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試してみようか?
「じゃあこっちも食べてみて」
「えっ」
驚いている間に、おかずが差し出される。
それからも食べたいと思ったものを次々に差し出されて、俺はまるで雛のようにご飯を食べさせられていた。
「あの、先生も食べてください」
「大丈夫。ちゃんと食べてるよ。ほら」
先生の器を見せられる。
もうほとんどおかずは無くなっている。
「ほんとだ……なんで……?」
いつの間に食べていたのかもわからない。
それだけ、俺が先生に気を取られてたってことだ。
「あっ。ほら、口元」
「え?」
不意に顔を覗き込まれて、動きが止まる。
「ソース、ついてるよ」
「あ、すみま――」
言い終わる前に、先生の顔がスッと近づいた。
びくっと身体が跳ねる。
「ん……」
ちゅっと唇が重なったと思ったら、そのまま舌で舐め取られる。
何が起こっているのかわからなくて、頭が真っ白になった。
「美味しいな」
ゆっくりと離れていった先生が、さらりとそんなことを言う。
余計にどうしていいかわからない。
「な、なに言ってるんですか……っ」
顔が熱くて仕方ない。まともに目も見られない。
「嫌だったか?」
まっすぐに見つめられて、言葉が詰まる。
「嫌じゃ、ないです……」
やっとの思いでそういうと、先生はふっと目を細めた。
「よかった」
その声があまりにも優しくて、胸がぎゅっと締め付けられる。
食事を終えても、さっきの感触が頭から離れない。
落ち着こうとしても全然無理だ。
「隼人くん」
「は、はい」
呼ばれるだけで、びくっとしてしまう。
「さっきの続き、してもいいか?」
どくん、と大きく心臓が跳ねた。
正直いうと、まだ心の準備ができていない。
しかもさっきのキスで、緊張が増してしまっている。
でも……拒みたくない。
「は、はい……」
少し震える声で小さく返事をした瞬間、そっと抱き寄せられる。
今度はさっきよりも深く、長く触れられるキス。
息がうまくできなくて、無意識に先生の服を掴んでいた。
「隼人くん……」
名前を呼ばれて、さらに身体が熱くなる。
「これ以上は、場所を変えたほうがいいな」
先生の低くドキドキする声に、理性が揺らぐ。
「寝室に行こう」
その言葉に、今度ははっきりと意味がわかってしまう。
それでもやっぱり拒むなんてできなかった。
「はい……」
小さく答えた瞬間、ふわりと身体が浮いた。
「えっ……」
抱き上げられて、思わず先生の首に腕を回す。
「アレックス。部屋に行ってろ」
先生の低い声に反応して、アレックスが素直に部屋へ走っていく。
その背中を見送りながら、俺はもう逃げ場がないことを理解した。
先生の腕の中で、心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
そして、そのまま寝室へ運ばれていった。
昨日、一緒に寝ていたベッドが目の前に現れて、一気に緊張が襲ってきた。
「あ、あの……このまま?」
「ああ、私はそれで構わないが、どうした? 風呂に入りたいか?」
そう尋ねられて、なんと答えるべきか迷ってしまう
こういうときって、先に風呂に入るもの?
それともこの流れに乗るものなのか……
経験がないから、どうしていいいかわからない。
「どうした?」
「あの……こういうときって、どうしたらいいんですか……?」
「えっ?」
「ごめんなさい……俺、何もわからなくて……」
呆れられただろうか。
この歳になって、俺は何も知らない。
恥ずかしくて先生の胸元で顔を隠した。
すると、先生がふっと笑った気がした。
「謝ることはないよ」
優しい声が聞こえて、少しだけ緊張がほぐれる。
「でも……先生は慣れてるんですよね」
ぽつりとそう言ってしまってから、しまったと思った。
変な言い方をして、怒らせたかもしれない。
けれど先生は、少しだけ間を置いてから答えた。
「慣れているように見えるか?」
「えっ、あの……」
恋人はいないと言っていたけれど、これまでの人生でずっといなかったとは思えない。
「先生、かっこいいから……」
「隼人くんにそう言ってもらえるのは嬉しいが、答えはノーだ。知識としてはあるけど、実際にそういう意味での経験はないよ」
「うそ……っ」
「嘘かどうか、試してみようか」
そういうと、先生は俺の耳元で囁いた。
「一緒に、風呂に入ろう」
その甘い声に、誘われるように俺は小さく頷いた。
「えっ」
驚いている間に、おかずが差し出される。
それからも食べたいと思ったものを次々に差し出されて、俺はまるで雛のようにご飯を食べさせられていた。
「あの、先生も食べてください」
「大丈夫。ちゃんと食べてるよ。ほら」
先生の器を見せられる。
もうほとんどおかずは無くなっている。
「ほんとだ……なんで……?」
いつの間に食べていたのかもわからない。
それだけ、俺が先生に気を取られてたってことだ。
「あっ。ほら、口元」
「え?」
不意に顔を覗き込まれて、動きが止まる。
「ソース、ついてるよ」
「あ、すみま――」
言い終わる前に、先生の顔がスッと近づいた。
びくっと身体が跳ねる。
「ん……」
ちゅっと唇が重なったと思ったら、そのまま舌で舐め取られる。
何が起こっているのかわからなくて、頭が真っ白になった。
「美味しいな」
ゆっくりと離れていった先生が、さらりとそんなことを言う。
余計にどうしていいかわからない。
「な、なに言ってるんですか……っ」
顔が熱くて仕方ない。まともに目も見られない。
「嫌だったか?」
まっすぐに見つめられて、言葉が詰まる。
「嫌じゃ、ないです……」
やっとの思いでそういうと、先生はふっと目を細めた。
「よかった」
その声があまりにも優しくて、胸がぎゅっと締め付けられる。
食事を終えても、さっきの感触が頭から離れない。
落ち着こうとしても全然無理だ。
「隼人くん」
「は、はい」
呼ばれるだけで、びくっとしてしまう。
「さっきの続き、してもいいか?」
どくん、と大きく心臓が跳ねた。
正直いうと、まだ心の準備ができていない。
しかもさっきのキスで、緊張が増してしまっている。
でも……拒みたくない。
「は、はい……」
少し震える声で小さく返事をした瞬間、そっと抱き寄せられる。
今度はさっきよりも深く、長く触れられるキス。
息がうまくできなくて、無意識に先生の服を掴んでいた。
「隼人くん……」
名前を呼ばれて、さらに身体が熱くなる。
「これ以上は、場所を変えたほうがいいな」
先生の低くドキドキする声に、理性が揺らぐ。
「寝室に行こう」
その言葉に、今度ははっきりと意味がわかってしまう。
それでもやっぱり拒むなんてできなかった。
「はい……」
小さく答えた瞬間、ふわりと身体が浮いた。
「えっ……」
抱き上げられて、思わず先生の首に腕を回す。
「アレックス。部屋に行ってろ」
先生の低い声に反応して、アレックスが素直に部屋へ走っていく。
その背中を見送りながら、俺はもう逃げ場がないことを理解した。
先生の腕の中で、心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
そして、そのまま寝室へ運ばれていった。
昨日、一緒に寝ていたベッドが目の前に現れて、一気に緊張が襲ってきた。
「あ、あの……このまま?」
「ああ、私はそれで構わないが、どうした? 風呂に入りたいか?」
そう尋ねられて、なんと答えるべきか迷ってしまう
こういうときって、先に風呂に入るもの?
それともこの流れに乗るものなのか……
経験がないから、どうしていいいかわからない。
「どうした?」
「あの……こういうときって、どうしたらいいんですか……?」
「えっ?」
「ごめんなさい……俺、何もわからなくて……」
呆れられただろうか。
この歳になって、俺は何も知らない。
恥ずかしくて先生の胸元で顔を隠した。
すると、先生がふっと笑った気がした。
「謝ることはないよ」
優しい声が聞こえて、少しだけ緊張がほぐれる。
「でも……先生は慣れてるんですよね」
ぽつりとそう言ってしまってから、しまったと思った。
変な言い方をして、怒らせたかもしれない。
けれど先生は、少しだけ間を置いてから答えた。
「慣れているように見えるか?」
「えっ、あの……」
恋人はいないと言っていたけれど、これまでの人生でずっといなかったとは思えない。
「先生、かっこいいから……」
「隼人くんにそう言ってもらえるのは嬉しいが、答えはノーだ。知識としてはあるけど、実際にそういう意味での経験はないよ」
「うそ……っ」
「嘘かどうか、試してみようか」
そういうと、先生は俺の耳元で囁いた。
「一緒に、風呂に入ろう」
その甘い声に、誘われるように俺は小さく頷いた。
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