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理性と本能のせめぎ合い
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<sideクリス>
トモキの父上の親友だというこのノガミは、話してみれば、親友が遺した子を一生懸命守ろうとする男気に溢れていて裏表のない自分の意見をしっかりと持った素晴らしい男だった。
ノガミは異世界からやってきたという俄かには信じがたい私の話を聞いた上で、私のことを信頼し、大切なトモキを預けてくれたのだ。
私はこの恩を決して忘れてはならない。
ノガミに感謝しながら、私はトモキと共にノガミが住まわせてくれるという家へと向かった。
ノガミが用意してくれた家は、トモキが今まで住んでいた家のようにいくつかの家が同じ建物に居住しているようだ。
だが、根本的に違うのは今度の家はその建物がかなり大きく、部屋も今のトモキの部屋より十倍は広く、そして、隣家とかなりの距離があることだろう。
あの話し声すら響いてしまうような薄い壁ではないから、トモキもこれで安心して暮らすことができるに違いない。
「どうだ? 智己、気に入ったか?」
「あの、マスター……僕、今までの家とあまりにも違いすぎて緊張しちゃいます」
「ははっ。緊張なんてすることはない。今までの家のように好きに使ってくれていい。家具も家電も全て揃っているから好きに使ってくれ。ああ、ベッドだけは今から全て取り替えるからな。もう行きつけの家具屋に手配しているから」
「えっ? そんなっ、勿体ないですよ」
「何言ってるんだ。ベッドは一番重要だからな、ここだけはしっかりしておかないと!」
ノガミがそう言って私にアイコンタクトをしてきた。
ふふっ。さすがノガミ。
よくわかってくれているな。
トモキはまだノガミがなぜそういったのか、気づいていないようだがそんなところが可愛らしいのだ。
トモキの家から全ての荷物を搬入し、そして、ノガミの用意してくれたベッドも無事運び入れてようやく人心地ついた。
「ノガミ、こんなにも早く新しい家に移れたのは其方のおかげだ。礼を言う」
「何を仰っているのですか。私は智己を守ってくださる方が現れたことが嬉しくてたまらないのですよ。これで、あいつにも報告ができます」
「ノガミ……」
「ああ、そういえば、『野上』は名字なのです。もし、クリスさんさえよろしければ、私のことは龍臣とお呼びください」
「そうだったのか。失礼した。それではタツオミと呼ばせてもらおう」
「はい。光栄です。それでは私はそろそろ失礼します。智己、冷蔵庫に食材が入っているから、それも好きに使ってくれていいいからな。もうここはクリスさんと智己の家だから、私に許可をとったりするなよ。あ、それから今週は片付けやらで忙しいだろうからバイトは休みでいいぞ」
「えっ、でも……」
「元々、智己を長時間雇っていたのは、あの家に長く居させたくなかったからだからな。クリスさんが一緒なら、安心だろう? 智己は少し働きすぎだったから少しくらい休んでちょうどいいんだよ。わかったな」
タツオミはトモキにそう言い含めると、さっさと部屋を出て行った。
トモキはタツオミを見送ると、途端に寂しそうな表情で俯いていた
タツオミがいなくなって寂しいのだろうかと気になって問いかけてみれば、
「僕……マスターの店で働くの迷惑だったのかもって、ちょっと思っちゃって……」
「そんなわけないだろう? タツオミはトモキの身体を気にしただけだ。今は何も気にせずにゆっくりと休んだほうがいい。身体が楽になれば、そんなことを思わなくなるはずだ」
そういうと、トモキは小さく頷いた。
先ほど新しいベッドを運び入れたばかりの寝室にトモキを連れて行き、ベッドに横たわらせ部屋を出ようとすると、
「クリスさん……」
とトモキのか細い声が聞こえた。
「どうした?」
「あの、初めての場所で……少し慣れなくて……だから、少しだけ隣にいてもらえませんか?」
「――っ!! と、隣に?」
「クリスさんと一緒だとすごくよく眠れるんです。だめ、ですか?」
くっ――!!
これはかなり苦行を強いられることになるが……。
トモキの願いを拒むなどできるわけない。
「あ、ああ。私でよければ、トモキが寝付くまでそばにいるとしよう」
必死に冷静を装いながら答えると、トモキはこの上なく嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
精神を統一させながら、トモキの隣に身体を滑り込ませると柔らかなベッドマットに思わず声が出てしまった。
これはなんて良いベッドだろう。
この世界でもこんなに素晴らしいベッドに出会えるとはな。
タツオミに礼を言わなければ。
「――っ!!!」
突然トモキが私の胸元へと身体を近づけてきた。
嬉しそうに顔を擦り付けながら、
「クリスさん、いい匂いがします」
と言ってくれる。
そんなことを言われては私の脆い理性など一気に吹き飛んでしまいそうになるのだが、きっとトモキにはそんな気はない。
ただ寂しくて私に寄ってきているだけだ。
勘違いするな。
そう必死に自分に言い聞かせながらも、腕の中にいるトモキをギュッと抱きしめると
「クリスさん……あったかいです」
と嬉しそうな声が聞こえた。
トモキの父上の親友だというこのノガミは、話してみれば、親友が遺した子を一生懸命守ろうとする男気に溢れていて裏表のない自分の意見をしっかりと持った素晴らしい男だった。
ノガミは異世界からやってきたという俄かには信じがたい私の話を聞いた上で、私のことを信頼し、大切なトモキを預けてくれたのだ。
私はこの恩を決して忘れてはならない。
ノガミに感謝しながら、私はトモキと共にノガミが住まわせてくれるという家へと向かった。
ノガミが用意してくれた家は、トモキが今まで住んでいた家のようにいくつかの家が同じ建物に居住しているようだ。
だが、根本的に違うのは今度の家はその建物がかなり大きく、部屋も今のトモキの部屋より十倍は広く、そして、隣家とかなりの距離があることだろう。
あの話し声すら響いてしまうような薄い壁ではないから、トモキもこれで安心して暮らすことができるに違いない。
「どうだ? 智己、気に入ったか?」
「あの、マスター……僕、今までの家とあまりにも違いすぎて緊張しちゃいます」
「ははっ。緊張なんてすることはない。今までの家のように好きに使ってくれていい。家具も家電も全て揃っているから好きに使ってくれ。ああ、ベッドだけは今から全て取り替えるからな。もう行きつけの家具屋に手配しているから」
「えっ? そんなっ、勿体ないですよ」
「何言ってるんだ。ベッドは一番重要だからな、ここだけはしっかりしておかないと!」
ノガミがそう言って私にアイコンタクトをしてきた。
ふふっ。さすがノガミ。
よくわかってくれているな。
トモキはまだノガミがなぜそういったのか、気づいていないようだがそんなところが可愛らしいのだ。
トモキの家から全ての荷物を搬入し、そして、ノガミの用意してくれたベッドも無事運び入れてようやく人心地ついた。
「ノガミ、こんなにも早く新しい家に移れたのは其方のおかげだ。礼を言う」
「何を仰っているのですか。私は智己を守ってくださる方が現れたことが嬉しくてたまらないのですよ。これで、あいつにも報告ができます」
「ノガミ……」
「ああ、そういえば、『野上』は名字なのです。もし、クリスさんさえよろしければ、私のことは龍臣とお呼びください」
「そうだったのか。失礼した。それではタツオミと呼ばせてもらおう」
「はい。光栄です。それでは私はそろそろ失礼します。智己、冷蔵庫に食材が入っているから、それも好きに使ってくれていいいからな。もうここはクリスさんと智己の家だから、私に許可をとったりするなよ。あ、それから今週は片付けやらで忙しいだろうからバイトは休みでいいぞ」
「えっ、でも……」
「元々、智己を長時間雇っていたのは、あの家に長く居させたくなかったからだからな。クリスさんが一緒なら、安心だろう? 智己は少し働きすぎだったから少しくらい休んでちょうどいいんだよ。わかったな」
タツオミはトモキにそう言い含めると、さっさと部屋を出て行った。
トモキはタツオミを見送ると、途端に寂しそうな表情で俯いていた
タツオミがいなくなって寂しいのだろうかと気になって問いかけてみれば、
「僕……マスターの店で働くの迷惑だったのかもって、ちょっと思っちゃって……」
「そんなわけないだろう? タツオミはトモキの身体を気にしただけだ。今は何も気にせずにゆっくりと休んだほうがいい。身体が楽になれば、そんなことを思わなくなるはずだ」
そういうと、トモキは小さく頷いた。
先ほど新しいベッドを運び入れたばかりの寝室にトモキを連れて行き、ベッドに横たわらせ部屋を出ようとすると、
「クリスさん……」
とトモキのか細い声が聞こえた。
「どうした?」
「あの、初めての場所で……少し慣れなくて……だから、少しだけ隣にいてもらえませんか?」
「――っ!! と、隣に?」
「クリスさんと一緒だとすごくよく眠れるんです。だめ、ですか?」
くっ――!!
これはかなり苦行を強いられることになるが……。
トモキの願いを拒むなどできるわけない。
「あ、ああ。私でよければ、トモキが寝付くまでそばにいるとしよう」
必死に冷静を装いながら答えると、トモキはこの上なく嬉しそうな笑顔を見せてくれた。
精神を統一させながら、トモキの隣に身体を滑り込ませると柔らかなベッドマットに思わず声が出てしまった。
これはなんて良いベッドだろう。
この世界でもこんなに素晴らしいベッドに出会えるとはな。
タツオミに礼を言わなければ。
「――っ!!!」
突然トモキが私の胸元へと身体を近づけてきた。
嬉しそうに顔を擦り付けながら、
「クリスさん、いい匂いがします」
と言ってくれる。
そんなことを言われては私の脆い理性など一気に吹き飛んでしまいそうになるのだが、きっとトモキにはそんな気はない。
ただ寂しくて私に寄ってきているだけだ。
勘違いするな。
そう必死に自分に言い聞かせながらも、腕の中にいるトモキをギュッと抱きしめると
「クリスさん……あったかいです」
と嬉しそうな声が聞こえた。
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