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第三章
私の運命
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<sideクレイ>
執務室で仕事をしていた私たちが一息つこうとベンを呼んだのだが、侍従が慌てた様子でやってきてベンがいないという。
ベンが私たちに何も言わずに出て行くことはないのだが、一体どうしたのだろう?
「母上はどうした?」
「それが奥さまもいらっしゃらないようです」
「なんだと?」
母上はベンと外に行ったのだろうか?
それにしては馬車の音も聞こえなかったと思うが……。
いずれにしても父上に報告しなければな。
「父上! 大変です! 母上の姿が見当たらないようです」
「なんだと? アリーシャが?」
「はい。ベンの姿も見えないようでもしかしたら母上の外出にベンが付き添ったのかもしれません」
「今日は出かける予定などなかったはずだが……。それにアリーシャが私に何も言わずに出かけるなんてありえないのだが……一体どうしてしまったというのだ?」
父上にも心当たりはないようだ。
「父上、すぐに探しに参りましょう。もしかしたら何か大変なことに巻き込まれているのかもしれません。時と場合によっては義兄上にもお力を――」
と話をしながら玄関に向かっていたところで、扉がガチャリと開いた。
「――っ! 母上っ!」
「アリーシャ!」
「あら、クレイもヴィルもこんなところでどうしたの?」
私たちの心配などどこ吹く風といった様子でにこやかな笑顔を向けてくる。
「どうしたのじゃないだろう。アリーシャもベンも何も言わずに外出したから心配していたんだ。今から探しに行くところだったんだぞ」
「ごめんなさい。ちょっと出かけたいところがあったんだけど、仕事の邪魔になるといけないと思って、そっと出かけたの。心配かけないようにあなたたちの仕事が終わる前には帰ってくる予定だったのだけど、早く終わったのね」
なんでもないとでもいうように言われれば、これ以上追及もできないが、母上が急に出かけたいところとは一体どこなのだろう。
そう思っていると、父上も同じ疑問を持ったのか、
「はぁー、無事に帰って来てくれたからいいが……どこに行っていたんだ?」
と少し呆れながら尋ねていた。
「騎士団の訓練場に行っていたの」
「騎士団の訓練場? どうしてそんなところに?」
「アズールをずっと守ってくれてお世話になっていたのよ。だからお礼を言いに言ってきたの」
思いがけない場所に驚きはしたが、確かに母上の仰りたいことはわかる。
アズールが生まれてからというもの、ずっと交代で我が家とアズールを見守ってくれていたのだ。
お礼はするべきだろう。
だがそのためにわざわざ馬車にも乗らずに歩いて行くだろうか?
しかも私たちに隠れるように……。
その点が気になるが父上が納得するのならそれでいい。
「今回はそういう理由があったようだから許すが、次からは出かけるときは必ず声をかけてくれ。仕事中でもアリーシャの声掛けなら邪魔などとは感じないから。何も言わずに出かける方が心配になる」
「ふふっ。わかったわ」
「外では危険はなかったか?」
「ええ。大丈夫よ。帰りはこの騎士くんに護衛してもらったから」
そう言って、ずっと玄関の隅で控えていた騎士を私たちに紹介した。
細くて長い尻尾を身体に巻きつかせているのを見るとかなり緊張しているようだ。
それにしても、猫族の騎士は見たことがない。
我が家には来たことがない騎士だな。
「彼はティオよ。普段は陛下の護衛を任されているんですって。すごいわよね。今日はちょうどマクシミリアンの訓練を受けにきていたのよ」
「ほお、猫族なのに陛下の護衛を任されるとは素晴らしいな」
「でしょう?」
「あ、あの……ティオと申します。ヴォルフ公爵家の皆さまにはお初にお目にかかります。どうぞお見知りおきください」
「――っ!!!」
ティオと目があった瞬間、ビリビリと全身を貫いていくような衝撃が襲った。
なんだ? 今のは?
あまりの衝撃にティオから目が離せない。
そして、ティオもまた驚いた表情で私をみたまま、目を離そうとしない。
「クレイ? それにティオもどうしたの?」
母上が私たちの異様な状況に気づいたが、私自身もまだ何もわからない。
すると、隣にいた父上が、
「まさか、お前たち……運命の相手ではないか?」
と驚きの言葉を口にした。
「な――っ、父上。運命の相手なんて、何を仰るんですか?!」
「クレイ。今、彼を見て全身を貫かれるような衝撃を感じなかったか?」
「――っ、なぜ、それを……っ」
「やはりな。私がアリーシャに出会った時と同じだ。我々狼族には運命の相手を嗅ぎ分ける力がある。彼もまたクレイの力に引かれて同じように衝撃を感じたはずだ。ティオ、違うか?」
父上の言葉に、ティオは顔を真っ赤にしながらも頷いてみせた。
本当に彼が、私の運命の相手なのか……?
「で、ですが、運命の相手が男性なら、この公爵家はどうなるのです?」
「そんな心配はいらないよ。アズールが産んだ子どもを跡継ぎにすればいい。それに彼は騎士だ。騎士は元々女性との結婚は禁止されているし、お前が相手なら問題はない。そうだろう?」
私たちの間に制約はない。
それがわかった瞬間、一気に彼への気持ちが噴き出した気がした。
執務室で仕事をしていた私たちが一息つこうとベンを呼んだのだが、侍従が慌てた様子でやってきてベンがいないという。
ベンが私たちに何も言わずに出て行くことはないのだが、一体どうしたのだろう?
「母上はどうした?」
「それが奥さまもいらっしゃらないようです」
「なんだと?」
母上はベンと外に行ったのだろうか?
それにしては馬車の音も聞こえなかったと思うが……。
いずれにしても父上に報告しなければな。
「父上! 大変です! 母上の姿が見当たらないようです」
「なんだと? アリーシャが?」
「はい。ベンの姿も見えないようでもしかしたら母上の外出にベンが付き添ったのかもしれません」
「今日は出かける予定などなかったはずだが……。それにアリーシャが私に何も言わずに出かけるなんてありえないのだが……一体どうしてしまったというのだ?」
父上にも心当たりはないようだ。
「父上、すぐに探しに参りましょう。もしかしたら何か大変なことに巻き込まれているのかもしれません。時と場合によっては義兄上にもお力を――」
と話をしながら玄関に向かっていたところで、扉がガチャリと開いた。
「――っ! 母上っ!」
「アリーシャ!」
「あら、クレイもヴィルもこんなところでどうしたの?」
私たちの心配などどこ吹く風といった様子でにこやかな笑顔を向けてくる。
「どうしたのじゃないだろう。アリーシャもベンも何も言わずに外出したから心配していたんだ。今から探しに行くところだったんだぞ」
「ごめんなさい。ちょっと出かけたいところがあったんだけど、仕事の邪魔になるといけないと思って、そっと出かけたの。心配かけないようにあなたたちの仕事が終わる前には帰ってくる予定だったのだけど、早く終わったのね」
なんでもないとでもいうように言われれば、これ以上追及もできないが、母上が急に出かけたいところとは一体どこなのだろう。
そう思っていると、父上も同じ疑問を持ったのか、
「はぁー、無事に帰って来てくれたからいいが……どこに行っていたんだ?」
と少し呆れながら尋ねていた。
「騎士団の訓練場に行っていたの」
「騎士団の訓練場? どうしてそんなところに?」
「アズールをずっと守ってくれてお世話になっていたのよ。だからお礼を言いに言ってきたの」
思いがけない場所に驚きはしたが、確かに母上の仰りたいことはわかる。
アズールが生まれてからというもの、ずっと交代で我が家とアズールを見守ってくれていたのだ。
お礼はするべきだろう。
だがそのためにわざわざ馬車にも乗らずに歩いて行くだろうか?
しかも私たちに隠れるように……。
その点が気になるが父上が納得するのならそれでいい。
「今回はそういう理由があったようだから許すが、次からは出かけるときは必ず声をかけてくれ。仕事中でもアリーシャの声掛けなら邪魔などとは感じないから。何も言わずに出かける方が心配になる」
「ふふっ。わかったわ」
「外では危険はなかったか?」
「ええ。大丈夫よ。帰りはこの騎士くんに護衛してもらったから」
そう言って、ずっと玄関の隅で控えていた騎士を私たちに紹介した。
細くて長い尻尾を身体に巻きつかせているのを見るとかなり緊張しているようだ。
それにしても、猫族の騎士は見たことがない。
我が家には来たことがない騎士だな。
「彼はティオよ。普段は陛下の護衛を任されているんですって。すごいわよね。今日はちょうどマクシミリアンの訓練を受けにきていたのよ」
「ほお、猫族なのに陛下の護衛を任されるとは素晴らしいな」
「でしょう?」
「あ、あの……ティオと申します。ヴォルフ公爵家の皆さまにはお初にお目にかかります。どうぞお見知りおきください」
「――っ!!!」
ティオと目があった瞬間、ビリビリと全身を貫いていくような衝撃が襲った。
なんだ? 今のは?
あまりの衝撃にティオから目が離せない。
そして、ティオもまた驚いた表情で私をみたまま、目を離そうとしない。
「クレイ? それにティオもどうしたの?」
母上が私たちの異様な状況に気づいたが、私自身もまだ何もわからない。
すると、隣にいた父上が、
「まさか、お前たち……運命の相手ではないか?」
と驚きの言葉を口にした。
「な――っ、父上。運命の相手なんて、何を仰るんですか?!」
「クレイ。今、彼を見て全身を貫かれるような衝撃を感じなかったか?」
「――っ、なぜ、それを……っ」
「やはりな。私がアリーシャに出会った時と同じだ。我々狼族には運命の相手を嗅ぎ分ける力がある。彼もまたクレイの力に引かれて同じように衝撃を感じたはずだ。ティオ、違うか?」
父上の言葉に、ティオは顔を真っ赤にしながらも頷いてみせた。
本当に彼が、私の運命の相手なのか……?
「で、ですが、運命の相手が男性なら、この公爵家はどうなるのです?」
「そんな心配はいらないよ。アズールが産んだ子どもを跡継ぎにすればいい。それに彼は騎士だ。騎士は元々女性との結婚は禁止されているし、お前が相手なら問題はない。そうだろう?」
私たちの間に制約はない。
それがわかった瞬間、一気に彼への気持ちが噴き出した気がした。
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