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〜新しい家族との出会い〜 side一帆 (真守の兄) <中編>
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前後編の予定でしたが、長くなったので前中後編に分けます。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「えっ……ここが、お父さんのお家ですか?」
今までお母さんと住んでいた家とはまるで違う、お屋敷のような大きな家にただただ驚きしかない。
「ああ。荷物は後で入れるから、妻を……一帆の母親になる人を紹介しよう」
「は、はい。あの、お母さんも一緒に連れて行っていいですか?」
ずっと抱きしめて連れてきたお母さんの骨壷を車に置きっぱなしにはしたくなくてそういうと、
「ああ。和室に夏帆の後飾り祭壇を、雪乃が用意してくれているから夏帆も一緒で構わないよ」
という言葉が返ってきた。
まさか、もう用意してくれていたなんて思わなかった。
お父さんも、それにお父さんの奥さんもすごく優しい人だ。
「一帆が持つには重いから私が連れて行こう。一帆、さぁ、おいで」
お母さんの骨壷を片手で優しく抱きながら、僕の背中にも大きな手を優しく当ててくれて、大きな玄関に向かう。
ものすごく緊張するけど、僕にはお母さんがついているから大丈夫だ。
重厚な扉が開かれて、
「雪乃、帰ったよ。一帆を連れてきた」
とお父さんが声をかけると、奥から優しそうな人がやってきた。
「雪乃、走ってはいけないよ」
「大丈夫ですよ」
その時の笑顔が、お母さんを思い出させるような優しい笑顔で、僕は思わず涙を流してしまった。
「一帆っ」
「一帆くん!」
「うっ、ぐすっ」
「ごめんなさい、何か怖がらせてしまったかしら?」
「ちが……っ、おか、あさん、みたい、で……ぐすっ」
「一帆……そうか、夏帆のことを思い出したんだな」
お父さんの大きな身体で包み込むように抱きしめられて、僕は頷くことしかできなかった。
「一帆くん、これからは私をお母さんだと思ってくれていいのよ。私も一帆くんを本当の息子だと思うわ」
「でも……」
チラリとお父さんが抱いているお母さんの骨壷に視線を向けると、
「そうね。一帆くんにとってはお母さんは、一帆くんを産んで今まで育ててくれた夏帆さんだけよね。その気持ちはずっと持っていてくれて構わないわ。あのね、今私のお腹には赤ちゃんがいるの」
と優しくお腹に手を当てながら教えてくれた。
「えっ、赤ちゃん……」
「ええ、そう。一帆くん、あなたの弟か、妹になる子よ」
「――っ、僕の弟か、妹……」
「そう。だから生まれてくるその子と、そして夏帆さんも一緒に新しい家族になりましょう。どちらかなんて選ばなくていいの。みんなで大きな家族になりましょう。この子もきっと頼りになるお兄ちゃんができて喜んでるわ」
「――っ、うっ、ぐすっ、はい。かぞくに、なりたい、です……」
「よかった……」
「さぁ、じゃあ夏帆を弔ってあげよう」
お父さんはそう言って僕たちを和室へと連れて行ってくれた。
お母さんの祭壇以外はほとんど何も置かれていない部屋だけど、なぜだろう。
すごく落ち着く。
ここならお母さんもゆっくり休めそうだ。
僕が持っていた古ぼけた写真を写真たてに飾ってくれて、白い布がかけられた祭壇にお母さんの骨壷と共に並べる。
ようやく落ち着いた気がして、僕はふっと意識を失った。
目を覚ますと、広いベッドに寝かされていた。
「ここ……」
「ああ、目が覚めた?」
「あの、僕……」
「お母さんが亡くなってからずっと一人で気が張っていたのね。よく眠れていなかったんじゃない?」
「はい……」
「気がつかなくてごめんなさいね」
「そんなこと……っ。僕、お父さんが来てくれてすごく安心したんです」
「それならよかった。あのね、私……子どもが生まれたら、ママと呼んでもらうのが夢だったの。お腹の子どもにはもちろんそう呼んでもらうつもりだけど、赤ちゃんってね……周りから聞こえる言葉で勉強するのよ。だから、一帆くんが私をママだと呼んでくれたら、お腹の赤ちゃんも自然とママと呼ぶようになるはずなのよ。だからね、お母さんは夏帆さんで、私をママと呼ぶのはどうかしら?」
雪乃さんのそれが、僕とお母さんのことを考えて言ってくれたということがよくわかって、僕は嬉しくてたまらなかった。
お母さんが好きになった人はとっても優しい人で、その人が選んだ人もものすごく優しい人だったよ。
そう心の中でお母さんに告げながら、僕はゆっくりと口を開いた。
「ママ……」
「――っ、一帆くん!!」
ギュッと抱きしめてくれる温もりはお母さんと同じくらい優しくて胸があったかくなった。
楽しんでいただけると嬉しいです♡
* * *
「えっ……ここが、お父さんのお家ですか?」
今までお母さんと住んでいた家とはまるで違う、お屋敷のような大きな家にただただ驚きしかない。
「ああ。荷物は後で入れるから、妻を……一帆の母親になる人を紹介しよう」
「は、はい。あの、お母さんも一緒に連れて行っていいですか?」
ずっと抱きしめて連れてきたお母さんの骨壷を車に置きっぱなしにはしたくなくてそういうと、
「ああ。和室に夏帆の後飾り祭壇を、雪乃が用意してくれているから夏帆も一緒で構わないよ」
という言葉が返ってきた。
まさか、もう用意してくれていたなんて思わなかった。
お父さんも、それにお父さんの奥さんもすごく優しい人だ。
「一帆が持つには重いから私が連れて行こう。一帆、さぁ、おいで」
お母さんの骨壷を片手で優しく抱きながら、僕の背中にも大きな手を優しく当ててくれて、大きな玄関に向かう。
ものすごく緊張するけど、僕にはお母さんがついているから大丈夫だ。
重厚な扉が開かれて、
「雪乃、帰ったよ。一帆を連れてきた」
とお父さんが声をかけると、奥から優しそうな人がやってきた。
「雪乃、走ってはいけないよ」
「大丈夫ですよ」
その時の笑顔が、お母さんを思い出させるような優しい笑顔で、僕は思わず涙を流してしまった。
「一帆っ」
「一帆くん!」
「うっ、ぐすっ」
「ごめんなさい、何か怖がらせてしまったかしら?」
「ちが……っ、おか、あさん、みたい、で……ぐすっ」
「一帆……そうか、夏帆のことを思い出したんだな」
お父さんの大きな身体で包み込むように抱きしめられて、僕は頷くことしかできなかった。
「一帆くん、これからは私をお母さんだと思ってくれていいのよ。私も一帆くんを本当の息子だと思うわ」
「でも……」
チラリとお父さんが抱いているお母さんの骨壷に視線を向けると、
「そうね。一帆くんにとってはお母さんは、一帆くんを産んで今まで育ててくれた夏帆さんだけよね。その気持ちはずっと持っていてくれて構わないわ。あのね、今私のお腹には赤ちゃんがいるの」
と優しくお腹に手を当てながら教えてくれた。
「えっ、赤ちゃん……」
「ええ、そう。一帆くん、あなたの弟か、妹になる子よ」
「――っ、僕の弟か、妹……」
「そう。だから生まれてくるその子と、そして夏帆さんも一緒に新しい家族になりましょう。どちらかなんて選ばなくていいの。みんなで大きな家族になりましょう。この子もきっと頼りになるお兄ちゃんができて喜んでるわ」
「――っ、うっ、ぐすっ、はい。かぞくに、なりたい、です……」
「よかった……」
「さぁ、じゃあ夏帆を弔ってあげよう」
お父さんはそう言って僕たちを和室へと連れて行ってくれた。
お母さんの祭壇以外はほとんど何も置かれていない部屋だけど、なぜだろう。
すごく落ち着く。
ここならお母さんもゆっくり休めそうだ。
僕が持っていた古ぼけた写真を写真たてに飾ってくれて、白い布がかけられた祭壇にお母さんの骨壷と共に並べる。
ようやく落ち着いた気がして、僕はふっと意識を失った。
目を覚ますと、広いベッドに寝かされていた。
「ここ……」
「ああ、目が覚めた?」
「あの、僕……」
「お母さんが亡くなってからずっと一人で気が張っていたのね。よく眠れていなかったんじゃない?」
「はい……」
「気がつかなくてごめんなさいね」
「そんなこと……っ。僕、お父さんが来てくれてすごく安心したんです」
「それならよかった。あのね、私……子どもが生まれたら、ママと呼んでもらうのが夢だったの。お腹の子どもにはもちろんそう呼んでもらうつもりだけど、赤ちゃんってね……周りから聞こえる言葉で勉強するのよ。だから、一帆くんが私をママだと呼んでくれたら、お腹の赤ちゃんも自然とママと呼ぶようになるはずなのよ。だからね、お母さんは夏帆さんで、私をママと呼ぶのはどうかしら?」
雪乃さんのそれが、僕とお母さんのことを考えて言ってくれたということがよくわかって、僕は嬉しくてたまらなかった。
お母さんが好きになった人はとっても優しい人で、その人が選んだ人もものすごく優しい人だったよ。
そう心の中でお母さんに告げながら、僕はゆっくりと口を開いた。
「ママ……」
「――っ、一帆くん!!」
ギュッと抱きしめてくれる温もりはお母さんと同じくらい優しくて胸があったかくなった。
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