17 / 22
番外編
もし、あの時ひかりと出会わずに待ち合わせ場所から離れていたら…… 6
「わっ、このスポンジ。ふわふわ」
一口食べるだけで目を輝かせる。
本当に可愛い。
「こんな美味しいケーキ、初めて食べました」
「そうか、じゃあいっぱい食べていいよ」
榎木くんが教えてくれたケーキ屋を覚えていて良かった。
彼には今度何か差し入れでもしておこう。
「あ、でも先生も食べてください」
さっと私の目にケーキ皿を移動させようとしたから、咄嗟に口を開けてみた。
成瀬が口を開けると成瀬の愛しい子が嬉しそうに食べさせてあげていると、真壁から聞いていたからだ。
「えっ?」
「ひかりくんが食べさせて」
少しでもひかりくんが私に心を開いてくれるように、そして私がひかりくんをちゃんと思っている事をわかってもらいたくてそんなことを言ってみた。
ひかりくんが嬉しそうに私に食べさせてくれたら嬉しいんだが……
そんな期待もしつつ口を開けて待っていると、頬を真っ赤に染めながらひかりくんはケーキを掬い、私の口の前に運んでくれた。
「ど、どうぞ」
「ありがとう。いただくよ」
ケーキがのったフォークをパクリと口に咥えると、今まで味わったことがないほど美味しいケーキの味に驚いた。
「うん、美味しいな」
きっとひかりくんと同じフォークを使って食べさせてくれたからだろう。
すると、ひかりくんは私をじっとみてそっと指を伸ばしてきた。
そしてその震える指が私の唇に触れる。
「あ、あの……クリームが……」
そう言いながら、私の唇を拭ってくれるがなんも付いていないことはわかっている。
だからわざとイタズラしてみた。
わざと口を開けて、ひかりくんの指をちゅっと舐めてみた。
「ひゃっ」
驚いて咄嗟に指を引き抜こうとするひかりくんの手をとって、優しく彼の身体を抱き寄せた。
私の膝にのせると、照れたように俯く。
「ごめん、イタズラしすぎた?」
「い、いえ。そうじゃなくて……ドキドキしちゃって……」
「よかった、嫌われたんじゃなくて」
そう告げると、パッと顔を上げて私を見る。
「先生のこと、嫌いになったりしません。だって……」
そこまで言いかけて、ひかりくんは話すのをやめてしまった。
「だって、なに? 何かある?」
「あの、僕のこと……気持ち悪いって思うかも……」
「ひかりくんをそんなふうに思うことはないよ」
そう言ったけれど、なぜか不安げな様子だ。
「どうしてそんなに不安に思っているかわからないけれど、私は絶対にひかりくんに嫌な感情を抱くことはないよ。私のいうことが信じられないかな?」
彼を抱きしめながら告げると、首を小さく横に振り「信じてます……」と言ってくれた。
「じゃあ、ケーキを食べたら少し二人で話そうか」
可愛らしく頷く彼の口にケーキを運んで、楽しい時間を過ごした。
そうしてケーキを食べ終わってから彼を抱きかかえたまま、ソファに移動した。
「さっきの話もだけど……ひかりくんには何か不安なことがあるのかな? よかったら今日、東京に出てきた理由とか聞いてもいい?」
私の問いかけにピクリと身体を震わせる。
「言いたくないから言わなくてもいいよ。ただ、心配なんだ。ひかりくんに何か不安なことがあるなら私が助けたい」
「せんせぇ……」
よほど不安なのだろう。
涙を潤ませて、私を見上げる。
「大丈夫。どんな話を聞いても私はひかりくんを守るよ」
強く抱きしめると、彼はぽつりぽつりと話し始めた。
「僕……男の人が好きで、自分の中に理想の男性像まで作っていつか心から愛してもらえる日が来るのを待ってたんです。でも先日……実家の工場が経営不振で、融資をしてくれる人の娘さんと結婚するようにって両親に勝手に決められてしまって……」
今時そんな話があるのか……
男性が好きだと自覚があるのに女性と結婚なんて……自分を生涯偽ることになるのは辛いだろうな。
「それは辛かったね。やっぱり断れなかった?」
「大学もすぐに辞めて結婚するようにって言われたのをなんとか大学卒業まで待ってもらうのが精一杯で、それ以上は言えなかったです」
それだけ強いプレッシャーを与えられていたんだろう。
寝不足以外に食欲がなかったのはそのせいか。
「それで、僕……なんとか結婚させられる前に、男の人とえっちしたくて……」
なるほど。さっき、突然私に「抱いてもらえますか?」って言ってきたのは、それか。
「それで、東京に出てきたのかな?」
逮捕された男に騙されて東京に出てきたと真壁が話していたが、ひかりくんは自分から望んで来たようだ。
それならいったい何を騙されたんだろう?
「はい。ゲイアプリで知り合った人が、十万円払ったらえっちしてくれるって言ってたからそれで約束して……」
「えっ? ひかりくんがお金を払う予定だった?」
「は、はい。だって僕なんか誰も相手にしてくれないから……」
その言葉に私は唖然とするしかなかった。
一口食べるだけで目を輝かせる。
本当に可愛い。
「こんな美味しいケーキ、初めて食べました」
「そうか、じゃあいっぱい食べていいよ」
榎木くんが教えてくれたケーキ屋を覚えていて良かった。
彼には今度何か差し入れでもしておこう。
「あ、でも先生も食べてください」
さっと私の目にケーキ皿を移動させようとしたから、咄嗟に口を開けてみた。
成瀬が口を開けると成瀬の愛しい子が嬉しそうに食べさせてあげていると、真壁から聞いていたからだ。
「えっ?」
「ひかりくんが食べさせて」
少しでもひかりくんが私に心を開いてくれるように、そして私がひかりくんをちゃんと思っている事をわかってもらいたくてそんなことを言ってみた。
ひかりくんが嬉しそうに私に食べさせてくれたら嬉しいんだが……
そんな期待もしつつ口を開けて待っていると、頬を真っ赤に染めながらひかりくんはケーキを掬い、私の口の前に運んでくれた。
「ど、どうぞ」
「ありがとう。いただくよ」
ケーキがのったフォークをパクリと口に咥えると、今まで味わったことがないほど美味しいケーキの味に驚いた。
「うん、美味しいな」
きっとひかりくんと同じフォークを使って食べさせてくれたからだろう。
すると、ひかりくんは私をじっとみてそっと指を伸ばしてきた。
そしてその震える指が私の唇に触れる。
「あ、あの……クリームが……」
そう言いながら、私の唇を拭ってくれるがなんも付いていないことはわかっている。
だからわざとイタズラしてみた。
わざと口を開けて、ひかりくんの指をちゅっと舐めてみた。
「ひゃっ」
驚いて咄嗟に指を引き抜こうとするひかりくんの手をとって、優しく彼の身体を抱き寄せた。
私の膝にのせると、照れたように俯く。
「ごめん、イタズラしすぎた?」
「い、いえ。そうじゃなくて……ドキドキしちゃって……」
「よかった、嫌われたんじゃなくて」
そう告げると、パッと顔を上げて私を見る。
「先生のこと、嫌いになったりしません。だって……」
そこまで言いかけて、ひかりくんは話すのをやめてしまった。
「だって、なに? 何かある?」
「あの、僕のこと……気持ち悪いって思うかも……」
「ひかりくんをそんなふうに思うことはないよ」
そう言ったけれど、なぜか不安げな様子だ。
「どうしてそんなに不安に思っているかわからないけれど、私は絶対にひかりくんに嫌な感情を抱くことはないよ。私のいうことが信じられないかな?」
彼を抱きしめながら告げると、首を小さく横に振り「信じてます……」と言ってくれた。
「じゃあ、ケーキを食べたら少し二人で話そうか」
可愛らしく頷く彼の口にケーキを運んで、楽しい時間を過ごした。
そうしてケーキを食べ終わってから彼を抱きかかえたまま、ソファに移動した。
「さっきの話もだけど……ひかりくんには何か不安なことがあるのかな? よかったら今日、東京に出てきた理由とか聞いてもいい?」
私の問いかけにピクリと身体を震わせる。
「言いたくないから言わなくてもいいよ。ただ、心配なんだ。ひかりくんに何か不安なことがあるなら私が助けたい」
「せんせぇ……」
よほど不安なのだろう。
涙を潤ませて、私を見上げる。
「大丈夫。どんな話を聞いても私はひかりくんを守るよ」
強く抱きしめると、彼はぽつりぽつりと話し始めた。
「僕……男の人が好きで、自分の中に理想の男性像まで作っていつか心から愛してもらえる日が来るのを待ってたんです。でも先日……実家の工場が経営不振で、融資をしてくれる人の娘さんと結婚するようにって両親に勝手に決められてしまって……」
今時そんな話があるのか……
男性が好きだと自覚があるのに女性と結婚なんて……自分を生涯偽ることになるのは辛いだろうな。
「それは辛かったね。やっぱり断れなかった?」
「大学もすぐに辞めて結婚するようにって言われたのをなんとか大学卒業まで待ってもらうのが精一杯で、それ以上は言えなかったです」
それだけ強いプレッシャーを与えられていたんだろう。
寝不足以外に食欲がなかったのはそのせいか。
「それで、僕……なんとか結婚させられる前に、男の人とえっちしたくて……」
なるほど。さっき、突然私に「抱いてもらえますか?」って言ってきたのは、それか。
「それで、東京に出てきたのかな?」
逮捕された男に騙されて東京に出てきたと真壁が話していたが、ひかりくんは自分から望んで来たようだ。
それならいったい何を騙されたんだろう?
「はい。ゲイアプリで知り合った人が、十万円払ったらえっちしてくれるって言ってたからそれで約束して……」
「えっ? ひかりくんがお金を払う予定だった?」
「は、はい。だって僕なんか誰も相手にしてくれないから……」
その言葉に私は唖然とするしかなかった。
あなたにおすすめの小説
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
冷血宰相の秘密は、ただひとりの少年だけが知っている
春夜夢
BL
「――誰にも言うな。これは、お前だけが知っていればいい」
王国最年少で宰相に就任した男、ゼフィルス=ル=レイグラン。
冷血無慈悲、感情を持たない政の化け物として恐れられる彼は、
なぜか、貧民街の少年リクを城へと引き取る。
誰に対しても一切の温情を見せないその男が、
唯一リクにだけは、優しく微笑む――
その裏に隠された、王政を揺るがす“とある秘密”とは。
孤児の少年が踏み入れたのは、
権謀術数渦巻く宰相の世界と、
その胸に秘められた「決して触れてはならない過去」。
これは、孤独なふたりが出会い、
やがて世界を変えていく、
静かで、甘くて、痛いほど愛しい恋の物語。
春野くんち―僕の日常は、過保護な兄弟たちに囲まれている―
猫に恋するワサビ菜
BL
春野家の朝は、いつも賑やかで少しだけ過保護。
穏やかで包容力のある長男・千隼。
明るくチャラめだが独占欲を隠さない次男・蓮。
家事万能でツンデレ気味な三男・凪。
素直になれないクールな末っ子・琉生。
そして、四人の兄弟から猫のように可愛がられている四男の乃空。
自由奔放な乃空の振る舞いに、兄たちは呆れながらも、とろけるような笑顔で彼を甘やかす。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!