真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
92 / 296
第二章

オニギリのお礼に

しおりを挟む
<sideルーディー>

アズールがこの小さな手で私のために作ってくれたオニギリ。
今までアズールが作ってくれた大きなオニギリももちろん美味しかったが、アズールの手で握ってくれたオニギリは格別だ。
本当に食べ終えてしまうのが勿体無い。

と言いつつも、アズールが口に運んでくれるから次々に食べ尽くす。
そして、とうとう最後の一個になってしまった。

「最後の一つもアズールに食べさせて欲しい」

「ふふっ。いいよ。ルー、あ~んして」

最後だからと今までよりもたっぷりとアズールの手を味わってから、オニギリも存分に堪能した。

「ああ、本当に美味しかった。アズールのオニギリのおかげで訓練の疲れもすっかりなくなったな」

「本当? 嬉しい」

「手をこんなに赤くしてまで頑張って作ってくれたアズールには何かお礼をしなくてはな。何か欲しいものはないか? またケーキでも食べに行こうか?」

「うーん、それもすっごく魅力的だけど……」

私の、というかケーキの誘いにアズールが乗ってこないとは珍しい。
何か他に欲しいものでもあるのか?
それこそアズールには珍しいことなのだが。

「どうした? 何か欲しいものがあるならなんでもいいぞ」

「ルー、本当になんでもいい?」

「ああ、もちろんだとも。何がいい?」

「あのね、アズール……お城に行きたいな」

「えっ? 城に?」

「うん、そしてルーのお部屋にお泊まりしたい!」

「な――っ! い、や……流石に、それは……」

思いがけないアズールのおねだりに流石に難しいのではないかと言おうとしたのだが、

「でも……ルー、なんでもいいって言ったよ」

と言われてしまい、なんと返していいやら言葉に詰まってしまう。

「――っ、それは、そうなのだが……」

「だって、まだ一度もお部屋に連れて行ってもらったことないよ。アズールのお部屋にはルーは入った事あるのに。ずるいよ」

「くっ……」

私の部屋に、アズールが入る?
しかも、泊まるという事は私のベッドで眠るということか?
私が毎日アズールを想いながら欲望を出しているあのベッドに?

そんなの興奮しかしないんだが……。

「ルーは、アズールがお部屋で、お泊まりするの、いやなの?」

「そんなことあるわけないだろうっ! いつだってアズールに泊まって欲しいと思っているのだぞ」

「ふふっ。じゃあ、決まりね」

「えっ……」

「ふふっ。今日はルーのお部屋でお泊まりだーっ! 楽しみだな」

「あ、いや……」

まだいいと言ったわけでは……と言おうと思ったが、アズールがこんなにも喜んでくれるのを今更泊まりはダメだとはいえない。
私はアズールに弱いからな。

仕方がない。
今夜一晩我慢したら良いのだ。

ヴンダーシューン王国騎士団の騎士団長の名にかけて、そして、次期国王としての威厳を示すためにも絶対にやり遂げてみせる。

アズールを腕に抱き、一階へ下りると騎士たちの視線が一気にこちらに、いやアズールに注がれた。

私からアズールを奪おうなどと愚かな考えを持っているものは……流石にいないようだな。
それならいいか。
可愛らしいアズールに目が向いてしまうのは仕方のないことだからな。

「もう食べ終わったのか?」

「はい。素晴らしい差し入れをいただきましてありがとうございました。ご馳走さまでした!」

ティオの言葉に若い騎士たちが一斉に

「ご馳走さまでした!」

と頭を下げる。

アズールはその声の大きさに驚きながらも、

「おにぎり食べてくれてありがとう、僕、嬉しい」

と笑顔を見せる。
その瞬間、騎士たちは一斉に膝から崩れ落ちた。

まだ騎士になったものばかりだ。
恋人もパートナーもいないはずだから、男としての欲求は訓練で発散させているはずだが、こんな時にアズールの可愛らしい笑顔を目の当たりにしたら、一気に滾るのも仕方がない。
そうは思っても、そんな姿をアズールに見せたくないし、アズールを脳内でおかずにでも使おうなどと不埒なことを考えさせたくもない。

アズール自身は、幼い時からしょっちゅう目の前で人が倒れるのに遭遇しているせいか――まぁ、その理由はアズールなのだが――その度に私がそんな症状が出るものがいる、それが普通なのだと言い続けていたせいで、目の前で人が膝から崩れ落ちても心配はしなくなった。

崩れ落ちる時の音には身体をびくつかせるがな。
それはどうにもできないのだろう。

「王子、まだ訓練をなさるなら私が先にアズールさまをお屋敷までお連れしますが、いかがされますか?

「いや、それはいい」

「いい、と仰いますと?」

「ヴェル、今日は僕、ルーのお部屋に泊まることになったの」

「えっ?」
「「「「「「ええっ!!!!」」」」」」

嬉しそうなアズールの声とは対照的に、ヴェルナーの驚きの声と共に騎士たちからも驚きの声が上がる。
アズールが私の部屋に泊まると聞いて、不埒な想像でも膨らませているのかもしれない。
そんなの私が一番期待しているというのに一番何もできないことを知っているのだぞ。

そんなどうにもできない欲求が我慢できずに、パッと騎士たちの方を振り返り、ギロっと睨んでやると

「「「「「「ひぃーーっ!!!!!」」」」」」

と怯えた声が聞こえた。

流石におとなげなかったが、今日も我慢の一晩を過ごすのだ。
八つ当たりくらいさせてくれ。
自分でもどんな夜を過ごすのかもわかっていないのだから。
しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

転生エルフの天才エンジニア、静かに暮らしたいのに騎士団長に捕まる〜俺の鉄壁理論は彼の溺愛パッチでバグだらけです〜

たら昆布
BL
転生したらエルフだった社畜エンジニアがのんびり森で暮らす話 騎士団長とのじれったい不器用BL

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

処理中です...