129 / 155
騒動の始まり
しおりを挟む
続いてケイトとアヤシロが戻ってきた。
アヤシロの手にはたくさんの袋が下がっている。
『いいのが見つかったようだな』
『ああ、ここは一点ものも多いし、贈り物には持ってこいだったよ。佳都も探すのが楽しかったみたいだし、ここを紹介してくれた弓弦くんには感謝だな』
『そんなに気に入ってくれたならよかったよ。ユヅルも喜ぶ』
『あとは悠木か……ああ、こっちに向かってきてる』
アヤシロの視線の先でユウキとソラがピッタリと寄り添いながら歩いているのが見える。
ミヅキとリオをこちらに呼んだら、きっとユウキとソラも来てくれるだろう。
なんせ、リオとソラは双子のように仲がいい。
ソラがリオと離れたくないと言い出せば、ユウキがそれを受け入れるだろうな。
ユウキならここでも十分仕事はできるし、収入面では気にすることもない。
シュベルニー大学の話をした時は、むしろミヅキよりユウキの方が関心は高そうだった。
のびのびと過ごさせてやりたいと話していたし、あの環境ならユウキの望む大学生活を送らせてあげることができるだろう。
ジョルジュはジョルジュでスオウをパリ警視庁に引き抜きたいといっていたし、アヤシロも私が誘えば移住を考えてくれるかもしれない。
近い将来、皆がこのフランスで生活をすることもあり得るだろう。
そうなればユヅルも今よりもっと楽しく過ごせるだろうな。
ユウキたちとスオウたちが戻ってきて、残すはセルジュとミシェルだけか。
おおかたデートに夢中なのだろうが、いつもならこの時期は二人っきりでバカンスを過ごしていることを知っている身としては、あまり強くも言えない。
セルジュはこの長期休暇を楽しみに仕事を頑張ってくれているといっても過言ではないからな。
だが、それにしても少し時間がかかりすぎだろう。
あまり外に長居させてはユヅルたちの体調も気になる。
特にあの華奢な身体つきをしているリオは体調を崩しやすそうだからな。
そんなことを考えていると、離れた場所から風に乗って音楽が流れてくる。
この場所では絶えずクリスマスソングが流れていたが、明らかに機械から流れてくる音楽とは違う。
その音色にユヅルもすぐに気がついた。
そしてシュウゴも。
その音色がミシェルのヴァイオリンのそれと同じだと気づき、ユヅルはそこに行ってみたいと言い出した。
もしかしたらミシェルが誰かに頼まれて演奏でもしているのだろうか。
そうであれば確実に人だかりができているだろう。
そんな場所にユヅルを連れていくのは危険極まりないが、ユヅルたちの勢いを止められそうにない。
絶対に離れないと約束させて、みんなで音の聞こえる場所に向かうと十段ほどの階段の上に立ち、演奏をしているミシェルの姿が見えた。
初めてミシェルの演奏を聴いたあの日のことを思い出す。
まだまだ荒削りだったがニコラのヴァイオリンを彷彿とさせる美しい音色に身体が震えた。
あの日から十数年経ち、セルジュに愛されたミシェルの音色には美しさだけでなく甘さと艶めきとそして濃厚さが増した。
誰も声を発することなく、その音色に聞き惚れている。
ユヅルたちもその美しい音色にただただ聴き入っているようだった。
ミシェルの演奏が終わり、一瞬の静寂の後、途轍もない拍手と歓声に包まれる。
「すごいっ!」
ユヅルたちは皆、ミシェルの偉大さを改めて認識したのだろう。
「ああ、ミシェル・ロレーヌの演奏……本当に素晴らしいです。あの人と一緒に演奏したなんて……今でも信じられないな……」
感動に声を震わせているシュウゴをスオウが優しい眼差しで見つめている。
これに嫉妬しないのもスオウとシュウゴの歩んできた時の長さを物語っているのだろう。
そう思っていると、突然階段の上にいたミシェルが
「あっ! ユヅルーっ! シュウゴも一緒に演奏しようっ!! こっちにきてーーっ!!」
と大声をあげる。
その瞬間、大勢の観衆の視線が一気にユヅルとシュウゴに向けられた。
ユヅルもシュウゴも大勢の視線に晒されて怖がっている。
私とスオウは慌てて自分のコートの中に愛しい伴侶を隠した。
プロであるミシェルの顔が割れているのは仕方がない。
だが、ユヅルはまだ私の伴侶として発表をする前であるし、シュウゴに至ってはただの一般人だ。
そんな二人を好奇の目に晒すようなことがあってはならない。
ミシェルが後先考えずに声をあげてしまう人間だとわかっているのだから、そこは伴侶であるセルジュがうまくカバーするべきだろう。
うまく立ち回れていないセルジュに少し怒りを感じていると、セルジュが慌てた様子で駆け寄ってきた。
アヤシロの手にはたくさんの袋が下がっている。
『いいのが見つかったようだな』
『ああ、ここは一点ものも多いし、贈り物には持ってこいだったよ。佳都も探すのが楽しかったみたいだし、ここを紹介してくれた弓弦くんには感謝だな』
『そんなに気に入ってくれたならよかったよ。ユヅルも喜ぶ』
『あとは悠木か……ああ、こっちに向かってきてる』
アヤシロの視線の先でユウキとソラがピッタリと寄り添いながら歩いているのが見える。
ミヅキとリオをこちらに呼んだら、きっとユウキとソラも来てくれるだろう。
なんせ、リオとソラは双子のように仲がいい。
ソラがリオと離れたくないと言い出せば、ユウキがそれを受け入れるだろうな。
ユウキならここでも十分仕事はできるし、収入面では気にすることもない。
シュベルニー大学の話をした時は、むしろミヅキよりユウキの方が関心は高そうだった。
のびのびと過ごさせてやりたいと話していたし、あの環境ならユウキの望む大学生活を送らせてあげることができるだろう。
ジョルジュはジョルジュでスオウをパリ警視庁に引き抜きたいといっていたし、アヤシロも私が誘えば移住を考えてくれるかもしれない。
近い将来、皆がこのフランスで生活をすることもあり得るだろう。
そうなればユヅルも今よりもっと楽しく過ごせるだろうな。
ユウキたちとスオウたちが戻ってきて、残すはセルジュとミシェルだけか。
おおかたデートに夢中なのだろうが、いつもならこの時期は二人っきりでバカンスを過ごしていることを知っている身としては、あまり強くも言えない。
セルジュはこの長期休暇を楽しみに仕事を頑張ってくれているといっても過言ではないからな。
だが、それにしても少し時間がかかりすぎだろう。
あまり外に長居させてはユヅルたちの体調も気になる。
特にあの華奢な身体つきをしているリオは体調を崩しやすそうだからな。
そんなことを考えていると、離れた場所から風に乗って音楽が流れてくる。
この場所では絶えずクリスマスソングが流れていたが、明らかに機械から流れてくる音楽とは違う。
その音色にユヅルもすぐに気がついた。
そしてシュウゴも。
その音色がミシェルのヴァイオリンのそれと同じだと気づき、ユヅルはそこに行ってみたいと言い出した。
もしかしたらミシェルが誰かに頼まれて演奏でもしているのだろうか。
そうであれば確実に人だかりができているだろう。
そんな場所にユヅルを連れていくのは危険極まりないが、ユヅルたちの勢いを止められそうにない。
絶対に離れないと約束させて、みんなで音の聞こえる場所に向かうと十段ほどの階段の上に立ち、演奏をしているミシェルの姿が見えた。
初めてミシェルの演奏を聴いたあの日のことを思い出す。
まだまだ荒削りだったがニコラのヴァイオリンを彷彿とさせる美しい音色に身体が震えた。
あの日から十数年経ち、セルジュに愛されたミシェルの音色には美しさだけでなく甘さと艶めきとそして濃厚さが増した。
誰も声を発することなく、その音色に聞き惚れている。
ユヅルたちもその美しい音色にただただ聴き入っているようだった。
ミシェルの演奏が終わり、一瞬の静寂の後、途轍もない拍手と歓声に包まれる。
「すごいっ!」
ユヅルたちは皆、ミシェルの偉大さを改めて認識したのだろう。
「ああ、ミシェル・ロレーヌの演奏……本当に素晴らしいです。あの人と一緒に演奏したなんて……今でも信じられないな……」
感動に声を震わせているシュウゴをスオウが優しい眼差しで見つめている。
これに嫉妬しないのもスオウとシュウゴの歩んできた時の長さを物語っているのだろう。
そう思っていると、突然階段の上にいたミシェルが
「あっ! ユヅルーっ! シュウゴも一緒に演奏しようっ!! こっちにきてーーっ!!」
と大声をあげる。
その瞬間、大勢の観衆の視線が一気にユヅルとシュウゴに向けられた。
ユヅルもシュウゴも大勢の視線に晒されて怖がっている。
私とスオウは慌てて自分のコートの中に愛しい伴侶を隠した。
プロであるミシェルの顔が割れているのは仕方がない。
だが、ユヅルはまだ私の伴侶として発表をする前であるし、シュウゴに至ってはただの一般人だ。
そんな二人を好奇の目に晒すようなことがあってはならない。
ミシェルが後先考えずに声をあげてしまう人間だとわかっているのだから、そこは伴侶であるセルジュがうまくカバーするべきだろう。
うまく立ち回れていないセルジュに少し怒りを感じていると、セルジュが慌てた様子で駆け寄ってきた。
応援ありがとうございます!
31
お気に入りに追加
1,579
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる