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ダリルの傷
自分の車に乗せてから、ようやく上着を外すとダリルの顔が赤くなっていた。
『暑かったですか? 顔が赤い』
『ああ、いえ。大丈夫です』
にっこりと笑顔を見せてくれるダリルにホッとしながら、急いで病院に向かう。
『あの、さっきの弁護士さん。ご友人ですか?』
『ええ。そうなんですよ。小学生の時からの友人で……今でも付き合いがあるのは彼くらいですね。だから安心してください。きっと力になってくれますよ』
『はい。ありがとうございます』
『それより、どこか痛みはありますか?』
『腕と、足が少し……でも、大したことはないです』
『すみません、私がダリルを一人にしてしまったから……』
『そんなっ! シュンのせいじゃないです。助けに来てくれてとっても嬉しかったですよ。ドアを蹴破ってきてくれた時、ヒーローだと思いました』
『――っ!!』
怖かっただろうに、笑顔でそんなことを言ってくれて……。
一緒に時間を過ごすたびにどんどんダリルのことが好きになっていく。
でも……ダリルはゲイじゃない。
きっと恋愛対象も女性だろう。
ああ……こんな思いをしたくなかったから、ノンケを好きになりたくなかったのに……。
『シュン?』
『ああ、すみません。もうすぐ着きますよ』
病院の駐車場に入り、さっきと同じようにダリルを抱きかかえる。
『あ、自分で……』
『足が痛いんですよね? 無理はしないほうがいいですよ』
そんなことを言いながら、ダリルと離れていたくないだけだ。
もう思いは伝えられない。
だけど、一緒にいる間だけはダリルに触れていたい。
それだけでいいんだ。
振動を与えないように優しく抱きかかえて病院に入り、受付をしようとしていると、
「鷹野!」
と名前を呼ばれた。
「有原! 来てくれてありがとう」
「いや、ちょうど依頼も入っていなかったから気にしないでいいよ。彼が?」
「ああ、本社から視察に来ていたダリルだよ。本社の社長令息だ」
「社長令息? そんな相手を襲ったのか? 信じられないな、しかも社内で」
「ああ、それも有休をとっていたのにダリルの噂を聞いてわざわざ襲いに来たみたいだ」
「聞けば聞くほど野獣だな。あっと、彼は日本語は話せないんだっけ?」
「ああ、でもヒヤリングはできるって。ですよね、ダリル?」
視線を向けると、ダリルは小さく頷いた。
『じゃあ、英語にしよう。ダリルさん、今から診察をして診断書を取りましょう。外科にはもう話をつけていますからすぐに診てもらえますよ。どこか気になるところがあれば、全て診てもらって下さいね』
『わかりました。あの……診察は、シュンも一緒に来てもらえますか? 一人は不安で……』
『大丈夫ですよ、ダリルが望むなら私はついてますから』
そういうとダリルはホッとした表情を見せてくれた。
そんな俺たちのことを、有原がじっと見つめていたことにはその時の俺は全く気づいていないかった。
ダリルを抱きかかえ、有原と三人で外科の受付で名前を言うと、すぐに中に通された。
いつもの私服姿と違って、白衣姿だとなんだか不思議な感じがする。
隣にいる有原は、そんな榎木の姿にほんのりと頬を染めているようだった。
相変わらず二人の仲は順調のようだな。
「榎木、彼が被害者のダリル。診察を頼む。ああ、ヒアリングはできるけど、日本語が話せないから英語でよろしく」
『ああ、わかったよ。お前は外に出ているか?』
『いや、一緒にいてもいいか? ダリルが一緒がいいと言うんだ』
『本人の希望なら構わないよ。それじゃあ診察を始めよう。鷹野、彼を椅子に座らせてくれ。ダリルさん、まずは痛いところを教えて下さい』
ダリルのすぐ横に椅子を置いてもらい、俺は診察を見守った。
榎木の質問にダリルは素直に答えていく。
それを全て書き取ってから、触診に入った。
ジャケットを脱がせて、シャツを捲るとダリルの細い腕には掴まれた跡がしっかりと残っていた。
それを診ただけで神村への怒りが込み上げてくる。
榎木はその写真を撮りながら丁寧にカルテに書いていく。
そして、足も同様に丁寧に診察をしていた。
『足は捻挫はしていないみたいだけど、床に打ちつけたような打撲痕がある。痛みはそのせいだな。腕の鬱血痕もかなりの強さで掴まれたせいだな。診断書を出しておこう。全治二週間というところか』
『全治二週間……結構かかるな。それで、あの男の方はどうだった?』
『ああ、最初の検査まで俺も同席したが、顎の骨は折れてなかった。奥歯が一本破折していたが、元々の状態も悪かったからそのまま抜歯になったよ。今は処置しているところだろう。あれはお前が殴ったんだって?』
『ああ、そうなんだ。無我夢中で……でも、後悔はしていない。ダリルが傷つかなくて良かったと思ってる』
『シュン……ごめんなさい』
『謝らないでください。私が全ての責任を取ると言ったでしょう? ダリルは安心して下さい』
そう言ったけれど、ダリルの表情は浮かないままだったが
『ダリルさん、大丈夫ですよ。あなたが提示してくださった証拠もありますし、鷹野のことは正当防衛にしてみせますから。私に任せて下さい』
有原の言葉にようやく笑顔を見せてくれた。
『暑かったですか? 顔が赤い』
『ああ、いえ。大丈夫です』
にっこりと笑顔を見せてくれるダリルにホッとしながら、急いで病院に向かう。
『あの、さっきの弁護士さん。ご友人ですか?』
『ええ。そうなんですよ。小学生の時からの友人で……今でも付き合いがあるのは彼くらいですね。だから安心してください。きっと力になってくれますよ』
『はい。ありがとうございます』
『それより、どこか痛みはありますか?』
『腕と、足が少し……でも、大したことはないです』
『すみません、私がダリルを一人にしてしまったから……』
『そんなっ! シュンのせいじゃないです。助けに来てくれてとっても嬉しかったですよ。ドアを蹴破ってきてくれた時、ヒーローだと思いました』
『――っ!!』
怖かっただろうに、笑顔でそんなことを言ってくれて……。
一緒に時間を過ごすたびにどんどんダリルのことが好きになっていく。
でも……ダリルはゲイじゃない。
きっと恋愛対象も女性だろう。
ああ……こんな思いをしたくなかったから、ノンケを好きになりたくなかったのに……。
『シュン?』
『ああ、すみません。もうすぐ着きますよ』
病院の駐車場に入り、さっきと同じようにダリルを抱きかかえる。
『あ、自分で……』
『足が痛いんですよね? 無理はしないほうがいいですよ』
そんなことを言いながら、ダリルと離れていたくないだけだ。
もう思いは伝えられない。
だけど、一緒にいる間だけはダリルに触れていたい。
それだけでいいんだ。
振動を与えないように優しく抱きかかえて病院に入り、受付をしようとしていると、
「鷹野!」
と名前を呼ばれた。
「有原! 来てくれてありがとう」
「いや、ちょうど依頼も入っていなかったから気にしないでいいよ。彼が?」
「ああ、本社から視察に来ていたダリルだよ。本社の社長令息だ」
「社長令息? そんな相手を襲ったのか? 信じられないな、しかも社内で」
「ああ、それも有休をとっていたのにダリルの噂を聞いてわざわざ襲いに来たみたいだ」
「聞けば聞くほど野獣だな。あっと、彼は日本語は話せないんだっけ?」
「ああ、でもヒヤリングはできるって。ですよね、ダリル?」
視線を向けると、ダリルは小さく頷いた。
『じゃあ、英語にしよう。ダリルさん、今から診察をして診断書を取りましょう。外科にはもう話をつけていますからすぐに診てもらえますよ。どこか気になるところがあれば、全て診てもらって下さいね』
『わかりました。あの……診察は、シュンも一緒に来てもらえますか? 一人は不安で……』
『大丈夫ですよ、ダリルが望むなら私はついてますから』
そういうとダリルはホッとした表情を見せてくれた。
そんな俺たちのことを、有原がじっと見つめていたことにはその時の俺は全く気づいていないかった。
ダリルを抱きかかえ、有原と三人で外科の受付で名前を言うと、すぐに中に通された。
いつもの私服姿と違って、白衣姿だとなんだか不思議な感じがする。
隣にいる有原は、そんな榎木の姿にほんのりと頬を染めているようだった。
相変わらず二人の仲は順調のようだな。
「榎木、彼が被害者のダリル。診察を頼む。ああ、ヒアリングはできるけど、日本語が話せないから英語でよろしく」
『ああ、わかったよ。お前は外に出ているか?』
『いや、一緒にいてもいいか? ダリルが一緒がいいと言うんだ』
『本人の希望なら構わないよ。それじゃあ診察を始めよう。鷹野、彼を椅子に座らせてくれ。ダリルさん、まずは痛いところを教えて下さい』
ダリルのすぐ横に椅子を置いてもらい、俺は診察を見守った。
榎木の質問にダリルは素直に答えていく。
それを全て書き取ってから、触診に入った。
ジャケットを脱がせて、シャツを捲るとダリルの細い腕には掴まれた跡がしっかりと残っていた。
それを診ただけで神村への怒りが込み上げてくる。
榎木はその写真を撮りながら丁寧にカルテに書いていく。
そして、足も同様に丁寧に診察をしていた。
『足は捻挫はしていないみたいだけど、床に打ちつけたような打撲痕がある。痛みはそのせいだな。腕の鬱血痕もかなりの強さで掴まれたせいだな。診断書を出しておこう。全治二週間というところか』
『全治二週間……結構かかるな。それで、あの男の方はどうだった?』
『ああ、最初の検査まで俺も同席したが、顎の骨は折れてなかった。奥歯が一本破折していたが、元々の状態も悪かったからそのまま抜歯になったよ。今は処置しているところだろう。あれはお前が殴ったんだって?』
『ああ、そうなんだ。無我夢中で……でも、後悔はしていない。ダリルが傷つかなくて良かったと思ってる』
『シュン……ごめんなさい』
『謝らないでください。私が全ての責任を取ると言ったでしょう? ダリルは安心して下さい』
そう言ったけれど、ダリルの表情は浮かないままだったが
『ダリルさん、大丈夫ですよ。あなたが提示してくださった証拠もありますし、鷹野のことは正当防衛にしてみせますから。私に任せて下さい』
有原の言葉にようやく笑顔を見せてくれた。
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