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第一章
アズールへのご褒美
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<sideルーディー>
測っている間、私の手からアズールが離れるのは危ないな。
この高さから落ちでもしたら大変だ。
やはり寝かせてから測るのがいいか。
「悪い。アズール。ちょっと抱き上げるぞ」
「ふぇ?」
広々としたソファーの座面に寝かせようとするが、
「やぁっ! やぁっ!」
手足をばたつかせ、必死な様子でソファーに下りようとしない。
「どうしたのだ?」
「うーっ! やぁっ!」
「私と、離れたくない、というのか?」
「だぁっ!」
「――っ!!」
ああ、私が抱き上げてすぐに下ろそうとしたから、寂しくなったに違いない。
もうっ、なんて可愛いんだ。
「アズール、後でいっぱい抱きしめて、尻尾に包んでやろう。だから、少しだけ測らせてくれ」
「うーっ、あいっ!」
私にいうことを理解してくれたアズールが返事をしてくれたと思ったら、今まで手足をばたつかせていたのが嘘のようにおとなしくソファーに寝転んでくれた。
「本当にいい子だな。アズールは。じゃあ、測っていくぞ」
「ふふっ、きゃっ、きゃっ、ふふっ」
メジャーが首元や手足に触れるたびにくすぐったいのかわいらしい声を上げる。
それを愛おしく思いながら、丁寧に時間をかけて全てのサイズを測り終えた。
「よし、これでいい。アズール。よく頑張ったな」
「だぁっ! だぁっ!」
「よし。頑張ったからアズールにご褒美をあげるとしよう。アズール、何か欲しいものはあるか?」
「うぅ?」
「ご褒美だよ。何がいい?」
「うーっ!」
「えっ? 私?」
「うーっ、ねんねっ」
「ねんね?」
ねんねとは一体どういう意味だろう?
食べ物か?
それとも身につけるものだろうか?
いや、まさかまだ1歳にも満たないアズールが宝飾品を欲しがるとは思えない。
だが、アズールの願いは絶対に叶えてあげなければ!
「アズール、ねんねとは一体なんだろうか? 教えてくれぬか?」
「うーっ! いっちょっ、ねんねっ」
アズールの小さな手が私の引っ張ろうとするが、到底連れて行けるはずもない。
どこかの場所を意味するのかもしれないが、私自身がわかっていないのだから、連れて行くこともできない。
うーん。
なかなかに赤子の話す言葉は難しいものがある。
こうなったら、あの方に聞くしかない。
「アズール、母上のところに連れて行こう」
「やぁっ! うーっ、いっちょっ!」
「いっちょ? さっきもそれを言っていたな? ねんねといっちょか……。またわからぬ言葉が増えたから聞きに行きたいのだが……。ああ、もしかしたらこのまま私が帰るのではと心配しているのか?
ふふっ。本当に可愛いな。
「アズール、心配しなくていい。アズールが私に何を言っているのかをアズールの母である公爵夫人に尋ねに行くだけだ。私はまだ帰ったりはしないよ。わかるか?」
「うーっ」
さっきまでの大騒ぎが嘘のように静かに私の腕に抱かれてくれる。
ふふっ。
本当に話が通じるのは助かるな。
私はアズールを抱いたまま、公爵夫人のいる部屋に向かった。
<sideアリーシャ(公爵夫人)>
ルーディー王子がアズールの元で過ごしている間は、私だけがゆったりと寛げる大事な時間。
ゆっくりと身体を休めたり、甘いものを食べながらのんびりと本を読んだり、マッサージをしてもらったり、そして、クレイとの時間を過ごしたり……もう、私にはなくてはならない大切な時間になっている。
アズールは運命の番である王子と過ごして精神が安定しているせいか、王子が城に帰ってしまった後も穏やかに過ごしてくれる。
大声で泣き喚いたり、いうことを聞かなかったりすることが一切ない。
あのクレイでさえ、1歳を過ぎるまでは大変だった。
その時と比べたら、今は本当に楽園のようだわ。
それにアズールのあの可愛らしさ。
生まれた時から可愛いと思ったけれど、日を増すごとにどんどん可愛らしくなっていく。
あの人が本当はアズールを王子にあげたくないと愚痴をこぼすのがよくわかる。
あんなに可愛らしい子をずっと手元に置いて育てておきたいものね。
まさかウサギ族を産むとは思わなかったけれど、あの王子ならアズールを一生大切にしてくれるわ。
心も晴れやかな気分で甘いお菓子と紅茶に癒されながら、本を読んでいると部屋の扉が叩かれた。
あら?
もうおかえりになる時間だったかしら?
それとも、何かご用事でもおありなのかしら?
王子にしては珍しい。
いつもなら、帰らなければいけないギリギリの時間までアズールと過ごしているというのに。
不思議に思いながらも返事をして扉を開けると、王子に抱っこされて嬉しそうなアズールが目に飛び込んできた。
「王子、どうなさったのです? 今日はもうおかえりですか?」
「ゆっくり休まれているところ、申し訳ない。実は公爵夫人にどうしてもお教えいただきたいことがあってここまで来たのだ」
「私が王子にお教えすることが何かございましたか?」
「実はな、さっき――――――。
というわけで、褒美に何がいいかを尋ねたら、『ねんね』と、何だったか……ああ、『いっちょ』だ。何度もその言葉を繰り返すのだが、なんとも意味がわからず、どうしたらアズールの願いを叶えてやれるかと公爵夫人に知恵をいただきに来たのだ」
「まぁまぁ、アズールがそんなことを? ご褒美にねだったのでございますか?」
「いや、私がなんでもいいと言ったのだ。それよりもやはり公爵夫人にはアズールの言ったことがわかるのだな? アズールは何を望んでいるのだ?」
ああ、本当にアズールは王子が好きなのね。
そして、王子もまたアズールを本当に好きになってくださってる。
私もヴィルに愛されていると思っていたけれど、王子のアズールへの愛はそれ以上かもしれない。
「王子。今日はこの屋敷にお泊りください」
「どういう意味だ?」
「アズールは王子と一緒に眠りたいと言っているのですよ」
「は――っ?? い、っしょに、眠る……?」
「はい。それがアズールの望んだご褒美です。王子はそれを叶えてくださるのでしょう?」
「いや、しかし……それは、」
「アズールを泣かせても良いのですか?」
「――っ!! それは、ダメだっ! だが……」
「では、今日はお泊りくださいね。お城にはこちらからご連絡をいたしておきます」
きっと今頃、王子の頭の中はとんでもないことになっているかもしれない。
けれど、決してアズールを傷つけることはされないとわかっている。
だからこそ、アズールが望むことを私も叶えてあげたい。
アズールにとって、幸せな夜を過ごせるはずだから。
測っている間、私の手からアズールが離れるのは危ないな。
この高さから落ちでもしたら大変だ。
やはり寝かせてから測るのがいいか。
「悪い。アズール。ちょっと抱き上げるぞ」
「ふぇ?」
広々としたソファーの座面に寝かせようとするが、
「やぁっ! やぁっ!」
手足をばたつかせ、必死な様子でソファーに下りようとしない。
「どうしたのだ?」
「うーっ! やぁっ!」
「私と、離れたくない、というのか?」
「だぁっ!」
「――っ!!」
ああ、私が抱き上げてすぐに下ろそうとしたから、寂しくなったに違いない。
もうっ、なんて可愛いんだ。
「アズール、後でいっぱい抱きしめて、尻尾に包んでやろう。だから、少しだけ測らせてくれ」
「うーっ、あいっ!」
私にいうことを理解してくれたアズールが返事をしてくれたと思ったら、今まで手足をばたつかせていたのが嘘のようにおとなしくソファーに寝転んでくれた。
「本当にいい子だな。アズールは。じゃあ、測っていくぞ」
「ふふっ、きゃっ、きゃっ、ふふっ」
メジャーが首元や手足に触れるたびにくすぐったいのかわいらしい声を上げる。
それを愛おしく思いながら、丁寧に時間をかけて全てのサイズを測り終えた。
「よし、これでいい。アズール。よく頑張ったな」
「だぁっ! だぁっ!」
「よし。頑張ったからアズールにご褒美をあげるとしよう。アズール、何か欲しいものはあるか?」
「うぅ?」
「ご褒美だよ。何がいい?」
「うーっ!」
「えっ? 私?」
「うーっ、ねんねっ」
「ねんね?」
ねんねとは一体どういう意味だろう?
食べ物か?
それとも身につけるものだろうか?
いや、まさかまだ1歳にも満たないアズールが宝飾品を欲しがるとは思えない。
だが、アズールの願いは絶対に叶えてあげなければ!
「アズール、ねんねとは一体なんだろうか? 教えてくれぬか?」
「うーっ! いっちょっ、ねんねっ」
アズールの小さな手が私の引っ張ろうとするが、到底連れて行けるはずもない。
どこかの場所を意味するのかもしれないが、私自身がわかっていないのだから、連れて行くこともできない。
うーん。
なかなかに赤子の話す言葉は難しいものがある。
こうなったら、あの方に聞くしかない。
「アズール、母上のところに連れて行こう」
「やぁっ! うーっ、いっちょっ!」
「いっちょ? さっきもそれを言っていたな? ねんねといっちょか……。またわからぬ言葉が増えたから聞きに行きたいのだが……。ああ、もしかしたらこのまま私が帰るのではと心配しているのか?
ふふっ。本当に可愛いな。
「アズール、心配しなくていい。アズールが私に何を言っているのかをアズールの母である公爵夫人に尋ねに行くだけだ。私はまだ帰ったりはしないよ。わかるか?」
「うーっ」
さっきまでの大騒ぎが嘘のように静かに私の腕に抱かれてくれる。
ふふっ。
本当に話が通じるのは助かるな。
私はアズールを抱いたまま、公爵夫人のいる部屋に向かった。
<sideアリーシャ(公爵夫人)>
ルーディー王子がアズールの元で過ごしている間は、私だけがゆったりと寛げる大事な時間。
ゆっくりと身体を休めたり、甘いものを食べながらのんびりと本を読んだり、マッサージをしてもらったり、そして、クレイとの時間を過ごしたり……もう、私にはなくてはならない大切な時間になっている。
アズールは運命の番である王子と過ごして精神が安定しているせいか、王子が城に帰ってしまった後も穏やかに過ごしてくれる。
大声で泣き喚いたり、いうことを聞かなかったりすることが一切ない。
あのクレイでさえ、1歳を過ぎるまでは大変だった。
その時と比べたら、今は本当に楽園のようだわ。
それにアズールのあの可愛らしさ。
生まれた時から可愛いと思ったけれど、日を増すごとにどんどん可愛らしくなっていく。
あの人が本当はアズールを王子にあげたくないと愚痴をこぼすのがよくわかる。
あんなに可愛らしい子をずっと手元に置いて育てておきたいものね。
まさかウサギ族を産むとは思わなかったけれど、あの王子ならアズールを一生大切にしてくれるわ。
心も晴れやかな気分で甘いお菓子と紅茶に癒されながら、本を読んでいると部屋の扉が叩かれた。
あら?
もうおかえりになる時間だったかしら?
それとも、何かご用事でもおありなのかしら?
王子にしては珍しい。
いつもなら、帰らなければいけないギリギリの時間までアズールと過ごしているというのに。
不思議に思いながらも返事をして扉を開けると、王子に抱っこされて嬉しそうなアズールが目に飛び込んできた。
「王子、どうなさったのです? 今日はもうおかえりですか?」
「ゆっくり休まれているところ、申し訳ない。実は公爵夫人にどうしてもお教えいただきたいことがあってここまで来たのだ」
「私が王子にお教えすることが何かございましたか?」
「実はな、さっき――――――。
というわけで、褒美に何がいいかを尋ねたら、『ねんね』と、何だったか……ああ、『いっちょ』だ。何度もその言葉を繰り返すのだが、なんとも意味がわからず、どうしたらアズールの願いを叶えてやれるかと公爵夫人に知恵をいただきに来たのだ」
「まぁまぁ、アズールがそんなことを? ご褒美にねだったのでございますか?」
「いや、私がなんでもいいと言ったのだ。それよりもやはり公爵夫人にはアズールの言ったことがわかるのだな? アズールは何を望んでいるのだ?」
ああ、本当にアズールは王子が好きなのね。
そして、王子もまたアズールを本当に好きになってくださってる。
私もヴィルに愛されていると思っていたけれど、王子のアズールへの愛はそれ以上かもしれない。
「王子。今日はこの屋敷にお泊りください」
「どういう意味だ?」
「アズールは王子と一緒に眠りたいと言っているのですよ」
「は――っ?? い、っしょに、眠る……?」
「はい。それがアズールの望んだご褒美です。王子はそれを叶えてくださるのでしょう?」
「いや、しかし……それは、」
「アズールを泣かせても良いのですか?」
「――っ!! それは、ダメだっ! だが……」
「では、今日はお泊りくださいね。お城にはこちらからご連絡をいたしておきます」
きっと今頃、王子の頭の中はとんでもないことになっているかもしれない。
けれど、決してアズールを傷つけることはされないとわかっている。
だからこそ、アズールが望むことを私も叶えてあげたい。
アズールにとって、幸せな夜を過ごせるはずだから。
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