婚約者に裏切られたのに幸せすぎて怖いんですけど……

波木真帆

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番外編

みんなからの祝福

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<side敦己>

昨夜から何度自分の指を見つめただろう。
視線の先には誉さんが贈ってくれた指輪が嵌っている。

男にしては細くて長い女性的な指があまり好きではなかったけれど、この指にはこのフルエタニティの指輪がよく似合う。
誉さんが僕の指に合う指輪を考えてオーダーしてくれたんだ。

だから何度でも見てしまう。
すっかり自分の指が好きになってしまった。
コンプレックスでさえも好きにしてくれる誉さんって本当にすごい。

「なんだ、まだ見てるのか?」

「だって、すごく嬉しいんです。これで離れている間にも寂しくないなって……」

「そうだ。これは敦己のお守りでもあるから絶対に外してはダメだぞ」

僕のお守り。誉さんがずっと守ってくれているってことだ。

「約束します。絶対に外したりしませんから」

小指を絡めて唇を重ねる。
そんな約束をして僕は会社の前で車を降りた。
去っていく誉さんの車に手を振って、ロビーに進む。

「宇佐美さん。おはようございます」

「おはようございます」

受付の女性社員に挨拶を返した時、頭を下げると前髪がサラッと落ちてきた。
何も気にせずさっと指で戻すと、女性社員の表情が笑顔から一気に変わったのに気づいた。

「どうかした?」

「えっ、い、いえ。何も、なんでもないです」

明らかに不自然な笑顔を向けられたけれど、ここで追及するほど気になっているわけでもない。
それじゃあとその場を離れセキュリティーゲートを抜けてオフィスに入った。

出社には少し早い時間。
数人の社員とすれ違いながらも、誰一人いつもと変わらない。
やっぱりなんでもなかったんだなとほっと胸を撫で下ろしながら営業部のオフィスに入った。

ちらほらと席についている人がいる。
彼らに挨拶しながら自分の席に向かうと、すでに暁くんがいた。

「暁くん、おはよう。早いね」

「あ、宇佐美さん。おはようございます。僕もさっき来たばかりです」

以前の会社では始業時間よりかなり早く来させられていたみたいで、ここの出勤時間が天国なんだと話していた。
いつも顔色もいいし、小田切先生にしっかりとお世話されてるんだなと思ったら思わず笑みが溢れた。

「今日の午後のアポイントの資料なんだけど……」

「はい。それはもうバッチリです。どうぞ」

午前中にできればいいと思っていた資料がもうバッチリ?
手渡された資料を見ると、抜けもなくまさしく完璧な資料に驚く。

「ありがとう。これで今日も頑張れるよ!」

笑顔でお礼を言ったけれど、暁くんは何故か赤い顔をして視線が下を向いている。

「どうした? 何かあった?」

「あ、あの……その……」

いきなり挙動不審になった暁くんを不思議に思っていると、突然背後から声をかけられた。

「うーさみ! おめでとう!」

目の前に僕の好きなアイスカフェオレが現れて、思わずそれを受け取ってしまった。

「ありがとう」

とりあえずお礼を言って振り返るとそこにいたのは、上田。

「カフェオレは嬉しいけど、どうした? 朝からテンション高いな」

「まぁな、お祝いだから。ほら、暁くんも。宇佐美と同じカフェオレにしといたよ」

「あ、ありがとうございます」

まだ顔が赤い暁くんが上田からカフェオレを受け取ると、上田は笑顔でアイスコーヒーを掲げた。

「宇佐美、婚約おめでとう!」

その声にオフィス中が大きな歓声に包まれた。

「宇佐美さん、婚約ですか?」
「えーすごい! おめでとうございます!」
「近々だと思ってたよー!」

そんな声があちらこちらから上がる。

「なっ、えっ? どうして、知ってるんだ? もしかして誉さんが?」

上田にわざわざ報告したんだろうか?
今日中に会社には報告すると言っていたけど、まさか上田には個別で?

「違うよ、お前のその指! もう会社中で噂になってるぜ! お前が結婚したってな」

「えっ? 指? あっ!」

もしかしてこの指輪? 
そう思って左手をあげると、遠巻きにしていた女性社員たちが駆け寄ってきた。

「すごい! 素敵!!」
「フルエタニティーよ!」
「わぁー! 宇佐美さん、愛されてる!」

僕の指輪を見て口々に叫んでいる。

社内はともかく、この営業部内では僕の恋人が男性でいつも送り迎えしてくれる人だってことはとうにバレていた。
でもそれが部署外に広まらなかったのは、上田や部長たちのおかげだ。
営業部のみんなも最初こそ驚いていたけれど、以前婚約していた時とは明らかに違う僕の幸せそうな姿に応援してくれていたんだ。

「宇佐美さん、おめでとう!」
「宇佐美、良かったな」

仲間たちからの心からの祝いの言葉に、僕は涙が出そうになってしまった。
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