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悲しい理由(わけ)
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「智己、この方は?」
「えっと……詳しい事情は話せないんですけど、クリスさんと言って、あの……これから一緒に暮らそうと思っている人です」
「一緒に、暮らす?」
「はい。それで、マスターに保証人になっていただきたくて……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。智己。流石に話を端折りすぎてる。そんなんで簡単に保証人になるとは返事はできないな。そもそも詳しい事情が話せないってどういうことなんだ?」
マスターとやらのいうことはもっともだろう。
なんの事情も話さず急に保証人になってくれと言われても無理な話だろう。
ここは全てを打ち明けるべきか……。
それともうまく誤魔化すか……。
ここの選択を間違えると大変なことになるだろうな。
私はじっと彼を見つめると、彼もまた私を見つめる。
彼の目にはトモキを心配するものと、そして、私への訝しさが見える。
彼なら誤魔化すより打ち明けたほうがいいのかもしれない。
「トモキ、彼と二人で話がしたい」
「えっ、でも……」
「智己、私もそうしてもらいたい。悪いが、智己は開店の準備をしていてもらえないか?」
不安げな表情で私を見つめるトモキに大丈夫だと目で訴えると、トモキは納得したのか
「わかりました。じゃあ僕、準備していますね」
と言ってくれた。
「クリス、さんでしたか……どうぞこちらへ」
彼の案内に従って、奥の部屋へと入った。
どうやらここは彼の部屋のようだ。
「そちらにお掛けください」
案内された席に腰を下ろすと、さっとカップが出された。
「コーヒーですが、よろしければどうぞ」
「ああ、いただくとしよう」
匂いを嗅いでみたが毒物の類は感じられない。
口に含むとナッツのような香ばしい香りの中にほのかな酸味を感じる。
「ああ、美味しいな」
「ありがとうございます」
にこやかな笑顔を浮かべてはいるが、目の奥では私の本質を見極めようとしているように見える。
「お話を伺ってもよろしいですか? そもそも智己とはどういったご関係でしょうか? 私の知る限り、あの子にはあなたのような親戚も知り合いもいないはずです」
「ああ、そうだな。まずはそこからか。其方が信じるかどうかは別だが、私がこれから話すことに嘘偽りは一切ない」
私の言葉に彼は私を見つめながら頷いた。
「私の名はクリスティアーノ・バーンスタイン。ビスカリア王国騎士団で騎士団長を務めている。2日前にこの世界に突然やってきたところをトモキに助けてもらったのだ」
「――っ!!!」
「どうした? やはり信じられぬか?」
「いえ、想像以上の内容に驚いただけです」
「まぁそうだろうな。異世界からやってきたと素直に信じられる者はトモキくらいのものだろう」
「智己はすぐにあなたの話を信じたのですか?」
「最初は流石に混乱していたようだったが、帰る方法が見つかるまでは自宅に住めばいいと言ってくれた」
「そう、でしたか……」
彼は少し考え込んだ様子を見せたが、冷静に次の話を始めた。
「それで先ほどの保証人の件ですが……あれはどういうことですか?」
「トモキの住んでいる建物を取り壊す計画だそうだ。それですぐに立ち退き、他の場所を探すようにと言われていたようだ」
「ああ、それで保証人を……」
「元々あの家には住まわせたくないと思って金を作ったのだ。家が取り壊される予定だったのは偶然だな」
「お金を作ったとは、どうなさったのですか?」
「私の持ち物を売ったのだ。まだ売るものはあるから、家を買うくらいはできるのではないかと思っている」
「ちなみにおいくらお持ちなのですか?」
「1500万に少し満たないくらいだ。少し必要なものを買い揃えたのでな。だが必要ならもっと金は作れる」
「――っ!! 1500万? それは……っ、またすごいですね」
私の出した金額に驚きの声をあげていたが、それはほんの一部だ。
「それでこれからのことだが……」
「その前に少し、こちらの話を聞いていただいてもよろしいですか?」
「ああ、そうだな。話をしてくれ」
そういうと、彼は安堵の表情を浮かべながらも目の奥は真剣に話を始めた。
「私は野上龍臣と言います。智己の父親と私は子どものころからの幼馴染で親友でした。私は夢だった喫茶店をここに開店させて、彼は地元に残り結婚した。そして、智己が生まれたんです。智己は勉強が好きで、将来は医者になってたくさんの人を救うのだといつも話してくれました。医者になるために地元を離れ、学校の寮に入った智己は毎日生き生きとして本当に楽しそうで……時々ここにきてはコーヒーを飲みながら、学校の話をしてくれていたんです。あの時が智己の一番幸せな時だったかもしれません。しばらくして、智己の両親が一緒に事故に遭い、二人は帰らぬ人になりました。そこからが智己にとっては地獄の始まりだったのです」
「何があったのだ?」
「事故を起こした相手方の弁護士がかなりのやり手で、結局智己の父親が運転する車が事故の原因だったと判決が下り、智己にはとてつもない賠償命令が下されました。自宅を売払い、二人の保険金を全て渡しても足りず、智己は医者の道を諦め大学を辞めることになったんです。優秀だった智己には手を貸してくれる大学関係者もいましたが、智己は自分の両親を助けられなかった精神的なショックから全てを諦め、大学を辞めたんです。そしてあのアパートに移り住んだ」
「あんな極貧の生活をしているのはそんな理由があったのか……」
「私が自宅とは別に持っている家に住まわせようと思ったのですが、働かせてもらえるだけで十分だと首を縦には振りませんでした。あの子はこうと決めたら頑固ですからね。きっとあなたを助けたのも自分が助けてやらなければと思ったのでしょう」
「そうか……」
「クリスさんがいつまでこの世界にいらっしゃるかはわかりませんが、もしよければ私の家に智己と住んでもらえませんか? もちろん、智己が遠慮しないようにお金をいただきます」
「其方の勧める家なら安心だな。そうするとしよう」
そういうと、ようやくノガミは心から安堵の表情を浮かべた。
「えっと……詳しい事情は話せないんですけど、クリスさんと言って、あの……これから一緒に暮らそうと思っている人です」
「一緒に、暮らす?」
「はい。それで、マスターに保証人になっていただきたくて……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。智己。流石に話を端折りすぎてる。そんなんで簡単に保証人になるとは返事はできないな。そもそも詳しい事情が話せないってどういうことなんだ?」
マスターとやらのいうことはもっともだろう。
なんの事情も話さず急に保証人になってくれと言われても無理な話だろう。
ここは全てを打ち明けるべきか……。
それともうまく誤魔化すか……。
ここの選択を間違えると大変なことになるだろうな。
私はじっと彼を見つめると、彼もまた私を見つめる。
彼の目にはトモキを心配するものと、そして、私への訝しさが見える。
彼なら誤魔化すより打ち明けたほうがいいのかもしれない。
「トモキ、彼と二人で話がしたい」
「えっ、でも……」
「智己、私もそうしてもらいたい。悪いが、智己は開店の準備をしていてもらえないか?」
不安げな表情で私を見つめるトモキに大丈夫だと目で訴えると、トモキは納得したのか
「わかりました。じゃあ僕、準備していますね」
と言ってくれた。
「クリス、さんでしたか……どうぞこちらへ」
彼の案内に従って、奥の部屋へと入った。
どうやらここは彼の部屋のようだ。
「そちらにお掛けください」
案内された席に腰を下ろすと、さっとカップが出された。
「コーヒーですが、よろしければどうぞ」
「ああ、いただくとしよう」
匂いを嗅いでみたが毒物の類は感じられない。
口に含むとナッツのような香ばしい香りの中にほのかな酸味を感じる。
「ああ、美味しいな」
「ありがとうございます」
にこやかな笑顔を浮かべてはいるが、目の奥では私の本質を見極めようとしているように見える。
「お話を伺ってもよろしいですか? そもそも智己とはどういったご関係でしょうか? 私の知る限り、あの子にはあなたのような親戚も知り合いもいないはずです」
「ああ、そうだな。まずはそこからか。其方が信じるかどうかは別だが、私がこれから話すことに嘘偽りは一切ない」
私の言葉に彼は私を見つめながら頷いた。
「私の名はクリスティアーノ・バーンスタイン。ビスカリア王国騎士団で騎士団長を務めている。2日前にこの世界に突然やってきたところをトモキに助けてもらったのだ」
「――っ!!!」
「どうした? やはり信じられぬか?」
「いえ、想像以上の内容に驚いただけです」
「まぁそうだろうな。異世界からやってきたと素直に信じられる者はトモキくらいのものだろう」
「智己はすぐにあなたの話を信じたのですか?」
「最初は流石に混乱していたようだったが、帰る方法が見つかるまでは自宅に住めばいいと言ってくれた」
「そう、でしたか……」
彼は少し考え込んだ様子を見せたが、冷静に次の話を始めた。
「それで先ほどの保証人の件ですが……あれはどういうことですか?」
「トモキの住んでいる建物を取り壊す計画だそうだ。それですぐに立ち退き、他の場所を探すようにと言われていたようだ」
「ああ、それで保証人を……」
「元々あの家には住まわせたくないと思って金を作ったのだ。家が取り壊される予定だったのは偶然だな」
「お金を作ったとは、どうなさったのですか?」
「私の持ち物を売ったのだ。まだ売るものはあるから、家を買うくらいはできるのではないかと思っている」
「ちなみにおいくらお持ちなのですか?」
「1500万に少し満たないくらいだ。少し必要なものを買い揃えたのでな。だが必要ならもっと金は作れる」
「――っ!! 1500万? それは……っ、またすごいですね」
私の出した金額に驚きの声をあげていたが、それはほんの一部だ。
「それでこれからのことだが……」
「その前に少し、こちらの話を聞いていただいてもよろしいですか?」
「ああ、そうだな。話をしてくれ」
そういうと、彼は安堵の表情を浮かべながらも目の奥は真剣に話を始めた。
「私は野上龍臣と言います。智己の父親と私は子どものころからの幼馴染で親友でした。私は夢だった喫茶店をここに開店させて、彼は地元に残り結婚した。そして、智己が生まれたんです。智己は勉強が好きで、将来は医者になってたくさんの人を救うのだといつも話してくれました。医者になるために地元を離れ、学校の寮に入った智己は毎日生き生きとして本当に楽しそうで……時々ここにきてはコーヒーを飲みながら、学校の話をしてくれていたんです。あの時が智己の一番幸せな時だったかもしれません。しばらくして、智己の両親が一緒に事故に遭い、二人は帰らぬ人になりました。そこからが智己にとっては地獄の始まりだったのです」
「何があったのだ?」
「事故を起こした相手方の弁護士がかなりのやり手で、結局智己の父親が運転する車が事故の原因だったと判決が下り、智己にはとてつもない賠償命令が下されました。自宅を売払い、二人の保険金を全て渡しても足りず、智己は医者の道を諦め大学を辞めることになったんです。優秀だった智己には手を貸してくれる大学関係者もいましたが、智己は自分の両親を助けられなかった精神的なショックから全てを諦め、大学を辞めたんです。そしてあのアパートに移り住んだ」
「あんな極貧の生活をしているのはそんな理由があったのか……」
「私が自宅とは別に持っている家に住まわせようと思ったのですが、働かせてもらえるだけで十分だと首を縦には振りませんでした。あの子はこうと決めたら頑固ですからね。きっとあなたを助けたのも自分が助けてやらなければと思ったのでしょう」
「そうか……」
「クリスさんがいつまでこの世界にいらっしゃるかはわかりませんが、もしよければ私の家に智己と住んでもらえませんか? もちろん、智己が遠慮しないようにお金をいただきます」
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