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第二章
穢れなきアズール
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<sideルーディー>
城に戻り、幾許かの仮眠を取る。
気絶していたのではないかと思うほど一気に落ちたが、そのおかげか、頭がすっきりとしている。
この部屋にまだアズールの匂いが残っていたとしても、それを超えるほどの疲労にさすがに睡眠欲の方が勝ったみたいだな。
すぐに父上と爺にアズールの話をしたいが、まずは腹ごなしをしなければ動けそうにない。
睡眠欲を十分にした後は食欲か。
急いで食事を用意させ、あっという間に平らげる。
美味しいのだろうが、今は腹を満腹にすることしか考えていない。
食事を終え、すぐに爺の部屋に向かった。
「ルーディーさま。お休みだと伺っておりましたが、もうお目覚めになられたのですか?」
「ああ、さっき起きて食事をしたところだ。それよりも爺と父上に大事な話があるのだ」
「陛下と私に……? 一体、なにごとでございましょう?」
「できれば、マクシミリアンも一緒が良いのだ」
「マクシミリアンも? ますます話の内容がわかりませぬが……」
爺が驚くのも無理はない。
だが、今話すわけにはいかない。
アズールの周りにいる者皆で聞いてほしいことだからな。
「それはあとで詳しく話す。まずはマクシミリアンをここに呼んでくれ」
「承知しました」
「父上に話をしておくから、1時間以内に父上の部屋に来てくれ」
そう言って私は父上の部屋に向かった。
「おお、ルーディー。昨夜はいろいろと大変だったようだが、大丈夫なのか? 顔色を見る限り、そこまで悪くはないようだが」
「先ほど少し仮眠を取りました故、ご心配には及びません。それよりも今日は大事なお話があって参りました」
「どうした? 何があった?」
「実はアズールのことでお耳に入れておきたいことがあるのです」
「なんだと? アズールに何かあったと申すのか?」
アズールのことだと言った瞬間、父上の表情が一気に変わった。
それはそうだろう。
アズールは私の運命の番。
アズールに何かあれば、私は生きていけない。
となれば、この国に与えられた『神の御意志』が消え、この国は後継を失ってしまうこととなるのだ。
「いえ、今すぐにどうこうというお話ではありませんが、しっかりと心に留めていただきたいお話があるのです」
「それはなんだ?」
「あとで爺とマクシミリアンがここに来ますので、その時に一緒にお伝えします」
「なんだ、気になるではないか!」
「申し訳ありませんが、アズールのためにも父上と同様に爺とマクシミリアンにも知っていてほしいのです」
「うむ。アズールのためだというのなら仕方がないが、他には誰に話をするつもりなのだ? 私たちの他にもいるのだろう?」
「はい。アズールの両親であるヴォルフ公爵夫妻。それからアズールの専属護衛のヴェルナー、そして公爵家執事のベンです。ちなみにアリーシャ殿とヴェルナーにはすでに伝えています。あの二人はアズールにとって今、一番近しい者たちですから」
「それは、そうだな……。なるほど、アズールにとってよほど重要なことだとみえるな?」
「はい。それはもちろん」
「なら、気になるが二人が来るまで待っているとしようか」
そういうと父上はソファーに腰を下ろし、私にも座るように促した。
「それで、昨夜はどうだったのだ? アズールには手出しはしなかっただろうな?」
「はい。もちろんです。私はアズールのことを大切に思っていますから」
「そうか。それならいい。だが、ウサギ族の魅力に抗うのは大変だろう?」
「父上は何かご存じなのですか?」
「ああ、ウサギ族は無自覚に番を煽り魅了するというのは代々受け継がれてきていることだからな。獣人はその魅力と戦い続けてこそ、真の国王となれるのだ」
なるほど。
今までの獣人たちも与えられた運命の番の魅力に戦い続けてきたというわけか。
アズールが違うのは、色ごとに関する知識を何も持たないということだろう。
その純真無垢さがあの真っ白な毛色に現れているのだろう。
今までのウサギ族は皆茶色や黒など色付きであったようだからな。
あれほど清らかなのはアズールだけだ。
「私なら大丈夫です。なんせこれまでずっと耐えてきたのですからここでアズールを手放すようなことは致しません」
「そうだな。ルーディーならやれるはずだ」
「はい。お任せください」
そう自信満々に言い切った時、父上の部屋の扉が叩く音が聞こえた。
<sideマクシミリアン>
今日の訓練を終え、副団長室で資料をまとめていた私の元に城から呼び出しがあった。
ルーディー団長がお呼びだからすぐに自分の部屋に来るようにというお祖父さまからの呼び出しに慌てて片付けを済ませ、走ってお祖父さまの部屋に向かった。
「ああ。マクシミリアン、来たか。思ったより早かったな」
「それはそうですよ。あのような呼び出しがあれば大急ぎで飛んできますよ。それでルーディーさまのお呼び出しとは一体何事ですか?」
「私も理由は聞いていないが、陛下と私、そしてマクシミリアンに大事な話があると仰っておいでだ」
「大事なお話し? もしやアズールさまになにかよからぬことでも?」
「落ち着け。そんなことがあれば、我々に話をする前にルーディーさまが片付けているはずだ。だが、ルーディーさまはただ大事なお話としか話しておられなかったのだ」
「大事なお話し……ルーディーさまにとって大事なことといえば、アズールさまのことに他なりませんよ」
「私もそうだと思うがとりあえずここで我々だけで話していても仕方がない。すぐに陛下のお部屋に向かうぞ」
「はい」
私は焦る気持ちを抑えながら急いで陛下のお部屋に足を進めた。
城に戻り、幾許かの仮眠を取る。
気絶していたのではないかと思うほど一気に落ちたが、そのおかげか、頭がすっきりとしている。
この部屋にまだアズールの匂いが残っていたとしても、それを超えるほどの疲労にさすがに睡眠欲の方が勝ったみたいだな。
すぐに父上と爺にアズールの話をしたいが、まずは腹ごなしをしなければ動けそうにない。
睡眠欲を十分にした後は食欲か。
急いで食事を用意させ、あっという間に平らげる。
美味しいのだろうが、今は腹を満腹にすることしか考えていない。
食事を終え、すぐに爺の部屋に向かった。
「ルーディーさま。お休みだと伺っておりましたが、もうお目覚めになられたのですか?」
「ああ、さっき起きて食事をしたところだ。それよりも爺と父上に大事な話があるのだ」
「陛下と私に……? 一体、なにごとでございましょう?」
「できれば、マクシミリアンも一緒が良いのだ」
「マクシミリアンも? ますます話の内容がわかりませぬが……」
爺が驚くのも無理はない。
だが、今話すわけにはいかない。
アズールの周りにいる者皆で聞いてほしいことだからな。
「それはあとで詳しく話す。まずはマクシミリアンをここに呼んでくれ」
「承知しました」
「父上に話をしておくから、1時間以内に父上の部屋に来てくれ」
そう言って私は父上の部屋に向かった。
「おお、ルーディー。昨夜はいろいろと大変だったようだが、大丈夫なのか? 顔色を見る限り、そこまで悪くはないようだが」
「先ほど少し仮眠を取りました故、ご心配には及びません。それよりも今日は大事なお話があって参りました」
「どうした? 何があった?」
「実はアズールのことでお耳に入れておきたいことがあるのです」
「なんだと? アズールに何かあったと申すのか?」
アズールのことだと言った瞬間、父上の表情が一気に変わった。
それはそうだろう。
アズールは私の運命の番。
アズールに何かあれば、私は生きていけない。
となれば、この国に与えられた『神の御意志』が消え、この国は後継を失ってしまうこととなるのだ。
「いえ、今すぐにどうこうというお話ではありませんが、しっかりと心に留めていただきたいお話があるのです」
「それはなんだ?」
「あとで爺とマクシミリアンがここに来ますので、その時に一緒にお伝えします」
「なんだ、気になるではないか!」
「申し訳ありませんが、アズールのためにも父上と同様に爺とマクシミリアンにも知っていてほしいのです」
「うむ。アズールのためだというのなら仕方がないが、他には誰に話をするつもりなのだ? 私たちの他にもいるのだろう?」
「はい。アズールの両親であるヴォルフ公爵夫妻。それからアズールの専属護衛のヴェルナー、そして公爵家執事のベンです。ちなみにアリーシャ殿とヴェルナーにはすでに伝えています。あの二人はアズールにとって今、一番近しい者たちですから」
「それは、そうだな……。なるほど、アズールにとってよほど重要なことだとみえるな?」
「はい。それはもちろん」
「なら、気になるが二人が来るまで待っているとしようか」
そういうと父上はソファーに腰を下ろし、私にも座るように促した。
「それで、昨夜はどうだったのだ? アズールには手出しはしなかっただろうな?」
「はい。もちろんです。私はアズールのことを大切に思っていますから」
「そうか。それならいい。だが、ウサギ族の魅力に抗うのは大変だろう?」
「父上は何かご存じなのですか?」
「ああ、ウサギ族は無自覚に番を煽り魅了するというのは代々受け継がれてきていることだからな。獣人はその魅力と戦い続けてこそ、真の国王となれるのだ」
なるほど。
今までの獣人たちも与えられた運命の番の魅力に戦い続けてきたというわけか。
アズールが違うのは、色ごとに関する知識を何も持たないということだろう。
その純真無垢さがあの真っ白な毛色に現れているのだろう。
今までのウサギ族は皆茶色や黒など色付きであったようだからな。
あれほど清らかなのはアズールだけだ。
「私なら大丈夫です。なんせこれまでずっと耐えてきたのですからここでアズールを手放すようなことは致しません」
「そうだな。ルーディーならやれるはずだ」
「はい。お任せください」
そう自信満々に言い切った時、父上の部屋の扉が叩く音が聞こえた。
<sideマクシミリアン>
今日の訓練を終え、副団長室で資料をまとめていた私の元に城から呼び出しがあった。
ルーディー団長がお呼びだからすぐに自分の部屋に来るようにというお祖父さまからの呼び出しに慌てて片付けを済ませ、走ってお祖父さまの部屋に向かった。
「ああ。マクシミリアン、来たか。思ったより早かったな」
「それはそうですよ。あのような呼び出しがあれば大急ぎで飛んできますよ。それでルーディーさまのお呼び出しとは一体何事ですか?」
「私も理由は聞いていないが、陛下と私、そしてマクシミリアンに大事な話があると仰っておいでだ」
「大事なお話し? もしやアズールさまになにかよからぬことでも?」
「落ち着け。そんなことがあれば、我々に話をする前にルーディーさまが片付けているはずだ。だが、ルーディーさまはただ大事なお話としか話しておられなかったのだ」
「大事なお話し……ルーディーさまにとって大事なことといえば、アズールさまのことに他なりませんよ」
「私もそうだと思うがとりあえずここで我々だけで話していても仕方がない。すぐに陛下のお部屋に向かうぞ」
「はい」
私は焦る気持ちを抑えながら急いで陛下のお部屋に足を進めた。
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