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第一章
約束を守りたい
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<sideアズール>
「よかったわね、アズール」
「うん。あっ、ルーが、かえってくるなら、はやくじゅんび、しないと!」
慌てて飛び起きようとしたけれど、目の前が暗くなってフラフラしてしまう。
「ダメよ、まだ無理しちゃ」
「でも……」
まだ帰ってこないと思っていたから、まだルーを迎える準備ができていない。
こんなんじゃ、ルーを驚かせて喜ばせられない。
「ぼく……なにもできない……」
「大丈夫よ。ねぇ、マクシミリアン」
「はい。アズールさまがすでにお作りになっていたバロンだけで十分飾れるほどはできておりましたし、それはもう広間に飾ってございます。ケーキも後はアズールさまが仕上げをなさるだけになっておりますので、もう少しおやすみされましても王子がお帰りになるまでには十分間に合いますよ」
「ほんとう?」
「はい。ですから、今はごゆっくりおやすみください」
「じゃあ、ぼく……おかあさまと、おとうさまと、いっしょにおねんねしたいの。いい?」
「ええ、もちろんいいわよ。ねぇ、あなた」
「ああ。だが、この部屋で一緒に寝るわけにはいかないから、私たちの部屋に行こう」
なぜかお父さまは僕がいるこの寝室に入ってから、キョロキョロとして落ち着きがないように見える。
お父さまたちのお部屋とあんまり変わらないように見えるけれど、何かおかしいところがあるのかな?
「?? ここでも、さんにんで、ねられるよ」
「んっ? いや、そうなんだが……私が……そう、私が枕が変わると眠れないんだ。だから、アズール。私たちのベッドで寝てくれるか?」
「ふふっ。おとうさま、こどもみたい。じゃあ、ぼくがあっちでねてあげる」
そう言って、ルーから貰ったブランケットを持って起きあがろうとすると、
「あ、アズール。そ、それは持って行かないほうがいいんじゃないか?」
とお父さまが駆け寄ってくる。
「えっ……どうして?」
「えっ……いや、それは……」
「ルーが、いないあいだ、ルーだとおもってねてって、いってたよ。ルー、つれてっちゃ、だめ?」
「う――っ、だがな……」
「あずーる、おやくそく、まもりたい……だめ?」
お父さまとお母さまと一緒に寝たいけれど、ルーのブランケットなしじゃ眠れる気がしない。
だって、ずっとルーから貰ったブランケットと一緒に寝ていたんだもん。
「ぐぅ――っ、し、仕方がないな……いいぞ」
「わぁーっ! おとうさま、ありがとう!」
「うぐぅーっ!!」
嬉しくてブランケットを持ったまま、おとうさまに抱きつくと、なぜかわからないけれどお父さまは苦しそうな声をあげていた。
<sideヴィルヘルム(ヴォルフ公爵)>
王子からアズールに早馬が届いたと聞けば、帰りの日時の報告に決まっている。
体調を崩して寝ていたとしても、帰ってくるとわかれば喜ぶに違いない。
それがわかっていたから、マクシミリアンがアズールの寝室に入るのを許可したのだ。
とはいえ、アリーシャとアズールのいる寝室にマクシミリアンだけを入れるわけにはいかず、私もついていったのだが、できることならここには入りたくなかった。
なぜなら、あの匂いだ。
ただでさえ、いつもルーディー王子の匂いを纏っていたアズールだが、今回の匂いは今までのものとは比べ物にならないほどの威力を放っていた。
王子がお発ちになったあと、王子から頂いたブランケットをアズールが被った瞬間、身体中の毛が逆立つような感覚を味わった。
こんなすごい威力を放っているものと同じ空間にはいられない。
急いで部屋に持っていくようにいったまではよかったが、アズールはそれに巻きついたまま寝ていたようで、たっぷりと王子の匂いを纏って部屋から出てきた。
騎士であるマクシミリアンは匂いに対抗できるような訓練を重ねているし、アリーシャはアズールの母であるから威嚇の対象にはならない。
フィデリオ殿のように生殖能力の弱くなった年配者も同様に匂いだけではそこまで恐怖を感じないだろう。
だから、皆はアズールのそばに近寄れるが、私は違う。
アズールに対して決してそのような間違いなどあり得ないのだが、残念なことに父親である私も威嚇の対象になってしまっているのだ。
それはどうしようもないことだ。
だから、この数日できるだけアズールから離れて過ごしていたが、体調が悪くなったのなら話は別だ。
父として守ってあげたいと思うのは当然だろう。
アズールから、私とアリーシャと一緒に寝たいと望まれて何を断る理由がある?
もちろん三人で幸せを噛み締めながら寝たい。
そのためにはこの部屋ではダメだ。
ルーディー王子の匂いに占領されたこの部屋では一生眠れる気がしない。
だから、なんとか理由をつけて私たちの部屋で寝ようと持ちかけたが、アズールはあの史上最強最恐に王子の匂いがたっぷりと染み込んだブランケットを私たちの寝室に持ち込もうとする。
それだけは勘弁してくれ!!
必死の思いで止めさせようとするが、アズールは王子との約束を守りたいと可愛らしい目で訴えてくる。
どうする?
どうするべきだ?
あの可愛らしい目を涙で濡らすわけにはいかない。
これでもヴォルフ公爵家当主。
その誇りにかけて、一晩乗り切って見せる!!
マクシミリアンからの憐れみの表情を受けながらも
「ぐぅ――っ、し、仕方がないな……いいぞ」
と言うしかなかった。
喜んだアズールにブランケットと共に抱きつかれてそれだけで失神しそうになったが、そこはなんとか乗り切った。
しかし、一晩中ルーディー王子の威嚇に塗れた匂いを嗅ぎ続け一睡もできなかったのは言うまでもない。
威嚇と威圧による恐怖でフラフラになった私とは対照的にアズールはぐっすりと眠って体力を回復したようだ。
よかった。
それでよかったんだ……私にはそう思うことしかできなかった。
「よかったわね、アズール」
「うん。あっ、ルーが、かえってくるなら、はやくじゅんび、しないと!」
慌てて飛び起きようとしたけれど、目の前が暗くなってフラフラしてしまう。
「ダメよ、まだ無理しちゃ」
「でも……」
まだ帰ってこないと思っていたから、まだルーを迎える準備ができていない。
こんなんじゃ、ルーを驚かせて喜ばせられない。
「ぼく……なにもできない……」
「大丈夫よ。ねぇ、マクシミリアン」
「はい。アズールさまがすでにお作りになっていたバロンだけで十分飾れるほどはできておりましたし、それはもう広間に飾ってございます。ケーキも後はアズールさまが仕上げをなさるだけになっておりますので、もう少しおやすみされましても王子がお帰りになるまでには十分間に合いますよ」
「ほんとう?」
「はい。ですから、今はごゆっくりおやすみください」
「じゃあ、ぼく……おかあさまと、おとうさまと、いっしょにおねんねしたいの。いい?」
「ええ、もちろんいいわよ。ねぇ、あなた」
「ああ。だが、この部屋で一緒に寝るわけにはいかないから、私たちの部屋に行こう」
なぜかお父さまは僕がいるこの寝室に入ってから、キョロキョロとして落ち着きがないように見える。
お父さまたちのお部屋とあんまり変わらないように見えるけれど、何かおかしいところがあるのかな?
「?? ここでも、さんにんで、ねられるよ」
「んっ? いや、そうなんだが……私が……そう、私が枕が変わると眠れないんだ。だから、アズール。私たちのベッドで寝てくれるか?」
「ふふっ。おとうさま、こどもみたい。じゃあ、ぼくがあっちでねてあげる」
そう言って、ルーから貰ったブランケットを持って起きあがろうとすると、
「あ、アズール。そ、それは持って行かないほうがいいんじゃないか?」
とお父さまが駆け寄ってくる。
「えっ……どうして?」
「えっ……いや、それは……」
「ルーが、いないあいだ、ルーだとおもってねてって、いってたよ。ルー、つれてっちゃ、だめ?」
「う――っ、だがな……」
「あずーる、おやくそく、まもりたい……だめ?」
お父さまとお母さまと一緒に寝たいけれど、ルーのブランケットなしじゃ眠れる気がしない。
だって、ずっとルーから貰ったブランケットと一緒に寝ていたんだもん。
「ぐぅ――っ、し、仕方がないな……いいぞ」
「わぁーっ! おとうさま、ありがとう!」
「うぐぅーっ!!」
嬉しくてブランケットを持ったまま、おとうさまに抱きつくと、なぜかわからないけれどお父さまは苦しそうな声をあげていた。
<sideヴィルヘルム(ヴォルフ公爵)>
王子からアズールに早馬が届いたと聞けば、帰りの日時の報告に決まっている。
体調を崩して寝ていたとしても、帰ってくるとわかれば喜ぶに違いない。
それがわかっていたから、マクシミリアンがアズールの寝室に入るのを許可したのだ。
とはいえ、アリーシャとアズールのいる寝室にマクシミリアンだけを入れるわけにはいかず、私もついていったのだが、できることならここには入りたくなかった。
なぜなら、あの匂いだ。
ただでさえ、いつもルーディー王子の匂いを纏っていたアズールだが、今回の匂いは今までのものとは比べ物にならないほどの威力を放っていた。
王子がお発ちになったあと、王子から頂いたブランケットをアズールが被った瞬間、身体中の毛が逆立つような感覚を味わった。
こんなすごい威力を放っているものと同じ空間にはいられない。
急いで部屋に持っていくようにいったまではよかったが、アズールはそれに巻きついたまま寝ていたようで、たっぷりと王子の匂いを纏って部屋から出てきた。
騎士であるマクシミリアンは匂いに対抗できるような訓練を重ねているし、アリーシャはアズールの母であるから威嚇の対象にはならない。
フィデリオ殿のように生殖能力の弱くなった年配者も同様に匂いだけではそこまで恐怖を感じないだろう。
だから、皆はアズールのそばに近寄れるが、私は違う。
アズールに対して決してそのような間違いなどあり得ないのだが、残念なことに父親である私も威嚇の対象になってしまっているのだ。
それはどうしようもないことだ。
だから、この数日できるだけアズールから離れて過ごしていたが、体調が悪くなったのなら話は別だ。
父として守ってあげたいと思うのは当然だろう。
アズールから、私とアリーシャと一緒に寝たいと望まれて何を断る理由がある?
もちろん三人で幸せを噛み締めながら寝たい。
そのためにはこの部屋ではダメだ。
ルーディー王子の匂いに占領されたこの部屋では一生眠れる気がしない。
だから、なんとか理由をつけて私たちの部屋で寝ようと持ちかけたが、アズールはあの史上最強最恐に王子の匂いがたっぷりと染み込んだブランケットを私たちの寝室に持ち込もうとする。
それだけは勘弁してくれ!!
必死の思いで止めさせようとするが、アズールは王子との約束を守りたいと可愛らしい目で訴えてくる。
どうする?
どうするべきだ?
あの可愛らしい目を涙で濡らすわけにはいかない。
これでもヴォルフ公爵家当主。
その誇りにかけて、一晩乗り切って見せる!!
マクシミリアンからの憐れみの表情を受けながらも
「ぐぅ――っ、し、仕方がないな……いいぞ」
と言うしかなかった。
喜んだアズールにブランケットと共に抱きつかれてそれだけで失神しそうになったが、そこはなんとか乗り切った。
しかし、一晩中ルーディー王子の威嚇に塗れた匂いを嗅ぎ続け一睡もできなかったのは言うまでもない。
威嚇と威圧による恐怖でフラフラになった私とは対照的にアズールはぐっすりと眠って体力を回復したようだ。
よかった。
それでよかったんだ……私にはそう思うことしかできなかった。
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