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第二章
真剣勝負
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<sideヴェルナー>
アズールさまの突然のおねだりで王子のいる訓練場にお連れすることになってしまった。
ここははっきりキッパリとダメです! というべきだったのだろうけど、マクシミリアンに会いたいだろうと言われたら言葉に詰まってしまった。
アズールさまは私の弱点をよくお分かりだ。
後で注意は受けるかもしれないが、仕方がない。
私が責任を取ろう。
そのつもりで訓練場へお連れすることになった。
差し入れをなさりたいというアズールさまのご希望で、『オニギリ』を作っていくことにした。
アズールさまが成長なさるに当たって、実は神に与えられた知識をお持ちということがわかり、その知識の中にこの『オニギリ』なるものもあった。
王子はアズールさまのためにその『オニギリ』を作るために必要なコメというものを世界中でお探しになり、我が国から遠く離れた国で見つけられた。
そこからその国と我が国との国交が広がり、我が国はさらに友好同盟国を増やしたのだからアズールさまのおかげと言える。
そのコメなるもので作った『オニギリ』は瞬く間にヴンダーシューン王国内に広まった。
特に騎士たちに絶大なる人気を誇っているのだ。
なんせ腹持ちが良く食べやすい。
訓練で腹の減る騎士たちにはこれ以上ない食糧だろう。
アズールさまがオニギリをお作りになるためにマクシミリアンが作った機械はかなり重宝なさっているようだ。
けれど、やはり手ずから作って差し上げたいお気持ちが強いようで、中に入れる具材を料理長のフランツに小さくしてもらい、アズールさまの小さなお手手でも作れるように準備をしたのだけれど、やはりアズールさまの小さなお手手は私のものとは比べ物にならないくらい繊細ですぐに火傷をしてしまう。
手を赤くしながらも、いくつか小さなオニギリを作り終えたアズールさまの王子を想うお気持ちに心打たれる。
不格好だからと落ち込んでいらしたが、どんなに綺麗にたっぷりと肉が入ったオニギリが目の前にあったとしても、王子は間違いなくアズールさまのお作りになった小さなオニギリを一番に召し上がるはずだ。
それは自信もって言える。
他の騎士たちの分の差し入れも全て箱に詰め、私はアズールさまと共に馬車で訓練場へ向かった。
公爵邸から訓練場までは馬車で10分ほどで着くが、
「ねぇ、ヴェル。僕……歩いて行ってみたいな」
というアズールさまの言葉は丁重にお断りした。
訓練場にお連れするのは百歩譲って王子にお許しいただけるとしても、外を歩かせたとなれば絶対にお許しにならないことは理解している。
アズールさまが外をお歩きになれるのは王子とご一緒の時だけと決められているのだから流石にそこまで決まりを破ることはできない。
王子がおそばにいらっしゃらない時に限り、アズールさまを抱っこするのはご家族さま以外には私とフィデリオさまだけに許されている。
馬車からアズールさまを抱っこしたまま降りると、訓練場の入り口に立つ騎士たちが一斉にアズールさまに釘付けになっているのがわかる。
その視線の鋭さにアズールさまが身体を震わせる。
どうやら恐怖を覚えたご様子だ。
「お前たち、アズールさまを怯えさせるなっ!」
「も、申し訳ございません」
「王子はどちらにいらっしゃる?」
「は、はい。ただいま、訓練場でマクシミリアン副団長と稽古をなさっておられます」
その言葉に不安顔だったアズールさまの頬に赤みがさす。
「ヴェル、聞いた? マックスと稽古だって」
「はい。すぐに参りましょう」
アズールさまを抱っこしたまま、急いで訓練場に向かうと王子とマクシミリアンが剣術の練習試合をしているのが見えた。
あれ?
まさか、あれは……
「あっ! ルーっ! 頑張ってぇーっ!」
アズールさまがそう声を発した瞬間、ギィーーンとものすごい音と共にマクシミリアンの剣がとんでもない場所まで吹き飛ばされていくのが見えた。
<sideルーディー>
今日の訓練は皆やる気に漲っていた。
早く終われば、私とマクシミリアンの剣術の練習試合を見せてやると訓練の前に話したせいだろう。
だが、そんなことで騎士たちがやる気になってくれるなら安いものだ。
私としても溜まった欲求を爆発させるにはマクシミリアンくらいの腕を持つものでないと意味がない。
「団長! 副団長との試合を見せていただけるんですよね!」
「ああ、皆が頑張ったからな。じゃあ、マクシミリアン。準備を頼む」
「はっ」
マクシミリアンが用意したのは練習用の木剣ではなく、真剣。
「マクシミリアン、いいのか?」
「はい。それくらいでないと皆もみていて興奮しないでしょうし。大丈夫です、怪我などしませんから」
「ははっ。お前に関してはそんな心配はしていないが、まぁこの方が本気になって楽しめるな」
「はい。私も本気で行かせていただきますよ。王子」
「ああ、お前の力を存分に見せてくれ。全力だぞ」
訓練場の中央に立ち真剣を構える。
『はじめ!』の掛け声と共に、マクシミリアンが突っ込んでくる。
それをさらりと交わしながら、剣で追撃するとマクシミリアンがさっと剣で交わしキィーンと鋭い音が響く。
ふふっ。こうでないと早々に終わるとつまらないからな。
素早く交わしては追撃を繰り返すが、私たちの攻め合いをどれほどの騎士たちが追えているだろうか。
それほど、私たちは尋常でない動きでどちらも一歩も引かないまま戦いを続けていた。
とはいえ、私は獣人。
全力を出せば今互角に戦っているマクシミリアンでさえ、一撃で終わってしまうほどの力を持っている。
だが、それを出すことは一生ないだろう。
そこまで力を出すほどの事態にならないだろうからな。
半分ほどの力を出しているがそれについてこられるのもマクシミリアンと、あとはヴェルナーくらいだろうか。
そんなことを思いながら、最後のトドメに入ろうかとタイミングを計っていると、突然
「ルーっ! 頑張ってぇーっ!」
と愛しいアズールの声が耳に飛び込んできた。
それをアズールのことだと認識するよりも先に、私の本能がアズールの存在に気づいていたのだろうか。
一瞬だけ全力の力を出してしまった私はマクシミリアンの剣を吹き飛ばしてしまい、訓練場には真剣が壁にぶち当たった破壊音が響き渡り、それがより一層静寂を引き立たせてしまっていた。
アズールさまの突然のおねだりで王子のいる訓練場にお連れすることになってしまった。
ここははっきりキッパリとダメです! というべきだったのだろうけど、マクシミリアンに会いたいだろうと言われたら言葉に詰まってしまった。
アズールさまは私の弱点をよくお分かりだ。
後で注意は受けるかもしれないが、仕方がない。
私が責任を取ろう。
そのつもりで訓練場へお連れすることになった。
差し入れをなさりたいというアズールさまのご希望で、『オニギリ』を作っていくことにした。
アズールさまが成長なさるに当たって、実は神に与えられた知識をお持ちということがわかり、その知識の中にこの『オニギリ』なるものもあった。
王子はアズールさまのためにその『オニギリ』を作るために必要なコメというものを世界中でお探しになり、我が国から遠く離れた国で見つけられた。
そこからその国と我が国との国交が広がり、我が国はさらに友好同盟国を増やしたのだからアズールさまのおかげと言える。
そのコメなるもので作った『オニギリ』は瞬く間にヴンダーシューン王国内に広まった。
特に騎士たちに絶大なる人気を誇っているのだ。
なんせ腹持ちが良く食べやすい。
訓練で腹の減る騎士たちにはこれ以上ない食糧だろう。
アズールさまがオニギリをお作りになるためにマクシミリアンが作った機械はかなり重宝なさっているようだ。
けれど、やはり手ずから作って差し上げたいお気持ちが強いようで、中に入れる具材を料理長のフランツに小さくしてもらい、アズールさまの小さなお手手でも作れるように準備をしたのだけれど、やはりアズールさまの小さなお手手は私のものとは比べ物にならないくらい繊細ですぐに火傷をしてしまう。
手を赤くしながらも、いくつか小さなオニギリを作り終えたアズールさまの王子を想うお気持ちに心打たれる。
不格好だからと落ち込んでいらしたが、どんなに綺麗にたっぷりと肉が入ったオニギリが目の前にあったとしても、王子は間違いなくアズールさまのお作りになった小さなオニギリを一番に召し上がるはずだ。
それは自信もって言える。
他の騎士たちの分の差し入れも全て箱に詰め、私はアズールさまと共に馬車で訓練場へ向かった。
公爵邸から訓練場までは馬車で10分ほどで着くが、
「ねぇ、ヴェル。僕……歩いて行ってみたいな」
というアズールさまの言葉は丁重にお断りした。
訓練場にお連れするのは百歩譲って王子にお許しいただけるとしても、外を歩かせたとなれば絶対にお許しにならないことは理解している。
アズールさまが外をお歩きになれるのは王子とご一緒の時だけと決められているのだから流石にそこまで決まりを破ることはできない。
王子がおそばにいらっしゃらない時に限り、アズールさまを抱っこするのはご家族さま以外には私とフィデリオさまだけに許されている。
馬車からアズールさまを抱っこしたまま降りると、訓練場の入り口に立つ騎士たちが一斉にアズールさまに釘付けになっているのがわかる。
その視線の鋭さにアズールさまが身体を震わせる。
どうやら恐怖を覚えたご様子だ。
「お前たち、アズールさまを怯えさせるなっ!」
「も、申し訳ございません」
「王子はどちらにいらっしゃる?」
「は、はい。ただいま、訓練場でマクシミリアン副団長と稽古をなさっておられます」
その言葉に不安顔だったアズールさまの頬に赤みがさす。
「ヴェル、聞いた? マックスと稽古だって」
「はい。すぐに参りましょう」
アズールさまを抱っこしたまま、急いで訓練場に向かうと王子とマクシミリアンが剣術の練習試合をしているのが見えた。
あれ?
まさか、あれは……
「あっ! ルーっ! 頑張ってぇーっ!」
アズールさまがそう声を発した瞬間、ギィーーンとものすごい音と共にマクシミリアンの剣がとんでもない場所まで吹き飛ばされていくのが見えた。
<sideルーディー>
今日の訓練は皆やる気に漲っていた。
早く終われば、私とマクシミリアンの剣術の練習試合を見せてやると訓練の前に話したせいだろう。
だが、そんなことで騎士たちがやる気になってくれるなら安いものだ。
私としても溜まった欲求を爆発させるにはマクシミリアンくらいの腕を持つものでないと意味がない。
「団長! 副団長との試合を見せていただけるんですよね!」
「ああ、皆が頑張ったからな。じゃあ、マクシミリアン。準備を頼む」
「はっ」
マクシミリアンが用意したのは練習用の木剣ではなく、真剣。
「マクシミリアン、いいのか?」
「はい。それくらいでないと皆もみていて興奮しないでしょうし。大丈夫です、怪我などしませんから」
「ははっ。お前に関してはそんな心配はしていないが、まぁこの方が本気になって楽しめるな」
「はい。私も本気で行かせていただきますよ。王子」
「ああ、お前の力を存分に見せてくれ。全力だぞ」
訓練場の中央に立ち真剣を構える。
『はじめ!』の掛け声と共に、マクシミリアンが突っ込んでくる。
それをさらりと交わしながら、剣で追撃するとマクシミリアンがさっと剣で交わしキィーンと鋭い音が響く。
ふふっ。こうでないと早々に終わるとつまらないからな。
素早く交わしては追撃を繰り返すが、私たちの攻め合いをどれほどの騎士たちが追えているだろうか。
それほど、私たちは尋常でない動きでどちらも一歩も引かないまま戦いを続けていた。
とはいえ、私は獣人。
全力を出せば今互角に戦っているマクシミリアンでさえ、一撃で終わってしまうほどの力を持っている。
だが、それを出すことは一生ないだろう。
そこまで力を出すほどの事態にならないだろうからな。
半分ほどの力を出しているがそれについてこられるのもマクシミリアンと、あとはヴェルナーくらいだろうか。
そんなことを思いながら、最後のトドメに入ろうかとタイミングを計っていると、突然
「ルーっ! 頑張ってぇーっ!」
と愛しいアズールの声が耳に飛び込んできた。
それをアズールのことだと認識するよりも先に、私の本能がアズールの存在に気づいていたのだろうか。
一瞬だけ全力の力を出してしまった私はマクシミリアンの剣を吹き飛ばしてしまい、訓練場には真剣が壁にぶち当たった破壊音が響き渡り、それがより一層静寂を引き立たせてしまっていた。
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