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第一章
甘い匂いに包まれて
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<sideルーディー>
「王子。少し宜しいでしょうか?」
風呂から上がり、もう寝るだけになった頃、ヴェルナーが部屋に来たのは先ほどの件の報告だろう。
すぐに部屋に入れ、どうなったかと尋ねると女将とのやりとりを聞かせてくれた。
「なるほど。ヴェルナー、お前も標的だったか」
「はい。女将とあの女性たち三人は地下牢に閉じ込めて見張りをつけています。王都からの応援の騎士に引き渡し次第、見張りを行っている騎士たちは我々に合流することになります。我々は先に進みましょう」
「そうだな。こんなことで足止めを食らいたくはない。なんせアズールが私の帰りを待っているのだからな。父上には私からも早馬を出しておこう」
「はい。そうしていただけると幸いにございます」
「ご苦労だったな。ヴェルナーも交代で休んでくれていいぞ」
「はい。王子もどうぞごゆっくりお休みください」
ヴェルナーが早急に片付けてくれたおかげで、ゆっくりと休めそうだ。
ベッドに横になり、考えるのはアズールのこと。
普段なら何かあればすぐに駆けつけられる場所にいたのに。
これからはどんどんアズールとの距離が離れていくのだ。
国王となるのに必要なこととはいえ、やはり運命の番と物理的に離れるのは不安になるものだ。
アズールも私と同じように不安がっていないだろうか。
あのブランケットが少しでもアズールの心の支えになっているといいのだが。
アズール……。
まずい、アズールのことを考えるだけで昂ってきた。
このまま出さずにいるのは身体に悪いな。
私はヴェルナーたちにも触れさせないように持ってきた荷物の中から、一つ目の荷物を取り出した。
特殊加工が施された袋から取り出したのは、ブランケット。
これはただのブランケットではない。
私がアズールに渡し、アズールから舞い戻ってきた極上のブランケットだ。
広げるだけでアズールの匂いに包まれる。
匂いだけではない。
ブランケットの四隅には、アズールの噛み跡がある。
これはアズールの歯が生え始めた頃からの癖なのだ。
歯が生え出してむず痒かったのか、寝ている間にブランケットを噛んでいたのだが、綺麗に生えそろってもその癖が直ることはなかった。
眠っている時だけの癖だから特に気にするような癖ではないし、何より私にとっては最高の褒美となるのだから直させる必要もない。
なにしろアズールが噛んでくれるおかげで、アズールの唾液がブランケットに染み込んでいるのだから。
私の匂いがなくなったと返されるたびに、私には逆にアズールの匂いが染み付いたブランケットをもらえるなんて、毎回アズールから贈り物をもらっているのと同じなのだ。
まだ成人どころか、精通もしていないアズールの甘い匂いは運命の番である私にしかわからないほど微々たる匂いだ。
だが、私は獣人。
その辺の者たちよりも数百倍もの匂いを感じ取ることができる。
アズールの噛み跡を口に含み、アズールが身体に強く巻き付けていたところの匂いを嗅ぎながら、自分の昂りを扱けばあっという間に欲を放出できる。
それを数回繰り返して、ようやく収まりがついた昂りをその極上のブランケットで一滴も残さずに綺麗に拭い取ると、なんとか満足した。
これでスッキリと眠れそうだ。
アズールの唾液と匂いと、そして私の欲に塗れたブランケットを綺麗に畳んで先ほどの袋に戻す。
アズールの匂いがついた極上のブランケットはまだあと10袋残っている。
私にとって必要な荷物はこれだけだ。
厳重に私の荷物にしまい込んでから、私はようやく眠りについた。
アズール、私はずっとアズールのことだけを思っているぞ。
<sideフィデリオ(爺)>
「まっくす、これ、どうするの?」
「はい。こちらをゆっくりとこのバロンに差し込んでください」
「こう?」
「ええ、お上手ですよ」
「こっちは?」
「こちらを持ってそこの穴に入れるのです」
「こう?」
「そうです、お上手ですよ」
ようやくバロンを膨らませることができたアズールさまはご機嫌なご様子で、今度は形づくりの練習に入られた。
アズールさまはすぐにルーディーさまにそっくりなバロンをお作りになりたかったようだが、流石にそれは難しい。
まずは手慣らしで他のものを作ってみましょうというマクシミリアンの説明に素直に頷かれた。
まずは花が簡単だろうということで先ほどからマクシミリアンが自分のを作りつつ、アズールさまにお教えしているが、一枚の紙で王冠をさっと作れるほどの手先の器用さをお持ちだからか、初めてのバロンクンストとは思えないほど綺麗な形になっている。
さすがだ。
やはり『神の御意志』であるルーディーさまのご伴侶となるべく、この世にお生まれになったお方だ。
あの王冠の作り方をどこで学ばれたのかとお尋ねした時、何か重要なことをお隠しになったような気がした。
本来ならば隠すべきことではないことをどうしてお隠しになったのか……。
まだ話す時期ではないと思われたのか……。
それとも、話しても我々には理解ができないことだと思われたのか……。
いずれにしてもアズールさまがご自身のお気持ちでお話にならないとお決めになったのだから、それを深追いすることはしなかった。
もしかしたら、アズールさまが生まれながらに賢いのは、『神の御意志』であるルーディーさまと同様に、アズールさまにも神さまから何かしらお授けものがあったのかもしれない。
そうだとすれば、全てに納得がいく。
アズールさまのこれからの成長が楽しみでならないな。
「王子。少し宜しいでしょうか?」
風呂から上がり、もう寝るだけになった頃、ヴェルナーが部屋に来たのは先ほどの件の報告だろう。
すぐに部屋に入れ、どうなったかと尋ねると女将とのやりとりを聞かせてくれた。
「なるほど。ヴェルナー、お前も標的だったか」
「はい。女将とあの女性たち三人は地下牢に閉じ込めて見張りをつけています。王都からの応援の騎士に引き渡し次第、見張りを行っている騎士たちは我々に合流することになります。我々は先に進みましょう」
「そうだな。こんなことで足止めを食らいたくはない。なんせアズールが私の帰りを待っているのだからな。父上には私からも早馬を出しておこう」
「はい。そうしていただけると幸いにございます」
「ご苦労だったな。ヴェルナーも交代で休んでくれていいぞ」
「はい。王子もどうぞごゆっくりお休みください」
ヴェルナーが早急に片付けてくれたおかげで、ゆっくりと休めそうだ。
ベッドに横になり、考えるのはアズールのこと。
普段なら何かあればすぐに駆けつけられる場所にいたのに。
これからはどんどんアズールとの距離が離れていくのだ。
国王となるのに必要なこととはいえ、やはり運命の番と物理的に離れるのは不安になるものだ。
アズールも私と同じように不安がっていないだろうか。
あのブランケットが少しでもアズールの心の支えになっているといいのだが。
アズール……。
まずい、アズールのことを考えるだけで昂ってきた。
このまま出さずにいるのは身体に悪いな。
私はヴェルナーたちにも触れさせないように持ってきた荷物の中から、一つ目の荷物を取り出した。
特殊加工が施された袋から取り出したのは、ブランケット。
これはただのブランケットではない。
私がアズールに渡し、アズールから舞い戻ってきた極上のブランケットだ。
広げるだけでアズールの匂いに包まれる。
匂いだけではない。
ブランケットの四隅には、アズールの噛み跡がある。
これはアズールの歯が生え始めた頃からの癖なのだ。
歯が生え出してむず痒かったのか、寝ている間にブランケットを噛んでいたのだが、綺麗に生えそろってもその癖が直ることはなかった。
眠っている時だけの癖だから特に気にするような癖ではないし、何より私にとっては最高の褒美となるのだから直させる必要もない。
なにしろアズールが噛んでくれるおかげで、アズールの唾液がブランケットに染み込んでいるのだから。
私の匂いがなくなったと返されるたびに、私には逆にアズールの匂いが染み付いたブランケットをもらえるなんて、毎回アズールから贈り物をもらっているのと同じなのだ。
まだ成人どころか、精通もしていないアズールの甘い匂いは運命の番である私にしかわからないほど微々たる匂いだ。
だが、私は獣人。
その辺の者たちよりも数百倍もの匂いを感じ取ることができる。
アズールの噛み跡を口に含み、アズールが身体に強く巻き付けていたところの匂いを嗅ぎながら、自分の昂りを扱けばあっという間に欲を放出できる。
それを数回繰り返して、ようやく収まりがついた昂りをその極上のブランケットで一滴も残さずに綺麗に拭い取ると、なんとか満足した。
これでスッキリと眠れそうだ。
アズールの唾液と匂いと、そして私の欲に塗れたブランケットを綺麗に畳んで先ほどの袋に戻す。
アズールの匂いがついた極上のブランケットはまだあと10袋残っている。
私にとって必要な荷物はこれだけだ。
厳重に私の荷物にしまい込んでから、私はようやく眠りについた。
アズール、私はずっとアズールのことだけを思っているぞ。
<sideフィデリオ(爺)>
「まっくす、これ、どうするの?」
「はい。こちらをゆっくりとこのバロンに差し込んでください」
「こう?」
「ええ、お上手ですよ」
「こっちは?」
「こちらを持ってそこの穴に入れるのです」
「こう?」
「そうです、お上手ですよ」
ようやくバロンを膨らませることができたアズールさまはご機嫌なご様子で、今度は形づくりの練習に入られた。
アズールさまはすぐにルーディーさまにそっくりなバロンをお作りになりたかったようだが、流石にそれは難しい。
まずは手慣らしで他のものを作ってみましょうというマクシミリアンの説明に素直に頷かれた。
まずは花が簡単だろうということで先ほどからマクシミリアンが自分のを作りつつ、アズールさまにお教えしているが、一枚の紙で王冠をさっと作れるほどの手先の器用さをお持ちだからか、初めてのバロンクンストとは思えないほど綺麗な形になっている。
さすがだ。
やはり『神の御意志』であるルーディーさまのご伴侶となるべく、この世にお生まれになったお方だ。
あの王冠の作り方をどこで学ばれたのかとお尋ねした時、何か重要なことをお隠しになったような気がした。
本来ならば隠すべきことではないことをどうしてお隠しになったのか……。
まだ話す時期ではないと思われたのか……。
それとも、話しても我々には理解ができないことだと思われたのか……。
いずれにしてもアズールさまがご自身のお気持ちでお話にならないとお決めになったのだから、それを深追いすることはしなかった。
もしかしたら、アズールさまが生まれながらに賢いのは、『神の御意志』であるルーディーさまと同様に、アズールさまにも神さまから何かしらお授けものがあったのかもしれない。
そうだとすれば、全てに納得がいく。
アズールさまのこれからの成長が楽しみでならないな。
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