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孫たちとの風呂
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<side寛>
「じいちゃん、おれ……なおくんといっしょにおふろにはいる!」
「えっ?」
食事も終わってこれから風呂にという話になったところで、思いがけない言葉に驚いてしまったが、昇は気にする様子もなく嬉しそうに言葉を続けた。
「おふろであそべるおもちゃもってきたから、なおくんとあそぶんだ!」
昇が嬉しそうに黄色のリュックから取り出したのは、水の上を走る船のおもちゃ。
「これ……」
「そう! まえに、じいちゃんがおれにくれたやつー! すっごくたのしくておふろがたのしかったから、なおくんといっしょにあそびたかったんだ」
昇にこれをプレゼントしたのは今の直くんくらいの年のころだったか。
もうとっくに壊れているかと思ったが、大切に使ってくれていたんだな。
それにしても着替えといい、歯ブラシといい、それにおもちゃまで。
どこまで用意がいいんだろう。
でも純粋に直くんを喜ばせたいという昇の気持ちがありありと感じられる。
「寛さん、私も一緒に入りましょうか?」
「えっ? いや、それはダメだ」
昇にとっては実の祖母だが、もう小学生になった昇と沙都を一緒に入らせるわけにはいかない。
公衆浴場だって、小学生からは男女が分けられているのだからそこは守らないといけないだろう。
そう理由をつけてはいるが、沙都の裸を昇に見せたくないだけだ。
卓のことを狭量だと思っていても、自分も相当の狭量だと思う。
「でも、寛さん一人で、昇と直くんの二人を入れるのは大変じゃないですか?」
「うっ……いや、大丈夫だ」
「わかりました。それじゃあお風呂場に直くん用の椅子を用意してもらいましょう」
沙都はすぐに病院のスタッフに子ども用の椅子を用意してもらっていた。これなら私が髪や身体を洗っている間、ここに座らせておけばいい。
「直くんのお風呂が終わったら声をかけてください。私が薬をつけて着替えをさせておきますよ」
「ああ、頼むよ。じゃあ、昇。直くんと一緒におふろに入ろうか」
声をかけると昇が嬉しそうに「わーい」と手を挙げて喜んでいた。
その声に反応するように、直くんもまた「わーい」と手を挙げていてたまらなく可愛かった。
「昇は自分で服を脱げるだろう?」
「あたりまえだよ! もうおれ、いちねんせいだよ! いえでだって、ひとりではいってるんだから!」
三人で脱衣所に入り、堂々と服を脱ぎ始める昇を頼もしく思いながら、直くんをベビーベッドに乗せて先に服を脱ぐ。
私が下着を脱ぐと昇と直くんの視線を感じたが、子どもたちに見られても恥ずかしい身体はしていないはずだ。
これでも毎日運動して鍛えているからな。
直くんの服を脱がせていると、昇が近づいてくる。
薬は塗っているがもうほとんど傷は見えなくなっていると卓が話していたから昇が見てショックを受けることはないだろう。
「ねぇ、じいちゃんのおっきいね」
昇の周りには小さな子がいないからてっきり赤ちゃんのような姿の直くんの裸に興味があって近づいてきたのだと思ったが、どうやら昇の興味は他のことにあったようだ。
「んっ? そうか?」
さりげなく答えたが、昇の目は興味津々だ。
「うん。おとーさんのよりもおっきいよ! ねぇ、おれもこんなふうになる?」
そういうところが気になるのは、やっぱり男の子だな。
毅はこんな場所で自分のサイズをバラされているとは思ってもないだろうな。これは私の胸に留めておこう。
「ははっ。そうだな。大人になったらなるよ」
「じゃあ、直くんも?」
直くんか……。
大きくなった姿を想像するなら実父の保くんを参考にしたら良いだろう。
保くんのあの華奢な身体つきはこれまでの食生活だけとは思えない。
元々あんな身体つきだとすると、そこまで大きなモノはもっていないと思う。
まぁ、見たことはないから推測でしかないが。
だとしたら直くんも父親の保くんに似て身体もモノも大きくはならない可能性が高いだろう。
「んー……それは、わからないな。身体の大きさにもよるだろうし、直くんはもうすぐ三歳にしては小さいだろう? 元々の体質もあるからな。そこまで大きくはならないかもしれないな」
「そうなんだー!」
昇が理解したかどうかはわからないが、納得はしてくれたようだ。
「さぁ、入ろう。おもちゃは持ったか?」
「うん! だいじょうぶ!」
直くんを腕に抱き、風呂場に入る。
病院とは思えない広々とした浴室に昇は嬉しそうに声をあげていた。
「まず、髪と身体を洗うんだぞ」
「はーい」
昇が自分で頭を洗っている横で、直くんの髪を洗ってやる。
「じいちゃん、なおくん。きもちよさそう!!」
「あわー、あわー」
直くんが手を伸ばして、昇の髪に触れようとする。
このシャンプーは誤って泡を口にしても安心な原料で作られているというからそこまで神経質になる必要はない。
二人で泡で遊んでいる間にさっと髪と身体を洗い終えた。
「昇は湯船に浸かっていていいぞ。直くんはこっちに座って待っててね」
直くんと昇が向き合うように座らせて昇が直くんに話しかけている間にさっと髪と身体を洗い終えた。
沙都が椅子を用意するように言ってくれて助かったな。
「じいちゃん、おれ……なおくんといっしょにおふろにはいる!」
「えっ?」
食事も終わってこれから風呂にという話になったところで、思いがけない言葉に驚いてしまったが、昇は気にする様子もなく嬉しそうに言葉を続けた。
「おふろであそべるおもちゃもってきたから、なおくんとあそぶんだ!」
昇が嬉しそうに黄色のリュックから取り出したのは、水の上を走る船のおもちゃ。
「これ……」
「そう! まえに、じいちゃんがおれにくれたやつー! すっごくたのしくておふろがたのしかったから、なおくんといっしょにあそびたかったんだ」
昇にこれをプレゼントしたのは今の直くんくらいの年のころだったか。
もうとっくに壊れているかと思ったが、大切に使ってくれていたんだな。
それにしても着替えといい、歯ブラシといい、それにおもちゃまで。
どこまで用意がいいんだろう。
でも純粋に直くんを喜ばせたいという昇の気持ちがありありと感じられる。
「寛さん、私も一緒に入りましょうか?」
「えっ? いや、それはダメだ」
昇にとっては実の祖母だが、もう小学生になった昇と沙都を一緒に入らせるわけにはいかない。
公衆浴場だって、小学生からは男女が分けられているのだからそこは守らないといけないだろう。
そう理由をつけてはいるが、沙都の裸を昇に見せたくないだけだ。
卓のことを狭量だと思っていても、自分も相当の狭量だと思う。
「でも、寛さん一人で、昇と直くんの二人を入れるのは大変じゃないですか?」
「うっ……いや、大丈夫だ」
「わかりました。それじゃあお風呂場に直くん用の椅子を用意してもらいましょう」
沙都はすぐに病院のスタッフに子ども用の椅子を用意してもらっていた。これなら私が髪や身体を洗っている間、ここに座らせておけばいい。
「直くんのお風呂が終わったら声をかけてください。私が薬をつけて着替えをさせておきますよ」
「ああ、頼むよ。じゃあ、昇。直くんと一緒におふろに入ろうか」
声をかけると昇が嬉しそうに「わーい」と手を挙げて喜んでいた。
その声に反応するように、直くんもまた「わーい」と手を挙げていてたまらなく可愛かった。
「昇は自分で服を脱げるだろう?」
「あたりまえだよ! もうおれ、いちねんせいだよ! いえでだって、ひとりではいってるんだから!」
三人で脱衣所に入り、堂々と服を脱ぎ始める昇を頼もしく思いながら、直くんをベビーベッドに乗せて先に服を脱ぐ。
私が下着を脱ぐと昇と直くんの視線を感じたが、子どもたちに見られても恥ずかしい身体はしていないはずだ。
これでも毎日運動して鍛えているからな。
直くんの服を脱がせていると、昇が近づいてくる。
薬は塗っているがもうほとんど傷は見えなくなっていると卓が話していたから昇が見てショックを受けることはないだろう。
「ねぇ、じいちゃんのおっきいね」
昇の周りには小さな子がいないからてっきり赤ちゃんのような姿の直くんの裸に興味があって近づいてきたのだと思ったが、どうやら昇の興味は他のことにあったようだ。
「んっ? そうか?」
さりげなく答えたが、昇の目は興味津々だ。
「うん。おとーさんのよりもおっきいよ! ねぇ、おれもこんなふうになる?」
そういうところが気になるのは、やっぱり男の子だな。
毅はこんな場所で自分のサイズをバラされているとは思ってもないだろうな。これは私の胸に留めておこう。
「ははっ。そうだな。大人になったらなるよ」
「じゃあ、直くんも?」
直くんか……。
大きくなった姿を想像するなら実父の保くんを参考にしたら良いだろう。
保くんのあの華奢な身体つきはこれまでの食生活だけとは思えない。
元々あんな身体つきだとすると、そこまで大きなモノはもっていないと思う。
まぁ、見たことはないから推測でしかないが。
だとしたら直くんも父親の保くんに似て身体もモノも大きくはならない可能性が高いだろう。
「んー……それは、わからないな。身体の大きさにもよるだろうし、直くんはもうすぐ三歳にしては小さいだろう? 元々の体質もあるからな。そこまで大きくはならないかもしれないな」
「そうなんだー!」
昇が理解したかどうかはわからないが、納得はしてくれたようだ。
「さぁ、入ろう。おもちゃは持ったか?」
「うん! だいじょうぶ!」
直くんを腕に抱き、風呂場に入る。
病院とは思えない広々とした浴室に昇は嬉しそうに声をあげていた。
「まず、髪と身体を洗うんだぞ」
「はーい」
昇が自分で頭を洗っている横で、直くんの髪を洗ってやる。
「じいちゃん、なおくん。きもちよさそう!!」
「あわー、あわー」
直くんが手を伸ばして、昇の髪に触れようとする。
このシャンプーは誤って泡を口にしても安心な原料で作られているというからそこまで神経質になる必要はない。
二人で泡で遊んでいる間にさっと髪と身体を洗い終えた。
「昇は湯船に浸かっていていいぞ。直くんはこっちに座って待っててね」
直くんと昇が向き合うように座らせて昇が直くんに話しかけている間にさっと髪と身体を洗い終えた。
沙都が椅子を用意するように言ってくれて助かったな。
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