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ドキドキの正体
<sideひかる>
あの時から、ずっとドキドキしてた。
泣いている僕の唇に征哉さんの唇が触れたあの日から。
家族だから普通にすることだと言われて納得しつつも、あの日から抱きかかえられて征哉さんの顔が近づいたり、目覚めて征哉さんの顔を間近に見たりするたびに、ドキドキが止まらなかった。
その理由がわからなくて、もう一度征哉さんの唇に触れられたら僕のドキドキの理由もわかるかなって思ってた。
でもそんな機会もないまま、毎日ドキドキする日々が過ぎていく。
そんな時だった。
ふとした話の流れで僕の名前のことになったのは。
この18年、ずっと僕の存在を表すものとしていてくれた『ひかる』という名前。
――あんたなんかに似合わないのに! 私を騙して名前を奪った泥棒が!
施設長の奥さんにずっとそうやって罵られていたから、正直に言ってこの名前があまり好きではなかった。
だけど、
――愛らしいひかるくんの笑顔は私たちをいつも明るくしてくれるもの
僕に似合っている名前だと言ってくれたお母さん。
その気持ちがすごく嬉しかったし、お母さんに褒められて初めて自分の名前を好きだと思えた。
僕の名前の由来を話した後で、征哉さんが名前を変えることができるって教えてくれたけど、お母さんに褒めてもらえたのが嬉しかったから悩んでしまう。
けれど、ふとしたときに思い出すのは、あの鬼のような形相で僕を罵る施設長の奥さんの顔。
それだけで涙が出てきてしまう。
僕が泣いているのを見て、優しい征哉さんが僕を抱きしめてくれる。
その時に思い出したんだ。
今ならもう一度征哉さんの唇に触れられるかもって。
目の前に唇があるのに、今度はなかなかしてくれない。
だから、僕は自分からおねだりして、征哉さんの唇に触れたんだ。
触れた瞬間、征哉さんの温もりが唇から伝わってくる。
ああ、やっぱりドキドキする。
そう思っていると、突然頭の後ろが征哉さんの手で支えられて、僕の唇が何度も何度も甘噛みされる。
このまま食べられちゃうんじゃないかと思うくらい、何度も何度も唇を噛まれてびっくりするけど、なぜかそれが心地良い。
でもだんだん苦しくなってきて、そっと唇を開くと口の中に何かが入ってきた。
まるで生き物みたいに僕の口の中を動き回っているけれど、なぜか気持ちがいい。
口の中に溜まる唾液を飲み込んでもちっとも嫌な気はしなかった。
もっと、もっとしてほしい。
そう思うのに、息はどんどん苦しくなっていく。
だけど征哉さんと離れたくなくて限界まで頑張ったけれど、どうしようもなく苦しくて、僕は征哉さんの胸を叩いてしまった。
それに反応して征哉さんの唇が離れていく。
空気が一気に入ってきて息苦しさが消えていくけれど、離れたのがさみしい。
この気持ちは一体なんだろう……。
わからないまま征哉さんにキスの意味を尋ねると、
「ひかるに謝らなければいけないことがある」
と苦しそうな顔を向けられた。
征哉さんが僕に謝ることなんて何もないのに。
けれど、
「キスなんて家族でもしない。私はひかるが好きでキスをしてしまったんだ。だが、勝手にキスをしてひかるに嫌われるのが怖くて嘘をついてしまった。本当に申し訳ない」
頭を下げられて驚いた。
でもそれ以上に嬉しかったんだ。
だって、征哉さんが、僕を好きだって言ってくれたから……。
あのキスが家族のキスじゃないってことがわかったから……。
僕は嬉しくて、嬉しくて、征哉さんに自分の思いを伝えた。
すると、征哉さんの唇がまた僕のに触れた。
今度は触れるだけのキスだったけれど、征哉さんの温もりが伝わってきて嬉しかった。
唇が離れていくのをじっとみていると、征哉さんと目が合う。
その目がすごく優しくて、なんだか恥ずかしくなる。
だけど、すごく心が満たされた気がしたんだ。
「ひかる……これから先もずっと、私のそばにいてほしい。家族としてじゃなく、恋人になってほしいんだ」
「こい、びと……? 僕が、征哉さんの? いいんですか?」
「ひかるじゃなきゃダメなんだ。だから、頼む。うんと言ってくれ」
いつも冷静で大人な征哉さんが僕に縋るようにそんなことを言ってくれるのが嬉しい。
「僕で良かったら……恋人になってください」
「――っ!!! ひかる!!」
征哉さんの大きな胸に抱きしめられる。
あったかくて、安心するこの胸にこれからもずっといられることが本当に嬉しいんだ。
「良かった……断られたらどうしようかと思ったよ」
「そんな……っ、断るなんて……。征哉さんはすごく素敵な人だから、僕なんかにもったいないのに」
「ふふっ。褒めてもらえて嬉しいが、ひかるの方こそ私には勿体無いくらいだよ。可愛いし、素直だし」
「そんなこと……っ」
征哉さんに褒められてただただ恥ずかしい。
「名前のことはゆっくり考えよう。私にとってもひかるの名前は重要だ。なんせ、愛しい恋人の名前なのだからな」
「――っ!! は、はい」
愛しい恋人だなんて……そんなふうに言われて実感する。
僕、本当に征哉さんの恋人になったんだな……。
あの時から、ずっとドキドキしてた。
泣いている僕の唇に征哉さんの唇が触れたあの日から。
家族だから普通にすることだと言われて納得しつつも、あの日から抱きかかえられて征哉さんの顔が近づいたり、目覚めて征哉さんの顔を間近に見たりするたびに、ドキドキが止まらなかった。
その理由がわからなくて、もう一度征哉さんの唇に触れられたら僕のドキドキの理由もわかるかなって思ってた。
でもそんな機会もないまま、毎日ドキドキする日々が過ぎていく。
そんな時だった。
ふとした話の流れで僕の名前のことになったのは。
この18年、ずっと僕の存在を表すものとしていてくれた『ひかる』という名前。
――あんたなんかに似合わないのに! 私を騙して名前を奪った泥棒が!
施設長の奥さんにずっとそうやって罵られていたから、正直に言ってこの名前があまり好きではなかった。
だけど、
――愛らしいひかるくんの笑顔は私たちをいつも明るくしてくれるもの
僕に似合っている名前だと言ってくれたお母さん。
その気持ちがすごく嬉しかったし、お母さんに褒められて初めて自分の名前を好きだと思えた。
僕の名前の由来を話した後で、征哉さんが名前を変えることができるって教えてくれたけど、お母さんに褒めてもらえたのが嬉しかったから悩んでしまう。
けれど、ふとしたときに思い出すのは、あの鬼のような形相で僕を罵る施設長の奥さんの顔。
それだけで涙が出てきてしまう。
僕が泣いているのを見て、優しい征哉さんが僕を抱きしめてくれる。
その時に思い出したんだ。
今ならもう一度征哉さんの唇に触れられるかもって。
目の前に唇があるのに、今度はなかなかしてくれない。
だから、僕は自分からおねだりして、征哉さんの唇に触れたんだ。
触れた瞬間、征哉さんの温もりが唇から伝わってくる。
ああ、やっぱりドキドキする。
そう思っていると、突然頭の後ろが征哉さんの手で支えられて、僕の唇が何度も何度も甘噛みされる。
このまま食べられちゃうんじゃないかと思うくらい、何度も何度も唇を噛まれてびっくりするけど、なぜかそれが心地良い。
でもだんだん苦しくなってきて、そっと唇を開くと口の中に何かが入ってきた。
まるで生き物みたいに僕の口の中を動き回っているけれど、なぜか気持ちがいい。
口の中に溜まる唾液を飲み込んでもちっとも嫌な気はしなかった。
もっと、もっとしてほしい。
そう思うのに、息はどんどん苦しくなっていく。
だけど征哉さんと離れたくなくて限界まで頑張ったけれど、どうしようもなく苦しくて、僕は征哉さんの胸を叩いてしまった。
それに反応して征哉さんの唇が離れていく。
空気が一気に入ってきて息苦しさが消えていくけれど、離れたのがさみしい。
この気持ちは一体なんだろう……。
わからないまま征哉さんにキスの意味を尋ねると、
「ひかるに謝らなければいけないことがある」
と苦しそうな顔を向けられた。
征哉さんが僕に謝ることなんて何もないのに。
けれど、
「キスなんて家族でもしない。私はひかるが好きでキスをしてしまったんだ。だが、勝手にキスをしてひかるに嫌われるのが怖くて嘘をついてしまった。本当に申し訳ない」
頭を下げられて驚いた。
でもそれ以上に嬉しかったんだ。
だって、征哉さんが、僕を好きだって言ってくれたから……。
あのキスが家族のキスじゃないってことがわかったから……。
僕は嬉しくて、嬉しくて、征哉さんに自分の思いを伝えた。
すると、征哉さんの唇がまた僕のに触れた。
今度は触れるだけのキスだったけれど、征哉さんの温もりが伝わってきて嬉しかった。
唇が離れていくのをじっとみていると、征哉さんと目が合う。
その目がすごく優しくて、なんだか恥ずかしくなる。
だけど、すごく心が満たされた気がしたんだ。
「ひかる……これから先もずっと、私のそばにいてほしい。家族としてじゃなく、恋人になってほしいんだ」
「こい、びと……? 僕が、征哉さんの? いいんですか?」
「ひかるじゃなきゃダメなんだ。だから、頼む。うんと言ってくれ」
いつも冷静で大人な征哉さんが僕に縋るようにそんなことを言ってくれるのが嬉しい。
「僕で良かったら……恋人になってください」
「――っ!!! ひかる!!」
征哉さんの大きな胸に抱きしめられる。
あったかくて、安心するこの胸にこれからもずっといられることが本当に嬉しいんだ。
「良かった……断られたらどうしようかと思ったよ」
「そんな……っ、断るなんて……。征哉さんはすごく素敵な人だから、僕なんかにもったいないのに」
「ふふっ。褒めてもらえて嬉しいが、ひかるの方こそ私には勿体無いくらいだよ。可愛いし、素直だし」
「そんなこと……っ」
征哉さんに褒められてただただ恥ずかしい。
「名前のことはゆっくり考えよう。私にとってもひかるの名前は重要だ。なんせ、愛しい恋人の名前なのだからな」
「――っ!! は、はい」
愛しい恋人だなんて……そんなふうに言われて実感する。
僕、本当に征哉さんの恋人になったんだな……。
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