歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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本当の家族に

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聖ラグエル病院から我が家まではそこまで離れているわけではないが、今日に限っては果てしなく遠く感じた。
信号で停まることすらもどかしく感じながらようやく我が家に到着し、地下のガレージに車を止め、ひかるがいる部屋に向かった。

廊下を走ろうとして、もしかしたら寝ているかもしれないとハッと我に返り、慌てて息を整える。
ノックしようかと思ったがそれで起こしてもいけない。

そっと扉を開き中を窺うと、

「わぁ! お母さん、すごいっ! もっとして見せて!!」

「ふふっ。はいはい。ほら、どう?」

「わぁー! 上手!!」

と少し興奮気味のひかると、和やかで楽しげな母の声が聞こえる。
母のあんな楽しそうな声、いつぶりだろう。
父が亡くなってから初めてじゃないか?

二人で一体何をしているのか気になって、そっと中に入るとひかるのベッドにテーブルを置き、母が折り紙を折っているのが見える。
周りには折り紙で作ったらしい鶴や風船、花や小箱と言ったものが散乱していた。
そういえば、母は折り紙が得意だったな。
懐かしい子どもの頃の記憶が甦る。

「わぁー! 可愛い! これは傘?」

「ええ、そうよ」

得意げに話す母さんに思わず

「楽しそうだな」

と声が出てしまった。

「わっ!」

突然聞こえた私の声に身体をびくりと震わせるひかるを見て申し訳なさが募る。
せっかく楽しんでいたのに邪魔をしてしまったな。

「あら、征哉。あなたいつの間に帰っていたの?」

「今帰ってきたところだよ。あまりにも楽しそうだったから声かけられなくて……驚かせるつもりじゃなかったんだ。悪い、ひかる」

「あ、そんな……っ。僕こそ、気がつかなくてごめんなさい。あの……おかえりなさい。お仕事、お疲れさまです」

「――っ、あ、ああ。ありがとう」

ひかるにおかえりと言われるだけでなんとも嬉しい感情が込み上げる。
こんなの初めてだな。

「今、ひかるくんと折り紙で遊んでいたのよ」

「ああ、ひかるが楽しそうで安心したよ」

「はい。お母さんがいろんなこと教えてくれて、とっても楽しいです」

「お母さん?」

「はい。そう呼んでもいいと仰ったので……あの、だめ、でしたか?」

「ダメだなんて! ひかるが打ち解けてくれて嬉しいよ。私ももう家族だと思っているんだから」

「家族……」

私の言葉にひかるが黙って俯いてしまった。
もしかして、家族になるのは嫌だったのだろうか……。
ここで家族の話を持ち出したのは、流石に時期尚早だったか?

そう思ったが、肩が震えている。

「ひかる? どうした?」

慌ててひかるの元に駆け寄り、ベッドに腰を下ろしてひかるを見つめた。
母も不安そうに見つめている。
すると、ひかるはゆっくりと顔をあげて目を潤ませながら口を開いた。

「あの……ぼく、かぞくって、いってもらえて、うれしくて……」

「――っ!! ひかるっ!」

「ひかるくん! 私も嬉しいわ」

「お母さんっ!」

「――っ」

ひかると母が目の前で抱き合うのを見て、私も仲間に入りたくなって、二人をまとめて腕の中に閉じ込めた。
ひかるはもちろん小さいが、母も思っていたよりもずっと小さく感じる。

母も父が亡くなって寂しかったのだろうな。

「せっかく家族が揃っているから、ここでひかるに大事な話をしておきたいんだ」

「えっ……大事な、話ですか?」

「ああ。これからのひかるのことだが……ひかるの戸籍を確認したら、ひかるは『佐伯ひかる』ではなくて、『平嶋ひかる』のままになっていた」

「平嶋……僕の前の名前です。じゃあ、本当に僕は……養子にはなってなかったんですね……」

「ああ、だから正式に母と養子縁組をしないか?」

「えっ……それって……」

「私がひかるくんの本当の母親になるということね。私は嬉しいわ。ひかるくんはどう?」

「えっ……あの、僕……」

戸惑うのも無理はないか。
だが、私の籍に入れるより母の籍に入れた方が相続の面から言っても絶対にその方がいい。

「ひかる、急いで結論を出さなくてもいい。私たちがひかると本当の家族になりたい気持ちはずっと変わらないから、ひかるの気持ちが落ち着いたら返事をしてくれたらいいよ。なぁ、母さん」

「ええ、そうね。もう私はひかるくんを息子だと思っているから、ひかるくんがゆっくりと考えたらいいわ」

母がひかるの頭を優しく撫でると、ひかるは小さな声でお母さんと呼んでから私たちを見た。

「僕……お母さんと征哉さんと、家族になりたいです……だから、お願いします。僕を家族に、してください……」

「――っ!! ひかるくん!!」

母とひかるが涙を流しながら抱き合う姿に、私も思わず泣きそうになっていた。
ああ、これで私たちは家族になれる。

これまで寂しく辛い思いをしていた分、徹底的に甘やかしてやろう。
そう心に誓った。
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