真っ白ウサギの公爵令息はイケメン狼王子の溺愛する許嫁です

波木真帆

文字の大きさ
228 / 296
第三章

嬉しい雄叫び

しおりを挟む
「こ、これ……」

「それはこの国の王妃のための衣装だ」

王妃のための……。
煌びやかで、だけどものすごく上品な洋服だ……。
僕がそれをじっと見つめていると、ルーが心配してくれたのか、焦ったようにお義父さまに声をかけた。

「父上、アズールには王妃としての仕事はさせないと申したはずです」

「ああ、それはわかっている。お前にウサギ族のことについて教えられた時から、私もアズールに王妃として仕事をしてもらおうとは考えていない」

「でしたら……」

「これは、王妃のための服だと言ったが、正確にいうとお前の母、リアナがルーディーの1歳の誕生祝いに着るはずだった服なのだよ」

「えっ? 母上が?」

「ああ。その前に亡くなってしまって袖を通すことはなかったが、リアナはこの服の完成を楽しみにしていたんだ。これに袖を通せるのはこの国の王妃しかいない。だから、思い出としてずっと残していたが、ロルフとルルが生まれた記念にせっかくならアズールに着て欲しいと思って、マティアスに頼んでアズールのサイズに作り変えてもらったのだ。ルーディーの衣装はそれに合わせて対になるものを新たに作ったから是非とも二人に着て欲しい」

「父上……」

ルーのお母さまの衣装。
ずっと大切な思い出として残していたんだろうな。
それを僕が着ていいのかって思うところはあるけれど、それでお義父さまが喜んでくれるのなら……そして、天国にいるだろうルーのお母さんが、僕とルーの姿を見て喜んでくれるのなら、僕は喜んでこれを着たい!

「お義父さまっ! アズール、このお洋服……すっごく嬉しいっ!!」

「――っ、そうか! 喜んでくれるか?」

「うん。ルーとお揃いなのも嬉しいし、早く着たいな。ねぇ、ルー」

「ああ、そうだな。まさかこの歳になって父上から服をいただくとは思わなかったが、アズールと対の衣装なら楽しみだ。父上、ありがとうございます」

「ああ、きっとリアナも喜んでいるよ」

お義父さまの目が少し潤んでいる気がする。
きっとルーのお母さまのことを思い出しているんだろう。
お義父さま……今でもずっとルーのお母さまのことが好きなんだろうな。

「あれ? 箱の下の方にまだ何か入ってる」

「ふふっ。それは私からアズールさまへの贈り物でございます」

「えっ? 爺から? なんだろう?」

「なんだ、フィデリオ。私にも内緒にしていたのか」

「はい。陛下にもぜひ喜んでいただこうと思いましたので」

「何? 私にも? 一体なんだ?」

お義父さまもルーも一体どんな贈り物なんだと興味津々の様子だ。
なんだか僕も楽しみになってきたな。

爺の楽しそうな笑顔を見ながら、僕は箱の底の方に入っていた服を取り出した。

「わぁーっ!!! 可愛いっ!!!」

まさか、これをもらえるとは思わなかった!!
ロルフとルルのウサギさんの服も、僕とルーのお揃いの服もどれも嬉しかったけれど、これが一番嬉しいかもしれない!!

「アズール、これは……」

「ふふっ。これ着たら、アズールも狼さんになれるね!!!」

そう。
爺がプレゼントしてくれたのは、ルーにそっくりな狼さんの服。
細長い三角の黒耳とふっさふさな黒尻尾もついている。

ルーもロルフもルルもみんな狼さんで僕だけウサギ。
この部屋の中にいるのもウサギの僕と熊さんの爺以外はみんな狼さんだし。

自分がウサギなのも気に入っているけど、実はずっともふもふでふさふさの尻尾に憧れてたんだよね。

「いいな、可愛いっ!! アズール、ベッドから下りられるようになったら、これ着てみんなでお庭をお散歩したいな」

「くっ――!! アズールが、私と同じ狼に……っ! 爺、さすがだ!! ああーっ、本当に早く見たいな」

「ああ、そうだな。フィデリオ。いいものを用意してくれた!!! アズールに狼の衣装とは……。さすがだな」

「皆さまにお喜びいただけて私、光栄でございます。アズールさま、それをお召しになったところを拝見するのを私も楽しみにしております」

「うん。もう少し待っててね」

お義父さまと、爺からの嬉しい贈り物を前に。僕は喜びでいっぱいになっていた。


お義父さまと爺が帰った後も僕はずっと二人から貰った服を目の前に置いて眺めていた。

「アズール、そんなに気に入ったのか?」

「うん。お義父さまがくれた服はルーのお母さまのだからすごく嬉しいし、爺がくれた狼さんもすっごく可愛くて嬉しい。この狼さん、本当にルーとロルフにそっくり」

「ああ、爺もなかなか粋なことをしてくれるものだ。なぁ、アズール。全てを着るのは難しいだろうか、この帽子だけ被ってみてくれないか?」

「うん。でも、アズールの耳が邪魔にならないかな?」

長い耳が気になって、今まで帽子を被ったことはなかった。
ちょっとドキドキしながらすっぽりと被ってみると、僕の長い耳は気にならないくらい、中でフィットしている気がする。

「ルー、どう?」

「………………」

「ルー?」

「――つ、アズールっ!! なんて可愛いんだ!!!」

嬉しそうに帽子についた狼耳を撫でるルーに、

「ふふっ。ルーもすっごく可愛いよ」

と言って、ルーの狼耳を撫でると

「ぐぁぁーーっ!!」

なぜか急に雄叫びを上げながら、僕を抱きしめてくれた。
しおりを挟む
感想 570

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

処理中です...