突然やってきたイケメン騎士団長と甘々同棲生活始まりました

波木真帆

文字の大きさ
32 / 81

賭けるしかない

しおりを挟む
「実際にご自分の目でご覧になった方が良いかと存じますので、まずは服をお召しになってください」

そう言われて、自分が裸だったことを思い出した。

「この上着はジョバンニが貸してくれたのか?」

「はい。流石に裸でここまでお連れすることは難しかったので、失礼だとは思いましたが、私の服をお貸しいたしました」

「そうか、迷惑をかけたな」

「いえ、当然のことをしたまでです。こちらの服をお召しください」

手渡された服はこの団長室に置いていた私の服だ。
何かの時のためにと用意していたのが、功を奏したようだ。

トモキと共に風呂に入っていたままの姿だったのだな……。
まさかこの状態でここに戻ってくるとは思わなかった。

そう思いながら、自分の服に着替えると、

「では、行きましょうか」

と声をかけられた。

「私を一体どこに連れて行く気だ?」

「城内の書庫にございます」

「書庫? ああっ、そうかっ!!」

私の声にジョバンニはようやくわかったかと言わんばかりの表情でニヤリと笑みを浮かべた。

そうだ。
どうして思いつかなかったんだ!

私はジョバンニと共に、急いで書庫に向かった。

「お前はここの書物を読んであの神殿に来てくれたのだな?」

「はい。ですが、間一髪間に合わず、神殿長とバーンスタイン公爵さまが団長をこの世界に呼び戻してしまった後でした。私の不徳の致すところで申し訳ございません」

「いや、お前はよくやってくれた。お前があの場に現れなければ、本当にあの2人を殺めてしまったかもしれぬ。それほどまでにあの時の私は自分でも制御不能な状態だった」

「そう仰っていただけて光栄にございます」

「それで、お前の読んだ書物はどれだ?」

「はい。こちらでございます」

手渡された書物はかなり古いものであった。

「お前、これをよく見つけ出したな? この存在は誰も気づいていないのではないか?」

「はい。実はこの書物だけ、書庫の奥の壁の中に隠されるように置かれていたのです。ですから、この存在は誰も知り得ないことでしょう。もし、これが情報共有されていたならば、団長がこの世界に勝手に戻されるような事態にはならなかったはずです。ということは誰かが意図的にこれを隠したということですね」

「それはこれを書いた本人かも知れないな」

「えっ? ご本人さまですか?」

「ああ。おそらくな」

私の言葉にジョバンニは意味がわからないという様子だったが、きっとジョバンニも愛する者ができたら今の私の気持ちがわかるのだろうな。

この書物のどこに手掛かりが隠されているかも知れない。
私はそれを逃さぬよう、隅々まで隈なく読み進めていった。

「お前はこれを全部読んだのか?」

「いいえ。途中で神殿に向かいましたので。ですが、何か手がかりになるものはあるという印象を受けました」

「そうか……。なら、それを信じるとしよう」

「団長がそれをお読みの間、私は他にも書物がないか探して参ります」

「ああ、頼む」

ジョバンニは私のためにあんなにも必死になってくれている。
いつか本当にトモキを紹介することができたら嬉しいのだがな。

いや、いつかではない。
絶対にトモキをもう一度この手に取り戻して見せる!

この書物を書いたのは、数百年前の王族か。
私と同じように突然の閃光に包まれ、気づいたら異世界にいたようだ。

私と違うのは、異世界で出会った救世主となる運命の相手と最後まで交わったのちに、救世主と共にこの世界に戻ってきたという点だ。

なぜ私は1人だけで戻ってしまったのだ?

互いの蜜を体内に取り込んだという点では同じだったはずだ。

だが、取り込んだ量が少なかったからか?

あの時……確か、トモキは私の蜜を美味しいと言ってたくさん舐めてくれていた。
だが、私は指で掬って一口舐めただけだ……。

私がもっと早くトモキの蜜を取り込んでいれば……。

ああ、なんてことだ。
トモキを連れ帰れなかったのは私のせいなのか……。

そのせいでトモキに悲しい思いをさせてしまうなんて……。
私はなんと愚か者なのだろう。

だが、トモキにはまだ私の蜜が体内に残っているはずだ。
それを使って、こちらに呼び寄せる方法はないか?

考えろ、考えるんだ!

あっ!!!
そうだっ!!!!

「ジョバンニっ! ジョバンニっ!!!」

私はあることを思い出し、大声でジョバンニを呼び戻した。

「何事ですか?」

「トモキをこちらに呼び戻せるかも知れない!」

「まことでございますか?」

「ああ、私があちらに置いてきたものがトモキをこちらに呼び寄せてくれるはずだ!」

私はその書物を手に急いでジョバンニと共に自分の屋敷へと戻った。

屋敷の玄関扉を荒々しく叩くと、扉を開けた執事が私を見て驚きの表情を浮かべる。

まだ私がここに帰ってきたことを知らされていないということは、父上はまだ帰宅していないということだろう。
今は父上がどこにいったかはどうでもいい。

私は執事への説明も後回しにして、急いで自室へ向かった。

部屋に入り、書斎に向かうと陛下から贈られた勲章メダルが燦々と輝いているのが見える。

「これだ!」

「団長! これでどうやってそのお方を呼び戻すのですか?」

「あちらにも同じ勲章メダルを置いてきた。もし、あれにトモキが触れてくれたら……きっとここに来てくれるのではないかと思う」

「ですが、触れただけでそううまくいくでしょうか?」

「私の体内にも、トモキの体内にも互いに舐めた蜜がある。量が少なかったとはいえ、きっとまだ効果を発揮してくれるはずだ。今はそう信じるしかない」

そうだ。
いつかトモキが私を思い出して、あのメダルに触れてくれる時が来るまで、私は決してここから離れない。
今度こそ、私たちは一生離れないんだ!

<side龍臣>


あれから少し食事を取るようになった智己はようやく退院の許可が出た。
それでも1人でいさせるわけにはいかない。

もう少し元気を取り戻すまで、俺の家で面倒を見るというと、最初はかなり遠慮していた。
きっとクリスさん以外と一緒に過ごすことを心も身体も拒否しているのだろう。

だが、また倒れでもしたら今度は命に関わる。
3食しっかりと食べられるまでと条件付きで俺はなんとか説き伏せた。

退院したその足で智己とクリスさんが過ごしていた……といっても1日だけだが……マンションに連れて行き、荷物をまとめることにした。

智己は部屋に入った瞬間大粒の涙を溢し、その場にしゃがみ込んだ。

それも当然だ。
あれから数日経ってはいても、クリスさんの痕跡はあちらこちらにあるのだから。

「智己……まだ、可能性は消えてないんだぞ」

限りなく低いとは思うが、クリスさんの智己への想いに賭けたいんだ。

必死にその場から立たせて、2人の部屋に向かう。

ふらふらと智己がクローゼットの扉を開くと、大事そうに一枚の服を取り出した。

「マスター、僕はこれだけでいいです……他の荷物は何もいらない」

そう言った智己が胸に抱きしめている服は

「――っ、これ……クリスさんの服か……」

綺麗な勲章メダルがいくつもついたジャケットとズボンだった。

このメダルの量を見ただけでクリスさんがあちらの世界でどれだけの英雄だったかがわかる。

「クリスさん……本当にすごい騎士団長だったんだな」

「だから……あちらの、世界で……きっと、必要とされて……それで、連れて……いかれちゃった、のかな……」

「智己……」

「でも、それなら、僕も一緒に連れていってくれたらよかったのに……。もう、クリスさんに会いたくてたまらない……ううっ……っ」

ギュッとクリスさんの服を抱きしめながら、智己が必死に涙を堪えるのが可哀想で見ていられない。

「我慢しないで泣いていいって言ったろ? 感情を押し込むな」

小さな身体を震わせながら、クリスさんへの思いを抑えようとする智己を背中から抱きしめ、頭を撫でながら

「自分の思いを大声で叫んでみろ!」

というと、智己は

「クリスさんに会わせてーっ!!!」

大声で叫んだ。

智己の大声と共に、目に溜まった涙がボロボロと溢れてクリスさんの服とメダルを濡らした瞬間、目を開けていられないほどの眩い光が部屋を包み込んだ。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...