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俺の可愛いつがい 11
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「観月、あの部屋はなんだ? 前からあんなところに部屋なんてあったか?」
空良の件で観月の事務所に寄った日、観月のデスクの近くに新たな部屋ができていることに気づき尋ねた。
「あれは理央の部屋だよ。俺が仕事の間、あそこで過ごしてもらっているんだ。一人で家に居させるのは可哀想だからな」
当然のように言い切る観月に驚いたものの、確かに俺も一人では居させたくないと思ってしまった。
院長室に空良のための部屋を作るのもいいかもしれない。
そのほうがいつでも一緒に居られるな。
一人の時間が好きだった俺が空良とならずっと一緒に居たいと思う。
それは空良が俺にとってこの上なく大事で愛しい相手だからだろう。
「いいことを聞いたよ。俺も早速院長室に空良の部屋を作るよ」
「それがいい。可愛いつがいをそばに置いている方が仕事も捗るぞ」
観月から出た言葉とは思えないほど幸せに満ち溢れているが、俺も空良とつがいになった後は同じようなことを言っているのだろう。
「そういえば、彼の最初のヒートはどこで過ごすつもりなんだ?」
「どこで、って……自分の家に連れて行くつもりだが」
観月からの思いがけない質問に普通に返したが、観月はそれはやめた方がいいと言い出した。
「なんでなんだ?」
「俺は経験したからわかるが、つがいと最初に出会った時のセックスは想像の遥か上だぞ。本当に自分が獣になったような気にさえなる」
観月が、獣……。
想像つかないが、それほどすごい状態になるということなんだろう。
考えてみればあの日、空良の甘い匂いだけでものすごいラット状態に陥ったんだ。
完全にヒート状態になった空良を前にして、一度や二度のセックスで満足するはずがない。
観月が獣なら、俺はどうなるのか……想像するだけでも恐ろしいな。
「理央には栄養剤を飲ませながらセックスしあうが、俺たちαは三日くらいは何も食べずにひたすら欲望の蜜を注ぎ込むだけだ。ようやく四日目に空腹を感じるようになるが、その時につがいを置いて食事を作りにいけるか?」
朝も昼も夜も、寝食を忘れて愛し合ったつがいをベッドに残して、食事を作りにいく?
想像しただけでも無理だと思える。
「いや、おそらく無理だな」
「だろう? だから、もし良かったら俺たちと同じマンションをお前も買わないか?」
観月は理央くんと出会ってから希少αとΩカップル専用のマンションを購入し、そこで愛を育んだ。
「あそこは二十四時間体制でコンシェルジュが常駐しているから、食事を頼めばいつでも部屋に届けてくれる。もちろんデリバリーボックスに届くから顔を会わせることもないし、つがいと離れるのも一瞬だ。それにセキュリティがしっかりしているから、ヒート間近の不安な状態でも一人で居させることができるぞ。俺は理央のヒートの前後も含めた期間だけ暮らすつもりであのマンションを買ったんだ。だから、通常期はこの上の自宅で暮らしているんだよ」
「なるほど、二軒持ちということか。それは悪くないな」
完全に引越しとなるとかなりの手間が取られるが、別宅扱いならその期間に必要なものだけを揃えればいい。
だが、観月がここまで俺にそのマンションを進めるのには他にも理由があるんだろう。
「それで、他の目的はなんだ?」
「ははっ。さすが悠木だな、バレてたのか?」
「お前がそんな熱心に誘ってくるのには他に理由があるとしか考えられないからな」
俺の言葉に観月は笑って教えてくれた。
「理央に友だちを作ってやりたいと思ったんだ。あの子は施設育ちで、ずっと働かされてきたから友だちらしい友だちがいないんだよ。榊くんとはだいぶ仲良くなってきて安心しているが、やっぱり同じ年くらいの友だちも作ってやりたくてな。悠木のつがいなら理央の友人になるのも安心だし、四人で一緒に過ごすのも悪くないだろう? あのマンションなら、セキュリティ万全なΩ専用のゲストルームがあるから俺たち二人がいなくてもそこで遊ばせられるしちょうどいいと思ったんだ」
そういうことか。
空良にも友だちは必要だな。
それが観月の相手なら確かに心配はない。
「あのマンション、審査がかなり厳しい上に、希少αとΩ専用だからまだ部屋は余っているんだよ。だから良かったら考えてみないか? 入居した時から全ての部屋にマルチアングル死角なしカメラが取り付けられているからいつでも映像をチェックできるぞ。もちろんそれのセキュリティも万全だから安心してくれ」
カメラ付きか。それは惹かれるな。
セキュリティに関しては観月が選んだ場所だから万全なのはわかっている。
「それじゃあ購入する方向で話をしに行ってみるよ」
「ああ、決まったら連絡してくれ」
そうして、観月の事務所を出た俺はその足で管理会社に話を聞きに行ったが、俺の名前を聞いただけでマンションのオーナーから直々に購入を認められ、とんとん拍子に決定した。
実はそのマンションのオーナーが恩師の息子である倉橋さん所有のものだったのだ。
かくして、俺は空良と愛を育むためのマンションを手に入れた。
空良との再会の日まであと一週間。
その間に愛し合う準備を万端にしとかないとな。
購入したマンションに初めて入った日に、入居祝いと称してローションとトイレタリー商品、その他もろもろが特大段ボール五箱分、倉橋さんから送られてきた。
さすがにローションの数が多すぎだろうと思ったが、その時の俺はまだつがいと再会した自分の獣具合を知らずにいたにすぎなかった。
空良の件で観月の事務所に寄った日、観月のデスクの近くに新たな部屋ができていることに気づき尋ねた。
「あれは理央の部屋だよ。俺が仕事の間、あそこで過ごしてもらっているんだ。一人で家に居させるのは可哀想だからな」
当然のように言い切る観月に驚いたものの、確かに俺も一人では居させたくないと思ってしまった。
院長室に空良のための部屋を作るのもいいかもしれない。
そのほうがいつでも一緒に居られるな。
一人の時間が好きだった俺が空良とならずっと一緒に居たいと思う。
それは空良が俺にとってこの上なく大事で愛しい相手だからだろう。
「いいことを聞いたよ。俺も早速院長室に空良の部屋を作るよ」
「それがいい。可愛いつがいをそばに置いている方が仕事も捗るぞ」
観月から出た言葉とは思えないほど幸せに満ち溢れているが、俺も空良とつがいになった後は同じようなことを言っているのだろう。
「そういえば、彼の最初のヒートはどこで過ごすつもりなんだ?」
「どこで、って……自分の家に連れて行くつもりだが」
観月からの思いがけない質問に普通に返したが、観月はそれはやめた方がいいと言い出した。
「なんでなんだ?」
「俺は経験したからわかるが、つがいと最初に出会った時のセックスは想像の遥か上だぞ。本当に自分が獣になったような気にさえなる」
観月が、獣……。
想像つかないが、それほどすごい状態になるということなんだろう。
考えてみればあの日、空良の甘い匂いだけでものすごいラット状態に陥ったんだ。
完全にヒート状態になった空良を前にして、一度や二度のセックスで満足するはずがない。
観月が獣なら、俺はどうなるのか……想像するだけでも恐ろしいな。
「理央には栄養剤を飲ませながらセックスしあうが、俺たちαは三日くらいは何も食べずにひたすら欲望の蜜を注ぎ込むだけだ。ようやく四日目に空腹を感じるようになるが、その時につがいを置いて食事を作りにいけるか?」
朝も昼も夜も、寝食を忘れて愛し合ったつがいをベッドに残して、食事を作りにいく?
想像しただけでも無理だと思える。
「いや、おそらく無理だな」
「だろう? だから、もし良かったら俺たちと同じマンションをお前も買わないか?」
観月は理央くんと出会ってから希少αとΩカップル専用のマンションを購入し、そこで愛を育んだ。
「あそこは二十四時間体制でコンシェルジュが常駐しているから、食事を頼めばいつでも部屋に届けてくれる。もちろんデリバリーボックスに届くから顔を会わせることもないし、つがいと離れるのも一瞬だ。それにセキュリティがしっかりしているから、ヒート間近の不安な状態でも一人で居させることができるぞ。俺は理央のヒートの前後も含めた期間だけ暮らすつもりであのマンションを買ったんだ。だから、通常期はこの上の自宅で暮らしているんだよ」
「なるほど、二軒持ちということか。それは悪くないな」
完全に引越しとなるとかなりの手間が取られるが、別宅扱いならその期間に必要なものだけを揃えればいい。
だが、観月がここまで俺にそのマンションを進めるのには他にも理由があるんだろう。
「それで、他の目的はなんだ?」
「ははっ。さすが悠木だな、バレてたのか?」
「お前がそんな熱心に誘ってくるのには他に理由があるとしか考えられないからな」
俺の言葉に観月は笑って教えてくれた。
「理央に友だちを作ってやりたいと思ったんだ。あの子は施設育ちで、ずっと働かされてきたから友だちらしい友だちがいないんだよ。榊くんとはだいぶ仲良くなってきて安心しているが、やっぱり同じ年くらいの友だちも作ってやりたくてな。悠木のつがいなら理央の友人になるのも安心だし、四人で一緒に過ごすのも悪くないだろう? あのマンションなら、セキュリティ万全なΩ専用のゲストルームがあるから俺たち二人がいなくてもそこで遊ばせられるしちょうどいいと思ったんだ」
そういうことか。
空良にも友だちは必要だな。
それが観月の相手なら確かに心配はない。
「あのマンション、審査がかなり厳しい上に、希少αとΩ専用だからまだ部屋は余っているんだよ。だから良かったら考えてみないか? 入居した時から全ての部屋にマルチアングル死角なしカメラが取り付けられているからいつでも映像をチェックできるぞ。もちろんそれのセキュリティも万全だから安心してくれ」
カメラ付きか。それは惹かれるな。
セキュリティに関しては観月が選んだ場所だから万全なのはわかっている。
「それじゃあ購入する方向で話をしに行ってみるよ」
「ああ、決まったら連絡してくれ」
そうして、観月の事務所を出た俺はその足で管理会社に話を聞きに行ったが、俺の名前を聞いただけでマンションのオーナーから直々に購入を認められ、とんとん拍子に決定した。
実はそのマンションのオーナーが恩師の息子である倉橋さん所有のものだったのだ。
かくして、俺は空良と愛を育むためのマンションを手に入れた。
空良との再会の日まであと一週間。
その間に愛し合う準備を万端にしとかないとな。
購入したマンションに初めて入った日に、入居祝いと称してローションとトイレタリー商品、その他もろもろが特大段ボール五箱分、倉橋さんから送られてきた。
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