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待ち人来たる
<side浚介>
終業後、自分の車で成田に向かったが、まだ彼が到着するまで二時間ほどある。
空港内にあるレストランで食事をして到着予定時刻までの時間を過ごし、到着ゲートに向かうと到着遅延はなさそうだった。
もうすぐ出てくるかな?
そういえば、写真も名前もあの部長から聞いてないことに気づいた。
あのくそ上司!
本当に使えないやつだ。
仕方がない。
とりあえず出てきてキョロキョロしている外国人に声をかけてみよう。
あ、そろそろ出てきたか。
「――っ!!!」
う、そだろ……。
俺の、理想が……歩いてる。
到着ゲートから出てきたその人物から目が離せない。
真っ白な肌に、色柔らかな淡いブラウンのサラサラとした髪。
小顔なのに大きな二重と小さくて形のいい唇。
身長は170あるかどうかなのに、手足は長くスタイルもいい。
それに華奢で、折れそうなほど細い腰。
まさか、こんな理想通りの人物がいるなんて……。
夢か幻かとすら思えてしまう。
そんな人物が重そうなキャリーケースを持って歩いている。
もしかして、あの彼が俺の待ち人か?
いや、流石にそんな偶然はないかもしれない。
けれど、ほんの少しでもいい。
可能性があるなら……そんな期待を持ちつつ、誰にも声をかけられる前に駆け寄った。
『あ、あの……』
『わっ! びっくりした!』
『ああ、驚かせてしまってすみません。あの……誰か人をお探しではないですか?』
『え、ええ。実は、お迎えが来ているはずなんですけど……』
おおおおーーーっ!! やっぱりーーー!
そう叫びそうになるのを必死に抑えながら、冷静を装って静かに尋ねる。
『も、もしかして、オルティースグループの本社の方ですか?』
『――っ!! はい、そうです!! よかった、お迎えに来てくださった方ですね? 確か……タカノ、さん?』
『はい。鷹野と言います』
『わぁ、よかった。僕はダリル・オルティースです。今日はお迎えに来ていただきありがとうございます』
「――っ!!!!」
くそっ、笑顔がめちゃくちゃ可愛い!
このまま押し倒したくなる!!
ああ、こんな子がゲイを公言しているなんて!
『あ、あの……どうかしましたか? もしかしてお疲れですか?』
あまりの可愛さに何も言えずに見惚れていたら、心配されてしまった。
『い、いいえ。とんでもないです。オルティースさんのお迎えに来れて喜んでいるんですよ。英語には自信がありますし、これから滞在の間は私が責任を持ってお世話させていただきますのでよろしくお願いします』
『あ、ありがとうございます。僕は日本語がわからないので助かります。それから……あの、ダリルと呼んでくださると嬉しいです』
『だ、ダリル。わかりました。私も浚介……シュンと呼んでください』
『ふふっ。はい。では、シュン。よろしくお願いします』
『――っ!!! あ、じゃあ駐車場に案内しますね。荷物は私が』
『あっ、大丈夫ですよ』
『いえ、慣れない場所では危険ですから』
そう言って彼のキャリーケースを俺が押しながら、ダリルを駐車場に案内した。
途中で前からやってきた酔っ払いにぶつかりそうになって、ダリルの肩を慌てて抱き寄せると、彼は突然のことに驚きながらも俺の身体に抱きついてくれた。
『あっ、ごめんなさい』
『いえ、危ないですからこのままでいいですよ』
そう言ってそのまま道を進んでいく。
その間もずっと俺の全神経はダリルと触れ合っている左半身に集中していた。
服の上からでもわかる、吸い付くような肌の感触。
それになんていい匂いだ。
俺は今、人生で最大の幸せな時間を過ごしている。
この時間が一生続けばいい、そう思っていたけれど、無情にもあっという間に駐車場に到着してしまった。
荷物をトランクに乗せ、ダリルを助手席に座らせて運転席に回る。
そして、扉を閉めると密室空間になった車内でダリルと二人っきりという状況に興奮してしまった。
隣から漂ってくるダリルの体臭が俺を昂らせるが、流石に出会ってすぐ俺の相手をしてくれないかという話を出すわけにはいかない。
それに断られたら、これから気まずいだろ。
まだ今は我慢しなければ!
今日はなんとか連絡先を交換できれば御の字としよう。
ズボンの下で出番を待ち続けている息子を叱咤しながら、
『この後はどちらに?』
と問いかけると、ダリルは少し赤い顔で
『あの……ホテルに、お願いします』
と言ってきた。
ほ、ホテルーーっ!!!
まさかダリルの方から誘ってくれるのか?
喜んで! と大声で返事しそうになった瞬間、
『あの、ここのホテルなんですけどわかりますか?』
とスマホの画面を見せられた。
表示されているのは都内屈指の高級ホテルであるイリゼホテル銀座。
『あ、ここ……』
『はい。ここに三日間滞在することになっているんです』
笑顔で微笑まれ、自分が勘違いしていたことに気づいた。
『あ、ああ。そうなんですね。わかりました。ではそちらに向かいますね』
なんとかその言葉を振り絞り、車を駐車場から出して一路東京に向けて走らせた。
ああ、なんて勘違い。
てっきり誘われているのかと思ったなんて……。
考えてみれば、空港に到着したら次はホテルにチェックインするのは当然だろう。
それなのに、下心ありまくりで全てをそっちの方に向けるなんて、本当に恥ずかしい。
ああ、自己嫌悪に陥りそうだ。
俺の気持ちなんか知るはずもないダリルは嬉しそうに正面の景色を見つめている。
『楽しそうですね』
『はい。日本は初めてなので、ドキドキします』
俺はダリルにずっとドキドキしているよ。
そう言えたらどんなに幸せか……。
緊張しながらも、ダリルの話に相槌を打ったり、アメリカでの話を聞きながら、今日から彼が泊まるイリゼホテル銀座に到着した。
終業後、自分の車で成田に向かったが、まだ彼が到着するまで二時間ほどある。
空港内にあるレストランで食事をして到着予定時刻までの時間を過ごし、到着ゲートに向かうと到着遅延はなさそうだった。
もうすぐ出てくるかな?
そういえば、写真も名前もあの部長から聞いてないことに気づいた。
あのくそ上司!
本当に使えないやつだ。
仕方がない。
とりあえず出てきてキョロキョロしている外国人に声をかけてみよう。
あ、そろそろ出てきたか。
「――っ!!!」
う、そだろ……。
俺の、理想が……歩いてる。
到着ゲートから出てきたその人物から目が離せない。
真っ白な肌に、色柔らかな淡いブラウンのサラサラとした髪。
小顔なのに大きな二重と小さくて形のいい唇。
身長は170あるかどうかなのに、手足は長くスタイルもいい。
それに華奢で、折れそうなほど細い腰。
まさか、こんな理想通りの人物がいるなんて……。
夢か幻かとすら思えてしまう。
そんな人物が重そうなキャリーケースを持って歩いている。
もしかして、あの彼が俺の待ち人か?
いや、流石にそんな偶然はないかもしれない。
けれど、ほんの少しでもいい。
可能性があるなら……そんな期待を持ちつつ、誰にも声をかけられる前に駆け寄った。
『あ、あの……』
『わっ! びっくりした!』
『ああ、驚かせてしまってすみません。あの……誰か人をお探しではないですか?』
『え、ええ。実は、お迎えが来ているはずなんですけど……』
おおおおーーーっ!! やっぱりーーー!
そう叫びそうになるのを必死に抑えながら、冷静を装って静かに尋ねる。
『も、もしかして、オルティースグループの本社の方ですか?』
『――っ!! はい、そうです!! よかった、お迎えに来てくださった方ですね? 確か……タカノ、さん?』
『はい。鷹野と言います』
『わぁ、よかった。僕はダリル・オルティースです。今日はお迎えに来ていただきありがとうございます』
「――っ!!!!」
くそっ、笑顔がめちゃくちゃ可愛い!
このまま押し倒したくなる!!
ああ、こんな子がゲイを公言しているなんて!
『あ、あの……どうかしましたか? もしかしてお疲れですか?』
あまりの可愛さに何も言えずに見惚れていたら、心配されてしまった。
『い、いいえ。とんでもないです。オルティースさんのお迎えに来れて喜んでいるんですよ。英語には自信がありますし、これから滞在の間は私が責任を持ってお世話させていただきますのでよろしくお願いします』
『あ、ありがとうございます。僕は日本語がわからないので助かります。それから……あの、ダリルと呼んでくださると嬉しいです』
『だ、ダリル。わかりました。私も浚介……シュンと呼んでください』
『ふふっ。はい。では、シュン。よろしくお願いします』
『――っ!!! あ、じゃあ駐車場に案内しますね。荷物は私が』
『あっ、大丈夫ですよ』
『いえ、慣れない場所では危険ですから』
そう言って彼のキャリーケースを俺が押しながら、ダリルを駐車場に案内した。
途中で前からやってきた酔っ払いにぶつかりそうになって、ダリルの肩を慌てて抱き寄せると、彼は突然のことに驚きながらも俺の身体に抱きついてくれた。
『あっ、ごめんなさい』
『いえ、危ないですからこのままでいいですよ』
そう言ってそのまま道を進んでいく。
その間もずっと俺の全神経はダリルと触れ合っている左半身に集中していた。
服の上からでもわかる、吸い付くような肌の感触。
それになんていい匂いだ。
俺は今、人生で最大の幸せな時間を過ごしている。
この時間が一生続けばいい、そう思っていたけれど、無情にもあっという間に駐車場に到着してしまった。
荷物をトランクに乗せ、ダリルを助手席に座らせて運転席に回る。
そして、扉を閉めると密室空間になった車内でダリルと二人っきりという状況に興奮してしまった。
隣から漂ってくるダリルの体臭が俺を昂らせるが、流石に出会ってすぐ俺の相手をしてくれないかという話を出すわけにはいかない。
それに断られたら、これから気まずいだろ。
まだ今は我慢しなければ!
今日はなんとか連絡先を交換できれば御の字としよう。
ズボンの下で出番を待ち続けている息子を叱咤しながら、
『この後はどちらに?』
と問いかけると、ダリルは少し赤い顔で
『あの……ホテルに、お願いします』
と言ってきた。
ほ、ホテルーーっ!!!
まさかダリルの方から誘ってくれるのか?
喜んで! と大声で返事しそうになった瞬間、
『あの、ここのホテルなんですけどわかりますか?』
とスマホの画面を見せられた。
表示されているのは都内屈指の高級ホテルであるイリゼホテル銀座。
『あ、ここ……』
『はい。ここに三日間滞在することになっているんです』
笑顔で微笑まれ、自分が勘違いしていたことに気づいた。
『あ、ああ。そうなんですね。わかりました。ではそちらに向かいますね』
なんとかその言葉を振り絞り、車を駐車場から出して一路東京に向けて走らせた。
ああ、なんて勘違い。
てっきり誘われているのかと思ったなんて……。
考えてみれば、空港に到着したら次はホテルにチェックインするのは当然だろう。
それなのに、下心ありまくりで全てをそっちの方に向けるなんて、本当に恥ずかしい。
ああ、自己嫌悪に陥りそうだ。
俺の気持ちなんか知るはずもないダリルは嬉しそうに正面の景色を見つめている。
『楽しそうですね』
『はい。日本は初めてなので、ドキドキします』
俺はダリルにずっとドキドキしているよ。
そう言えたらどんなに幸せか……。
緊張しながらも、ダリルの話に相槌を打ったり、アメリカでの話を聞きながら、今日から彼が泊まるイリゼホテル銀座に到着した。
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