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日本旅行編
様子を知りたい
『部屋の様子を少し覗いてみますか?』
『んっ? それはもしかして……?』
『はい。ロレーヌが弓弦くんの様子を見るのに使用しているのと同じものです。私と理央の家には全てに、実家には理央の部屋にだけつけているんです』
『それはありがたいな。じゃあ、少しだけ見せてもらえるか?』
私の言葉にミヅキは嬉々としてスマホを操作し始めた。
その様子をミヅキの父親もユウキとユウキの父親も普通に眺めていたから彼らも同じように愛しい相手の様子をいつも確認しているのだろう。
やっぱりミヅキの言った通り、ここにいる者はみんな似た者同士のようだ。
『さぁ、どうぞ』
ミヅキのスマホに部屋の様子が映し出されて、私とユウキはそれを覗き込んだ。
スマホから三人の声が聞こえてきて、耳を澄ました。
ーこれ、なぁに?
ー編み物に必要なものだよ。ほら、弓弦くんたち編み物をしてみたいって言ってたでしょう?
リオの言葉にユヅルとソラが笑顔になるのが見える。
『理央が編み物を教えたいというので必要なものを揃えておいたんですよ』
『そうか、それならこれから編んでくれるんだろうか?』
『そうですね。理央は自身で編むことはもちろん、教えるのも上手ですからね』
ユヅルが私のために編んでくれる。その気持ちだけで天に昇るほど嬉しい。
棒編みとかぎ編み、二つの編み方があるのは知っている。
母がよくコンサバトリーで編み物をしていたのをみていたからだ。
ユヅルは手袋を編みたいと言っていたけれど、初めて挑戦するにはかなりの難易度だ。
ー編み物に慣れるっていう意味でもマフラーから作るのは楽しいかも。編むのに慣れたら次は手袋に挑戦してみたらいいし。
ーそうだね! ねぇ、今ちょっとだけ理央くんが編んでいるところを見せてもらったりできる? 空良くんもみてみたいよね?
その言葉にソラもすぐに賛同した。
実際にリオが編むところを見るのは私も初めてだ。
だが、クリスマスプレゼントを渡し合おうと決めてから、当日までそこまで時間があったわけでもないのに、あれだけの量をあのクオリティで編んだリオの手捌きをこの目で見てみたい。
ーじゃあ、ちょっと簡単なやつ編んでみるね。
リオは紙袋から毛糸を取り出し、かぎ針で編み始めた。
そっとミヅキに視線を向けると、心配そうに見つめている。
何か不安ごとでもあるのだろうか?
気になりつつも画面に視線を戻すと、もうすでにいくつかのパーツが出来上がっているのが見える。
えっ? 何が起こったんだ?
驚きながら見つめると、リオの手がすごい勢いで動いているのが見える。
その動きに圧倒されている間に、
ーできたよ
リオの声が聞こえた。
その手には小さなウサギの編みぐるみができているのが見える。
『は、早いな』
『そうなんです。理央は施設で編み物の内職をさせられていたようで、理央の作品が高値で売れると分かってからは寝る間を惜しんで作らされていたんです。尋常ではない数のノルマを課せられ、ロボットのように編み物をさせられていて……私も知った時は驚きました。だから、あの手袋を作った時は、私がつきっきりでそばにいて時間を決めてやらせていたんです』
『そうだったのか……』
『最後のほうには理央もゆっくり編むことを理解してくれたんですが、さっきは早く見本を見せたくてつい昔の習性が出てしまったようです』
『なるほど』
だからあんなに心配そうな表情をしていたわけか……。
『でも、ミヅキ。編んでいる時のリオの顔を見たか? すごく楽しそうだったぞ。それは無理せずに編めるようになっている証じゃないか?』
私の言葉にミヅキの父もユウキたちも頷いていて、ミヅキもホッとしたようだ。
ー理央くん、すごいなー。僕にもできるかな?
ー大丈夫だよ。とりあえずマフラーを始めてみる?
素直にリオの凄さを褒める二人はリオとともにその場を離れ、毛糸がいっぱい並んだ棚に向かった。
『すごいな、あれも用意してくれたのか?』
『ええ。どれを選んでもいいようにいろんな色を揃えておきました』
本当にもてなしが素晴らしい。
ユヅルは私のためにどんな毛糸を選んでくれるのだろうな。
ドキドキしながら見守っていると、
ーあ、あれ! エヴァンさんに似合いそう!
ユヅルは嬉しそうに濃いグリーンの毛糸を選んでくれた。ユヅルが選んでくれた毛糸でマフラーを編んでくれる。これは最高の贅沢だな。
ー空良くんはどれにする?
ーうーん、どれも素敵で悩んじゃうな。でも、あの綺麗な水色はちょっと気になってる。
悩みながらもソラが手に取ったのは綺麗な水色。
『ほお、空良くんは見る目があるな』
『なんだ、久嗣。あの毛糸に何かあるのか?』
『ああ。なぁ、凌也もわかるだろう?』
『もちろん。あの毛糸は俺が棚に並べたからな』
『なんだよ、何があるんだ?』
気になって仕方がない様子のユウキに、画面からユヅルたちの声が聞こえる。
ーあ、これ空色って書いてあるよ!
『えっ?』
ーあー、本当だ! 空良くんの色だよ。これならきっと悠木さんも喜ぶね。
『空色……』
『だから見る目があると言ったろう?』
確かにそうだ。自分の名前が入った色でマフラーを編んでユウキにプレゼントするなんて……。
ソラから自分のものだと宣言されているようなものだ。
これはユウキも嬉しくて当然だな。
『んっ? それはもしかして……?』
『はい。ロレーヌが弓弦くんの様子を見るのに使用しているのと同じものです。私と理央の家には全てに、実家には理央の部屋にだけつけているんです』
『それはありがたいな。じゃあ、少しだけ見せてもらえるか?』
私の言葉にミヅキは嬉々としてスマホを操作し始めた。
その様子をミヅキの父親もユウキとユウキの父親も普通に眺めていたから彼らも同じように愛しい相手の様子をいつも確認しているのだろう。
やっぱりミヅキの言った通り、ここにいる者はみんな似た者同士のようだ。
『さぁ、どうぞ』
ミヅキのスマホに部屋の様子が映し出されて、私とユウキはそれを覗き込んだ。
スマホから三人の声が聞こえてきて、耳を澄ました。
ーこれ、なぁに?
ー編み物に必要なものだよ。ほら、弓弦くんたち編み物をしてみたいって言ってたでしょう?
リオの言葉にユヅルとソラが笑顔になるのが見える。
『理央が編み物を教えたいというので必要なものを揃えておいたんですよ』
『そうか、それならこれから編んでくれるんだろうか?』
『そうですね。理央は自身で編むことはもちろん、教えるのも上手ですからね』
ユヅルが私のために編んでくれる。その気持ちだけで天に昇るほど嬉しい。
棒編みとかぎ編み、二つの編み方があるのは知っている。
母がよくコンサバトリーで編み物をしていたのをみていたからだ。
ユヅルは手袋を編みたいと言っていたけれど、初めて挑戦するにはかなりの難易度だ。
ー編み物に慣れるっていう意味でもマフラーから作るのは楽しいかも。編むのに慣れたら次は手袋に挑戦してみたらいいし。
ーそうだね! ねぇ、今ちょっとだけ理央くんが編んでいるところを見せてもらったりできる? 空良くんもみてみたいよね?
その言葉にソラもすぐに賛同した。
実際にリオが編むところを見るのは私も初めてだ。
だが、クリスマスプレゼントを渡し合おうと決めてから、当日までそこまで時間があったわけでもないのに、あれだけの量をあのクオリティで編んだリオの手捌きをこの目で見てみたい。
ーじゃあ、ちょっと簡単なやつ編んでみるね。
リオは紙袋から毛糸を取り出し、かぎ針で編み始めた。
そっとミヅキに視線を向けると、心配そうに見つめている。
何か不安ごとでもあるのだろうか?
気になりつつも画面に視線を戻すと、もうすでにいくつかのパーツが出来上がっているのが見える。
えっ? 何が起こったんだ?
驚きながら見つめると、リオの手がすごい勢いで動いているのが見える。
その動きに圧倒されている間に、
ーできたよ
リオの声が聞こえた。
その手には小さなウサギの編みぐるみができているのが見える。
『は、早いな』
『そうなんです。理央は施設で編み物の内職をさせられていたようで、理央の作品が高値で売れると分かってからは寝る間を惜しんで作らされていたんです。尋常ではない数のノルマを課せられ、ロボットのように編み物をさせられていて……私も知った時は驚きました。だから、あの手袋を作った時は、私がつきっきりでそばにいて時間を決めてやらせていたんです』
『そうだったのか……』
『最後のほうには理央もゆっくり編むことを理解してくれたんですが、さっきは早く見本を見せたくてつい昔の習性が出てしまったようです』
『なるほど』
だからあんなに心配そうな表情をしていたわけか……。
『でも、ミヅキ。編んでいる時のリオの顔を見たか? すごく楽しそうだったぞ。それは無理せずに編めるようになっている証じゃないか?』
私の言葉にミヅキの父もユウキたちも頷いていて、ミヅキもホッとしたようだ。
ー理央くん、すごいなー。僕にもできるかな?
ー大丈夫だよ。とりあえずマフラーを始めてみる?
素直にリオの凄さを褒める二人はリオとともにその場を離れ、毛糸がいっぱい並んだ棚に向かった。
『すごいな、あれも用意してくれたのか?』
『ええ。どれを選んでもいいようにいろんな色を揃えておきました』
本当にもてなしが素晴らしい。
ユヅルは私のためにどんな毛糸を選んでくれるのだろうな。
ドキドキしながら見守っていると、
ーあ、あれ! エヴァンさんに似合いそう!
ユヅルは嬉しそうに濃いグリーンの毛糸を選んでくれた。ユヅルが選んでくれた毛糸でマフラーを編んでくれる。これは最高の贅沢だな。
ー空良くんはどれにする?
ーうーん、どれも素敵で悩んじゃうな。でも、あの綺麗な水色はちょっと気になってる。
悩みながらもソラが手に取ったのは綺麗な水色。
『ほお、空良くんは見る目があるな』
『なんだ、久嗣。あの毛糸に何かあるのか?』
『ああ。なぁ、凌也もわかるだろう?』
『もちろん。あの毛糸は俺が棚に並べたからな』
『なんだよ、何があるんだ?』
気になって仕方がない様子のユウキに、画面からユヅルたちの声が聞こえる。
ーあ、これ空色って書いてあるよ!
『えっ?』
ーあー、本当だ! 空良くんの色だよ。これならきっと悠木さんも喜ぶね。
『空色……』
『だから見る目があると言ったろう?』
確かにそうだ。自分の名前が入った色でマフラーを編んでユウキにプレゼントするなんて……。
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