51 / 57
番外編
みんなからの祝福
しおりを挟む
<side敦己>
昨夜から何度自分の指を見つめただろう。
視線の先には誉さんが贈ってくれた指輪が嵌っている。
男にしては細くて長い女性的な指があまり好きではなかったけれど、この指にはこのフルエタニティの指輪がよく似合う。
誉さんが僕の指に合う指輪を考えてオーダーしてくれたんだ。
だから何度でも見てしまう。
すっかり自分の指が好きになってしまった。
コンプレックスでさえも好きにしてくれる誉さんって本当にすごい。
「なんだ、まだ見てるのか?」
「だって、すごく嬉しいんです。これで離れている間にも寂しくないなって……」
「そうだ。これは敦己のお守りでもあるから絶対に外してはダメだぞ」
僕のお守り。誉さんがずっと守ってくれているってことだ。
「約束します。絶対に外したりしませんから」
小指を絡めて唇を重ねる。
そんな約束をして僕は会社の前で車を降りた。
去っていく誉さんの車に手を振って、ロビーに進む。
「宇佐美さん。おはようございます」
「おはようございます」
受付の女性社員に挨拶を返した時、頭を下げると前髪がサラッと落ちてきた。
何も気にせずさっと指で戻すと、女性社員の表情が笑顔から一気に変わったのに気づいた。
「どうかした?」
「えっ、い、いえ。何も、なんでもないです」
明らかに不自然な笑顔を向けられたけれど、ここで追及するほど気になっているわけでもない。
それじゃあとその場を離れセキュリティーゲートを抜けてオフィスに入った。
出社には少し早い時間。
数人の社員とすれ違いながらも、誰一人いつもと変わらない。
やっぱりなんでもなかったんだなとほっと胸を撫で下ろしながら営業部のオフィスに入った。
ちらほらと席についている人がいる。
彼らに挨拶しながら自分の席に向かうと、すでに暁くんがいた。
「暁くん、おはよう。早いね」
「あ、宇佐美さん。おはようございます。僕もさっき来たばかりです」
以前の会社では始業時間よりかなり早く来させられていたみたいで、ここの出勤時間が天国なんだと話していた。
いつも顔色もいいし、小田切先生にしっかりとお世話されてるんだなと思ったら思わず笑みが溢れた。
「今日の午後のアポイントの資料なんだけど……」
「はい。それはもうバッチリです。どうぞ」
午前中にできればいいと思っていた資料がもうバッチリ?
手渡された資料を見ると、抜けもなくまさしく完璧な資料に驚く。
「ありがとう。これで今日も頑張れるよ!」
笑顔でお礼を言ったけれど、暁くんは何故か赤い顔をして視線が下を向いている。
「どうした? 何かあった?」
「あ、あの……その……」
いきなり挙動不審になった暁くんを不思議に思っていると、突然背後から声をかけられた。
「うーさみ! おめでとう!」
目の前に僕の好きなアイスカフェオレが現れて、思わずそれを受け取ってしまった。
「ありがとう」
とりあえずお礼を言って振り返るとそこにいたのは、上田。
「カフェオレは嬉しいけど、どうした? 朝からテンション高いな」
「まぁな、お祝いだから。ほら、暁くんも。宇佐美と同じカフェオレにしといたよ」
「あ、ありがとうございます」
まだ顔が赤い暁くんが上田からカフェオレを受け取ると、上田は笑顔でアイスコーヒーを掲げた。
「宇佐美、婚約おめでとう!」
その声にオフィス中が大きな歓声に包まれた。
「宇佐美さん、婚約ですか?」
「えーすごい! おめでとうございます!」
「近々だと思ってたよー!」
そんな声があちらこちらから上がる。
「なっ、えっ? どうして、知ってるんだ? もしかして誉さんが?」
上田にわざわざ報告したんだろうか?
今日中に会社には報告すると言っていたけど、まさか上田には個別で?
「違うよ、お前のその指! もう会社中で噂になってるぜ! お前が結婚したってな」
「えっ? 指? あっ!」
もしかしてこの指輪?
そう思って左手をあげると、遠巻きにしていた女性社員たちが駆け寄ってきた。
「すごい! 素敵!!」
「フルエタニティーよ!」
「わぁー! 宇佐美さん、愛されてる!」
僕の指輪を見て口々に叫んでいる。
社内はともかく、この営業部内では僕の恋人が男性でいつも送り迎えしてくれる人だってことはとうにバレていた。
でもそれが部署外に広まらなかったのは、上田や部長たちのおかげだ。
営業部のみんなも最初こそ驚いていたけれど、以前婚約していた時とは明らかに違う僕の幸せそうな姿に応援してくれていたんだ。
「宇佐美さん、おめでとう!」
「宇佐美、良かったな」
仲間たちからの心からの祝いの言葉に、僕は涙が出そうになってしまった。
昨夜から何度自分の指を見つめただろう。
視線の先には誉さんが贈ってくれた指輪が嵌っている。
男にしては細くて長い女性的な指があまり好きではなかったけれど、この指にはこのフルエタニティの指輪がよく似合う。
誉さんが僕の指に合う指輪を考えてオーダーしてくれたんだ。
だから何度でも見てしまう。
すっかり自分の指が好きになってしまった。
コンプレックスでさえも好きにしてくれる誉さんって本当にすごい。
「なんだ、まだ見てるのか?」
「だって、すごく嬉しいんです。これで離れている間にも寂しくないなって……」
「そうだ。これは敦己のお守りでもあるから絶対に外してはダメだぞ」
僕のお守り。誉さんがずっと守ってくれているってことだ。
「約束します。絶対に外したりしませんから」
小指を絡めて唇を重ねる。
そんな約束をして僕は会社の前で車を降りた。
去っていく誉さんの車に手を振って、ロビーに進む。
「宇佐美さん。おはようございます」
「おはようございます」
受付の女性社員に挨拶を返した時、頭を下げると前髪がサラッと落ちてきた。
何も気にせずさっと指で戻すと、女性社員の表情が笑顔から一気に変わったのに気づいた。
「どうかした?」
「えっ、い、いえ。何も、なんでもないです」
明らかに不自然な笑顔を向けられたけれど、ここで追及するほど気になっているわけでもない。
それじゃあとその場を離れセキュリティーゲートを抜けてオフィスに入った。
出社には少し早い時間。
数人の社員とすれ違いながらも、誰一人いつもと変わらない。
やっぱりなんでもなかったんだなとほっと胸を撫で下ろしながら営業部のオフィスに入った。
ちらほらと席についている人がいる。
彼らに挨拶しながら自分の席に向かうと、すでに暁くんがいた。
「暁くん、おはよう。早いね」
「あ、宇佐美さん。おはようございます。僕もさっき来たばかりです」
以前の会社では始業時間よりかなり早く来させられていたみたいで、ここの出勤時間が天国なんだと話していた。
いつも顔色もいいし、小田切先生にしっかりとお世話されてるんだなと思ったら思わず笑みが溢れた。
「今日の午後のアポイントの資料なんだけど……」
「はい。それはもうバッチリです。どうぞ」
午前中にできればいいと思っていた資料がもうバッチリ?
手渡された資料を見ると、抜けもなくまさしく完璧な資料に驚く。
「ありがとう。これで今日も頑張れるよ!」
笑顔でお礼を言ったけれど、暁くんは何故か赤い顔をして視線が下を向いている。
「どうした? 何かあった?」
「あ、あの……その……」
いきなり挙動不審になった暁くんを不思議に思っていると、突然背後から声をかけられた。
「うーさみ! おめでとう!」
目の前に僕の好きなアイスカフェオレが現れて、思わずそれを受け取ってしまった。
「ありがとう」
とりあえずお礼を言って振り返るとそこにいたのは、上田。
「カフェオレは嬉しいけど、どうした? 朝からテンション高いな」
「まぁな、お祝いだから。ほら、暁くんも。宇佐美と同じカフェオレにしといたよ」
「あ、ありがとうございます」
まだ顔が赤い暁くんが上田からカフェオレを受け取ると、上田は笑顔でアイスコーヒーを掲げた。
「宇佐美、婚約おめでとう!」
その声にオフィス中が大きな歓声に包まれた。
「宇佐美さん、婚約ですか?」
「えーすごい! おめでとうございます!」
「近々だと思ってたよー!」
そんな声があちらこちらから上がる。
「なっ、えっ? どうして、知ってるんだ? もしかして誉さんが?」
上田にわざわざ報告したんだろうか?
今日中に会社には報告すると言っていたけど、まさか上田には個別で?
「違うよ、お前のその指! もう会社中で噂になってるぜ! お前が結婚したってな」
「えっ? 指? あっ!」
もしかしてこの指輪?
そう思って左手をあげると、遠巻きにしていた女性社員たちが駆け寄ってきた。
「すごい! 素敵!!」
「フルエタニティーよ!」
「わぁー! 宇佐美さん、愛されてる!」
僕の指輪を見て口々に叫んでいる。
社内はともかく、この営業部内では僕の恋人が男性でいつも送り迎えしてくれる人だってことはとうにバレていた。
でもそれが部署外に広まらなかったのは、上田や部長たちのおかげだ。
営業部のみんなも最初こそ驚いていたけれど、以前婚約していた時とは明らかに違う僕の幸せそうな姿に応援してくれていたんだ。
「宇佐美さん、おめでとう!」
「宇佐美、良かったな」
仲間たちからの心からの祝いの言葉に、僕は涙が出そうになってしまった。
971
あなたにおすすめの小説
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
《完結》僕が天使になるまで
MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。
それは翔太の未来を守るため――。
料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。
遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。
涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
僕を振った奴がストーカー気味に口説いてきて面倒臭いので早く追い返したい。執着されても城に戻りたくなんてないんです!
迷路を跳ぶ狐
BL
社交界での立ち回りが苦手で、よく夜会でも失敗ばかりの僕は、いつも一族から罵倒され、軽んじられて生きてきた。このまま誰からも愛されたりしないと思っていたのに、突然、ろくに顔も合わせてくれない公爵家の男と、婚約することになってしまう。
だけど、婚約なんて名ばかりで、会話を交わすことはなく、同じ王城にいるはずなのに、顔も合わせない。
それでも、公爵家の役に立ちたくて、頑張ったつもりだった。夜遅くまで魔法のことを学び、必要な魔法も身につけ、僕は、正式に婚約が発表される日を、楽しみにしていた。
けれど、ある日僕は、公爵家と王家を害そうとしているのではないかと疑われてしまう。
一体なんの話だよ!!
否定しても誰も聞いてくれない。それが原因で、婚約するという話もなくなり、僕は幽閉されることが決まる。
ほとんど話したことすらない、僕の婚約者になるはずだった宰相様は、これまでどおり、ろくに言葉も交わさないまま、「婚約は考え直すことになった」とだけ、僕に告げて去って行った。
寂しいと言えば寂しかった。これまで、彼に相応しくなりたくて、頑張ってきたつもりだったから。だけど、仕方ないんだ……
全てを諦めて、王都から遠い、幽閉の砦に連れてこられた僕は、そこで新たな生活を始める。
食事を用意したり、荒れ果てた砦を修復したりして、結構楽しく暮らせていると思っていた矢先、森の中で王都の魔法使いが襲われているのを見つけてしまう。
*残酷な描写があり、たまに攻めが受け以外に非道なことをしたりしますが、受けには優しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる