297 / 297
番外編
公爵家の未来
<sideクレイ>
「クレイさま……アズールさまは、大丈夫でしょうか?」
「ティオ。落ち着け。義兄上もアントンもついているんだ。心配はいらないよ。無事に出産の報告が来るさ」
突然腹痛を訴え、緊急手術となったアズールのことを心配するティオにそう声をかけながらも、私も心の中でアズールと腹の子の無事を願い続けていた。
弟だから心配なのは当然だ。だが、それだけではない。
アズールにもし万が一のことがあれば、この国は確実に揺らぐ。
だから、なんとか無事に出産を終えて欲しい。ただそれだけだ。
夜は更けてきたが眠る気にもなれず、私とティオは部屋で報告を待ち続けた。
そして、どれくらいの時間が経っただろうか。
屋敷内が騒がしくなり始めた。
その気配に私はティオを残し、部屋を出た。
ちょうど近くを通っていたベンに声をかける。
「どうした? 何か進展はあったか?」
「はい。ただいまご報告に伺うところでございました。アズールさまは……」
その瞬間、胸が締め付けられる。ふっと、ベンの表情が明るくなる。
「無事にご出産されました。ただいま、旦那さまとロルフさま、ルルさまが産屋でお子さまと対面なさっておられます」
「おおっ、そうか! 生まれたか。よかった!」
あまりの喜びに抑えきれない感情が尻尾を揺らす。
「アズールも子も元気なのだな?」
「はい。それはご安心くださいませ」
おそらく今日はまだ会えないだろう。だが、元気だと聞くだけで安心だ。
「すぐにティオに教えてやろう」
私は部屋に戻り、まだ不安げな様子のティオを抱きしめた。
「ティオ。喜べ。無事に生まれたそうだ。アズールも子も元気だぞ」
私の言葉に、ティオは言葉を詰まらせながら大粒の涙を流した。
その表情にどれだけ心配していたか、どれだけこの出産を喜んでいるかが伝わってくる。
私はそんなティオをしっかりと抱きしめ、唇を重ねる。
そして、目に溜まった涙をそっと指で拭った。
「くれい、さま……ほ、んとうに、よかった……」
「ああ。ティオがそんなに喜んでくれて、私も嬉しいよ」
私たちはしばらく抱き合いながら、幸せに浸っていた。すると、私たちの部屋の扉を叩く音が聞こえた。
ティオと共に扉を開けると、そこには両親と可愛い甥っ子ロルフと姪っ子ルルの姿があった。
「今、いいか?」
「はい。中にどうぞ」
案内する側から、ロルフとルルが我先に、と声を上げてくる。
「かーいーおとーと、うまれちゃのー!」
「もふもふでー、かーいーの!」
その言葉にハッとして、両親を見る。
「父上。それはまこと、ですか?」
「ああ。神の御意志が生まれた。元気な男の子だ」
アズールが……次代の王となる子を出産したのか……
なんと、素晴らしい。
「お前たちにも対面させてやりたかったが、疲れさせるわけにはいかないからな。また明日にでも対面の機会を設けるから」
「はい。それはお気遣いなく。無事だと分かっただけで安心ですから」
「そうか。それで、悪いが今夜はロルフとルルの世話を頼む。一緒に寝てやってくれ。私たちは生まれた赤子の世話を頼まれているのだ」
アズールの身体を休ませるためには、義兄上の力が必要だからな。
ロルフとルルの世話まで回らないのは当然だ。
「はい。お任せください」
私がそう返事をしている間にも、ロルフとルルはティオに抱きつきに行っていた。
「ちおー、いっちょにねんねちよー!」
「かーいーあかちゃんのはなち、ちゅるー!」
そんな二人に抱きつかれて嬉しそうなティオを見ていると、愛おしさが込み上げてくる。
「じゃあ、頼んだぞ」
そう言って両親は部屋を出て行った。今から赤子を受け入れる体制を整えて、アズールたちの元に赤子を迎えに行くのだろう。これからしばらくこういう生活が続くのだろうな。
それにしても、神の御意志が生まれた今……公爵家の未来のために、ロルフのことを考えなければいけないだろうな。
ロルフを、私とティオの養子に……
それが実現する日が来るかもしれない。
「クレイさま……アズールさまは、大丈夫でしょうか?」
「ティオ。落ち着け。義兄上もアントンもついているんだ。心配はいらないよ。無事に出産の報告が来るさ」
突然腹痛を訴え、緊急手術となったアズールのことを心配するティオにそう声をかけながらも、私も心の中でアズールと腹の子の無事を願い続けていた。
弟だから心配なのは当然だ。だが、それだけではない。
アズールにもし万が一のことがあれば、この国は確実に揺らぐ。
だから、なんとか無事に出産を終えて欲しい。ただそれだけだ。
夜は更けてきたが眠る気にもなれず、私とティオは部屋で報告を待ち続けた。
そして、どれくらいの時間が経っただろうか。
屋敷内が騒がしくなり始めた。
その気配に私はティオを残し、部屋を出た。
ちょうど近くを通っていたベンに声をかける。
「どうした? 何か進展はあったか?」
「はい。ただいまご報告に伺うところでございました。アズールさまは……」
その瞬間、胸が締め付けられる。ふっと、ベンの表情が明るくなる。
「無事にご出産されました。ただいま、旦那さまとロルフさま、ルルさまが産屋でお子さまと対面なさっておられます」
「おおっ、そうか! 生まれたか。よかった!」
あまりの喜びに抑えきれない感情が尻尾を揺らす。
「アズールも子も元気なのだな?」
「はい。それはご安心くださいませ」
おそらく今日はまだ会えないだろう。だが、元気だと聞くだけで安心だ。
「すぐにティオに教えてやろう」
私は部屋に戻り、まだ不安げな様子のティオを抱きしめた。
「ティオ。喜べ。無事に生まれたそうだ。アズールも子も元気だぞ」
私の言葉に、ティオは言葉を詰まらせながら大粒の涙を流した。
その表情にどれだけ心配していたか、どれだけこの出産を喜んでいるかが伝わってくる。
私はそんなティオをしっかりと抱きしめ、唇を重ねる。
そして、目に溜まった涙をそっと指で拭った。
「くれい、さま……ほ、んとうに、よかった……」
「ああ。ティオがそんなに喜んでくれて、私も嬉しいよ」
私たちはしばらく抱き合いながら、幸せに浸っていた。すると、私たちの部屋の扉を叩く音が聞こえた。
ティオと共に扉を開けると、そこには両親と可愛い甥っ子ロルフと姪っ子ルルの姿があった。
「今、いいか?」
「はい。中にどうぞ」
案内する側から、ロルフとルルが我先に、と声を上げてくる。
「かーいーおとーと、うまれちゃのー!」
「もふもふでー、かーいーの!」
その言葉にハッとして、両親を見る。
「父上。それはまこと、ですか?」
「ああ。神の御意志が生まれた。元気な男の子だ」
アズールが……次代の王となる子を出産したのか……
なんと、素晴らしい。
「お前たちにも対面させてやりたかったが、疲れさせるわけにはいかないからな。また明日にでも対面の機会を設けるから」
「はい。それはお気遣いなく。無事だと分かっただけで安心ですから」
「そうか。それで、悪いが今夜はロルフとルルの世話を頼む。一緒に寝てやってくれ。私たちは生まれた赤子の世話を頼まれているのだ」
アズールの身体を休ませるためには、義兄上の力が必要だからな。
ロルフとルルの世話まで回らないのは当然だ。
「はい。お任せください」
私がそう返事をしている間にも、ロルフとルルはティオに抱きつきに行っていた。
「ちおー、いっちょにねんねちよー!」
「かーいーあかちゃんのはなち、ちゅるー!」
そんな二人に抱きつかれて嬉しそうなティオを見ていると、愛おしさが込み上げてくる。
「じゃあ、頼んだぞ」
そう言って両親は部屋を出て行った。今から赤子を受け入れる体制を整えて、アズールたちの元に赤子を迎えに行くのだろう。これからしばらくこういう生活が続くのだろうな。
それにしても、神の御意志が生まれた今……公爵家の未来のために、ロルフのことを考えなければいけないだろうな。
ロルフを、私とティオの養子に……
それが実現する日が来るかもしれない。
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(572件)
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
家族に忘れられていた第五王子は愛され生活を送る
りーさん
ファンタジー
アズール王国の王宮には、多くの王子や王女が住んでいる蒼星宮という宮がある。
その宮にはとある噂が広まっていた。併設されている図書館に子どもの幽霊が現れると。
そんなある日、図書館に出入りしていた第一王子は子どものような人影を見かける。
その時、父である国王にすら忘れられ、存在を知られていなかった第五王子の才覚が露になっていく。
追放されたオメガの食堂~嵐の夜に保護した銀狼の獣人王と幼いもふもふ孤児たちに手料理を振る舞ったら、溺愛されました~
水凪しおん
BL
名門貴族の生まれでありながら、オメガであることを理由に家族から見捨てられた青年・リオン。
彼は国境の森の奥深くで、身を隠すようにして小さな食堂を営んでいた。
ある嵐の夜。
激しい雨風に打たれながら食堂の扉を叩いたのは、大柄で威圧的な銀狼の獣人・ガレルと、彼に抱えられた幼い2人のもふもふ獣人の孤児たちだった。
警戒心も露わな子供たちと、不器用ながらも彼らを守ろうとするガレル。
リオンは彼らを食堂へ招き入れ、得意の温かい手料理を振る舞う。
「……うまい食事だった」
リオンの作る素朴で心温まる料理と、彼自身から漂う穏やかな匂いに、ガレルや子供たちは次第に心を開いていく。
誰からも必要とされないと思っていたリオンだったが、ガレルからの真っ直ぐな愛情と、子供たちからの無邪気な懐きによって、少しずつ自身の価値と居場所を見出していく。
美味しいご飯が紡ぐ、孤独だった青年と不器用な獣人王の、甘く温かいスローライフ・ラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
追放された宮廷錬金術師、辺境で気ままに土いじりしてたら神獣や幼馴染の天才騎士が集まり最強国家に〜今さら戻れと言われても〜
黒崎隼人
ファンタジー
「そこにいたか、役立たずの錬金術師。今日限りでこの王城から出て行ってもらう」
王国の結界を維持し、枯れた大地を豊かにする「失われた古代錬金術」。
その使い手であるルークは、自分の価値を理解しない第一王子レオンによって、あっさりと宮廷を追放されてしまう。
しかし、長年の酷使から解放されたルークの心は晴れやかだった。
「これで、やっと静かに眠れる」
自由を求めて最果ての「死の荒野」へと旅立ったルーク。
そこへ、すべてを捨てて追いかけてきた幼馴染の天才騎士セリアが合流する。
二人は何もない荒れ地を錬金術で瞬く間に緑豊かな大地へと変え、泥の巨人グランやもふもふの神獣シロを家族に迎え、美味しいパンを焼く気ままなスローライフをスタートさせた。
一方、ルークを失った王国は、結界が崩壊し大地が枯れ果て、未曾有の危機に瀕していた。
焦った王子が軍を率いてルークを連れ戻しにやってくるが、ルークの作った最強のゴーレムと神獣の前に、手も足も出ずに逃げ帰ることに。
気づけばルークの開拓した村は、難民を救い、近隣諸国も一目置く「最強の独立国家」へと発展していて――!?
これは、優しくて規格外な錬金術師が、大切な人たちと永遠の平穏を紡ぐ、最高に幸せな辺境スローライフ。
声を失った悪役令息は北の砦で覚醒する〜無詠唱結界で最強と呼ばれ、冷酷侯爵に囲われました〜
天気
BL
完結に向けて頑張ります
5月中旬頃完結予定です
その後は、サイドストーリーをちょこちょこ投稿していこうと思ってます
m‥·*"さま。コメントありがとうございます!
そうですね、必ず運命のつがいちゃんと会える予定ですね、
アデルのつがいちゃんはどんなウサちゃんかな。それも楽しみですね。
というわけでロルフは公爵家の後継に。次期国王と次期公爵どちらも国になくてはならない存在ですから。
みんなで大切に育てていきますね。もちろん可愛いルルも。
ルルがアズールのようにどんどん美人さんになったら、大変でしょうね。
ルーディーとロルフ、そしてアデルが認めた男としか結婚できないでしょうし(笑)
この三人を超える男が現れるのか……それも楽しみですね。
花粉症。今年は特にひどいと言いますよね。
私は幸い今のところ、花粉症に悩まされたことはないですが。
m‥·*"さま、どうぞご自愛ください。
続きもどうぞお楽しみに💕
四葩さま。コメントありがとうございます!
通常なら二世代連続での神の御意志誕生はあり得ないことなんですよね。
それだけこの家族が良かったってことですよね。
ルーディーとアズールの愛情の深さもいい結果になったかもしれませんね。
ふふ。アズールのおっぱいをいつまでも飲んでいるとルーディーの嫉妬がわきあがりそうなので(笑)
確かに離乳食は早そうwww
そして、ロルフ&ルルよりもおっきくなってしっかりした子どもになりそうなのが想像できますね。
アデルのウサギちゃんはどこかなぁ。
発表よりも先に生まれてて、っていうのも楽しそうですね。
年上だけどちっちゃいウサギちゃんと、おっきなアデルのカップル。
いいな、可愛い。でも庶民で生まれていたらびっくりはしちゃうでしょうね。
どこに生まれるかなぁ。
もしかしたらあそこかも(笑)
いぬぞ〜さま。コメントありがとうございます!
三人揃って同じ誕生日✨おめでたいですね🤗
本当、お兄ちゃんお姉ちゃんと同じ誕生日が良かったんでしょうね✨
確かにまっくちゅの実家の後を継いだ長男夫婦が妊娠中ですからね。
もしかしたらそこにウサギちゃんが✨✨
あそこに産まれたら環境としてはめちゃくちゃいいし、次期国王の伴侶としても最高ですね。