俺の天使に触れないで  〜アルと理玖の物語〜

波木真帆

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彼と出会った日 <後編>

何が起こったのかわからない俺にエーベルが

「リクのオリガミに感動したんだよ、きっと」

と笑顔で言ってくれた。

オーナーはテーブルに来るや否や、俺の折った折り紙をみて、これを店に飾りたいんだけどいいかな?と頼んできた。

詳しく話を聞くと、オーナーの父親が昔ドイツに住んでいた日本人の女の子に折り紙をもらったことがあったそうだ。
日本人家族はその後、日本へと帰国してしまったがその時お別れに女の子は折り鶴を父親にプレゼントしていった。
父親はそれを宝物として今でも大切に大切にしていたが、先日、従姉妹の孫にグチャグチャに破られてしまったのだという。
父親は深く悲しんだが幼い子どものしたことを強く責めるわけにもいかない。
責めたとしても、もう誰も元に戻すこともできない。

そんな時に出逢ったこの折り紙、是非父親に見せてあげたい、そして、今度は壊されないように店に飾っておきたいのだと話した。

「その子が作ったものではないけれど良いのですか?」

と言ったけれど、オーナーは

「折り紙にはその人の気持ちが宿るのだと聞いた。
こんなに綺麗に折られた鶴はきっと幸せなものに違いない。だから、これが良いんだ……」

と行ってくれた。

俺はそんなに思ってもらえるならと作った折り紙を全て渡した。

カールは少し寂しそうにしていたから、

「家に帰ったらまたたくさん折るよ。今度は一緒にやろう」

と声をかけたら、嬉しそうに笑った。

そんなこんなで俺の折った折り紙たちは、この店の一番目立つ場所へと飾られることになった。

ホームステイを終えて帰るまでに何度かそのカフェに足を運んだが、俺の折り紙たちは埃を被ることもなく、綺麗に飾られたままだった。

最後に見かけた時には、誰かが折って加えたんだろう、少し歪んだ鶴が家族に加わっていた。

それを見て、エーベル家族の一員に加わった俺のことを見ているようで少し涙がでた。



あれから5年が経ち、俺は日本で大学生になっていた。
エーベル家族とは今でも交流がある。
なかなか会いにはいけないけれど、カールは日本に留学したいといってきている。
カールと日本で会えるのももうすぐかもしれない。

大学生活も2年目に入り、授業にもだいぶゆとりがでてきたころ、俺は高校からの友達である香月 晴かつき はると買い物に出かけていた。

香月が行ってみたいお店があるからと普段は降りない駅で降りて、歩いている最中、駅前にぽつんと佇むカフェを見つけた。
普段なら知らずに過ぎてしまいそうなその佇まいになぜか親近感を覚えた。

「香月、ここか?」

「そう。この前、たまたまこの道を通った時にカフェがあるのを見つけて、どうしても入ってみたくなっちゃって。いい雰囲気じゃない?」

ここは日本だし、店の外観も周りも全然違うのに何故かあの【cafe Einhorn 一角獣】を思い出す。

ドキドキしながら、足を踏み入れると、中身だけミュンヘンに飛んでしまったような錯覚を覚える。

ああ、ここはあのお店を思い起こさせる。懐かしいな。

料理も美味しく、俺は幸せなひとときを過ごした。

それから、しばらく経って求人誌にあの店の募集記事を見かけた。

あの店で働けたら楽しいだろうなと漠然と思ってしまったが、指定された面接日には行けそうにない。

これは諦めるしかないなと思っていたが、同じ求人誌を見た香月が面接で他の日にもやってもらえるように頼んでみるよ! と言ってくれた。

半分諦めだったが、香月の面接当日、急に俺のスマホに着信があった。

明日特別に面接をしてくれるという。

俺は嬉しくなってドキドキしながら、カフェへと向かった。
扉をノックし、出てきた彼に目を奪われた。
男とか女とか関係なく、人を好きになるってこういうことなんだと気づいた瞬間だった。

「よろしくお願いします」

と声をかけ、彼の笑顔に胸を打たれた。

あれが、俺と彼が出逢った日。
そして、幸せな日々への第一歩。




カフェ店内で一番明るい場所に飾ってある折り鶴の存在に気づいた話はまた別のお話。
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