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第一章
家族水入らず
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<sideアリーシャ(公爵夫人)>
アズールとの夜が大変だったことは、朝の王子を見れば一目瞭然だった。
きっと一睡もせずに自分を律していたんだろうと少し可哀想にさえ思ってしまった。
それでもアズールの表情はすごく楽しかったと笑顔に満ち溢れていて、アズールにとってはきっと楽しい思い出になったはず。
でも今朝のことを考えれば、きっとしばらくルーディー王子のお泊まりはないでしょうね。
それもまた仕方がないのかもしれない。
ヴィルがいうには、狼族の男は10歳でほぼ100%精通を迎え、精通を迎えたばかりのこの1年が一番自分で自分を制御できない年なのだそう。
裏を返せば、この一年を乗り越えればルーディー王子はアズールと同じ時間を過ごしても無闇矢鱈に興奮することも無くなるから、今よりはずっと楽になるみたい。
本当なら、ルーディー王子が自分で自分をうまく制御できるようになってから、アズールに会わせるべきだったと思う。
もちろん、ルーディー王子が獣人でなく、そして、アズールがウサギ族でなければ、たとえ運命の番とはいえ会わせたりはしなかった。
だけど、ウサギ族はすぐそばで運命の番の存在を感じていないと、うまく成長ができなくなるというのだから仕方がない。
ルーディー王子にはもうしばらく我慢してもらうしかないみたい。
アズールが1歳の誕生日を迎える頃、ルーディー王子もちょうど自分で制御できるようになるようだから、本当にもうしばらくの辛抱ね。
ルーディー王子はきっと今頃、お城で力尽きているはずね。
本当にお疲れさま。
王子があっという間に帰ってしまったのを寂しそうに見送るアズールには、流石に本当のことを伝えられないからヴィルが大切な用事だと教えてあげていた。
賢いアズールはそれを理解しているようだったけれど、やっぱり寂しかったのね。
そんなアズールの様子を見て、クレイが王子の代わりにアズールにご飯を食べさせてあげると言ってくれたの。
ふふっ。
やっぱりお兄ちゃんね。
優しいわ。
昨夜、嬉しそうにルーディー王子が食べさせてあげていたのを見て、自分もやってみたいと思っただけかもしれないけれど、それでもアズールが嬉しそうだからいいわ。
人参をまだうまく言えないアズールの言葉がわからずに泣かせてしまいそうになったのも、アズールに分けてもらった人参の味にクレイが絶望感たっぷりの表情をしているのも微笑ましかったわ。
「クレイはいい兄になってくれたな」
「ええ。本当に。私たち、幸せですわね」
「ああ。あんなに可愛い子たちを産んでくれたアリーシャのおかげだよ」
「ふふっ。ヴィルが二人にたっぷりと愛情を注いでくださるからですわ」
「私が一番たっぷりと愛情を注いでいるのはアリーシャだがな」
「まぁ、嬉しい」
二人の可愛い息子たちを愛でながら、ヴィルとの幸せな時を過ごしていると
「――ぅえ、母上……」
とクレイの声が聞こえた。
見れば目の前にアズールを抱っこしたクレイがいる。
「ああ、ごめんなさい。気づかなくて……って、クレイ、落としたら大変だわ」
「大丈夫、絶対に落としたりしないよ。だって、僕……アズールのにぃにだから」
「クレイ……」
考えてみたら、クレイがアズールを抱っこするのを見るのは初めてかもしれない。
いつもルーディー王子が抱っこしているのをみて、羨ましかったのかもしれないわ。
「クレイ、もう食事は終わったの?」
「はい。だから、アズールを連れてお庭に散歩に行こうかと思って」
「じゃあ、お母さまもついていくわ」
「大丈夫、二人だけで行けるよ」
「お家の中はともかく、お外はお庭であっても二人はダメよ。危ないものも多いし」
「えーっ、でもアズールとお散歩したいです」
「じゃあ、4人で行くとしよう。たまには家族水入らずもいいだろう」
その言葉に誰よりも嬉しそうな声を上げたのはアズールだった。
「きゃっ! きゃっ! おちゃんぽ、いくぅーっ!!」
「わっ!!」
アズールが急に手足をばたつかせたものだから、クレイの小さな腕から滑り落ちそうになって、私は思わず目を瞑ってしまったの。
あっ!
母親ならこういう時助けなくてどうするの!
自分で自分を叱りつけながら焦って目を開けると、
「ふぅ……危機一髪だったな」
アズールとクレイが二人ともヴィルの腕の中にいた。
どうなったかよくわからないけれど、アズールが落ちそうになった瞬間にクレイごと抱きかかえたみたい。
さすがヴィル。
私の愛しい旦那さまだわ。
「父上、僕もう5歳なのに抱っこだなんて恥ずかしいですよ」
アズールの手前、クレイはそう言っていたけれど表情はとっても嬉しそうだったわ。
だってクレイもまだ5歳。
まだまだヴィルや私に甘えてもいい頃よね。
4人で歩く庭は、いつもよりもずっと明るく見えた。
ふふっ。
思いがけず家族水入らずでの時間を過ごすことになったけれど、これもいい思い出かしらね。
アズールとの夜が大変だったことは、朝の王子を見れば一目瞭然だった。
きっと一睡もせずに自分を律していたんだろうと少し可哀想にさえ思ってしまった。
それでもアズールの表情はすごく楽しかったと笑顔に満ち溢れていて、アズールにとってはきっと楽しい思い出になったはず。
でも今朝のことを考えれば、きっとしばらくルーディー王子のお泊まりはないでしょうね。
それもまた仕方がないのかもしれない。
ヴィルがいうには、狼族の男は10歳でほぼ100%精通を迎え、精通を迎えたばかりのこの1年が一番自分で自分を制御できない年なのだそう。
裏を返せば、この一年を乗り越えればルーディー王子はアズールと同じ時間を過ごしても無闇矢鱈に興奮することも無くなるから、今よりはずっと楽になるみたい。
本当なら、ルーディー王子が自分で自分をうまく制御できるようになってから、アズールに会わせるべきだったと思う。
もちろん、ルーディー王子が獣人でなく、そして、アズールがウサギ族でなければ、たとえ運命の番とはいえ会わせたりはしなかった。
だけど、ウサギ族はすぐそばで運命の番の存在を感じていないと、うまく成長ができなくなるというのだから仕方がない。
ルーディー王子にはもうしばらく我慢してもらうしかないみたい。
アズールが1歳の誕生日を迎える頃、ルーディー王子もちょうど自分で制御できるようになるようだから、本当にもうしばらくの辛抱ね。
ルーディー王子はきっと今頃、お城で力尽きているはずね。
本当にお疲れさま。
王子があっという間に帰ってしまったのを寂しそうに見送るアズールには、流石に本当のことを伝えられないからヴィルが大切な用事だと教えてあげていた。
賢いアズールはそれを理解しているようだったけれど、やっぱり寂しかったのね。
そんなアズールの様子を見て、クレイが王子の代わりにアズールにご飯を食べさせてあげると言ってくれたの。
ふふっ。
やっぱりお兄ちゃんね。
優しいわ。
昨夜、嬉しそうにルーディー王子が食べさせてあげていたのを見て、自分もやってみたいと思っただけかもしれないけれど、それでもアズールが嬉しそうだからいいわ。
人参をまだうまく言えないアズールの言葉がわからずに泣かせてしまいそうになったのも、アズールに分けてもらった人参の味にクレイが絶望感たっぷりの表情をしているのも微笑ましかったわ。
「クレイはいい兄になってくれたな」
「ええ。本当に。私たち、幸せですわね」
「ああ。あんなに可愛い子たちを産んでくれたアリーシャのおかげだよ」
「ふふっ。ヴィルが二人にたっぷりと愛情を注いでくださるからですわ」
「私が一番たっぷりと愛情を注いでいるのはアリーシャだがな」
「まぁ、嬉しい」
二人の可愛い息子たちを愛でながら、ヴィルとの幸せな時を過ごしていると
「――ぅえ、母上……」
とクレイの声が聞こえた。
見れば目の前にアズールを抱っこしたクレイがいる。
「ああ、ごめんなさい。気づかなくて……って、クレイ、落としたら大変だわ」
「大丈夫、絶対に落としたりしないよ。だって、僕……アズールのにぃにだから」
「クレイ……」
考えてみたら、クレイがアズールを抱っこするのを見るのは初めてかもしれない。
いつもルーディー王子が抱っこしているのをみて、羨ましかったのかもしれないわ。
「クレイ、もう食事は終わったの?」
「はい。だから、アズールを連れてお庭に散歩に行こうかと思って」
「じゃあ、お母さまもついていくわ」
「大丈夫、二人だけで行けるよ」
「お家の中はともかく、お外はお庭であっても二人はダメよ。危ないものも多いし」
「えーっ、でもアズールとお散歩したいです」
「じゃあ、4人で行くとしよう。たまには家族水入らずもいいだろう」
その言葉に誰よりも嬉しそうな声を上げたのはアズールだった。
「きゃっ! きゃっ! おちゃんぽ、いくぅーっ!!」
「わっ!!」
アズールが急に手足をばたつかせたものだから、クレイの小さな腕から滑り落ちそうになって、私は思わず目を瞑ってしまったの。
あっ!
母親ならこういう時助けなくてどうするの!
自分で自分を叱りつけながら焦って目を開けると、
「ふぅ……危機一髪だったな」
アズールとクレイが二人ともヴィルの腕の中にいた。
どうなったかよくわからないけれど、アズールが落ちそうになった瞬間にクレイごと抱きかかえたみたい。
さすがヴィル。
私の愛しい旦那さまだわ。
「父上、僕もう5歳なのに抱っこだなんて恥ずかしいですよ」
アズールの手前、クレイはそう言っていたけれど表情はとっても嬉しそうだったわ。
だってクレイもまだ5歳。
まだまだヴィルや私に甘えてもいい頃よね。
4人で歩く庭は、いつもよりもずっと明るく見えた。
ふふっ。
思いがけず家族水入らずでの時間を過ごすことになったけれど、これもいい思い出かしらね。
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