歩けなくなったお荷物な僕がセレブなイケメン社長に甘々なお世話されています

波木真帆

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一花の選んだ服

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すると、急に一花が涙を流し始めた。

「一花?」

温泉に何かトラウマでもあったのだろうかと心配になり、慌てて抱きしめると

「ぼく……ひとりになったりしないですよね……?」

と不安に満ちた小さな声が聞こえた。

「そんなことあるわけないだろう。どうしたんだ? どうしてそんなことを思ったんだ?」

一花を驚かせたりしないように決して大声をあげたりせずに優しく問いかけると、一花は必死に涙を堪えながら口を開いた。

そこから辿々しく話す一花の話をゆっくり時間をかけて聞いていると、ようやく全ての理由が解けた。
どうやら今、オーディオブックで聞いている話に家族で山間の温泉に出かけるという場面があるらしい。
そうして、温泉に浸かっている間にいつの間にか家族が消えてしまっている……それを思い出してしまったようだ。

「そうか。怖がらせてしまったな。だが、大丈夫だ。一花が一人になることはこれから先、一生ありえない。なぜなら私がずっとそばにいるからだ。わかるだろう?」

「せいや、さん……」

「まだ怖いか?」

その問いに一花は首を横に振って答えた。

「大丈夫。一花はきっと温泉が気に入るよ」

「はい。ないちゃったりしてごめんなさい……」

「気にしないでいい。不安なことや気になることはいつでもなんでも聞いてくれたらいいんだ」

「はい。征哉さん……大好き」

「ああ、私も一花が大好きだよ」

少し落ち着きを取り戻したのか、さっきまでの不安げな表情に赤みがさしている。
よかった。
温泉旅行では不安にさせたりしないようにしないとな。

「ああ、そうだ。一花、今日アプリを使って服を買っただろう?」

「――っ、はい。ごめんなさい……」

「ふふっ。なんで謝るんだ? 私は一花が自分で選んで注文できたことを喜んでいるんだぞ」

「ほんとう?」

「ああ、本当だとも。さっき、蓮見さんとぬいぐるみのことについて話をしたと言っただろう? その時に一花が注文した服を持ってきてくださったんだ。ちょっと待っていてくれ」

一花を抱きしめるために床に置いた紙袋を取り、一花に手渡した。

「どんな服を選んだんだ? 蓮見さんに聞いても、一緒に開けて楽しんでくれと言われたから気になっていたんだ」

「あの、尚孝さんが見つけてくれて……すっごく可愛くて……」

「そうか。じゃあ、楽しみだな」

勝手に買ったことを咎められると思っていたのだろう。
一花が選んだものを見るのが楽しみだと伝えるとパァーッと花が綻ぶような笑顔を見せて、箱を開き始めた。

「これです……」

「――っ!!! これは……可愛いな」

出てきたのは、灰色の長い耳が付いたフード付きの可愛らしいパーカー。

「はい。グリとお揃いだねって……ほら、見てください」

そう言ってフード部分だけを頭に被って見せた一花の頭には、可愛いウサギの耳がついている。

「くっ――!! あ、ああ……よく似合ってる!!」

あまりの可愛さに大声を出してしまいそうになるのを必死に抑えながら感想を伝えると、一花は嬉しそうに笑った。

「今度、お出かけするときにもこれ着ていっていいですか?」

「んっ? ああ、そうだな。いいぞ」

そう言いつつ、本当は誰にも見せたくないと思ってしまった。
でも可愛い一花を見せびらかしたい気持ちもある。
なんとも言えない気持ちを抑えながら、ウサギの服に身を包んだ一花を抱きしめた。


<side志摩>

「――というわけで、志摩くんにも一緒に××県までついてきてほしいんだが、大丈夫か? ああ、谷垣くんも一緒に連れてきて構わないぞ。一花を守るために人数が多い方が安心だからな」

「はい。そういうことでしたら喜んでお供いたします。そのぬいぐるみ作家さんにはご連絡されたんですか?」

「ああ、喜んで受け入れてくれたよ。一花に会えるのを楽しみにしていると言ってくれたから大丈夫だろう。蓮見さんの方にも連絡したから旅館の予約も問題ない」

「会長に秘書のようなお仕事をさせて申し訳ありません」

「いや、気にすることはない。私が休日の志摩くんについてきてほしいと頼んでいるんだからな」

「今回は未知子さんも同行されるのですか?」

「そのつもりだったんだが、大事な用事があるとかで今回は私たちだけで行くことになったんだ。一花も残念がっていたんだが、相手方の都合もあるから日程調整が難しくてね」

「そうなんですね。承知しました」

未知子さんは会長と一花さんに遠慮したのか?
いや、もしかしたらもっと違う理由があるのかも……。

私は未知子さんのことが気になりつつも、その日に向けて準備を開始した。
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