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番外編
楽しみでたまらない
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ーいいですね。毅には私の方から伝えておきますよ。
ーそうか、引き受けてくれるか。それなら近々家族でイリゼホテルに来てほしい。
ーイリゼホテル、ですか?
ーああ、史紀の結婚式をそこで挙げるんだ。Clef de Coeurの蓮見くんが今回特別に、一花と直くんのドレスと昇くんのタキシードをオーダーメイドで作ってくれることになってね。ほら、子どもたちの衣装はなかなか見つからないだろう?
ー確かに、大人用と違って子どもたちのものは見つけるのは難しいかもしれませんね。
ーそれでせっかくなら似合うものを作ってあげたくてね。一花が作るなら直くんと昇くんにも作ってあげたいんだよ。もちろん費用は私たちで持たせてもらう。
ーありがたい申し出ですが、可愛い息子の衣装は親である私どもが支払わせていただきます。櫻葉会長にはそのような機会を作っていただけただけで感謝しております。
ーははっ。そうか、やはりな。麻友子もきっとそういうだろうと言っていた。可愛い子どもの衣装を人任せにはしないとな。
ーええ、その通りです。それでは家族と相談して、イリゼホテルに伺う日を改めてご連絡させていただきます。
そんな約束をして電話を切った。
直くんがフラワーガールか。
小さな手で綺麗な花びらをまく姿を想像するだけでにやけてしまうほど可愛い。
帰ったらすぐに絢斗に話をしよう。
その前に毅にも連絡を入れておくか。
まだ昼休みだろうと思って電話をかけると毅はすぐに電話をとった。
ー毅、今大丈夫か?
-さっきまで昇の授業参観に行っていたところなんです。ちょうど家に帰ってきたのでタイミング良かったですよ。
どうやら今日は午前中授業参観でそのまま家族で帰宅してきたところらしい。
ーそれなら良かった。実はたった今櫻葉会長から電話をもらってね、史紀くんが結婚するらしい。
ーええー、そうですか。おめでたいですね。
ーそれで、昇にタキシードを着てリングボーイをして欲しいという依頼が来たんだが、どうだ?
ー昇がリングボーイ、ですか? 柄じゃない気がしますが……。
ー昇本人にも聞いてみてくれないか?
私の言葉に毅はすぐ近くにいたらしい昇に聞いたようだが、電話口から聞こえる声は即決というわけではなさそうだ。
<ねー、直くんは? 直くんも何かするの?>
そんな声が聞こえてきた。
ーあの、兄さん……
ーははっ。聞こえていたよ。直くんももちろん参加するよ。一花くんと一緒に、フラワーガールを頼まれている。可愛いドレスを着る予定だよ。
ーやる!! すぐるおじちゃん、ぼく、やるよ!!!
スピーカーで聞いていたんだろう。直くんの話を出すと渋っていた声が嘘のように明るい声が聞こえてきた。
ーわかった、わかった。櫻葉会長には伝えておくよ。それで、その時に着る衣装をClef de Coeurの周平くんが子どもたちのサイズに合うものを作ってくれることになったから、近々イリゼホテルで採寸とどんな衣装にしたいかを打ち合わせすることになったんだ。昇の好みのタキシードも作ってくれるようだから、都合がいい日をいくつか教えてくれ。
ーわかりました。すぐに日程を確認して連絡します。
毅が話している後ろで昇の嬉しそうな声が聞こえている。
直くんにしても昇がいれば慣れない場所でも安心するだろう。
電話を切ったあと、私は直くんのドレスをどんなものにするか楽しみでたまらなかった。
大急ぎで仕事を終わらせて、直くんと絢斗が待つ家に向かう。
玄関を開けるとすぐにトタトタと部屋の奥から駆けてくる足音が聞こえてくる。
「ちゅぐぅちゃーっ、おかーりー」
嬉しそうに出迎えてくれる直くんを抱きしめて立ち上がる。
「ただいま。今日も楽しかったかな?」
「あーちゃとあちょんだー」
「そうか、それは良かった」
「ちゅぐぅちゃはゆーちーといおいと、いっちぇいとよーたーとあちょんだ?」
「ははっ。ああ、楽しかったよ」
「ちょれはよかっちゃー」
こうして言い合うのもいつものルーティーンのようになっている。
可愛い直くんの出迎えは疲れを癒してくれる。
そして、私の疲れを癒してくれるもう一人の存在。
「卓さん、おかえりなさい」
愛しい絢斗だ。直くんを抱きかかえたまま、絢斗を抱きしめる。そして唇に甘いキスをする。
それをみると直くんもキスをされたがるが、その時は私と絢斗で両方の頬にキスを贈ることにしている。
この全てが私が帰宅した時のルーティーンだ。
幸せな時間を過ごし、三人で家のなかに入った。
「絢斗、実は櫻葉会長から電話があってね――」
史紀くんが結婚することになったこと、そして直くんと昇にそれぞれ役割を依頼されたことを告げるとみるみるうちに笑顔になっていった。
「わぁー!! 史紀くんの結婚か。楽しみだね。それに直くんがフラワーガールなんて!! 絶対に可愛すぎる!! しかも周平くんがドレス作ってくれるなんてもう楽しみでしかないね!!!」
絢斗は大喜びするだろうと思っていたが、想像以上の喜びに私も直くんも釣られるように笑顔になっていった。
ーそうか、引き受けてくれるか。それなら近々家族でイリゼホテルに来てほしい。
ーイリゼホテル、ですか?
ーああ、史紀の結婚式をそこで挙げるんだ。Clef de Coeurの蓮見くんが今回特別に、一花と直くんのドレスと昇くんのタキシードをオーダーメイドで作ってくれることになってね。ほら、子どもたちの衣装はなかなか見つからないだろう?
ー確かに、大人用と違って子どもたちのものは見つけるのは難しいかもしれませんね。
ーそれでせっかくなら似合うものを作ってあげたくてね。一花が作るなら直くんと昇くんにも作ってあげたいんだよ。もちろん費用は私たちで持たせてもらう。
ーありがたい申し出ですが、可愛い息子の衣装は親である私どもが支払わせていただきます。櫻葉会長にはそのような機会を作っていただけただけで感謝しております。
ーははっ。そうか、やはりな。麻友子もきっとそういうだろうと言っていた。可愛い子どもの衣装を人任せにはしないとな。
ーええ、その通りです。それでは家族と相談して、イリゼホテルに伺う日を改めてご連絡させていただきます。
そんな約束をして電話を切った。
直くんがフラワーガールか。
小さな手で綺麗な花びらをまく姿を想像するだけでにやけてしまうほど可愛い。
帰ったらすぐに絢斗に話をしよう。
その前に毅にも連絡を入れておくか。
まだ昼休みだろうと思って電話をかけると毅はすぐに電話をとった。
ー毅、今大丈夫か?
-さっきまで昇の授業参観に行っていたところなんです。ちょうど家に帰ってきたのでタイミング良かったですよ。
どうやら今日は午前中授業参観でそのまま家族で帰宅してきたところらしい。
ーそれなら良かった。実はたった今櫻葉会長から電話をもらってね、史紀くんが結婚するらしい。
ーええー、そうですか。おめでたいですね。
ーそれで、昇にタキシードを着てリングボーイをして欲しいという依頼が来たんだが、どうだ?
ー昇がリングボーイ、ですか? 柄じゃない気がしますが……。
ー昇本人にも聞いてみてくれないか?
私の言葉に毅はすぐ近くにいたらしい昇に聞いたようだが、電話口から聞こえる声は即決というわけではなさそうだ。
<ねー、直くんは? 直くんも何かするの?>
そんな声が聞こえてきた。
ーあの、兄さん……
ーははっ。聞こえていたよ。直くんももちろん参加するよ。一花くんと一緒に、フラワーガールを頼まれている。可愛いドレスを着る予定だよ。
ーやる!! すぐるおじちゃん、ぼく、やるよ!!!
スピーカーで聞いていたんだろう。直くんの話を出すと渋っていた声が嘘のように明るい声が聞こえてきた。
ーわかった、わかった。櫻葉会長には伝えておくよ。それで、その時に着る衣装をClef de Coeurの周平くんが子どもたちのサイズに合うものを作ってくれることになったから、近々イリゼホテルで採寸とどんな衣装にしたいかを打ち合わせすることになったんだ。昇の好みのタキシードも作ってくれるようだから、都合がいい日をいくつか教えてくれ。
ーわかりました。すぐに日程を確認して連絡します。
毅が話している後ろで昇の嬉しそうな声が聞こえている。
直くんにしても昇がいれば慣れない場所でも安心するだろう。
電話を切ったあと、私は直くんのドレスをどんなものにするか楽しみでたまらなかった。
大急ぎで仕事を終わらせて、直くんと絢斗が待つ家に向かう。
玄関を開けるとすぐにトタトタと部屋の奥から駆けてくる足音が聞こえてくる。
「ちゅぐぅちゃーっ、おかーりー」
嬉しそうに出迎えてくれる直くんを抱きしめて立ち上がる。
「ただいま。今日も楽しかったかな?」
「あーちゃとあちょんだー」
「そうか、それは良かった」
「ちゅぐぅちゃはゆーちーといおいと、いっちぇいとよーたーとあちょんだ?」
「ははっ。ああ、楽しかったよ」
「ちょれはよかっちゃー」
こうして言い合うのもいつものルーティーンのようになっている。
可愛い直くんの出迎えは疲れを癒してくれる。
そして、私の疲れを癒してくれるもう一人の存在。
「卓さん、おかえりなさい」
愛しい絢斗だ。直くんを抱きかかえたまま、絢斗を抱きしめる。そして唇に甘いキスをする。
それをみると直くんもキスをされたがるが、その時は私と絢斗で両方の頬にキスを贈ることにしている。
この全てが私が帰宅した時のルーティーンだ。
幸せな時間を過ごし、三人で家のなかに入った。
「絢斗、実は櫻葉会長から電話があってね――」
史紀くんが結婚することになったこと、そして直くんと昇にそれぞれ役割を依頼されたことを告げるとみるみるうちに笑顔になっていった。
「わぁー!! 史紀くんの結婚か。楽しみだね。それに直くんがフラワーガールなんて!! 絶対に可愛すぎる!! しかも周平くんがドレス作ってくれるなんてもう楽しみでしかないね!!!」
絢斗は大喜びするだろうと思っていたが、想像以上の喜びに私も直くんも釣られるように笑顔になっていった。
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