歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

文字の大きさ
49 / 317

ドキドキの正体

<sideひかる>

あの時から、ずっとドキドキしてた。
泣いている僕の唇に征哉さんの唇が触れたあの日から。

家族だから普通にすることだと言われて納得しつつも、あの日から抱きかかえられて征哉さんの顔が近づいたり、目覚めて征哉さんの顔を間近に見たりするたびに、ドキドキが止まらなかった。

その理由がわからなくて、もう一度征哉さんの唇に触れられたら僕のドキドキの理由もわかるかなって思ってた。

でもそんな機会もないまま、毎日ドキドキする日々が過ぎていく。

そんな時だった。

ふとした話の流れで僕の名前のことになったのは。

この18年、ずっと僕の存在を表すものとしていてくれた『ひかる』という名前。

――あんたなんかに似合わないのに! 私を騙して名前を奪った泥棒が!

施設長の奥さんにずっとそうやって罵られていたから、正直に言ってこの名前があまり好きではなかった。
だけど、

――愛らしいひかるくんの笑顔は私たちをいつも明るくしてくれるもの

僕に似合っている名前だと言ってくれたお母さん。
その気持ちがすごく嬉しかったし、お母さんに褒められて初めて自分の名前を好きだと思えた。

僕の名前の由来を話した後で、征哉さんが名前を変えることができるって教えてくれたけど、お母さんに褒めてもらえたのが嬉しかったから悩んでしまう。

けれど、ふとしたときに思い出すのは、あの鬼のような形相で僕を罵る施設長の奥さんの顔。

それだけで涙が出てきてしまう。

僕が泣いているのを見て、優しい征哉さんが僕を抱きしめてくれる。
その時に思い出したんだ。

今ならもう一度征哉さんの唇に触れられるかもって。

目の前に唇があるのに、今度はなかなかしてくれない。
だから、僕は自分からおねだりして、征哉さんの唇に触れたんだ。

触れた瞬間、征哉さんの温もりが唇から伝わってくる。
ああ、やっぱりドキドキする。

そう思っていると、突然頭の後ろが征哉さんの手で支えられて、僕の唇が何度も何度も甘噛みされる。
このまま食べられちゃうんじゃないかと思うくらい、何度も何度も唇を噛まれてびっくりするけど、なぜかそれが心地良い。
でもだんだん苦しくなってきて、そっと唇を開くと口の中に何かが入ってきた。

まるで生き物みたいに僕の口の中を動き回っているけれど、なぜか気持ちがいい。
口の中に溜まる唾液を飲み込んでもちっとも嫌な気はしなかった。

もっと、もっとしてほしい。

そう思うのに、息はどんどん苦しくなっていく。
だけど征哉さんと離れたくなくて限界まで頑張ったけれど、どうしようもなく苦しくて、僕は征哉さんの胸を叩いてしまった。

それに反応して征哉さんの唇が離れていく。
空気が一気に入ってきて息苦しさが消えていくけれど、離れたのがさみしい。

この気持ちは一体なんだろう……。

わからないまま征哉さんにキスの意味を尋ねると、

「ひかるに謝らなければいけないことがある」

と苦しそうな顔を向けられた。

征哉さんが僕に謝ることなんて何もないのに。

けれど、

「キスなんて家族でもしない。私はひかるが好きでキスをしてしまったんだ。だが、勝手にキスをしてひかるに嫌われるのが怖くて嘘をついてしまった。本当に申し訳ない」

頭を下げられて驚いた。
でもそれ以上に嬉しかったんだ。

だって、征哉さんが、僕を好きだって言ってくれたから……。
あのキスが家族のキスじゃないってことがわかったから……。

僕は嬉しくて、嬉しくて、征哉さんに自分の思いを伝えた。

すると、征哉さんの唇がまた僕のに触れた。
今度は触れるだけのキスだったけれど、征哉さんの温もりが伝わってきて嬉しかった。

唇が離れていくのをじっとみていると、征哉さんと目が合う。
その目がすごく優しくて、なんだか恥ずかしくなる。
だけど、すごく心が満たされた気がしたんだ。

「ひかる……これから先もずっと、私のそばにいてほしい。家族としてじゃなく、恋人になってほしいんだ」

「こい、びと……? 僕が、征哉さんの? いいんですか?」

「ひかるじゃなきゃダメなんだ。だから、頼む。うんと言ってくれ」

いつも冷静で大人な征哉さんが僕に縋るようにそんなことを言ってくれるのが嬉しい。

「僕で良かったら……恋人になってください」

「――っ!!! ひかる!!」

征哉さんの大きな胸に抱きしめられる。
あったかくて、安心するこの胸にこれからもずっといられることが本当に嬉しいんだ。

「良かった……断られたらどうしようかと思ったよ」

「そんな……っ、断るなんて……。征哉さんはすごく素敵な人だから、僕なんかにもったいないのに」

「ふふっ。褒めてもらえて嬉しいが、ひかるの方こそ私には勿体無いくらいだよ。可愛いし、素直だし」

「そんなこと……っ」

征哉さんに褒められてただただ恥ずかしい。

「名前のことはゆっくり考えよう。私にとってもひかるの名前は重要だ。なんせ、愛しい恋人の名前なのだからな」

「――っ!! は、はい」

愛しい恋人だなんて……そんなふうに言われて実感する。
僕、本当に征哉さんの恋人になったんだな……。
感想 562

あなたにおすすめの小説

若頭の溺愛は、今日も平常運転です

なの
BL
『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』続編! 過保護すぎる若頭・鷹臣との同棲生活にツッコミが追いつかない毎日を送る幼なじみの相良悠真。 ホットミルクに外出禁止、舎弟たちのニヤニヤ見守り付き(?)ラブコメ生活はいつだって騒がしく、でもどこかあったかい。 だけどそんな日常の中で、鷹臣の覚悟に触れ、悠真は気づく。 ……俺も、ちゃんと応えたい。 笑って泣けて、めいっぱい甘い! 騒がしくて幸せすぎる、ヤクザとツッコミ男子の結婚一直線ラブストーリー! ※前作『ヤクザの恋は重すぎて甘すぎる』を読んでからの方が、より深く楽しめます。

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

売れないアイドルの俺が人気イケメン俳優とBL営業することになった理由

スノウマン(ユッキー)
BL
 パン屋の息子で、売れないアイドルグループの中でも更に不人気の三井 恭弥(みつい きょうや)は、人気番組の数々を手掛けている有名ディレクターの動画配信サイトでの番組で、人気絶頂の爽やかイケメン俳優、鷹野 龍慈(たかの りゅうじ)と手作りパン対決をする事に。  パン屋の息子なのに惨敗した恭弥は自分の所為で実家のパン屋まで評判が落ちるのではと気づき、泣きながら実家のパン屋は美味しいと訴える。番組での自分の役割を放棄した態度を鷹野にきつく叱られるが、その後立て直し締めの映像を撮り切る。  その一件で鷹野に気に入られた恭弥。鷹野の作戦で実家のパン屋を助けられたことで、何故か世間で【DV彼氏と、彼氏と別れられないアイドル】としてバズることになり――。

響花学園

うなさん
BL
私の性癖しか満たさない。

過保護すぎる家族に囲まれて育ったら、外の世界が危険すぎました 〜冷酷公爵の父と最強兄たちに溺愛される日々〜

由香
恋愛
過保護な父と兄たちに囲まれて育った少女。 初めての外は危険だらけ——のはずが、全部“秒で解決”。 溺愛×コメディ×ほんのり成長の、ほっこり家族物語。

【完結】束縛彼氏から逃げたのに、執着が想像以上に重すぎた

鱗。
BL
束縛の強い恋人、三浦悠真から逃げた風間湊。 逃げた先で出会ったのは、優しく穏やかな占い師、榊啓司だった。 心身を癒やされ、穏やかな日常を取り戻したかに見えた——はずだった。 だが再び現れた悠真の執着は、かつてとは比べ物にならないほど歪んでいて。 そして気付く。 誰のものにもなれないはずの自分が。 『壊れていく人間』にしか愛を見出せないということに。 依存、執着、支配。 三人の関係は、やがて取り返しのつかない形へと崩れていく。 ——これは、『最も壊れている人間』が愛を選び取る物語。 逃げた先にあったのは、『もっと歪んだ愛』だった。 【完結済み】

一妻多夫の獣人世界でマッチングアプリします♡

具なっしー
恋愛
前世の記憶を持つソフィアは、綿菓子のような虹色の髪を持つオコジョ獣人の令嬢。 この世界では男女比が極端に偏っており、女性が複数の夫を持つ「一妻多夫制」が当たり前。でも、前世日本人だったソフィアには、一人の人を愛する感覚しかなくて……。 そんな私に、20人の父様たちは「施設(強制繁殖システム)送り」を避けるため、マッチングアプリを始めさせた。 最初は戸惑いながらも、出会った男性たちはみんな魅力的で、優しくて、一途で――。 ■ 大人の余裕とちょっと意地悪な研究者 ■ 不器用だけど一途な騎士 ■ ぶっきらぼうだけど優しい元義賊 ■ 完璧主義だけど私にだけ甘えん坊な商人 ■ 超ピュアなジムインストラクター ■ コミュ力高めで超甘々なパティシエ ■ 私に一生懸命な天才年下魔法学者 気づけば7人全員と婚約していた!? 「私達はきっと良い家族になれます!」 これは、一人の少女と七人(…)の婚約者たちが、愛と絆を育んでいく、ちょっと甘くて笑える逆ハーレム・ラブコメディ。 という異世界×獣人×一妻多夫×マッチングアプリの、設定盛りだくさんな話。超ご都合主義なので苦手な人は注意! ※表紙はAIです

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。