悠木さんちの王子と可愛い姫 〜寛人と空良が同級生だったら……

波木真帆

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新しい家族

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<side寛海>

「茜音、無理してはいけない。ほら、ベッドに横になって」

「ごめんなさい……私、何もできなくて……」

「何言っているんだ。茜音は私たちの子どもを必死に育ててくれているだろう? それだけで十分だ」

結婚当初からずっと子どもが欲しいと言ってくれていた茜音。
ようやく待望の妊娠となったが、すぐに悪阻が始まり何も食事が取れない状況が続いた。
水すらも受け付けず、元々軽かった体重もみるみる落ちていった。
そのため、点滴で栄養を与える日々。
なんとか水分の多い果物は少し摂れるようになったが、体調の悪さは臨月近くまで続いた。

妊娠は母体との相性もある。
茜音にとって妊娠はかなり過酷なものだろう。
こんなにも酷い悪阻では次の子どもは諦めたほうがいい。
私たちにとって、子どもはお腹にいる子が最初で最後の子どもだ。

だから無事に生まれてきてくれ。
お母さんが必死にお前を育てているんだからな。

ベッドに横たわる茜音のお腹を優しくさすり、私の思いを伝える。
お腹の子どもはわかったとでもいうように元気にお腹を蹴っていた。

それからしばらく経って、出産の時。
茜音の身体への負担を考慮して、帝王切開で出産した。
医師として手術に立ち合わせてもらい、茜音とともに出産の喜びを分かち合った。

茜音の出産から三ヶ月は病院を休業し、全てを茜音の世話と育児に当てた。
幸い、生まれてきた我が子・寛人は母乳もミルクもよく飲んでくれた。
夜泣きもほとんどなく、茜音の術後の経過も良好。

そんな折、友人の久嗣から家族で会わないかと誘いを受けた。
もう一人の友人、秋芳の家族も誘っているという。
私たちは多少のずれはありながらも同学年になる子どもが生まれたこともあって、子ども同士を会わせたいという目的があった。

早速茜音と寛人を連れて食事会開催となったが、久嗣の息子の凌也くん、そして秋芳の息子の直己くんと我が家の寛人はそれぞれが我関せずと言った様子で喧嘩もすることもないが、あまり興味を持っていないように見えた。だが、仲は悪くない。
というわけでそれからしばらくして二度目の食事会が開催されたが、その時久嗣と奥さんの麗花さんが二人の子供を連れてきた。一人は前回もあった凌也くん。そしてもう一人は凌也くんよりかなり小さそうな子。

聞けば、事情があって施設から引き取った子なのだそうだ。
一ヶ月しか月齢が変わらない子らしいが、凌也くんやうちの寛人、直己くんと比べると数ヶ月差があるように感じられる。

私たち三人と、茜音たち奥様組の間にベビーマットとベビーサークルを設置してもらい、そこに四人を寝かせたが、前回誰一人として近づこうともしなかったのに、今回は全く様相が変わっていた。

久嗣の養子となった、理央くんをガッチリと凌也くんが守り、その二人の様子を寛人と直己くんが見つめている。
寛人が理央くんに近づこうとすると、凌也くんは力強く足蹴りで追い払い、直己くんが理央くんに触れようとすると凌也くんがその手を払いのける。

そして、寛人と直己くんが手を出さなくなったところに、凌也くんが理央くんの指や顔を舐め、得意げな顔を寛人と直己くんに見せつける。理央くんはそれを嬉しそうに受け入れていると言った様子だ。

「久嗣……凌也くんはいつもこんな感じなのか?」

「ああ、そうなんだ。理央を一目見た時から執着して離そうとしないよ。あれほど他の子どもに興味を持たなかったのに不思議なくらいだ」

おそらく久嗣もわかっているんだろう。
凌也くんと理央くんが運命で結ばれていることに。

寛人にもそんな相手ができればいいのに……そう思わずにいられない。

食事会で可愛らしい姿を見せてくれた二人のために、私と秋芳は理央くんのお祝いと称して双子用の特別なベビーカーを二種類制作してもらいプレゼントした。

二人がいつでもくっついていられるように縦型と横型のベビーカーを送ったのだが、麗花さんから送られてきた動画を見て、二人……特に凌也くんが大喜びしている様子が伝わってきた。

「素敵なベビーカーね。凌也くんって、本当に理央くんが大好きみたい。うちの寛人にもこんな可愛い妹か弟がいたらいいのに……」

茜音が最後に漏らした言葉は私の心に残り続けた。
あれほど辛い悪阻の日々を過ごし、茜音の命さえも脅かしていたから、もう二人目は望まないと決めている。
でもやはり母として二人の子が欲しいのかもしれない。
それでも私は茜音を失いたくない。
全て私のわがままだが、私はこれから生まれてくる我が子より茜音が大切なんだ。

だから子どもは寛人だけを大切に愛し続けよう。
そう心に決めていた矢先、ある悲しい事件が起こった。

出産を終え、退院を迎えた夫婦が運転する車に信号無視の車が突っ込み、夫婦は即死。
ベビーシートに乗せられていた赤ちゃんだけが即死を免れ、事故現場のすぐ近くにあったうちの病院に運ばれてきた。
小さな小さな赤ちゃんだったが、奇跡的に軽傷で済んだ。
だが、生まれてまだ一週間で両親を失い、そして両親には身寄りがいない。
警察からその事実を聞かされた私は、目の前の小さな赤ちゃんを見て自然と言葉が漏れていた。

「この子は私が引き取って、息子として育てます」

茜音には何も聞かずに決めてしまったが、どうしてもこの子を守らなければいけない。
そんな気持ちでいっぱいになっていた。
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