57 / 117
楽しいサプライズ
しおりを挟む
「直くん、本当に可愛い!」
鳴宮くんが直くんをあまりにも愛おしそうに抱きしめているから、志良堂が嫉妬しないかと心配したが、志良堂も二人の様子を微笑ましく見ているようだ。
「磯山、写真を撮ってもいいか?」
「構わないよ」
私に確認をとってからスマホを構えた志良堂は嬉しそうに、直くんを抱っこした鳴宮くんの写真を撮っていた。
「ねぇ、宗一郎さんも抱っこさせてもらおうよ」
鳴宮くんの声に志良堂は伺いを立てるようにそっと私に視線を向けた。
「直くんから志良堂に手を伸ばすなら構わないよ」
そんな私の言葉に、志良堂は笑顔を浮かべながら直くんに手を差し出した。
「おじさんのところに来るかい?」
直くんは一瞬考えた様子を見せたが、小さな腕を志良堂に向ける。
「――っ!!」
志良堂は嬉しそうに直くんを抱きあげ、自分の腕で包み込む。
「ああ、可愛いな……」
愛おしそうに直くんを見つめるその姿。
私は志良堂の初めてみる表情に思わず写真を撮っていた。
「おいちゃ?」
直くんは志良堂の頬をペタペタと触って不思議そうにしている。
どうしたんだろう?
「ねぇ、卓さん。直くん、もしかしたら志良堂教授がおじさんって言ったから毅さんと混同して不思議に思ってるんじゃない? おじちゃんってこんな顔だったっけ?って」
「あっ!」
――おじちゃんでいいだろう。
私がそう言ったから直くんは毅をおじちゃんと呼んでいたんだったか。
確かに同じ名前なら混乱しても不思議はない。
「明らかに違う顔なのに名前が一緒なら悩んでも不思議はないな。さて、どうしようか」
「ん? なになに? 宗一郎さんの呼ばれ方?」
私と絢斗が話をしていると鳴宮くんが話に加わってきた。
「そうなんだよ。直くん、志良堂教授をなんて呼んだらいいかな?」
「うーん。宗一郎って子どもには長いもんね。じゃあそうちゃんでいいんじゃない? 可愛いし」
志良堂が……そうちゃん。
なんとも不思議な感覚だが直くんには呼びやすいのは間違いない。
「直くん、この人はそうちゃんだよ」
「そうちゃ?」
「うん、そうちゃん! 直くん、上手だね」
「そうちゃ!」
鳴宮くんに褒められて嬉しかったのか、直くんは志良堂の頬を触りながら笑顔でそうちゃんと呼んでいた。
志良堂のまんざらでもなさそうな顔に思わず笑ってしまう。
あいつにもこんな表情ができたんだな。
「それにしても宗一郎さん、抱っこ上手だね」
「それは皐月で慣れているからね」
「もう! 私は赤ちゃんじゃないよ」
「ははっ」
志良堂と鳴宮くんが直くんを中心に寄り添って話をしているのを見ると、心が温かくなってくる。
「皐月も志良堂教授も嬉しそう。直くんがいるだけでこんなに幸せになれるんだね」
「ああ、あの子はみんなの天使だよ」
私の言葉に絢斗は少し考えたかと思ったら、何かを思いついたとばかりに笑顔を向けた。
「ねぇねぇ、志良堂教授が直くんを抱っこして事務所に行こうよ。伊織くん、絶対に驚くよ!」
「わぁ! それ、楽しそう!!」
鳴宮くんは絢斗の考えにすぐに賛同するが、志良堂は直くんが気になるらしい。
「私に抱っこされて連れて行かれて不安にならないか?」
やっぱりそこか。でも今の直くんの様子を見ていると大丈夫だろう。
私が直くんを連れて行きたかったが、普段冷静な安慶名くんを驚かせるのは、私よりも断然志良堂だからな。
ちょっと見てみたい気もする。
「私たちも一緒に行くから大丈夫ですよ。ね、直くん。今から、かっこいいお兄ちゃんたちに会いに行こうか?」
絢斗もすかさず直くんに声をかけると、直くんの興味をひいたようだ。
「にいちゃ?」
「そう。そうちゃんとさっちゃんの子どもなんだよ。直くん、こんにちはってご挨拶できるかな?」
「こんちちわ、れきるー!」
子ども特有の舌足らずな発音に癒される。
「じゃあ、行こうか」
私たちは地下駐車場から事務所へ上がった。
今の時間は依頼人は誰もきていないのはわかっている。
二人で協力して仕事をしてくれているはずだ。
いつも二人にはお世話になっているから驚かせるのは悪い気もするが、可愛い直くんを紹介しつつ楽しい時間にするだけだ。
そう自分に言い聞かせて事務所に入る扉の前に立った。
「ここから入れば、すぐに事務所だ」
直くんを抱っこした志良堂を先頭に隣に鳴宮くん。
その後ろから、私と絢斗もついていった。
そっと彼らに近づき、成瀬くんが私たちの気配に気づきかけたところで、
「伊織」
と志良堂が声をかける。
「えっ? はっ?」
安慶名くんはそんな声を発したまま、その場に茫然と立ち尽くしていた。
鳴宮くんが直くんをあまりにも愛おしそうに抱きしめているから、志良堂が嫉妬しないかと心配したが、志良堂も二人の様子を微笑ましく見ているようだ。
「磯山、写真を撮ってもいいか?」
「構わないよ」
私に確認をとってからスマホを構えた志良堂は嬉しそうに、直くんを抱っこした鳴宮くんの写真を撮っていた。
「ねぇ、宗一郎さんも抱っこさせてもらおうよ」
鳴宮くんの声に志良堂は伺いを立てるようにそっと私に視線を向けた。
「直くんから志良堂に手を伸ばすなら構わないよ」
そんな私の言葉に、志良堂は笑顔を浮かべながら直くんに手を差し出した。
「おじさんのところに来るかい?」
直くんは一瞬考えた様子を見せたが、小さな腕を志良堂に向ける。
「――っ!!」
志良堂は嬉しそうに直くんを抱きあげ、自分の腕で包み込む。
「ああ、可愛いな……」
愛おしそうに直くんを見つめるその姿。
私は志良堂の初めてみる表情に思わず写真を撮っていた。
「おいちゃ?」
直くんは志良堂の頬をペタペタと触って不思議そうにしている。
どうしたんだろう?
「ねぇ、卓さん。直くん、もしかしたら志良堂教授がおじさんって言ったから毅さんと混同して不思議に思ってるんじゃない? おじちゃんってこんな顔だったっけ?って」
「あっ!」
――おじちゃんでいいだろう。
私がそう言ったから直くんは毅をおじちゃんと呼んでいたんだったか。
確かに同じ名前なら混乱しても不思議はない。
「明らかに違う顔なのに名前が一緒なら悩んでも不思議はないな。さて、どうしようか」
「ん? なになに? 宗一郎さんの呼ばれ方?」
私と絢斗が話をしていると鳴宮くんが話に加わってきた。
「そうなんだよ。直くん、志良堂教授をなんて呼んだらいいかな?」
「うーん。宗一郎って子どもには長いもんね。じゃあそうちゃんでいいんじゃない? 可愛いし」
志良堂が……そうちゃん。
なんとも不思議な感覚だが直くんには呼びやすいのは間違いない。
「直くん、この人はそうちゃんだよ」
「そうちゃ?」
「うん、そうちゃん! 直くん、上手だね」
「そうちゃ!」
鳴宮くんに褒められて嬉しかったのか、直くんは志良堂の頬を触りながら笑顔でそうちゃんと呼んでいた。
志良堂のまんざらでもなさそうな顔に思わず笑ってしまう。
あいつにもこんな表情ができたんだな。
「それにしても宗一郎さん、抱っこ上手だね」
「それは皐月で慣れているからね」
「もう! 私は赤ちゃんじゃないよ」
「ははっ」
志良堂と鳴宮くんが直くんを中心に寄り添って話をしているのを見ると、心が温かくなってくる。
「皐月も志良堂教授も嬉しそう。直くんがいるだけでこんなに幸せになれるんだね」
「ああ、あの子はみんなの天使だよ」
私の言葉に絢斗は少し考えたかと思ったら、何かを思いついたとばかりに笑顔を向けた。
「ねぇねぇ、志良堂教授が直くんを抱っこして事務所に行こうよ。伊織くん、絶対に驚くよ!」
「わぁ! それ、楽しそう!!」
鳴宮くんは絢斗の考えにすぐに賛同するが、志良堂は直くんが気になるらしい。
「私に抱っこされて連れて行かれて不安にならないか?」
やっぱりそこか。でも今の直くんの様子を見ていると大丈夫だろう。
私が直くんを連れて行きたかったが、普段冷静な安慶名くんを驚かせるのは、私よりも断然志良堂だからな。
ちょっと見てみたい気もする。
「私たちも一緒に行くから大丈夫ですよ。ね、直くん。今から、かっこいいお兄ちゃんたちに会いに行こうか?」
絢斗もすかさず直くんに声をかけると、直くんの興味をひいたようだ。
「にいちゃ?」
「そう。そうちゃんとさっちゃんの子どもなんだよ。直くん、こんにちはってご挨拶できるかな?」
「こんちちわ、れきるー!」
子ども特有の舌足らずな発音に癒される。
「じゃあ、行こうか」
私たちは地下駐車場から事務所へ上がった。
今の時間は依頼人は誰もきていないのはわかっている。
二人で協力して仕事をしてくれているはずだ。
いつも二人にはお世話になっているから驚かせるのは悪い気もするが、可愛い直くんを紹介しつつ楽しい時間にするだけだ。
そう自分に言い聞かせて事務所に入る扉の前に立った。
「ここから入れば、すぐに事務所だ」
直くんを抱っこした志良堂を先頭に隣に鳴宮くん。
その後ろから、私と絢斗もついていった。
そっと彼らに近づき、成瀬くんが私たちの気配に気づきかけたところで、
「伊織」
と志良堂が声をかける。
「えっ? はっ?」
安慶名くんはそんな声を発したまま、その場に茫然と立ち尽くしていた。
1,094
あなたにおすすめの小説
【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
全8話
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c
隣国のΩに婚約破棄をされたので、お望み通り侵略して差し上げよう。
下井理佐
BL
救いなし。序盤で受けが死にます。
大国の第一王子・αのジスランは、小国の第二王子・Ωのルシエルと幼い頃から許嫁の関係だった。
ただの政略結婚の相手であるとルシエルに興味を持たないジスランであったが、婚約発表の社交界前夜、ルシエルから婚約破棄するから受け入れてほしいと言われる。
理由を聞くジスランであったが、ルシエルはただ、
「必ず僕の国を滅ぼして」
それだけ言い、去っていった。
社交界当日、ルシエルは約束通り婚約破棄を皆の前で宣言する。
一日だけの魔法
うりぼう
BL
一日だけの魔法をかけた。
彼が自分を好きになってくれる魔法。
禁忌とされている、たった一日しか持たない魔法。
彼は魔法にかかり、自分に夢中になってくれた。
俺の名を呼び、俺に微笑みかけ、俺だけを好きだと言ってくれる。
嬉しいはずなのに、これを望んでいたはずなのに……
※いきなり始まりいきなり終わる
※エセファンタジー
※エセ魔法
※二重人格もどき
※細かいツッコミはなしで
【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?
まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。
うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。
私、マーガレットは、今年16歳。
この度、結婚の申し込みが舞い込みました。
私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。
支度、はしなくてよろしいのでしょうか。
☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。
【完結済】「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる