歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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待ち受け

可愛いゾウのぬいぐるみを大切そうに抱きしめる一花。
これはきっと征哉くんからの贈り物だろうか。

自分の思いを告げるときにそれを抱きしめるとは、もう一花の心には征哉くんの存在がなくてはならないものになっているのだろうな。

18年も離れ離れでようやく出会えた息子に大切な人がいると言うのは寂しくもあるが、それ以上に嬉しくもある。
その相手が征哉くんならもう何も言うことはない。

彼が今まで誰にも心を動かされることなく、誠実に過ごしてきたのを知っている。
それもこれも全て一花に出会うためだったと思えば、親としてそれ以上望むことはない。

征哉くんは一花の可愛らしい顔だけでなく、清らかな心に惹かれたと言ってくれた。
ふふっ。私が麻友子に思ったことと同じだ。

麻友子を失ってから今まで彼女以上に心惹かれる人に出会ったことはない。
きっと征哉くんも同じように一花だけに愛を注いでくれることだろう。


私が征哉くんに望むことはただ一つ。

「一花を絶対に幸せにしてくれ。約束だぞ」

その言葉に征哉くんは強い誓いの言葉を返してくれた。
ああ、麻友子。
私たちに、素晴らしい息子が増えたよ。

新しい家族と共に、麻友子の好きだったお菓子を食べようと誘い、持ってきた紙袋からお土産を取り出した。

「あっ、これ……」

「ああ。一花も知っていたか。有名だからな」

「征哉さんがいつも買ってきてくれるプリンです」

「えっ、そうなのか?」

「はい。でも、それがお母さんの好きなものだったなんて……。僕、知らない間にお母さんと同じものが好きになってたんですね。嬉しい!!」

そんな偶然が……。

ああ、本当に征哉くんと私たち家族は何か強い力で繋がっていたのかもしれないな。


「一花。どのプリンがいい?」

「選んでいいんですか?」

「ああ。もちろんだよ」

「じゃあ、このイチゴが乗ってるプリンがいいです」

「ふふっ。麻友子もこれが好きだったよ。やっぱり似ているんだな」

そう言うと一花は嬉しそうに笑って、両手でプリンが入った瓶を握っていた。

「未知子さんも一緒にいかがですか?」

「私もご一緒しても宜しいのですか?」

「ええ。もちろんですよ。征哉くんと一花がパートナーとなった今、私たちは家族ですからね」

貴船コンツェルンの前会長である玄哉さんは、私は麻友子と一花を一度に失い、失意のどん底に落ちている間もずっと定期的に声をかけてくれていた。
彼がいてくれたから、私は一花を諦めないでいようと思えたのかもしれない。

彼が早くに亡くなってしまったのは残念だったけれど、もし生きていたら……きっと、私と同じように二人の仲を認めてくれていたことだろう。
そして、私と縁が繋がったことを喜んでくれたかもしれない。

「これからはお互いに家族として、遠慮なく過ごしていきましょう」

「はい。二人の未来も見守っていきましょうね」

ああ、本当に久しぶりだ。
こんな穏やかな時間を過ごせるのは。

一花と出会えたことで、こんな縁を繋ぐことができるとはな……。

麻友子、私は幸せだよ。


<side征哉>

「一花、こっちのプリンも美味しいよ。ほら、あーん」

スプーンを差し出すと、当然のように口を開けてくれる。
別に櫻葉会長に見せつけるつもりはないが、私たちが幸せな姿を見せることは悪いことではないだろう。

現に櫻葉会長は私たちを見て、嬉しそうに微笑んでいた。

「あの、スペースにいるのはもしかしてウサギかな?」

「はい。ふれあいパークの浅香さんがウサギのグリちゃんを譲ってくれたんです」

一花の言葉に櫻葉会長が目を丸くする。

「えっ、浅香ってもしかして……?」

「はい。あのイリゼホテルの浅香さんですよ」

「ホテル経営だけでなく、かなり手広くやっていると聞いていたがウサギの飼育まで?」

「ええ。沖縄でブリーダーをやっていらっしゃるそうですよ。先日、近くの動物園に行ったときにたまたま寄ったふれあいパークで一花と気が合ったウサギがいたので、お願いして譲っていただいたんです」

「そうだったのか。確かにリハビリには動物の癒しが効果があると言うからな」

「はい。もうすっかり一花とは仲良しになっていますよ」

「そうか。それならよかった」

会長とそんな話をしていると、一花が何度か会長に言いたげな様子を繰り返しているのが見えた。

「一花、どうした? お父さんと何か話したいことでもあるのか?」

「んっ? なんでも聞いてくれて構わないよ」

私の言葉に会長も一花に声をかけると、一花はおずおずと口を開いた。

「あ、あの……お父さんの、その……電話番号とか教えてもらえますか?」

「えっ? 私の、番号?」

「はい。お父さんと、いつでも繋がっていられるって思えたら嬉しいなって……。あ、でも忙しいでしょうから、電話はしたりしませんから。ただ繋がっていられるだけで幸せなので……」

「いや、どんどんしてくれて構わないよ!!!」

「えっ?」

「私は一花の父親なのだから、仕事中でもいつだってかけてくれていいんだよ。そんなこと気にしなくていい」

一花は今、会長がどれだけ嬉しいかわからないだろうな。
愛しい息子にずっと繋がっていたいだなんて言われたら、私なら泣くほど嬉しいだろう。

会長は嬉しそうにスマホを取り出した。

「そうだ、これを見てごらん」

「これ……」

「生まれたときに一枚だけ撮った家族写真だよ。古い携帯で撮ったものを待ち受けにしているからあまり綺麗に写ってないんだが、携帯を変えてもこれだけはずっと待ち受けにしていたんだ」

会長のスマホの待受には幸せそうな笑顔で赤ちゃんを抱く女性とその傍らで二人を抱きしめている男性の姿が映っていた。

「これが、僕……?」

「ああ。そうだよ。可愛いだろう? 私と麻友子の宝物なんだ」

「お父さん……っ」

一花はまた涙を流しながら画面に映る幸せな家族を見つめていた。
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