真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

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第一章

馴れ初め

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<sideルーディー>

楽しい時間はあっという間にすぎ、私はアズールを上着に隠し、アズールの顔だけを出した状態で部屋を出た。
すぐにマクシミリアンが駆け寄ってくる。
どうやら、私たちの部屋の外でずっと見守ってくれていたようだ。

私はアズールを決して危険な目には遭わせないと誓えるし、アズールのそばから決して離れたりはしないが、我々の周りを常に監視してくれている目があるというのは、実に安心できるものだな。

しかも、あれほど騒ついていた店内が静かになっている。
我々の姿を見ても声を出そうとする者が現れないばかりか、私への視線もなんだか穏やかになっている気がする。
なんというか、怯えた様子が感じられないのだ。

ここに入った時はあれほど、嫌な視線を感じていたというのに……。

もしかしたら、マクシミリアンが?

私のことをきちんと理解してくれて、ここにいる者たちにも話をしてくれたのだろう。
きっとそうに違いない。

やはり爺の孫だな。
アズールの護衛騎士にマクシミリアンを推薦してくれて本当によかった。

あとで爺にもお礼を言っておこう。

「店主。突然邪魔して迷惑をかけたな」

「そんなっ、滅相もございません」

「アズールがここのケーキを大変喜んでいた。私も食べたがとても美味かったぞ。またアズールともに邪魔するが、その時も頼む」

「は、はい。身に余るお言葉をいただきありがとうございます。次回もぜひお待ちしております」

深々と頭をさげる店主も来た時とは表情も視線も全く違う。
やはりマクシミリアンのおかげか。

本当にありがたいことだな。


「どうだ、アズール。外の世界は楽しかったか?」

店からの帰り道、私の上着の中から顔だけ出して、好奇心旺盛にキョロキョロと辺りを見回しているアズールに声をかけると、

ちゅごくすごく、たのちぃよ」

と笑顔で見上げてくれた。

その笑顔のなんたるかわいらしいことか。

そのまま唇を奪ってしまいたいくらい可愛らしいが、自分にダメだと一喝して頬へのキスに留めておく。

アズールの柔らかく滑滑な頬に口を当てると、アズールは嬉しそうに笑った。

「るー、あじゅーるも、ちゅるするー」

「アズールも?」

驚いている間に、アズールは私の上着から身を乗り出して、私の顔を撫で回しながら頬にキスをしてくれた。

「ふふっ。るー、もふもふぅー」

きっとアズールにとっては私の頬の毛に唇が触れるのが楽しいのだろう。
だが、それでもいい。
アズールの方から、人前にも関わらずキスをしてくれたのだから。

今日だけでも、アズールがどれだけ私を愛してくれているか、そして、私たちがどれだけ愛し合っているかを皆に見せつけることができたはずだ。

マクシミリアンもそれに加えて話をしてくれたのだろうし、今日の外出はかなりの収穫だったな。

嬉しそうなアズールを抱っこしながら、公爵家への道を歩いていると腕の中のアズールが少し重くなった気がした。

そっと視線を向けると、アズールが可愛らしく耳をぴこぴこと揺らしながら眠っているのが見える。

スゥスゥと可愛らしい寝息も聞こえる。

ああ、もう本当に……これを幸せな時間というのだろうな。

「マクシミリアン、其方の護衛はよかったぞ。これからもこの調子でしっかり頼む」

「はっ。このマクシミリアン、全身全霊でアズールさまをお守りいたします」

「お前を伴侶に選んだヴェルナーは見る目があるな。どちらから声をかけたのだ?」

「えっ? それは……」

マクシミリアンは最初口篭っていたが、

「お互いに愛するパートナーを手に入れたもの同士、話をするのは構わんだろう?」

というと、二人の馴れ初めを教えてくれた。

「祖父がルーディーさまの遊び相手にと私をたまにお城に連れて行ってくれていたのを覚えていらっしゃいますか?」

「ああ、そんなことがあったな」

「ある時、ルーディーさまとお会いするためにお城に向かったところ、当時の騎士団長のオスカー殿に連れられて陛下の元に挨拶に来られていた方がいたのです。それが最年少で騎士団に入団が決まったヴェルナー……団長だったんですよ。そこで団長の姿を見た瞬間、私のパートナーは団長だと分かったのです。その時私はまだ6歳でした」

「なるほど。そこからずっと重いつつけていたというわけか。その気持ちはよくわかるな。私もアズールの姿を一目見た瞬間、雷が落ちたような衝撃を受けたものだ」

「そうです! そんな衝撃を受けて絶対に彼をパートナーにすると心に誓ったのです」

「それはまた行動的だな。あ、無理して団長と言わずともいつものように名前で呼んだらいい」

「はい。それでは失礼致します。祖父のおかげでヴェルナーにも出会えましたし、そして今回はアズールさまの専属護衛にもなることができました。祖父には足を向けて寝られません。あっと、話がそれましたが、無事に騎士団に入団してすぐに私の方から声をかけました。さすがにヴェルナーも驚きを隠せない様子でしたが、逆にそれがよかったようです」

「よかった、というと?」

「自分如きが相手にされないだろうと皆恐れ慄いて、今までヴェルナーに声をかけるものがいなかったのですよ。だから、私が声をかけるまでヴェルナーは誰ともお付き合いはされていなかったようです」

「ほぉ、それはそれは……。よかったな」

騎士団に入ると、通常の婚姻とは違う決まりがある。
いつなんとき、訓練で命を落とすかもしれない騎士は伴侶が未亡人になってしまうのを防ぐために、外部との婚姻は認められていない。
同じ騎士同士で付き合ったり、パートナーを見つけたりして閉鎖的な空間を楽しんでいるのだ。

だから、騎士として入団すれば数人の経験があるのはザラだと聞く。
それが誰とも経験がないとは……本当に驚くべきことだ。

「必死に口説き落として、なんとか付き合うことを了承してくれたのですが……ヴェルナーが私の相手だということが騎士団の中で広まってしまうと、団長としての威厳がなくなるから恥ずかしいと……だから内緒にできないのなら付き合えないと言われてしまいまして……それで、隠していたのです」

「なるほど。そういうことだったか」

「陛下には最初から運命の相手だということはもうしておりましたが、今回の件でヴォルフ公爵、それに王子にも知られてしまいました。ですが私としてはこれがいい機会だと思っているのです。私は早くヴェルナーが私のものだと見せびらかしたいと思っていましたから」

爺はそれが狙いだったのだろうな。
なかなか奥手な孫カップルのために一肌脱いだというわけか。
本当にさすがだな、爺は。
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