歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
302 / 316
番外編

一花との昼食

「わぁー! 広い!」

部屋に入った途端、目を輝かせてくれる。
一花を抱きかかえたまま窓際に移動すると、一花はぎゅっと私に抱きつきながら

「すごく高いです!」

と下を覗き込んでいた。

「ははっ。ちょっと怖かったか?」

「あんまり高いところに登ったことがなくて……」

「そうか。じゃあ今度あそこのタワーに上ってみようか?」

「たわー?」

私が窓の外に見える東京のシンボルとも言える大きなタワーを指差すと、一花はびっくりした顔で私を見た。

「あれに上れるんですか?」

「ああ、上れるよ。行ってみるか?」

「ちょっと怖そう……」

ここよりずっと高いタワーを見て少し怖がっている。
そういえば麻友子も高いところは少し苦手だったか。

「ははっ。大丈夫。私がついてるよ」

「それならいけるかも!」

私が一緒なら大丈夫だと言ってくれるのか。
本当に嬉しいことだ。

一花にいろんな経験をさせたいと思っていたが、東京のことも何も知らないからまずは東京観光をしてみるのも楽しいかもしれないな。

「会長。先ほど滝川くんが話をしていた新メニューコンペについての書類をご用意しました」

「ああ、ありがとう。一花、ちょっと見てみるか?」

「はい!」

どんな内容かはわかっていないだろうが、私の会社のために一花がやる気になってくれていることが何よりも嬉しい。

「会長、私が一花くんに説明しても?」

「そうだな、史紀のほうがわかりやすいだろう」

なんせ、あのカフェを存続させるためにこれまでにいくつもの新しいメニューを考えてくれていたのだから。

一花をソファーに座らせると、史紀が隣に腰を下ろす。
私の父方の従兄弟の息子である史紀と一花は血のつながりこそ薄いが纏っている雰囲気はよく似ている。
親子と言っていいくらいの年の差はあるが、二人にはそれを感じさせないものがある。
年齢を超えた友人というのは二人のような仲をいうのかもしれない。

「会長はこちらに集中してください」

「そうだな。一花が史紀と考えてくれている間に頑張るとしようか」

すごい、美味しそう! これも史紀さんが考えたの?
という一花の可愛い声と、大したことはないと言いながらも一花に褒められて嬉しそうな史紀の声をBGMに私は集中して書類にハンコを押し続けた。

そうして、やるべきことを全て終えた頃、

「パパー!」

という一花の可愛い声が私を呼んだ。

「どうした?」

「お仕事終わりましたか?」

「ああ。ちょうど休憩しようと思っていたところだ。そろそろ昼になるから食事に行こうか? 一花は何が食べたい?」

一花はあまりおねだりをしないが、一花が食べたいものを言ってくれれば最高に美味しいところに連れて行こう。

「一花が食べたいものをなんでも用意するし、どこかに食べに行きたいなら連れて行くよ」

「それなら……社員食堂、っていうところに行ってみたいです」

「えっ? 社員食堂? そこでいいのか?」

「はい。社員の皆さんが美味しく食べているものを一緒に食べて、そのあとは桜カフェにも行ってみたいです。そうしたら僕にも何か美味しいメニューが考えられるかなって」

一花が新メニューのアイディアを出せるように、史紀が考えてアドバイスしてくれたのだろう。
そんな二人の思いが何よりも嬉しい。

「そうか、じゃあ行ってみようか。史紀も一緒にどうだ?」

「はい。ご一緒します」

私と一花だけだとどうしても手が足りないからな。
滝川くんも一緒について来てもらって楽しい昼食を過ごすとしようか。

「じゃあ行こうか」

私が一花を抱きかかえている間に、史紀がさっと滝川くんに声をかけに行く。
私が何も言わなくてもこうして動いてくれる。
やはり史紀の存在はこの会社にとってなくてはならないものだな。

四人でエレベーターに乗り込み、社員食堂がある階まで降りる。
我が社は社員食堂にはかなり力を入れている。
社員の健康を守るためにも栄養バランスの良い食事を摂りながらも美味しく満足できるメニュー作りを心がけているため、社員にはかなりの人気がある。

今日も社員食堂はいっぱいだろう。

我が社にはおかしな輩はいないはずだが、一花はしっかりと守らなければな。

一花をしっかりと腕に抱きかかえ、一歩食堂に足を踏み入れると、夥しい視線が我々に注がれた。
だが、

「わぁー! 美味しそうないい匂いがするー!」

と何も気にする様子のない、一花の可愛らしい声が社員食堂中に響き渡った。
感想 560

あなたにおすすめの小説

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います

塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。