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公爵家の平穏のために
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<sideマイルズ>
「旦那さま。クリスティアーノさまとトモキさまとご一緒に食事をお摂りになりますか?」
「ああ。もちろんだとも。やっと訪れた家族の時間だからな」
「そうでございますか……。ならば、お食事の前に少しお話ししたいことがございます」
「どうした? 何かあるのか? もしや、トモキに心配事でも?」
直感型で思いついたらすぐに行動に移してしまう少し暴走気味なお方だが、心根はお優しいお方なのだ。
もうすっかりトモキさまのことは気に入られたようで、実の息子であるクリスティアーノさまよりもずっと大切にしていらっしゃるように見える。
トモキさまが救世主であるから大切にしているといえばそうなのかもしれないが、それを抜きにしても、もうすっかり骨抜きにされているようだ。
そんな旦那さまにこのようなことを告げるのは些か心苦しいが、これをお伝えしておかなければこの屋敷をうまく回すことができなくなる。
この屋敷の平穏のためには必要なことなのだ。
「トモキさまではなく、クリスティアーノさまについてでございます」
「何? クリスティアーノのことだと? 一体なんだ?」
「旦那さま、今までのクリスティアーノさまのことは全てお忘れください」
「はっ? それは、どういう意味だ?」
「そのままの意味でございます。旦那さまの目の前にいらっしゃるクリスティアーノさまは、旦那さまがご存知のクリスティアーノさまではございません。旦那さまも、今日お城でお会いなさった時にお分かりになったはずでございます」
「ああっ、確かにっ!」
今までのクリスティアーノさまは感情を表に出されることなど一度もなかった。
どんな時でも努めて冷静で、ご自分のお部屋であってもいつも物静かにお過ごしになって、お食事中にお話をなさるどころか、味の感想でさえもお話になったことはなかった。
それがトモキさまがこの屋敷に来られてからは常に独占欲をあらわにされ、お食事の際は決してトモキさまにカトラリーを持たせることもなさらず、クリスティアーノさまのお手ずからお食事をお与えになる。
この姿を初めて見た時の衝撃は忘れられない。
けれど、今はその姿を見られないと落ち着かなく感じてしまう。
もっと仲睦まじく召し上がっていただいても良いくらいだとさえ思うほど、お二人のお食事の光景は見ていて幸せになる。
だが、旦那さまは今日初めてご覧になるのだ。
きっと驚きになるに違いない。
けれど、それで不思議な態度を取られてはトモキさまが不審に思われるかもしれない。
それにより、クリスティアーノさまとのお食事がギクシャクしてしまっては困るのだ。
「旦那さまには目の前でどんな光景があろうとも、普通にしていていただきたいのです。むしろ、これが普通なのだとトモキさまにおっしゃっていただいて構いません。そうすることで、クリスティアーノさまがお喜びになります。それが引いてはこの屋敷の平穏に繋がるのです。お分かりいただけますか?」
「……つまり、クリスティアーノとトモキが食事をしている姿に口を出すな、むしろ、それを好ましいと言え、ということだな?」
「さすが、旦那さま。ご理解がお早い」
「実際にこの目で見るまでは信じられんが、とにかくわかった。いう通りにしよう」
「ありがとうございます」
これでなんとかうまく行きそうだ。
ホッとしたのも束の間、クリスティアーノさま方のお部屋のベルが鳴った。
時間的に食事の用意だろう。
私は一応、厨房に準備をするように声をかけ、急いでお部屋へ向かった。
<sideクリス>
「お呼びでございますか?」
「トモキが目を覚ました。食事の用意を頼む」
「承知いたしました」
「父上も一緒に召し上がるのだろう?」
「はい。そのように承っております」
「トモキも父上と一緒に食べるのを楽しみにしているようだからな。くれぐれも頼むぞ」
「このマイルズにお任せください」
そういうとマイルズは頭をさげ、出ていった。
マイルズがあそこまで言ってくれるのだから安心だ。
きっと父上にも話をつけてくれているのだろう。
本当に助かる。
「トモキ、すぐに食事ができるようだから着替えをしようか」
「えっ、わざわざ着替えるんですか?」
「ああ。今日は父上との初めての食事だし、そのまま眠ったからシワになってしまっただろう?」
「そっか、そうですね」
ふふっ。
本当に素直な子だ。
私の思惑など知る由もないが、それでいい。
「じゃあ、これにしようか」
仕立てておいた服から、私の服と揃いのものを選んで着せる。
父上にもしっかりとトモキが私のものであることをわかっていただかなければいけないからな。
私も着替えを済ませると、トモキの目が私の衣装を見つめていた。
「クリスさんとお揃いなんですね」
「ああ、我々はもう夫夫になったら、いつでも揃いの服を着なければな」
「そうなんですね。ふふっ。クリスさんといつも一緒だなんて嬉しいで――っんん!」
無邪気に笑いかけるトモキに我慢できず、つい口づけをしてしまう。
「クリスさん……」
「悪い。トモキが正式に私の夫となったと思ったら、すぐに気持ちが昂って抑えられなくなる」
「大丈夫です。僕も……してほしいな、って思ってたので……」
「ぐっ――!!!」
ああ、もうっ!
このままベッドに押し倒したいくらいだが、食事はきちんと取らせなければニコラスがうるさいからな。
もう少し我慢するんだぞ。
必死に愚息に言い聞かせながら、トモキを抱き上げ、父上が待っているはずのダイニングルームに急いだ。
「旦那さま。クリスティアーノさまとトモキさまとご一緒に食事をお摂りになりますか?」
「ああ。もちろんだとも。やっと訪れた家族の時間だからな」
「そうでございますか……。ならば、お食事の前に少しお話ししたいことがございます」
「どうした? 何かあるのか? もしや、トモキに心配事でも?」
直感型で思いついたらすぐに行動に移してしまう少し暴走気味なお方だが、心根はお優しいお方なのだ。
もうすっかりトモキさまのことは気に入られたようで、実の息子であるクリスティアーノさまよりもずっと大切にしていらっしゃるように見える。
トモキさまが救世主であるから大切にしているといえばそうなのかもしれないが、それを抜きにしても、もうすっかり骨抜きにされているようだ。
そんな旦那さまにこのようなことを告げるのは些か心苦しいが、これをお伝えしておかなければこの屋敷をうまく回すことができなくなる。
この屋敷の平穏のためには必要なことなのだ。
「トモキさまではなく、クリスティアーノさまについてでございます」
「何? クリスティアーノのことだと? 一体なんだ?」
「旦那さま、今までのクリスティアーノさまのことは全てお忘れください」
「はっ? それは、どういう意味だ?」
「そのままの意味でございます。旦那さまの目の前にいらっしゃるクリスティアーノさまは、旦那さまがご存知のクリスティアーノさまではございません。旦那さまも、今日お城でお会いなさった時にお分かりになったはずでございます」
「ああっ、確かにっ!」
今までのクリスティアーノさまは感情を表に出されることなど一度もなかった。
どんな時でも努めて冷静で、ご自分のお部屋であってもいつも物静かにお過ごしになって、お食事中にお話をなさるどころか、味の感想でさえもお話になったことはなかった。
それがトモキさまがこの屋敷に来られてからは常に独占欲をあらわにされ、お食事の際は決してトモキさまにカトラリーを持たせることもなさらず、クリスティアーノさまのお手ずからお食事をお与えになる。
この姿を初めて見た時の衝撃は忘れられない。
けれど、今はその姿を見られないと落ち着かなく感じてしまう。
もっと仲睦まじく召し上がっていただいても良いくらいだとさえ思うほど、お二人のお食事の光景は見ていて幸せになる。
だが、旦那さまは今日初めてご覧になるのだ。
きっと驚きになるに違いない。
けれど、それで不思議な態度を取られてはトモキさまが不審に思われるかもしれない。
それにより、クリスティアーノさまとのお食事がギクシャクしてしまっては困るのだ。
「旦那さまには目の前でどんな光景があろうとも、普通にしていていただきたいのです。むしろ、これが普通なのだとトモキさまにおっしゃっていただいて構いません。そうすることで、クリスティアーノさまがお喜びになります。それが引いてはこの屋敷の平穏に繋がるのです。お分かりいただけますか?」
「……つまり、クリスティアーノとトモキが食事をしている姿に口を出すな、むしろ、それを好ましいと言え、ということだな?」
「さすが、旦那さま。ご理解がお早い」
「実際にこの目で見るまでは信じられんが、とにかくわかった。いう通りにしよう」
「ありがとうございます」
これでなんとかうまく行きそうだ。
ホッとしたのも束の間、クリスティアーノさま方のお部屋のベルが鳴った。
時間的に食事の用意だろう。
私は一応、厨房に準備をするように声をかけ、急いでお部屋へ向かった。
<sideクリス>
「お呼びでございますか?」
「トモキが目を覚ました。食事の用意を頼む」
「承知いたしました」
「父上も一緒に召し上がるのだろう?」
「はい。そのように承っております」
「トモキも父上と一緒に食べるのを楽しみにしているようだからな。くれぐれも頼むぞ」
「このマイルズにお任せください」
そういうとマイルズは頭をさげ、出ていった。
マイルズがあそこまで言ってくれるのだから安心だ。
きっと父上にも話をつけてくれているのだろう。
本当に助かる。
「トモキ、すぐに食事ができるようだから着替えをしようか」
「えっ、わざわざ着替えるんですか?」
「ああ。今日は父上との初めての食事だし、そのまま眠ったからシワになってしまっただろう?」
「そっか、そうですね」
ふふっ。
本当に素直な子だ。
私の思惑など知る由もないが、それでいい。
「じゃあ、これにしようか」
仕立てておいた服から、私の服と揃いのものを選んで着せる。
父上にもしっかりとトモキが私のものであることをわかっていただかなければいけないからな。
私も着替えを済ませると、トモキの目が私の衣装を見つめていた。
「クリスさんとお揃いなんですね」
「ああ、我々はもう夫夫になったら、いつでも揃いの服を着なければな」
「そうなんですね。ふふっ。クリスさんといつも一緒だなんて嬉しいで――っんん!」
無邪気に笑いかけるトモキに我慢できず、つい口づけをしてしまう。
「クリスさん……」
「悪い。トモキが正式に私の夫となったと思ったら、すぐに気持ちが昂って抑えられなくなる」
「大丈夫です。僕も……してほしいな、って思ってたので……」
「ぐっ――!!!」
ああ、もうっ!
このままベッドに押し倒したいくらいだが、食事はきちんと取らせなければニコラスがうるさいからな。
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