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二人のお祝い
<side久嗣>
「久嗣さん。凌也と理央の一歳のお祝いなんだけど……」
理央が十ヶ月を迎えた頃、麗花がそんな話題を出してきた。
一歳の祝いといえば、我が観月家では写真館で家族写真を撮り、一升餅を背負わせるという伝統行事を行う。
「一升餅は凌也はともかく、理央には可哀想ではないかしら?」
ベビーサークルの中で遊んでいる二人にチラリと視線を向ける。
確かに二人の大きさの差は歴然。
一ヶ月の差とは思えないほど体格が違いすぎる。
きっと凌也なら、一升餅を背負ったまま立ち上がりそうだ。
理央はきっと亀のように後ろに転んで元に戻れず泣いてしまいそうだな。
だがそれはそれでいい思い出になりそうな気もするが、泣く姿が想像できるのにわざわざやらせるのは確かに可哀想かもしれない。
「それじゃあ、麗花はどうしたい? 何か考えているのか?」
「あのね、私の母がいた地域でやっていた一歳のお祝いなんだけど……」
そう言って麗花が教えてくれたのは、私も聞いたことがある内容だった。
お金や筆、そろばんなどいくつかのアイテムを並べ、少し離れた場所からそれらを選びにいかせる。
最初に手に取ったもので、将来の才能や職業を占うというものだ。
「私の母は筆を取ったらしいわ」
そのおかげかわからないが、麗花の母は書道の師範の免許を持っているらしい。
「理央はそのお祝いをしたらどうかしら?」
「そうだな。二人とも同じことをする必要はないのだからそれでいいんじゃないか。一ヶ月違いだし、お祝いも二人一緒にしようか。そのほうが凌也も理央も喜ぶだろう」
理央と初めて会った時から凌也の執着は驚くものがあったが、月齢を重ねるとそれはさらに激しさを増した。
起きてから寝るまで……いや、寝ている間もずっと、片時も理央から離れることはない。
「それじゃあ写真撮影は凌也が一歳を迎えた日にして、お祝いは理央の誕生日にしましょうか」
「そうだな。別々の日のほうが子どもたちも疲れずに済むだろう」
というわけで日程が決まった。
「それじゃあ早速写真館を予約するわ。理央はドレスを着せようかしら。凌也も王子さまにして小さな結婚式のようにするのもいいわね」
麗花は浮かれた様子で写真館に予約を入れていた。
そこは桜守出身者なら必ず行くフォトスタジオ。
店主は桜城大学と同じ敷地内にある桜城芸術大学の出身で、伴侶は桜守出身のカップルだ。
箱入りの子女ばかりの桜守出身者に対して配慮が行き届いているおかげで、自然な笑顔の写真を撮ってくれる。
家族以外にはまだあまり慣れていない理央もあのスタジオなら安心して撮影に挑めるだろう。
写真は家族だけで撮るが、二人のお祝いには麗花の両親にも来てもらおう。
私の両親も生きていれば、二人の孫の可愛い姿に目を細めただろうがな。
凌也が生まれた時に報告に行ったきりだから、理央が一歳を迎えたら、家族で墓参りに行こうか。
きっと喜んでくれることだろう。
そうして、あっという間に一ヶ月が経ち、凌也の一歳の誕生日を迎えた。
十一ヶ月を待たずして歩き始めた凌也は理央と並ぶと兄のように見える。
だがそのおかげか、理央はいつも隣にいる凌也に自然と甘えるようになり、凌也はそれが嬉しくてたまらない様子だ。
「りお、あーん」
食事もおやつも気がつけば凌也が理央に食べさせていて、理央はいつも口を開けるだけ。
「おーちー」
ニコッと天使の笑顔を見せると、それだけで凌也は満足そうだ。
「よーあ。あー」
理央が自分の食べかけを指で摘んで凌也に差し出すと、凌也はまるでご馳走とでも言わんばかりに満面の笑顔でそれを口にする。
「おーちー?」
理央の問いかけに最高の笑顔で
「おいちー!」
と返す。
理央と出会う前の誰にも無関心だった凌也はもうどこにもいない。
理央への執着と独占欲はとんでもないものがあるが、理央の存在のおかげで凌也が子どもらしくなれたのだからよかったのだろう。時々、その執着が激しすぎて恐ろしくなることもあるが、天使のように可愛い理央がずっと隣にいればそういうものかもしれないと自分に言い聞かせている。
今日、二人のかわいらしい姿を写真に収めてもらったら、この部屋に飾ろうか。
きっと凌也も理央も喜んでくれることだろう。
「久嗣さん。凌也と理央の一歳のお祝いなんだけど……」
理央が十ヶ月を迎えた頃、麗花がそんな話題を出してきた。
一歳の祝いといえば、我が観月家では写真館で家族写真を撮り、一升餅を背負わせるという伝統行事を行う。
「一升餅は凌也はともかく、理央には可哀想ではないかしら?」
ベビーサークルの中で遊んでいる二人にチラリと視線を向ける。
確かに二人の大きさの差は歴然。
一ヶ月の差とは思えないほど体格が違いすぎる。
きっと凌也なら、一升餅を背負ったまま立ち上がりそうだ。
理央はきっと亀のように後ろに転んで元に戻れず泣いてしまいそうだな。
だがそれはそれでいい思い出になりそうな気もするが、泣く姿が想像できるのにわざわざやらせるのは確かに可哀想かもしれない。
「それじゃあ、麗花はどうしたい? 何か考えているのか?」
「あのね、私の母がいた地域でやっていた一歳のお祝いなんだけど……」
そう言って麗花が教えてくれたのは、私も聞いたことがある内容だった。
お金や筆、そろばんなどいくつかのアイテムを並べ、少し離れた場所からそれらを選びにいかせる。
最初に手に取ったもので、将来の才能や職業を占うというものだ。
「私の母は筆を取ったらしいわ」
そのおかげかわからないが、麗花の母は書道の師範の免許を持っているらしい。
「理央はそのお祝いをしたらどうかしら?」
「そうだな。二人とも同じことをする必要はないのだからそれでいいんじゃないか。一ヶ月違いだし、お祝いも二人一緒にしようか。そのほうが凌也も理央も喜ぶだろう」
理央と初めて会った時から凌也の執着は驚くものがあったが、月齢を重ねるとそれはさらに激しさを増した。
起きてから寝るまで……いや、寝ている間もずっと、片時も理央から離れることはない。
「それじゃあ写真撮影は凌也が一歳を迎えた日にして、お祝いは理央の誕生日にしましょうか」
「そうだな。別々の日のほうが子どもたちも疲れずに済むだろう」
というわけで日程が決まった。
「それじゃあ早速写真館を予約するわ。理央はドレスを着せようかしら。凌也も王子さまにして小さな結婚式のようにするのもいいわね」
麗花は浮かれた様子で写真館に予約を入れていた。
そこは桜守出身者なら必ず行くフォトスタジオ。
店主は桜城大学と同じ敷地内にある桜城芸術大学の出身で、伴侶は桜守出身のカップルだ。
箱入りの子女ばかりの桜守出身者に対して配慮が行き届いているおかげで、自然な笑顔の写真を撮ってくれる。
家族以外にはまだあまり慣れていない理央もあのスタジオなら安心して撮影に挑めるだろう。
写真は家族だけで撮るが、二人のお祝いには麗花の両親にも来てもらおう。
私の両親も生きていれば、二人の孫の可愛い姿に目を細めただろうがな。
凌也が生まれた時に報告に行ったきりだから、理央が一歳を迎えたら、家族で墓参りに行こうか。
きっと喜んでくれることだろう。
そうして、あっという間に一ヶ月が経ち、凌也の一歳の誕生日を迎えた。
十一ヶ月を待たずして歩き始めた凌也は理央と並ぶと兄のように見える。
だがそのおかげか、理央はいつも隣にいる凌也に自然と甘えるようになり、凌也はそれが嬉しくてたまらない様子だ。
「りお、あーん」
食事もおやつも気がつけば凌也が理央に食べさせていて、理央はいつも口を開けるだけ。
「おーちー」
ニコッと天使の笑顔を見せると、それだけで凌也は満足そうだ。
「よーあ。あー」
理央が自分の食べかけを指で摘んで凌也に差し出すと、凌也はまるでご馳走とでも言わんばかりに満面の笑顔でそれを口にする。
「おーちー?」
理央の問いかけに最高の笑顔で
「おいちー!」
と返す。
理央と出会う前の誰にも無関心だった凌也はもうどこにもいない。
理央への執着と独占欲はとんでもないものがあるが、理央の存在のおかげで凌也が子どもらしくなれたのだからよかったのだろう。時々、その執着が激しすぎて恐ろしくなることもあるが、天使のように可愛い理央がずっと隣にいればそういうものかもしれないと自分に言い聞かせている。
今日、二人のかわいらしい姿を写真に収めてもらったら、この部屋に飾ろうか。
きっと凌也も理央も喜んでくれることだろう。
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