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届かない人
横断歩道で見た一慶が、私といた時のように嬉しそうだったから……
だから、ショックを受けたのかもしれない。
でも、どうして……そんなの、まるで……
「お父さん。もしかして、誰かに恋してる?」
まるで頭の中を見透かされたような言葉に、一気に混乱した。
「はっ? な、何を、馬鹿なことを。そんなことあるはずないよ」
「なんで?」
真宙のまっすぐな視線に、言葉が詰まる。
「なんでって……この歳だし、恋愛なんて……」
うまく言えない。恋愛なんて、今までしたことがないから、よくわからないと言ったほうが正しいか。
でも、真宙は真剣な表情で見つめている。
「人を好きになるのに性別が関係ないなら、年齢だって関係ないんじゃない?」
「それは、そうだろうけど……」
言葉に詰まり、思わず視線を落とす。
頭の中で、一慶の笑顔や、あの横断歩道の光景がぐるぐると回る。
楽しそうに話す姿が、私といた時の笑顔と重なる。
それが、こんなにも胸を締め付けるなんて……
「お父さん?」
真宙の声に、ハッと我に返る。
気づけば、湯呑みを握りしめたまま、微かに震えていた。
「ごめん、なんでもない」
もしかしたら、私は初めて会った時から一慶を好きになっていたのかもしれない。
でも、一慶にはあの女性がいる。
初めて、恋というものを自覚したその日に、思いが伝わらないことを知るなんて……
胸が苦しい。
「やっぱり、誰か好きな人がいるんじゃない?」
真宙の声は優しいけれど、尋ねる瞳には確かな好奇心が宿っている。
「いるかも、しれない……」
その言葉を口にした途端、胸の奥に小さな熱が広がるのを感じた。
思いがけず、自分の心を認めてしまったような感覚、
でも同時に、後悔と戸惑いも押し寄せる。
あの女性と並んでいる光景が頭から離れない。
楽しそうに笑い、自然に会話を交わす二人はすごくお似合いだった。
手の届かない人に恋するなんて……
「気づかなければよかった……」
「えっ、どうして?」
ポツリと呟いた言葉に、真宙がすぐに反応した。
「伝えたら、思いは通じるかもしれないよ」
「真宙はそうだったかもしれないけど、そうそううまくはいかないものだよ」
私の諦めの混じった言葉に、真宙は小さく頷いた。
「でも、僕は……お父さんが誰かを好きになったなら応援するよ」
その言葉に、胸の奥がギュッと締め付けられる。
優しさが嬉しいのに、同時に心の奥にある痛みも、逃げ場なく押し寄せてくる。
「応援なんて……」
声が震える。でも、言わなければ真宙は諦めてくれないだろう。
「だって、あの人にはもう……」
言葉が途中で止まる。
この思いを認めたくないのに、認めてしまったから余計に苦しい。
真宙は黙ってこちらを見つめている。
何も言わず、ただ静かに私の気持ちを受け止めてくれているようで、少し救われた気がした。
「ご飯、できましたよ」
大我の穏やかな声が、一慶によく似ていて一瞬ドキッとした。
ずっと一慶のことばかり考えているからかもしれない。
食卓に向かう足取りが少しだけ重く感じる。
テーブルに並んだ食事の中に、先日一慶が作ってくれた炊き込みご飯があって、思わず胸がギュッと締め付けられる。あの時の笑顔、あの優しい声、香りまで思い出す。あの時はまだ何も知らず、楽しかった。
「いただきます」
言葉だけはちゃんと出せたけれど、心はまだ追いついていない。
「お父さん、大丈夫?」
真宙が心配そうに声をかける。
せっかく来てくれた息子たちに心配かけっぱなしで何をやっているんだろう。
「大丈だよ。食べよう」
本当は大丈夫じゃない。
だけど、今はこの家族の前で少しでも穏やかでいたい。
一口、また一口と炊き込みご飯を口に運ぶ。
香りも味も、優しくて温かくて、一慶を思い出す。
思わず涙が出そうになるのを必死に堪えた。
すると、胸ポケットからブルブルとスマホが振動する音が聞こえてきた。
「お父さん? スマホ鳴ってるんじゃない?」
「ああ、でも食事中だから」
そう返したけれど、振動音はなかなか止まない。
「何か急用かもよ」
そう言われて、スマホを取り出した。
画面には<水無瀬一慶>の名前が光っていた。
だから、ショックを受けたのかもしれない。
でも、どうして……そんなの、まるで……
「お父さん。もしかして、誰かに恋してる?」
まるで頭の中を見透かされたような言葉に、一気に混乱した。
「はっ? な、何を、馬鹿なことを。そんなことあるはずないよ」
「なんで?」
真宙のまっすぐな視線に、言葉が詰まる。
「なんでって……この歳だし、恋愛なんて……」
うまく言えない。恋愛なんて、今までしたことがないから、よくわからないと言ったほうが正しいか。
でも、真宙は真剣な表情で見つめている。
「人を好きになるのに性別が関係ないなら、年齢だって関係ないんじゃない?」
「それは、そうだろうけど……」
言葉に詰まり、思わず視線を落とす。
頭の中で、一慶の笑顔や、あの横断歩道の光景がぐるぐると回る。
楽しそうに話す姿が、私といた時の笑顔と重なる。
それが、こんなにも胸を締め付けるなんて……
「お父さん?」
真宙の声に、ハッと我に返る。
気づけば、湯呑みを握りしめたまま、微かに震えていた。
「ごめん、なんでもない」
もしかしたら、私は初めて会った時から一慶を好きになっていたのかもしれない。
でも、一慶にはあの女性がいる。
初めて、恋というものを自覚したその日に、思いが伝わらないことを知るなんて……
胸が苦しい。
「やっぱり、誰か好きな人がいるんじゃない?」
真宙の声は優しいけれど、尋ねる瞳には確かな好奇心が宿っている。
「いるかも、しれない……」
その言葉を口にした途端、胸の奥に小さな熱が広がるのを感じた。
思いがけず、自分の心を認めてしまったような感覚、
でも同時に、後悔と戸惑いも押し寄せる。
あの女性と並んでいる光景が頭から離れない。
楽しそうに笑い、自然に会話を交わす二人はすごくお似合いだった。
手の届かない人に恋するなんて……
「気づかなければよかった……」
「えっ、どうして?」
ポツリと呟いた言葉に、真宙がすぐに反応した。
「伝えたら、思いは通じるかもしれないよ」
「真宙はそうだったかもしれないけど、そうそううまくはいかないものだよ」
私の諦めの混じった言葉に、真宙は小さく頷いた。
「でも、僕は……お父さんが誰かを好きになったなら応援するよ」
その言葉に、胸の奥がギュッと締め付けられる。
優しさが嬉しいのに、同時に心の奥にある痛みも、逃げ場なく押し寄せてくる。
「応援なんて……」
声が震える。でも、言わなければ真宙は諦めてくれないだろう。
「だって、あの人にはもう……」
言葉が途中で止まる。
この思いを認めたくないのに、認めてしまったから余計に苦しい。
真宙は黙ってこちらを見つめている。
何も言わず、ただ静かに私の気持ちを受け止めてくれているようで、少し救われた気がした。
「ご飯、できましたよ」
大我の穏やかな声が、一慶によく似ていて一瞬ドキッとした。
ずっと一慶のことばかり考えているからかもしれない。
食卓に向かう足取りが少しだけ重く感じる。
テーブルに並んだ食事の中に、先日一慶が作ってくれた炊き込みご飯があって、思わず胸がギュッと締め付けられる。あの時の笑顔、あの優しい声、香りまで思い出す。あの時はまだ何も知らず、楽しかった。
「いただきます」
言葉だけはちゃんと出せたけれど、心はまだ追いついていない。
「お父さん、大丈夫?」
真宙が心配そうに声をかける。
せっかく来てくれた息子たちに心配かけっぱなしで何をやっているんだろう。
「大丈だよ。食べよう」
本当は大丈夫じゃない。
だけど、今はこの家族の前で少しでも穏やかでいたい。
一口、また一口と炊き込みご飯を口に運ぶ。
香りも味も、優しくて温かくて、一慶を思い出す。
思わず涙が出そうになるのを必死に堪えた。
すると、胸ポケットからブルブルとスマホが振動する音が聞こえてきた。
「お父さん? スマホ鳴ってるんじゃない?」
「ああ、でも食事中だから」
そう返したけれど、振動音はなかなか止まない。
「何か急用かもよ」
そう言われて、スマホを取り出した。
画面には<水無瀬一慶>の名前が光っていた。
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