虐待されていた天使を息子として迎え入れたらみんなが幸せになりました

波木真帆

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なおは おりこうちゃん

ベビーベッドにいる直くんから視線を感じる。
保さんとは一緒にはお風呂には入っていなかったようだと聞いていたし、大人の裸を見るのが珍しいのだろう。
三歳間近のこの時期はどんなことに対しても興味津々なのだから、無理もないか。
この分だときっと昨夜絢斗たちと一緒に入った時も、興味津々に見ていたのだろう。

なんでもおおらかな絢斗はともかく、甥っ子を風呂に入れることなどなさそうな卓くんは少し恥ずかしかったかもしれない。でも子どもというものはこうしていろいろなことも興味を持って成長するのだ。

私もおじいちゃんという立場になったのだから恥ずかしがることなく堂々と過ごすとしよう。

タオルで隠すこともなく、直くんのベビーベッドに向かうと、すでに秋穂が服を脱がせてくれている。

「さぁ、直くん。お風呂入りましょうね」

さっと抱き上げると、直くんの手がそっと秋穂の胸に触れる。
ネグレクトだった実母とはきっと一緒に風呂に入ることもなかっただろうから、柔らかい胸に抱かれることもなかっただろう。子どもなら本能で好きになるものだ。

秋穂の胸が直くんに触れられても嫉妬はしない。
それはきっと絢斗に似ているからかもしれない。

「賢将さん、私が身体を洗うから直くんの髪を洗ってくれる?」

「ああ、昔もこうしてよく洗ったな」

「ええ。懐かしいわ」

浴室に置いてある椅子に秋穂が直くんを抱いて座り、片腕と身体で支えながら器用に直くんの身体を洗っていく。その間に私が直くんの髪を洗ってあげた。
細くて柔らかい髪を絡めないように優しく洗い流すと、直くんは気持ちよさそうに目を瞑っていた。

その後、交代で髪と身体を洗い、一緒に湯船に浸かる。

「じいちゃ、みちぇー」

可愛いアヒルが湯の上を走っていく。

「おお、可愛いな」

「かーいーねー。あいちゃ、ここ、おちて」

秋穂が直くんに言われるままにアヒルの頭を押すと、可愛いアヒルの鳴き声が聞こえる。

「あら、可愛い」

秋穂の笑顔に直くんの頬も緩む。

「じいちゃ」

しばらく遊びながら湯に浸かっていた直くんが私に向かって手を伸ばしてくるので、抱っこして欲しいのかと嬉しくなってその手を取った。

「抱っこを強請ってくれるとは思わなかったな」

可愛いおねだりに喜んでいたが、突然直くんが秋穂に向かって

「あいちゃ、でりゅ」

と言い出した。

「えっ? 私?」

突然出て行けと言わんばかりの言葉に驚くしかなかった私たちだが、

「あいちゃ、おきがえー」

と言って、脱衣所を見る。

「もしかして、これって……」

「ああ、多分そうだな」

きっと昨夜、絢斗が先に出て、その間、卓くんに抱っこされて絢斗の着替えが終わるのを待っていたのだろう。
本当に賢い子だ。

「それじゃあ私、先に出て着替えるわ」

秋穂が湯船を出て脱衣所に向かうのを見送る。

「直くんは賢いな。お利口さんだ」

「なお、おりこうちゃん?」

「ああ、お利口さんだ」

この子は日に日に賢くなっていく。将来が楽しみだな。

<side沙都>

「明日、私と寛さんが直くんの部屋にお泊まりする日なの。よかったら、あなたたちも会いにくる?」

我が家に泊まった翌朝、みんなで朝食をそろって食べながら、毅たちを誘ってみた。
退院してからでもいいかと思っていたけれど、昇のあの様子を見ると早く会わせてあげたくなってしまう。

「もちろん会いに行きたいですけど、直くんは大丈夫ですか? 知らない私たちが突然病室を訪れたら驚かせてしまうんじゃないかしら?」

「あの子は賢い子だから、前もって話をしておいたら大丈夫よ。それに周りがみんな大人だから昇を見ると安心すると思うの」

「ばあちゃん! おれ、あいにいきたいー!」

「ね、昇もそう言っていることだし、みんなで会いにきてちょうだい」

私の言葉に毅も二葉さんも頷いてくれた。

「その代わり、昇。直くんは病気で入院中だから、騒いだりしちゃダメよ」

「わかってるー! おれのだいじなおもちゃかしてあげるー!!」

もうすっかりお兄ちゃん気分の昇に私たちはみんな嬉しくなっていた。

毅たちを見送って掃除や洗濯などの一通りの家事を済ませる。
その間に寛さんが昼食を作ってくれていて、それを二人でいただいた。

「さっき、卓から連絡があったよ」

「あら、何かしら?」

「保さんの退院後の住まいだが、すぐに即決するのはお互いに難しいだろうからとりあえずお試しで両方の家に住んでみたらどうかと言っていた」

「それはいいアイディアね! きっと絢斗くんのアイディアだわ」

「ああ。多分な」

「それじゃあ今日の夕食は保さんの病室に行って一緒に食べない?」

保さんがいるのは特別室。
あの部屋はいつでも面会が許されているし、面会者の食事も頼めると卓が教えてくれた。
食事をしながら好きな料理とか好みを聞いておけば、ここで暮らしてくれることになった時に困らずにすむ。

「それはいいな」

寛さんが賛成してくれたこともあって、昼食を終えた私たちは急いで出かける準備を整えた。
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