311 / 316
番外編
素晴らしいアイディア
<side史紀>
――このわらび餅をさっきの桜ティラミスの上に載せるのってどうですか? 絶対美味しいと思うんだけどなー
屈託のない笑顔で一花くんが発言した内容に、私だけでなく、ここにいる大人が全て茫然としてしまった。
それほど予想していなかった言葉だった。
「あれ? 僕……何か、おかしなこと言っちゃいましたか?」
あまりにも静かになりすぎて、不安になった一花くんが尋ねてくる。
私はハッと我にかえり、慌てて声をかけた。
「い、いいえ。あまりにも斬新なアイディアでびっくりしただけだよ。それ、すごくいいと思う! ですよね、会長」
「あ、ああ。そんなこと思いもつかなかったが、確かに美味しそうだ」
私と会長の反応に、一花くんはようやくほっとした表情を見せた。
「いやー、でもほんと。すごいよ。何度もここでティラミスもわらび餅も食べているけどそんなこと考えたことなかったよ。でも絶対に美味しいと思う。滝川くんもそう思うよね?」
滝川くんは茫然としたまま頷いていたけれど、すぐに一花くんを真剣な表情で見た。
「これはイケると思います。食事が終わったらすぐに資料作りに入りましょう!」
立ち上がった滝川くんが勢い余って一花くんの手を握ろうとしたのを私は見逃さなかった。
もちろん滝川くんに他意がないことはわかっている。
一花くんのアイディアに感動しただけだということもよくわかっているし、一花くんも手を握ったからと言ってどうということもないだろう。
だけど、もし一花くんが貴船会長の前でポロッと滝川くんと手を握ったことを話してしまったら、おそらく……いや、絶対にどうしてそんなことになったのか追及されるだろう。それは絶対に避けたい。
さっと間に入り込んで、滝川くんが一花くんの手を握るのを阻止すると、店長の草薙さんもほっとした表情を見せていた。
「ゆっくりと味わってたべてから、私の部屋で資料を作ろうか。一花くん、忙しくなるよ」
「はい! 頑張ります!」
一花くんは笑顔で返事をすると、会長にその笑顔のまま振り向いた。
「ママのティラミスに、僕が考えたものが合わさったらパパ……嬉しい?」
「ああ。もちろんだ。一花が考えてくれるだけで私は嬉しいよ」
そういうと、一花くんは嬉しそうにティラミスを掬い、会長の口に運んだ。
「パパ、美味しい?」
「一花……ああ、美味しい。美味しいよ」
会長と麻友子さんが一生懸命考案した桜ティラミスを一花さんに食べさせてもらう。
それは会長にとって最高に幸せなことだろう。
「ふぅー。お腹いっぱい」
一花くんは、私が頼んだ桜プリンと桜マカロンもシェアして食べて満足そうな表情を見せた。
「ここのスイーツ、どれも美味しくて最高です」
一花くんが笑顔で草薙さんに告げると一瞬たじろいで見せたのは、きっと一花くんの天使の微笑みにやられたのかもしれない。それを滝川くんが見ていなかったことだけが幸いだっただろう。
草薙さんは気合を入れ表情を引き締めてから一花くんに返事を返す。
「ありがとうございます。お褒めいただき嬉しいです。ぜひ、今度は貴船会長とご一緒にお召し上がりにいらしてください」
「征哉さんと! はい。ぜひ!」
その嬉しそうな表情を見ただけで、一花くんが心から貴船会長を思っていることが素直に感じられた。
「一花。じゃあ行こうか。草薙くん、世話になったね」
「いいえ。お越しいただきありがとうございます」
会長がさっと一花くんを抱きかかえ、店を出ていく。
私と滝川くんもその後に続いた。
――このわらび餅をさっきの桜ティラミスの上に載せるのってどうですか? 絶対美味しいと思うんだけどなー
屈託のない笑顔で一花くんが発言した内容に、私だけでなく、ここにいる大人が全て茫然としてしまった。
それほど予想していなかった言葉だった。
「あれ? 僕……何か、おかしなこと言っちゃいましたか?」
あまりにも静かになりすぎて、不安になった一花くんが尋ねてくる。
私はハッと我にかえり、慌てて声をかけた。
「い、いいえ。あまりにも斬新なアイディアでびっくりしただけだよ。それ、すごくいいと思う! ですよね、会長」
「あ、ああ。そんなこと思いもつかなかったが、確かに美味しそうだ」
私と会長の反応に、一花くんはようやくほっとした表情を見せた。
「いやー、でもほんと。すごいよ。何度もここでティラミスもわらび餅も食べているけどそんなこと考えたことなかったよ。でも絶対に美味しいと思う。滝川くんもそう思うよね?」
滝川くんは茫然としたまま頷いていたけれど、すぐに一花くんを真剣な表情で見た。
「これはイケると思います。食事が終わったらすぐに資料作りに入りましょう!」
立ち上がった滝川くんが勢い余って一花くんの手を握ろうとしたのを私は見逃さなかった。
もちろん滝川くんに他意がないことはわかっている。
一花くんのアイディアに感動しただけだということもよくわかっているし、一花くんも手を握ったからと言ってどうということもないだろう。
だけど、もし一花くんが貴船会長の前でポロッと滝川くんと手を握ったことを話してしまったら、おそらく……いや、絶対にどうしてそんなことになったのか追及されるだろう。それは絶対に避けたい。
さっと間に入り込んで、滝川くんが一花くんの手を握るのを阻止すると、店長の草薙さんもほっとした表情を見せていた。
「ゆっくりと味わってたべてから、私の部屋で資料を作ろうか。一花くん、忙しくなるよ」
「はい! 頑張ります!」
一花くんは笑顔で返事をすると、会長にその笑顔のまま振り向いた。
「ママのティラミスに、僕が考えたものが合わさったらパパ……嬉しい?」
「ああ。もちろんだ。一花が考えてくれるだけで私は嬉しいよ」
そういうと、一花くんは嬉しそうにティラミスを掬い、会長の口に運んだ。
「パパ、美味しい?」
「一花……ああ、美味しい。美味しいよ」
会長と麻友子さんが一生懸命考案した桜ティラミスを一花さんに食べさせてもらう。
それは会長にとって最高に幸せなことだろう。
「ふぅー。お腹いっぱい」
一花くんは、私が頼んだ桜プリンと桜マカロンもシェアして食べて満足そうな表情を見せた。
「ここのスイーツ、どれも美味しくて最高です」
一花くんが笑顔で草薙さんに告げると一瞬たじろいで見せたのは、きっと一花くんの天使の微笑みにやられたのかもしれない。それを滝川くんが見ていなかったことだけが幸いだっただろう。
草薙さんは気合を入れ表情を引き締めてから一花くんに返事を返す。
「ありがとうございます。お褒めいただき嬉しいです。ぜひ、今度は貴船会長とご一緒にお召し上がりにいらしてください」
「征哉さんと! はい。ぜひ!」
その嬉しそうな表情を見ただけで、一花くんが心から貴船会長を思っていることが素直に感じられた。
「一花。じゃあ行こうか。草薙くん、世話になったね」
「いいえ。お越しいただきありがとうございます」
会長がさっと一花くんを抱きかかえ、店を出ていく。
私と滝川くんもその後に続いた。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
拾ってないのに、最上位が毎日“帰る”んですがーー飼い主じゃありません!ただの受付係です!
星乃和花
恋愛
王都ギルド受付係リナは、今日も平和に働く予定だった。
……のに。
「お腹すいた」
そう言って現れたのは、最上位の英雄レオン。
強いのに生活力ゼロ、距離感ゼロ、甘え方だけは一流。
手当てすれば「危ない」と囲い込み、
看病すれば抱きしめて離さず、
ついには――
「君が、俺の帰る場所」
拾ってない。飼ってない。
ただ世話を焼いただけなのに、英雄が毎日“帰ってくる”ようになりました。
無自覚世話焼き受付嬢 × 甘えた天然英雄の
距離感バグ甘々ラブコメ、開幕!
⭐︎火木土21:20更新ー本編8話+後日談9話⭐︎
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
若頭の溺愛は、今日も平常運転です
なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編!
過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。
ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。
だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。
……俺も、ちゃんと応えたい。
笑って泣けて、めいっぱい甘い!
騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー!
※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。