イケメン店主に秘密の片想いのはずが何故か溺愛されちゃってます

波木真帆

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羨ましい

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「平松くん、布団に連れて行くよ」

そんな声が遠くで聞こえていたような気がするけれど、俺はもう動くこともできなかった。


「んっ……」

まぶしっ。
目の前が急に明るくなったような気がして目を覚ますと、カーテンの隙間から漏れ出た光が顔に当たっていたことに気づいた。

あれ?
こんなところに窓なんてあったっけ?

ぼーっとしながら起き上がるとそこがベッドじゃないことにびっくりした。

「えっ? ここどこ?」

「あっ、平松くん。起きた?」

自分がどこにいるのかわからなくて焦っていると、突然聞き慣れた声が聞こえた。

「えっ?」

慌てて声のする方向を見ると、そこには名嘉村さんが笑顔で立っているのが見えた。

「えっ? な――っ、えっ?」

「ふふっ。平松くん、落ち着いて。昨日、うちで一緒に夕食を食べたのは覚えてる?」

「ゆう、しょく……あっ!」

そういえば、昨日誘われて家に行って、ご飯を食べたんだ。
それで話を聞いてて、それで……。

「帰った記憶が、ない……」

「ふふっ。よかった。覚えてたね。そう、昨日途中で寝ちゃったんだ。起こして家に帰すのも心配だったし、お客さま用の布団もあったから客間で泊まってもらったんだよ」

「すみません、ご迷惑かけてしまって……」

「ううん。僕が少し強い泡盛出しちゃったからだよ。お猪口だから大丈夫かなって思ってたけど、僕が知らない間に結構呑んじゃってたみたいだったから、倒れたりしなくてよかったよ。平松くん、酔うと眠るだけだから安心した」

「本当にすみません。あっ、もしかしてこの布団って……」

まさか松川さんのを使っちゃったりとかないよね?
そんなの申し訳なさすぎる。

「ああ、違うから気にしないで。本当にお客さま用で何かあった時のために置いてるものだから。あ、ちゃんと寝かせる前に布団は乾燥しておいたから大丈夫だよ」

そう言われてホッとする。
でもよく考えたら恋人なんだからわざわざ客間で布団に寝るわけないか。
一緒にベッドで寝てるに決まってる。

「ふふっ。起きれそうならお風呂入ってくれていいよ。昨日、お風呂入ってないでしょ」

「あ、でも着替えが……」

「大丈夫。僕のを着れば良いよ。下着は新品があるし、仕事行く前に自分の家に寄って着替えれば良いでしょ?」

「でも……」

迷惑になるから……と言おうとしたけれど、

「ほら、お風呂ももうできてるから入っておいで」

と言ってくれたからこれ以上断るのも失礼な気がして、ありがたくお風呂をいただくことにした。

「これ、着替えね。そこの扉がお風呂だから。バスタオルは棚に置いてあるやつを好きに使ってくれて良いからね」

そう言ってキッチンに戻っていく名嘉村さんの背中にお礼を言って、脱衣所に入るとふわっと甘いミルクのような香りに迎えられた。

どうやら入浴剤を入れてくれているらしい。
本当に名嘉村さんって優しいな。

脱いだ服は持って帰らないといけないから、綺麗に畳んで端に置いて風呂場の中に入った。

「んー、良い匂い」

甘い香りにすっかり目が覚めた。

さっと髪と身体を洗わせてもらい、そのついでにそっとボディーソープに目をやるとやっぱり<無香性>の文字がある。
本当にみんな<無香性>なんだな。

湯船に浸かりながら考えるけれど、結局あの時の砂川さんの

――匂いはそれだけ重要だっていうことですよ。

と言っていた、あの謎かけのような意味はまだわからないまま。

でも、みんなが同じものだと言っていたのは本当だった。
いや、別に疑っていたわけではないけれど、でも本当にどういうことなんだろうな……。

再び湧き上がった疑問を抱きながらお風呂を出て、棚に置いてあったバスタオルを取ろうと手を伸ばすと、

「――っ!!!」

バスタオルの置いてある棚のすぐ上に見たことのあるボトルをが目に入って、思わずその場に固まってしまった。

これ……八尋さんの家で見たやつだ。

社長から試作品で渡されたって言ってた<Lube>
しかも使いかけ……ってことは、これを名嘉村さんと松川さんが使ってるってことで……。

わぁーっ!!
何想像してるんだ、俺は!

でも、本当に恋人同士ってことなんだよな。
そういう関係も込みの……。

それを想像して羨ましいと思ってしまったのは、俺には一生無理だと分かったからだろう。

いくら八尋さんが恋愛するのに性別は関係ないと思っていたって、選ぶ権利はあるんだ。
八尋さんが俺なんか選ぶわけない。
だから八尋さんと一緒にこれを使う日なんて一生来ない。

だから、羨ましいって一番に思ってしまったんだ。

名嘉村さんと松川さんみたいに、お互いに一目惚れだったらどんなに幸せだっただろう。
片思いなんて、一番辛すぎる。

ちょっと寂しくなりながら、着替えを済ませて外に出ると美味しそうな匂いに出迎えられた。

「お風呂いただきました」

「あっ、平松くん。ちょうど良いタイミング! ご飯できたよ」

優しい笑顔の名嘉村さんをみて、名嘉村さんくらい綺麗だったら俺だって自信持って告白できたんだけどな……と思ってしまう。

俺には一生告白なんて無理だな。
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