大富豪ロレーヌ総帥の初恋

波木真帆

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<閑話>  私のヒーロー  <前編>

彼らの観光に居合わせた観光客シリーズ第二弾です。
彼らの演奏まで行きつかなかったので前後編に分けます。
楽しんでいただけたら嬉しいです♡


  *   *   *



<side笠井かさい莉緒りお

「亜子ーっ!! 見てみて! これ、可愛いっ!!」

「ああー、ほんと可愛いっ!! あっ、でも値段は可愛くない」

「ふふっ。ほんとだよね。クリスマスマーケットっていうからお手頃な価格ばっかりのものが集まってると思ったけど、結構そこそこするやつもあるんだね。ほら、このコーヒーカップとか65ユーロだって。日本円だと……1万超えてるじゃん!! たっかっ!!」

「でも記念だと思うと、頑張って買うのかな?」

「うーん、そうかもね。でもコーヒーカップに1万越えか……。それならもっと違うものでもいいかも」

「私たちには分不相応かもね。ねぇ、あっちの方も見に行こうよ!!」

フランスの観光地を巡り、最後にやってきたのは泊まっているホテルの近くでやっていたクリスマスマーケット。
煌びやかなイルミネーションに惹かれるようにやってきた。

手頃な価格の可愛いクリスマス飾りから、さっきのコーヒーカップ、値の張りそうなアンティークジュエリーや絵画なんかも売られている。
買えなくてもこの空間に居られるだけで楽しめるようなそんな感じ。
日本の夏祭りに参加して屋台巡りでもしているようなそんな感覚かもしれない。

高価すぎて買うことなんてできないけど、アンティークジュエリーを見ていると胸が高鳴る。
日本ではまずお目にかかれないような綺麗なデザインに心惹かれる。

でも値段はさっきのコーヒーカップが可愛く見えるくらい、お高いものばかり。

「ふぅーーっ」

こういうのは見ているだけで満足するべきよねぇ。

いつの間にか亜子は別の場所をうろうろしているみたい。
私はここでのんびりジュエリーでも見ていようか。


「あっ! これ、可愛いっ!!」

見ているだけで満足していた私の目に飛び込んできたのは、淡い水色の宝石で作られた花の形のペンダント。
中央に小さなパールが彩られて、とても可愛らしい。

こんなのを今日の記念にできたら……。
このペンダントを見るたびにフランスでの素敵な日々を思い出せるかもしれない。

でもどう見ても高そう……。

うーん、でも欲しいなぁ。

どうしよう……。

その場から離れることもできずにじっとそのペンダントに見入っていると、

『気に入ったのかい?』

と店主さんに声をかけられた。

『ええ、とっても可愛いですね』

『ああ。これは100年以上前の貴重なアンティークジュエリーでね。かなりの価値があるものなんだ。2500ユーロでもかなりのお値打ち品だよ』

『えっ……にせん、ごひゃく? って、40万? わぁーっ!! 無理、無理!!!』

想像よりもとんでもなく高い金額に一瞬にして我に返る。
いざとなったら記念に買ってもいいかも……なんて思った私がバカだった。

こんなの社会人三年目の薄給の私に買えるわけがない。

『ごめんなさいっ!! こんなすごいの買えなくてっ!』

慌ててその場から立ち去ろうとすると、

『ちょっと待ちなさい』

と声をかけられる。

『あの……なんですか?』

『そんなに気に入ってくれたんなら、半額にしてもいいよ』

『えっ……半額って……1250ユーロ?』

そう尋ね返すと店主は嬉しそうに笑って頷いた。

いやいや、20万でもかなり高価なんだけど……。
でも可愛いんだよねぇ……。

最初の2500ユーロの衝撃が強すぎて、ものすごく安く感じる。

えー、でも20万だよ。
一月分の給料が全部飛んでっちゃう。

でも……

『これはアンティークジュエリーで一点物だからこの機会を逃したらもう二度と手に入れることはできないよ』

と畳み掛けられる。

確かに異国で出会ったものはそこで買わなきゃもう二度と出会えない。
ここは清水の舞台から飛び降りるつもりで買っちゃおうか。

『あの、すみま――』
「やめた方がいいんじゃないかな」

「えっ?」

意を決して店主さんに声をかけた私の耳に突然の日本語に飛び込んできて、思わず振り向いてしまった。

「あっ、ごめんね。突然話しかけたりして……」

「あっ――っ!!!」

突然現れた日本人のイケメンに驚きが隠せない。
だって、あのコート……間違いなく、今日見た人たちの中にいた人だ。

「んっ? どうかした?」

「あっ、いえ。な、なんでもないです。それより、やめた方がいいって……」

どういうことですか? 
そう聞こうとしたら話しかけてくれた彼の隣にいたイケメンが

「ああ、値段がぼったくられてるみたいだから」

と衝撃的な言葉を伝えてくれた。

「えっ? ぼったくり?」

「うん。多分日本人観光客だと思ってぼったくられてるんだよ。日本人は海外では羽振りがいいって思われてるからね。ここのジュエリーは質もいいし本物だと思うけど、値段はかなり釣り上げられてるよ」

「そう、なんですか……?」

「これ、欲しいの?」

「えっ……はい。可愛いなと思って」

「確かに君に似合いそうだね。ねぇ、将臣」

「ああ、そうだな」

「えっ?」

突然現れたイケメンたちにそんなことをさらっと言われて、ドキッとしてしまう。

そんな私を気にする様子もなく、そのイケメンたちは店主と話を始めた。
さっきまで余裕そうだった店主はみるみるうちに威勢がなくなっていく。

彼らが話す滑らかなフランス語はネイティブそのもの。
見た目はどう見ても日本人だけど、もしかしたらここに住んでいる人なのかもしれない。
なんたってロレーヌ家の人たちと一緒にいたんだもんね。

その彼らにぼーっと見惚れていたから彼らと店主との会話を聞き逃していた。

「ねぇ、500ユーロでいいって言ってるけど、どうする?」

「えっ? 500?」

それなら10万切ってるし、これなら買いかも。

「は、はい。買います」

そういうと、彼らはまた店主に向き直り話をしてくれた。

私がカードで支払いを済ませると、店主は綺麗なアンティークボックスに入れたペンダントを渡してくれた。


「あの、ありがとうございました」

最後までいてくれた彼らにお礼をいうと、

「いや、いい買い物ができてよかったよ。この後も楽しんで」

と笑顔で返してくれた。
その笑顔にキュンキュンが止まらない。

こんな場所で颯爽と現れて助けてくれた人たちとこのまま離れていいの?
絶対に運命の相手だよ!!

「あ、あのせっかくだからこの後一緒に回りませんか? あの、私、友達も一緒で……それで、四人で食事でも……」

「ああ、ありがとう。気持ちだけいただくよ。俺たち連れがいるから」

そういうと彼は隣にいた綺麗系イケメンの腰に手を回して、雑踏に消えていった。

ああ……そういうことか。
昼間見たあのイケメン集団はみんなカップルってことだったんだ……。

そりゃあ、他には目も行かないよね。
だってお似合いだもん。

彼らに似合っていると言ってもらえたこのペンダント、大切にしよう。
私の一生の宝物だ。
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