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今でもずっと……
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<side未知子>
伊月くんが着物かドレスかどちらを選ぶか……ただそれだけのことで、こんなにも一喜一憂するような罰ゲームを考えるなんて、さすが絢斗くんね。
愛しい旦那さまたちにキスをしているのが、こういうことには不慣れな子たちばかりというのは狙い通りなのかもしれない。
でも、本当に罰ゲームを受けるのは名前を呼ばれなかった旦那さまたちよね。
このままだとせっかく盛り上がったこのゲームも残念な感じで終わってしまいそう。
さて、どうしようかしら。
やっぱりここはフランに頑張ってもらおうかしら。
一花くんと直純くんが無事に罰ゲームを終えて、嬉しそうに征哉と昇くんが席に戻っていく。
直純くんはまだ真っ赤な顔をして、一花くんの隣に腰を下ろした。
それを見届けてから、私はそっと伊月くんの元に近づいた。
「ねぇ、伊月くん。あのね……。できるかしら?」
「ああ、なるほど……はい。大丈夫です」
伊月くんは嬉しそうにグリとフランのいるサークルに近づくと、フランに餌をあげて指示を出した。
そして、サークルを開けるとフランが嬉しそうに蓮見さんの元に駆けて行った。
「わうっ、わうっ!」
「おおっ、どうした?」
ふふっ。蓮見さんって少し威圧を放っていそうな鋭い表情をなさっているけれど、浅香さんと話していた時は本当に穏やかで優しげな顔つきだったし、一花くんの元にグリを連れてきた時も、一花くんが飼育員さんと間違えてしまうくらい優しい人だったって話していたから、実際にはとっても優しい人なのよね。
ほら、フランが突然やってきて服を引っ張っても無理やり引き離しもしないわ。
それどころか、優しくフランの気持ちを聞こうとしている。
そんな蓮見さんの姿に、浅香さんも微笑ましそうに見つめている。
本当にお似合いのカップル。
「わうーっ!」
「ちょっ、ちょっと待てっ」
「わうっ!」
「わかった、わかった!」
結局フランに引っ張られるように浅香さんの元にやってきた蓮見さんを見て、浅香さんはどうしたらいいのかとちょっと戸惑っているみたい。
「あらあら、もしかしてフランは浅香さんにもキスを見せて欲しいんじゃないかしら?」
「わんっ!!」
「ええっ?!」
驚く浅香さんを前に、蓮見さんはとてつもなく嬉しそうな笑顔を見せた。
「敬介……フランがこう言ってるよ」
「――っ、周平さんったら!」
「だめか?」
「だめ……じゃないから、困ってます」
「えっ――んっ!!」
浅香さんは真っ赤な顔をしながら、蓮見さんと言葉を交わすと、蓮見さんの首に腕を回し思いっきり背伸びをして唇にそっと自分のそれを当てた。
その瞬間、一花くんたちから
「わぁーっ!!」
と歓声が上がる。
その声に満足そうにフランはサークルに戻って行くと、伊月くんがフランの頭を優しく撫でて褒めていた。
私はしっかりと二人のキスを写真におさめて大満足だ。
「伊月くん、ありがとう」
「いえ。幸せそうで嬉しいです」
「伊月くんもどう?」
「えっ、でも……僕は……」
「甲斐さんも喜ぶんじゃないかしら? ねぇ、フラン」
「わふっ!!」
「ほら、こう言ってるわよ」
そういうと、伊月くんは顔を真っ赤にしながらも、
「あ、あの……慎一さんっ!」
と声を掛けた。
「えっ……」
まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのかしら?
驚きの声を上げつつ、甲斐さんが伊月くんの元に走ってきた。
「伊月……」
「慎一さん……」
真っ赤な顔で背伸びをする伊月くんに、甲斐さんの方から顔を寄せると、ちゅっと唇が重なった。
とっても可愛いキスに近くにいた一花くんと直純くんは、
「素敵……っ」
とうっとりとした様子で呟いていた。
二人の甘い時間が終わると、すかさず絢斗くんが
「敬介くんと伊月くんもキスしたなら、尚孝くんもしないとね」
と声をかける。
「えっ、でも……」
「あら、このまま志摩くんだけキスしてもらえなかったら可哀想よ」
「――っ!!」
私の言葉に尚孝くんがチラリとあちらをみると、志摩くんが嬉しそうに尚孝くんを見つめているのがわかる。
これはしないわけにはいかないわよね。
尚孝くんは意を決したようにその場に立ち上がり、
「ゆ、唯人さんっ!」
と声をかけた。
羽でも生えたかのように嬉しそうにやってきた志摩くんは、
「良かった。尚孝さん、ずっと待ってました」
と幸せそうに笑顔を見せた。
「あの、さっきのプロポーズ……嬉しかったです」
「尚孝さん……」
「唯人さん、大好きです」
尚孝くんが背伸びをするのと、志摩くんが顔を近づけるのがピッタリで、まるで映画のワンシーンでも見ているようなとても綺麗なキスだった。
あまりにも綺麗すぎて、一花くんはもちろん直純くんも他のみんなも二人のキスに見入ってしまっている。
ただただ見守るように二人のキスを見ていると、突然の
「わんっ、わんっ!!」
というフランの大きな鳴き声に尚孝くんがびっくりしてサッと志摩くんから離れた。
あらあら、志摩くんったら名残惜しそう。
でも幸せな二人を見られて良かったわ。
もちろん、この二人もバッチリ撮影済み。
「最後は、絢斗くんね」
「えっ?」
「そうですよ、教授もしないと! 磯山先生がお待ちですよ!」
まだほんのりと頬を染めたまま、浅香さんが声を上げると、
「熟年夫夫のキス、見せてください!」
と有原くんもそれに便乗する。
「パパとあやちゃんのキス、見たいです!」
直純くんまでもそんなことを言ってきて、絢斗くんはほんの少し照れながらも、
「卓さんっ」
と声を掛けた。
サッと駆け寄ってきた磯山さんは、
「もう呼ばれないのかと心配したよ」
と冗談ぽく言っていたけれど、あれは本心なのかもしれないわね。
「卓さん、愛してます」
「絢斗……」
慣れた様子でお互いに顔を近づけてキスをする。
その無駄のない流れるようなキスに、つい私も見入ってしまった。
ああ、素敵ね。
愛する人とキスできるって。
玄哉さんも今、これを見ているかしら?
夢でもいいから出てきて、私にもキスさせてちょうだい。
玄哉さん……今でも、ずっと愛してるわ。
伊月くんが着物かドレスかどちらを選ぶか……ただそれだけのことで、こんなにも一喜一憂するような罰ゲームを考えるなんて、さすが絢斗くんね。
愛しい旦那さまたちにキスをしているのが、こういうことには不慣れな子たちばかりというのは狙い通りなのかもしれない。
でも、本当に罰ゲームを受けるのは名前を呼ばれなかった旦那さまたちよね。
このままだとせっかく盛り上がったこのゲームも残念な感じで終わってしまいそう。
さて、どうしようかしら。
やっぱりここはフランに頑張ってもらおうかしら。
一花くんと直純くんが無事に罰ゲームを終えて、嬉しそうに征哉と昇くんが席に戻っていく。
直純くんはまだ真っ赤な顔をして、一花くんの隣に腰を下ろした。
それを見届けてから、私はそっと伊月くんの元に近づいた。
「ねぇ、伊月くん。あのね……。できるかしら?」
「ああ、なるほど……はい。大丈夫です」
伊月くんは嬉しそうにグリとフランのいるサークルに近づくと、フランに餌をあげて指示を出した。
そして、サークルを開けるとフランが嬉しそうに蓮見さんの元に駆けて行った。
「わうっ、わうっ!」
「おおっ、どうした?」
ふふっ。蓮見さんって少し威圧を放っていそうな鋭い表情をなさっているけれど、浅香さんと話していた時は本当に穏やかで優しげな顔つきだったし、一花くんの元にグリを連れてきた時も、一花くんが飼育員さんと間違えてしまうくらい優しい人だったって話していたから、実際にはとっても優しい人なのよね。
ほら、フランが突然やってきて服を引っ張っても無理やり引き離しもしないわ。
それどころか、優しくフランの気持ちを聞こうとしている。
そんな蓮見さんの姿に、浅香さんも微笑ましそうに見つめている。
本当にお似合いのカップル。
「わうーっ!」
「ちょっ、ちょっと待てっ」
「わうっ!」
「わかった、わかった!」
結局フランに引っ張られるように浅香さんの元にやってきた蓮見さんを見て、浅香さんはどうしたらいいのかとちょっと戸惑っているみたい。
「あらあら、もしかしてフランは浅香さんにもキスを見せて欲しいんじゃないかしら?」
「わんっ!!」
「ええっ?!」
驚く浅香さんを前に、蓮見さんはとてつもなく嬉しそうな笑顔を見せた。
「敬介……フランがこう言ってるよ」
「――っ、周平さんったら!」
「だめか?」
「だめ……じゃないから、困ってます」
「えっ――んっ!!」
浅香さんは真っ赤な顔をしながら、蓮見さんと言葉を交わすと、蓮見さんの首に腕を回し思いっきり背伸びをして唇にそっと自分のそれを当てた。
その瞬間、一花くんたちから
「わぁーっ!!」
と歓声が上がる。
その声に満足そうにフランはサークルに戻って行くと、伊月くんがフランの頭を優しく撫でて褒めていた。
私はしっかりと二人のキスを写真におさめて大満足だ。
「伊月くん、ありがとう」
「いえ。幸せそうで嬉しいです」
「伊月くんもどう?」
「えっ、でも……僕は……」
「甲斐さんも喜ぶんじゃないかしら? ねぇ、フラン」
「わふっ!!」
「ほら、こう言ってるわよ」
そういうと、伊月くんは顔を真っ赤にしながらも、
「あ、あの……慎一さんっ!」
と声を掛けた。
「えっ……」
まさか自分が呼ばれるとは思っていなかったのかしら?
驚きの声を上げつつ、甲斐さんが伊月くんの元に走ってきた。
「伊月……」
「慎一さん……」
真っ赤な顔で背伸びをする伊月くんに、甲斐さんの方から顔を寄せると、ちゅっと唇が重なった。
とっても可愛いキスに近くにいた一花くんと直純くんは、
「素敵……っ」
とうっとりとした様子で呟いていた。
二人の甘い時間が終わると、すかさず絢斗くんが
「敬介くんと伊月くんもキスしたなら、尚孝くんもしないとね」
と声をかける。
「えっ、でも……」
「あら、このまま志摩くんだけキスしてもらえなかったら可哀想よ」
「――っ!!」
私の言葉に尚孝くんがチラリとあちらをみると、志摩くんが嬉しそうに尚孝くんを見つめているのがわかる。
これはしないわけにはいかないわよね。
尚孝くんは意を決したようにその場に立ち上がり、
「ゆ、唯人さんっ!」
と声をかけた。
羽でも生えたかのように嬉しそうにやってきた志摩くんは、
「良かった。尚孝さん、ずっと待ってました」
と幸せそうに笑顔を見せた。
「あの、さっきのプロポーズ……嬉しかったです」
「尚孝さん……」
「唯人さん、大好きです」
尚孝くんが背伸びをするのと、志摩くんが顔を近づけるのがピッタリで、まるで映画のワンシーンでも見ているようなとても綺麗なキスだった。
あまりにも綺麗すぎて、一花くんはもちろん直純くんも他のみんなも二人のキスに見入ってしまっている。
ただただ見守るように二人のキスを見ていると、突然の
「わんっ、わんっ!!」
というフランの大きな鳴き声に尚孝くんがびっくりしてサッと志摩くんから離れた。
あらあら、志摩くんったら名残惜しそう。
でも幸せな二人を見られて良かったわ。
もちろん、この二人もバッチリ撮影済み。
「最後は、絢斗くんね」
「えっ?」
「そうですよ、教授もしないと! 磯山先生がお待ちですよ!」
まだほんのりと頬を染めたまま、浅香さんが声を上げると、
「熟年夫夫のキス、見せてください!」
と有原くんもそれに便乗する。
「パパとあやちゃんのキス、見たいです!」
直純くんまでもそんなことを言ってきて、絢斗くんはほんの少し照れながらも、
「卓さんっ」
と声を掛けた。
サッと駆け寄ってきた磯山さんは、
「もう呼ばれないのかと心配したよ」
と冗談ぽく言っていたけれど、あれは本心なのかもしれないわね。
「卓さん、愛してます」
「絢斗……」
慣れた様子でお互いに顔を近づけてキスをする。
その無駄のない流れるようなキスに、つい私も見入ってしまった。
ああ、素敵ね。
愛する人とキスできるって。
玄哉さんも今、これを見ているかしら?
夢でもいいから出てきて、私にもキスさせてちょうだい。
玄哉さん……今でも、ずっと愛してるわ。
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