歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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番外編

素晴らしいアイディア

<side史紀>

――このわらび餅をさっきの桜ティラミスの上に載せるのってどうですか? 絶対美味しいと思うんだけどなー

屈託のない笑顔で一花くんが発言した内容に、私だけでなく、ここにいる大人が全て茫然としてしまった。
それほど予想していなかった言葉だった。

「あれ? 僕……何か、おかしなこと言っちゃいましたか?」

あまりにも静かになりすぎて、不安になった一花くんが尋ねてくる。
私はハッと我にかえり、慌てて声をかけた。

「い、いいえ。あまりにも斬新なアイディアでびっくりしただけだよ。それ、すごくいいと思う! ですよね、会長」

「あ、ああ。そんなこと思いもつかなかったが、確かに美味しそうだ」

私と会長の反応に、一花くんはようやくほっとした表情を見せた。

「いやー、でもほんと。すごいよ。何度もここでティラミスもわらび餅も食べているけどそんなこと考えたことなかったよ。でも絶対に美味しいと思う。滝川くんもそう思うよね?」

滝川くんは茫然としたまま頷いていたけれど、すぐに一花くんを真剣な表情で見た。

「これはイケると思います。食事が終わったらすぐに資料作りに入りましょう!」

立ち上がった滝川くんが勢い余って一花くんの手を握ろうとしたのを私は見逃さなかった。
もちろん滝川くんに他意がないことはわかっている。
一花くんのアイディアに感動しただけだということもよくわかっているし、一花くんも手を握ったからと言ってどうということもないだろう。

だけど、もし一花くんが貴船会長の前でポロッと滝川くんと手を握ったことを話してしまったら、おそらく……いや、絶対にどうしてそんなことになったのか追及されるだろう。それは絶対に避けたい。

さっと間に入り込んで、滝川くんが一花くんの手を握るのを阻止すると、店長の草薙さんもほっとした表情を見せていた。

「ゆっくりと味わってたべてから、私の部屋で資料を作ろうか。一花くん、忙しくなるよ」

「はい! 頑張ります!」

一花くんは笑顔で返事をすると、会長にその笑顔のまま振り向いた。

「ママのティラミスに、僕が考えたものが合わさったらパパ……嬉しい?」

「ああ。もちろんだ。一花が考えてくれるだけで私は嬉しいよ」

そういうと、一花くんは嬉しそうにティラミスを掬い、会長の口に運んだ。

「パパ、美味しい?」

「一花……ああ、美味しい。美味しいよ」

会長と麻友子さんが一生懸命考案した桜ティラミスを一花さんに食べさせてもらう。
それは会長にとって最高に幸せなことだろう。


「ふぅー。お腹いっぱい」

一花くんは、私が頼んだ桜プリンと桜マカロンもシェアして食べて満足そうな表情を見せた。

「ここのスイーツ、どれも美味しくて最高です」

一花くんが笑顔で草薙さんに告げると一瞬たじろいで見せたのは、きっと一花くんの天使の微笑みにやられたのかもしれない。それを滝川くんが見ていなかったことだけが幸いだっただろう。
草薙さんは気合を入れ表情を引き締めてから一花くんに返事を返す。

「ありがとうございます。お褒めいただき嬉しいです。ぜひ、今度は貴船会長とご一緒にお召し上がりにいらしてください」

「征哉さんと! はい。ぜひ!」

その嬉しそうな表情を見ただけで、一花くんが心から貴船会長を思っていることが素直に感じられた。

「一花。じゃあ行こうか。草薙くん、世話になったね」

「いいえ。お越しいただきありがとうございます」

会長がさっと一花くんを抱きかかえ、店を出ていく。
私と滝川くんもその後に続いた。
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