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番外編
一花との昼食
「わぁー! 広い!」
部屋に入った途端、目を輝かせてくれる。
一花を抱きかかえたまま窓際に移動すると、一花はぎゅっと私に抱きつきながら
「すごく高いです!」
と下を覗き込んでいた。
「ははっ。ちょっと怖かったか?」
「あんまり高いところに登ったことがなくて……」
「そうか。じゃあ今度あそこのタワーに上ってみようか?」
「たわー?」
私が窓の外に見える東京のシンボルとも言える大きなタワーを指差すと、一花はびっくりした顔で私を見た。
「あれに上れるんですか?」
「ああ、上れるよ。行ってみるか?」
「ちょっと怖そう……」
ここよりずっと高いタワーを見て少し怖がっている。
そういえば麻友子も高いところは少し苦手だったか。
「ははっ。大丈夫。私がついてるよ」
「それならいけるかも!」
私が一緒なら大丈夫だと言ってくれるのか。
本当に嬉しいことだ。
一花にいろんな経験をさせたいと思っていたが、東京のことも何も知らないからまずは東京観光をしてみるのも楽しいかもしれないな。
「会長。先ほど滝川くんが話をしていた新メニューコンペについての書類をご用意しました」
「ああ、ありがとう。一花、ちょっと見てみるか?」
「はい!」
どんな内容かはわかっていないだろうが、私の会社のために一花がやる気になってくれていることが何よりも嬉しい。
「会長、私が一花くんに説明しても?」
「そうだな、史紀のほうがわかりやすいだろう」
なんせ、あのカフェを存続させるためにこれまでにいくつもの新しいメニューを考えてくれていたのだから。
一花をソファーに座らせると、史紀が隣に腰を下ろす。
私の父方の従兄弟の息子である史紀と一花は血のつながりこそ薄いが纏っている雰囲気はよく似ている。
親子と言っていいくらいの年の差はあるが、二人にはそれを感じさせないものがある。
年齢を超えた友人というのは二人のような仲をいうのかもしれない。
「会長はこちらに集中してください」
「そうだな。一花が史紀と考えてくれている間に頑張るとしようか」
すごい、美味しそう! これも史紀さんが考えたの?
という一花の可愛い声と、大したことはないと言いながらも一花に褒められて嬉しそうな史紀の声をBGMに私は集中して書類にハンコを押し続けた。
そうして、やるべきことを全て終えた頃、
「パパー!」
という一花の可愛い声が私を呼んだ。
「どうした?」
「お仕事終わりましたか?」
「ああ。ちょうど休憩しようと思っていたところだ。そろそろ昼になるから食事に行こうか? 一花は何が食べたい?」
一花はあまりおねだりをしないが、一花が食べたいものを言ってくれれば最高に美味しいところに連れて行こう。
「一花が食べたいものをなんでも用意するし、どこかに食べに行きたいなら連れて行くよ」
「それなら……社員食堂、っていうところに行ってみたいです」
「えっ? 社員食堂? そこでいいのか?」
「はい。社員の皆さんが美味しく食べているものを一緒に食べて、そのあとは桜カフェにも行ってみたいです。そうしたら僕にも何か美味しいメニューが考えられるかなって」
一花が新メニューのアイディアを出せるように、史紀が考えてアドバイスしてくれたのだろう。
そんな二人の思いが何よりも嬉しい。
「そうか、じゃあ行ってみようか。史紀も一緒にどうだ?」
「はい。ご一緒します」
私と一花だけだとどうしても手が足りないからな。
滝川くんも一緒について来てもらって楽しい昼食を過ごすとしようか。
「じゃあ行こうか」
私が一花を抱きかかえている間に、史紀がさっと滝川くんに声をかけに行く。
私が何も言わなくてもこうして動いてくれる。
やはり史紀の存在はこの会社にとってなくてはならないものだな。
四人でエレベーターに乗り込み、社員食堂がある階まで降りる。
我が社は社員食堂にはかなり力を入れている。
社員の健康を守るためにも栄養バランスの良い食事を摂りながらも美味しく満足できるメニュー作りを心がけているため、社員にはかなりの人気がある。
今日も社員食堂はいっぱいだろう。
我が社にはおかしな輩はいないはずだが、一花はしっかりと守らなければな。
一花をしっかりと腕に抱きかかえ、一歩食堂に足を踏み入れると、夥しい視線が我々に注がれた。
だが、
「わぁー! 美味しそうないい匂いがするー!」
と何も気にする様子のない、一花の可愛らしい声が社員食堂中に響き渡った。
部屋に入った途端、目を輝かせてくれる。
一花を抱きかかえたまま窓際に移動すると、一花はぎゅっと私に抱きつきながら
「すごく高いです!」
と下を覗き込んでいた。
「ははっ。ちょっと怖かったか?」
「あんまり高いところに登ったことがなくて……」
「そうか。じゃあ今度あそこのタワーに上ってみようか?」
「たわー?」
私が窓の外に見える東京のシンボルとも言える大きなタワーを指差すと、一花はびっくりした顔で私を見た。
「あれに上れるんですか?」
「ああ、上れるよ。行ってみるか?」
「ちょっと怖そう……」
ここよりずっと高いタワーを見て少し怖がっている。
そういえば麻友子も高いところは少し苦手だったか。
「ははっ。大丈夫。私がついてるよ」
「それならいけるかも!」
私が一緒なら大丈夫だと言ってくれるのか。
本当に嬉しいことだ。
一花にいろんな経験をさせたいと思っていたが、東京のことも何も知らないからまずは東京観光をしてみるのも楽しいかもしれないな。
「会長。先ほど滝川くんが話をしていた新メニューコンペについての書類をご用意しました」
「ああ、ありがとう。一花、ちょっと見てみるか?」
「はい!」
どんな内容かはわかっていないだろうが、私の会社のために一花がやる気になってくれていることが何よりも嬉しい。
「会長、私が一花くんに説明しても?」
「そうだな、史紀のほうがわかりやすいだろう」
なんせ、あのカフェを存続させるためにこれまでにいくつもの新しいメニューを考えてくれていたのだから。
一花をソファーに座らせると、史紀が隣に腰を下ろす。
私の父方の従兄弟の息子である史紀と一花は血のつながりこそ薄いが纏っている雰囲気はよく似ている。
親子と言っていいくらいの年の差はあるが、二人にはそれを感じさせないものがある。
年齢を超えた友人というのは二人のような仲をいうのかもしれない。
「会長はこちらに集中してください」
「そうだな。一花が史紀と考えてくれている間に頑張るとしようか」
すごい、美味しそう! これも史紀さんが考えたの?
という一花の可愛い声と、大したことはないと言いながらも一花に褒められて嬉しそうな史紀の声をBGMに私は集中して書類にハンコを押し続けた。
そうして、やるべきことを全て終えた頃、
「パパー!」
という一花の可愛い声が私を呼んだ。
「どうした?」
「お仕事終わりましたか?」
「ああ。ちょうど休憩しようと思っていたところだ。そろそろ昼になるから食事に行こうか? 一花は何が食べたい?」
一花はあまりおねだりをしないが、一花が食べたいものを言ってくれれば最高に美味しいところに連れて行こう。
「一花が食べたいものをなんでも用意するし、どこかに食べに行きたいなら連れて行くよ」
「それなら……社員食堂、っていうところに行ってみたいです」
「えっ? 社員食堂? そこでいいのか?」
「はい。社員の皆さんが美味しく食べているものを一緒に食べて、そのあとは桜カフェにも行ってみたいです。そうしたら僕にも何か美味しいメニューが考えられるかなって」
一花が新メニューのアイディアを出せるように、史紀が考えてアドバイスしてくれたのだろう。
そんな二人の思いが何よりも嬉しい。
「そうか、じゃあ行ってみようか。史紀も一緒にどうだ?」
「はい。ご一緒します」
私と一花だけだとどうしても手が足りないからな。
滝川くんも一緒について来てもらって楽しい昼食を過ごすとしようか。
「じゃあ行こうか」
私が一花を抱きかかえている間に、史紀がさっと滝川くんに声をかけに行く。
私が何も言わなくてもこうして動いてくれる。
やはり史紀の存在はこの会社にとってなくてはならないものだな。
四人でエレベーターに乗り込み、社員食堂がある階まで降りる。
我が社は社員食堂にはかなり力を入れている。
社員の健康を守るためにも栄養バランスの良い食事を摂りながらも美味しく満足できるメニュー作りを心がけているため、社員にはかなりの人気がある。
今日も社員食堂はいっぱいだろう。
我が社にはおかしな輩はいないはずだが、一花はしっかりと守らなければな。
一花をしっかりと腕に抱きかかえ、一歩食堂に足を踏み入れると、夥しい視線が我々に注がれた。
だが、
「わぁー! 美味しそうないい匂いがするー!」
と何も気にする様子のない、一花の可愛らしい声が社員食堂中に響き渡った。
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