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第三章
たくさんの『ありがとう』を!
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<sideアズール>
子どもたちとルーに起こされて話をしているうちに、ふっと頭の中から何かが吸い取られたように消えてなくなってしまったような気がした。
でもそれがなんだったか、思い出そうとしても思い出せない。
だけど、頭の奥で、
――もう、いいんだよ……
と優しい声が聞こえて、僕は考えるのをやめた。
なぜかわからないけど、それを望んでいる人がいるような気がしたんだ。
そうそう、目を覚まして驚いたことがある。
「アズール、お腹に子がいるからもう絶対に無理をしてはいけないぞ」
そう言われて驚いたんだ。
「えっ? アズールの、お腹に赤ちゃん、いるの?」
「知らなかったのか?」
「体調悪くて、身体がものすごく熱くて朦朧としていたから、ヴェルや先生が話しているのは全然聞こえてなかった。ただ、ヴェルがルーを呼びに行くっていうことだけ聞こえたから……」
「それで止めたのか……」
「お腹に赤ちゃんがいるってわかってたら、僕も……」
「そうか、そうだな。アズールも子どものためなら私を呼んでくれたかもしれないな」
「でも、元気でよかった……。ロルフとルルの弟か妹が生まれるんだね」
「ああ、そうだ。また家族が増えて嬉しいよ」
「うん。ヴェルにお礼を言わないとね。いつ帰ってくるのかな?」
「あの二人のことだ。私の抜けた代わりに訓練を続けてきてくれるはずだから、二日後には帰ってくるだろう」
ヴェルは僕とお腹の赤ちゃんの命の恩人だ。
ヴェルにたくさんのありがとうを言おう!
ああ、早く会いたいな。
<sideマクシミリアン>
ルーディーさまが帰られたが、訓練はそのまま続行した。
ヴェルナーと話し合ってどうするか悩んだのだが、ここで我々までもが訓練を中断し帰るようなことがあれば、アズールさまがさらにご自分を責めるかもしれないという結論に至ったからだ。
まぁ、疲労困憊のヴェルナーを休ませたいという理由も私の中ではあったのだが、それは内緒にしておいた。
丸一日、ヴェルナーはテントの中でしっかりと休ませて、私がルーディーさまの分まで騎士たちへの指導を続けたが、騎士たちも最後まで集中力を途切れさせることなく訓練を終えることができた。
そして、これから全員で王都に帰る。
きっとアズールさまはルーディーさまのご帰宅により元気になられたことだろう。
なんせ、この国は変わらず平穏な朝が来たのだから。
もし『神の御意志』の伴侶であるアズールさまを失っていたならば、このような清々しい朝を迎えることはできないだろう。
それくらい、アズールさまとこの国は密接な関係にあるのだ。
「ヴェルナー、体調は大丈夫ですか? もしよければ、私の馬に……」
「十分休んだから問題ない。カイルもすっかり私を乗せてくれるつもりで用意しているのだから、私が乗ってあげなければ可哀想だろう」
「そうですね。でも、本当にカイルはよく頑張ってくれましたね」
「ああ、ルーディーさまをあれほど早くここから帰らせることができたのもカイルの頑張りのおかげだ。王都に帰ったら、陛下にカイルへの褒美を頼んでみようか」
「それはいいですね。こちらからお頼みするよりも陛下の方から先にお話がありそうですが……」
「ははっ。何言ってるんだ、冗談だ」
ヴェルナーはそう言って笑っていたが、決して冗談などではない。
アズールさまがご無事なら、影の立役者はカイルとヴェルナーに間違いない。
たとえ陛下からではなかったとしても、きっとルーディーさまからは褒美をいただけるだろう。
「ここへの道中は、ルーディーさまの早くお帰りになりたい気持ちが現れて、かなり急いで進んできたのだろう? 帰りは少しのんびり帰ろうか。騎士たちも皆、疲れているだろうからな」
そんな優しいヴェルナーの言葉に甘えて、休憩地を増やし、厳しい訓練を終えた騎士たちの身も心も癒しながら王都に到着した。
私とヴェルナーが無事に帰還したことを報告に行くことにし、騎士たちは先にそれぞれの部屋に帰らせた。
王城に向かうと、玄関にはお祖父さまの姿が見え、私たちの姿を見ると
「ヴェルナー殿!!」
と大声をあげながら駆け寄ってきた。
「フィデリオさま! アズールさまは?」
「ご無事でございます! これも全てヴェルナー殿のおかげですぞ!!」
「――っ、ああ……っ、よかった……。本当に、よかった……」
ヴェルナーはずっとアズールさまがご無事だと信じていた。
けれど、こうしてお祖父さまからはっきりと告げられたことで、張り詰めていた緊張の糸が切れたのかもしれない。
力が抜け、ふらついてしまったヴェルナーの身体を抱き止めると、
「悪い。もう、大丈夫だ」
と声が聞こえる。
だが、私はその声が聞こえないふりをして、さっとヴェルナーを抱きかかえた。
「な――っ、下ろせ! 大丈夫だと言っているだろう!」
「ヴェルナー、ここは王城ですよ。お静かに」
「――っ!!」
「ふふっ」
バタバタと暴れていてもその一言で素直になるのだから、本当に私のヴェルナーは可愛すぎる。
「さぁ、アズールさまのもとに向かいましょう。お祖父さま、アズールさまはお部屋にいらっしゃいますか?」
「ああ、お前たちが来るのを待っておられる」
先に早馬を出しておいたからだろう。
「じゃあ、ヴェルナー、行きましょう」
有無を言わさぬうちにスタスタと中に入り、アズールさまの部屋に向かう。
アズールさまのお部屋が近づくうちにヴェルナーの抵抗がなくなったのは、アズールさまとの再会に少し緊張しているからかもしれない。
アズールさまのお部屋の前でヴェルナーをおろし、腰に手を回しピッタリと寄り添ったまま扉を叩くと、ガチャリと扉が開き、
「ヴェルっ!!」
中から、元気いっぱいなご様子のアズールさまが笑顔でヴェルナーの名前を呼んでくれた。
子どもたちとルーに起こされて話をしているうちに、ふっと頭の中から何かが吸い取られたように消えてなくなってしまったような気がした。
でもそれがなんだったか、思い出そうとしても思い出せない。
だけど、頭の奥で、
――もう、いいんだよ……
と優しい声が聞こえて、僕は考えるのをやめた。
なぜかわからないけど、それを望んでいる人がいるような気がしたんだ。
そうそう、目を覚まして驚いたことがある。
「アズール、お腹に子がいるからもう絶対に無理をしてはいけないぞ」
そう言われて驚いたんだ。
「えっ? アズールの、お腹に赤ちゃん、いるの?」
「知らなかったのか?」
「体調悪くて、身体がものすごく熱くて朦朧としていたから、ヴェルや先生が話しているのは全然聞こえてなかった。ただ、ヴェルがルーを呼びに行くっていうことだけ聞こえたから……」
「それで止めたのか……」
「お腹に赤ちゃんがいるってわかってたら、僕も……」
「そうか、そうだな。アズールも子どものためなら私を呼んでくれたかもしれないな」
「でも、元気でよかった……。ロルフとルルの弟か妹が生まれるんだね」
「ああ、そうだ。また家族が増えて嬉しいよ」
「うん。ヴェルにお礼を言わないとね。いつ帰ってくるのかな?」
「あの二人のことだ。私の抜けた代わりに訓練を続けてきてくれるはずだから、二日後には帰ってくるだろう」
ヴェルは僕とお腹の赤ちゃんの命の恩人だ。
ヴェルにたくさんのありがとうを言おう!
ああ、早く会いたいな。
<sideマクシミリアン>
ルーディーさまが帰られたが、訓練はそのまま続行した。
ヴェルナーと話し合ってどうするか悩んだのだが、ここで我々までもが訓練を中断し帰るようなことがあれば、アズールさまがさらにご自分を責めるかもしれないという結論に至ったからだ。
まぁ、疲労困憊のヴェルナーを休ませたいという理由も私の中ではあったのだが、それは内緒にしておいた。
丸一日、ヴェルナーはテントの中でしっかりと休ませて、私がルーディーさまの分まで騎士たちへの指導を続けたが、騎士たちも最後まで集中力を途切れさせることなく訓練を終えることができた。
そして、これから全員で王都に帰る。
きっとアズールさまはルーディーさまのご帰宅により元気になられたことだろう。
なんせ、この国は変わらず平穏な朝が来たのだから。
もし『神の御意志』の伴侶であるアズールさまを失っていたならば、このような清々しい朝を迎えることはできないだろう。
それくらい、アズールさまとこの国は密接な関係にあるのだ。
「ヴェルナー、体調は大丈夫ですか? もしよければ、私の馬に……」
「十分休んだから問題ない。カイルもすっかり私を乗せてくれるつもりで用意しているのだから、私が乗ってあげなければ可哀想だろう」
「そうですね。でも、本当にカイルはよく頑張ってくれましたね」
「ああ、ルーディーさまをあれほど早くここから帰らせることができたのもカイルの頑張りのおかげだ。王都に帰ったら、陛下にカイルへの褒美を頼んでみようか」
「それはいいですね。こちらからお頼みするよりも陛下の方から先にお話がありそうですが……」
「ははっ。何言ってるんだ、冗談だ」
ヴェルナーはそう言って笑っていたが、決して冗談などではない。
アズールさまがご無事なら、影の立役者はカイルとヴェルナーに間違いない。
たとえ陛下からではなかったとしても、きっとルーディーさまからは褒美をいただけるだろう。
「ここへの道中は、ルーディーさまの早くお帰りになりたい気持ちが現れて、かなり急いで進んできたのだろう? 帰りは少しのんびり帰ろうか。騎士たちも皆、疲れているだろうからな」
そんな優しいヴェルナーの言葉に甘えて、休憩地を増やし、厳しい訓練を終えた騎士たちの身も心も癒しながら王都に到着した。
私とヴェルナーが無事に帰還したことを報告に行くことにし、騎士たちは先にそれぞれの部屋に帰らせた。
王城に向かうと、玄関にはお祖父さまの姿が見え、私たちの姿を見ると
「ヴェルナー殿!!」
と大声をあげながら駆け寄ってきた。
「フィデリオさま! アズールさまは?」
「ご無事でございます! これも全てヴェルナー殿のおかげですぞ!!」
「――っ、ああ……っ、よかった……。本当に、よかった……」
ヴェルナーはずっとアズールさまがご無事だと信じていた。
けれど、こうしてお祖父さまからはっきりと告げられたことで、張り詰めていた緊張の糸が切れたのかもしれない。
力が抜け、ふらついてしまったヴェルナーの身体を抱き止めると、
「悪い。もう、大丈夫だ」
と声が聞こえる。
だが、私はその声が聞こえないふりをして、さっとヴェルナーを抱きかかえた。
「な――っ、下ろせ! 大丈夫だと言っているだろう!」
「ヴェルナー、ここは王城ですよ。お静かに」
「――っ!!」
「ふふっ」
バタバタと暴れていてもその一言で素直になるのだから、本当に私のヴェルナーは可愛すぎる。
「さぁ、アズールさまのもとに向かいましょう。お祖父さま、アズールさまはお部屋にいらっしゃいますか?」
「ああ、お前たちが来るのを待っておられる」
先に早馬を出しておいたからだろう。
「じゃあ、ヴェルナー、行きましょう」
有無を言わさぬうちにスタスタと中に入り、アズールさまの部屋に向かう。
アズールさまのお部屋が近づくうちにヴェルナーの抵抗がなくなったのは、アズールさまとの再会に少し緊張しているからかもしれない。
アズールさまのお部屋の前でヴェルナーをおろし、腰に手を回しピッタリと寄り添ったまま扉を叩くと、ガチャリと扉が開き、
「ヴェルっ!!」
中から、元気いっぱいなご様子のアズールさまが笑顔でヴェルナーの名前を呼んでくれた。
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