配慮してくれているのか、重ねるだけの優しいキス。
でも、唯人さんの温もりはしっかりと伝わってきた。
ゆっくりと離れていく唯人さんの唇を見つめていると、その唇の口角がスッと上がる。
「今日はこのままここで過ごしましょう。尚孝さんの家に移動する時間も惜しいくらいにずっと愛していたいんです」
ほんの少しの時間ももう我慢できない。
そう言われているようで、嬉しくなる。
「でも、明日仕事が……」
それさえなければ、僕だってずっと……。
「ふふっ。大丈夫です」
「えっ? 大丈夫、って……」
「明日は、私も、尚孝さんも休みになりましたから」
「えっ……お、休み?」
「ええ。休日の動物園に同行した代休だそうですよ」
そう言って、唯人さんは会長から送られてきたメールを見せてくれた。
そこにははっきりと明日はお休みと書かれている。
「これで、心置きなく愛し合えますね。じゃあ、いきましょうか」
「わっ!!」
突然軽々と抱きかかえられて、僕はそのまま奥の部屋に連れて行かれた。
「こ、こは……?」
「私の寝室です。もちろん、私以外は誰も入ったことはありませんよ」
部屋中に漂う唯人さんの優しくて安心する匂い。
それだけで、もうすでに興奮してしまっている自分がいた。
グリのために買ったものを会長の家に届けに行って、私たちは早々に車に戻った。
「一度、私の家に寄って必要なものを取ってもいいですか?」
「もちろんです。明日はお仕事ですから、スーツも必要ですよね」
うちにあるものはなんでも使ってくれて構わないけれど、流石にスーツは僕のとはサイズが違いすぎる。
唯人さんって、着痩せするタイプだもんな。
抱きしめられた時に逞しい身体をしているとは思っていたけど、昨日裸を見て実感してしまった。
僕はどれだけ鍛えてもなかなか筋肉もつかないのに、あれだけ逞しい身体になれるなんて本当に羨ましい。
荷物をまとめている間は車の中で待っていようと思っていると、
「ええ。少し荷物をまとめる間、尚孝さんはゆっくりお茶でも飲んでいてください」
と笑顔で誘われてしまった。
「僕も、家に行ってもいいんですか?」
「もちろんですよ。他の誰も入れたことはないですが、尚孝さんは私の大切な恋人で家族ですから」
「――っ!!!」
そんなことをサラリと言われてドキドキしてしまう。
ああ、本当に僕は唯人さんの恋人になったんだ……。
「ここ、ですか……?」
「ええ。地下に駐車場があるのでここから入りますね」
五階建ての低層マンションだけど、明らかに高級感が漂っている。
だって、横に広いマンションなのに四階までは二部屋、最上階に至っては一部屋しかないのだから。
あまりにもグレードが高すぎるマンションに、気後れしてしまう僕をよそに唯人さんは地下駐車場に車を進めていく。
数部屋しかないマンションなのに、地下の敷地いっぱいに駐車場があって、たくさんの車が止まっている。
どうやらここの人たちに一部屋に車一台といった常識は当てはまらないみたいだ。
手慣れた様子で車を降りると、あまりの凄さに茫然としている私をエスコートして降ろしてくれる。
「あ、ありがとうございます。あの、車……いっぱいですね。もしかして、唯人さんも何台かあったりするんですか?」
「そうですね、ここから先に置いてあるものは全て私の車ですよ」
「えっ?? ここから、先って……」
軽く10台はありそうだけど……。
「ええ、用途ごとに使い分けた方が乗りやすいですからね。今日は荷物をたくさんのせる予定でしたから、これにしましたけど、次に尚孝さんとデートする時にはデート用の車で行きましょう」
「で、デート……っ」
確かに唯人さんと銀座デートだって喜んでいたけど、唯人さんの口からデートだって言われるのは、さっきの恋人、家族発言と相まってドキドキしてしまう。
「ふふっ。尚孝さん、顔真っ赤ですよ」
「もう、揶揄わないでください」
「ふふっ。じゃあ、部屋に行きましょうか」
そういって、僕の腰に手を回しピッタリと寄り添いながら、エレベーターホールに向かうと三基あるエレベータの中で一基だけが少し離れた場所にあるのに気づいた。
唯人さんは手前のエレベーターを通り過ぎ、その一基に近づいていく。
「ここが好きなんですか?」
「ふふっ。いえ、このエレベーターは私の部屋専用なんですよ」
「えっ? せん、よう?」
「ええ、他の階には止まらないから便利なんですよ」
そういうと、唯人さんはエレベーターの柱に手を翳す。
すると、エレベーターの扉がサッと開いた。
「わっ! すごいっ!!」
「指紋認証になっているんですよ。さぁ、入りましょう」
中に入ると、ボタンが三つだけあった。
五階と、一階ロビー、そしてこの地下駐車場の三つだ。
「えっ、もしかして……唯人さんのお部屋は最上階、ですか?」
「ええ。隣がいないから気楽でいいですよ」
いやいや、そんな問題じゃなくて……こんなすごいマンションの最上階に住んでいる人って、初めて会った気がする。
しかもそれが、僕の、恋人なんて……。
もしかして、僕……不釣り合いなんじゃ……。
いや、貴船コンツェルンの会長秘書で弁護士なんていうところから不釣り合いだとは思っていたけれど、まさかここまですごい人だなんて思わなかった……。
大丈夫かな、これから……。
「……たかさん? 尚孝さん? どうかしました?」
「えっ、あっ、なんでもないです」
「尚孝さん、隠し事はダメですよ。何か気になることがあるのなら教えてください」
「唯人さん……」
「ねっ、教えてください」
「はい……あの、こんなにすごい人が恋人だなんて……ちょっと不安になってきて……本当に僕なんかで、いいんですか?」
「尚孝さん……不安にさせてしまったんですね。でも、僕なんかなんて言わないでください。私は尚孝さんだから好きなんです。尚孝さんさえいてくれたら他の誰もいらないんですよ。だから、尚孝さんは心配しないで私のそばにいてくれたらいいんです」
エレベーターの中で抱きしめられて、気がついたらもう五階に到着していた。
そのままサッと抱きかかえられてエレベータを降りると、見たこともないほど豪奢な扉が目の前にあった。
唯人さんはそのドアに手をかざし、サッと中に入ると、素早く靴を脱がしてくれて奥へ進んで行った。
大きな窓から見える綺麗な景色に出迎えられ、唯人さんはそのままソファーに腰を下ろした。
ギュッと抱きしめたまま僕を下ろそうとしない。
「あの……」
「尚孝さん、ずっとそばにいてくれますか?」
「唯人さん……」
「離れないでずっとそばにいるって言ってくれないと、ずっとこのままですよ」
唯人さんの真剣な表情にどきっとする。
僕は今まで彼のどこを見ていたのだろう。
あんなに好きだと言われていたのに、唯人さんがすごい人だってわかった途端、不安になるなんて……。
「ごめんなさい……」
「えっ……」
「僕、唯人さんの隣にいて不釣り合いなんじゃないかって思ってしまって……でも、離れたくないです。ずっとそばにいたい……」
唯人さんの胸にギュッと抱きつくと、
「あぁーーっ」
と大きな声が聞こえた。
びっくりして唯人さんを見ると、
「ごめんなさいなんて言われたから、振られるんだと思って心臓が止まるかと思いましたよ」
と心底安堵した表情を向けられる。
「あっ、ごめんなさいっ、あっ!!」
「ふふっ。今日はお仕置きですよ」
「えっ、お仕置き?」
「ええ。もう離れようだなんて思わないくらいたっぷりと愛し合いましょうね。もう手加減は抜きです」
「ひゃっ!!」
耳元で甘く囁かれて、僕は一気に力が抜けてしまいそうになっていた。
その時、唯人さんの胸元でブルブルと振動を感じた。
「あっ……」
「すみません、もしかしたら会長からの連絡かもしれません」
「あの、どうぞ……」
そういうと、唯人さんは申し訳なさそうにしながらスマホを開いた。
「そういえば、帰る時に会長が何か仰ってましたね」
「ええ、その件のようで――ええっ!!!」
「わっ!!」
スマホ画面を見つめていた唯人さんが突然大きな声をあげる。
何事にも動じなさそうな人だと思っていたから、びっくりして僕も声をあげてしまった。
「すみません。予想だにしてなかったことだったのでつい大声を……」
「い、いえ。何かとんでもないことでも?」
「あ、いえ。それが……」
なんとも言いにくそうな表情に僕が聞くべきことではなかったのかもと思い、慌てて唯人さんを制した。
「あの! 僕に知らせたくないことなら気にしないでください」
「――っ、違います。本当に予想外すぎてどこから話そうか考えていただけなんです」
「そんなにものすごいことが?」
「ええ、実は……ひかるさんの、本当の両親が誰だかわかったそうです」
「え――っ!!!!!」
「しかも、それが……櫻葉グループの会長夫妻だそうですよ」
「――っ!!!!!」
唯人さんが言葉に詰まったのがよくわかる。
実の両親が見つかった、それだけでもすごいことなのに、その両親があの櫻葉グループの会長ご夫妻だなんて!!!
「あ、でも……確か、会長の奥さまは……」
「そうです、お子さまを出産してすぐに亡くなられました。ですが、会長はまだご健在でいらっしゃいますので、明後日ひかるさんとお会いになるそうですよ」
「そうですか……」
奥さまが亡くなられたときは、私もまだ小学生くらいだったけれど結構な騒ぎになったのを覚えている。
「あの、ひかるくんの話では施設に捨てられたって……」
「それも違ったようですよ。ひかるさんは生まれたばかりの病院から誘拐されて施設に連れて行かれたそうです」
「な――っ!! じゃあ、無理やり?」
「ええ、そういうことになりますね。櫻葉会長はずっと行方を探していらっしゃったそうですから、今回お会いできることになって喜んでいらっしゃることでしょう」
辛い思いをしてきたひかるくんも、大切な我が子をずっと探していた櫻葉会長も、ようやく幸せになれるのか……。
「ああ……っ、よか、ったぁ……」
ひたむきに頑張ってきたひかるくんが本当に幸せになれるんだという嬉しさと、実の親に捨てられたんじゃなかったという
喜びが溢れてきて、気づけば僕は涙を流していた。
「尚孝さん……他人のためにこんなにも涙を流せるなんて、あなたは本当に心が綺麗で優しい人ですね……。そんなあなたが大好きですよ」
「んんっ……!!」
唯人さんに優しく抱きしめられながら、ゆっくりと唇が重なった。
泣いている僕に配慮してくれているのか、重ねるだけの優しいキス。
でも、唯人さんの温もりはしっかりと伝わってきた。
ゆっくりと離れていく唯人さんの唇を見つめていると、その唇の口角がスッと上がる。
「今日はこのままここで過ごしましょう。尚孝さんの家に移動する時間も惜しいくらいにずっと愛していたいんです」
ほんの少しの時間ももう我慢できない。
そう言われているようで、嬉しくなる。
「でも、明日仕事が……」
それさえなければ、僕だってずっと……。
「ふふっ。大丈夫です」
「えっ? 大丈夫、って……」
「明日は、私も、尚孝さんも休みになりましたから」
「えっ……お、休み?」
「ええ。休日の動物園に同行した代休だそうですよ」
そう言って、唯人さんは会長から送られてきたメールを見せてくれた。
そこにははっきりと明日はお休みと書かれている。
「これで、心置きなく愛し合えますね。じゃあ、いきましょうか」
「わっ!!」
突然軽々と抱きかかえられて、僕はそのまま奥の部屋に連れて行かれた。
「こ、こは……?」
「私の寝室です。もちろん、私以外は誰も入ったことはありませんよ」
部屋中に漂う唯人さんの優しくて安心する匂い。
それだけで、もうすでに興奮してしまっている自分がいた。
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