5 / 35
彼と出会った日 <後編>
何が起こったのかわからない俺にエーベルが
「リクのオリガミに感動したんだよ、きっと」
と笑顔で言ってくれた。
オーナーはテーブルに来るや否や、俺の折った折り紙をみて、これを店に飾りたいんだけどいいかな?と頼んできた。
詳しく話を聞くと、オーナーの父親が昔ドイツに住んでいた日本人の女の子に折り紙をもらったことがあったそうだ。
日本人家族はその後、日本へと帰国してしまったがその時お別れに女の子は折り鶴を父親にプレゼントしていった。
父親はそれを宝物として今でも大切に大切にしていたが、先日、従姉妹の孫にグチャグチャに破られてしまったのだという。
父親は深く悲しんだが幼い子どものしたことを強く責めるわけにもいかない。
責めたとしても、もう誰も元に戻すこともできない。
そんな時に出逢ったこの折り紙、是非父親に見せてあげたい、そして、今度は壊されないように店に飾っておきたいのだと話した。
「その子が作ったものではないけれど良いのですか?」
と言ったけれど、オーナーは
「折り紙にはその人の気持ちが宿るのだと聞いた。
こんなに綺麗に折られた鶴はきっと幸せなものに違いない。だから、これが良いんだ……」
と行ってくれた。
俺はそんなに思ってもらえるならと作った折り紙を全て渡した。
カールは少し寂しそうにしていたから、
「家に帰ったらまたたくさん折るよ。今度は一緒にやろう」
と声をかけたら、嬉しそうに笑った。
そんなこんなで俺の折った折り紙たちは、この店の一番目立つ場所へと飾られることになった。
ホームステイを終えて帰るまでに何度かそのカフェに足を運んだが、俺の折り紙たちは埃を被ることもなく、綺麗に飾られたままだった。
最後に見かけた時には、誰かが折って加えたんだろう、少し歪んだ鶴が家族に加わっていた。
それを見て、エーベル家族の一員に加わった俺のことを見ているようで少し涙がでた。
あれから5年が経ち、俺は日本で大学生になっていた。
エーベル家族とは今でも交流がある。
なかなか会いにはいけないけれど、カールは日本に留学したいといってきている。
カールと日本で会えるのももうすぐかもしれない。
大学生活も2年目に入り、授業にもだいぶゆとりがでてきたころ、俺は高校からの友達である香月 晴と買い物に出かけていた。
香月が行ってみたいお店があるからと普段は降りない駅で降りて、歩いている最中、駅前にぽつんと佇むカフェを見つけた。
普段なら知らずに過ぎてしまいそうなその佇まいになぜか親近感を覚えた。
「香月、ここか?」
「そう。この前、たまたまこの道を通った時にカフェがあるのを見つけて、どうしても入ってみたくなっちゃって。いい雰囲気じゃない?」
ここは日本だし、店の外観も周りも全然違うのに何故かあの【cafe Einhorn 】を思い出す。
ドキドキしながら、足を踏み入れると、中身だけミュンヘンに飛んでしまったような錯覚を覚える。
ああ、ここはあのお店を思い起こさせる。懐かしいな。
料理も美味しく、俺は幸せなひとときを過ごした。
それから、しばらく経って求人誌にあの店の募集記事を見かけた。
あの店で働けたら楽しいだろうなと漠然と思ってしまったが、指定された面接日には行けそうにない。
これは諦めるしかないなと思っていたが、同じ求人誌を見た香月が面接で他の日にもやってもらえるように頼んでみるよ! と言ってくれた。
半分諦めだったが、香月の面接当日、急に俺のスマホに着信があった。
明日特別に面接をしてくれるという。
俺は嬉しくなってドキドキしながら、カフェへと向かった。
扉をノックし、出てきた彼に目を奪われた。
男とか女とか関係なく、人を好きになるってこういうことなんだと気づいた瞬間だった。
「よろしくお願いします」
と声をかけ、彼の笑顔に胸を打たれた。
あれが、俺と彼が出逢った日。
そして、幸せな日々への第一歩。
カフェ店内で一番明るい場所に飾ってある折り鶴の存在に気づいた話はまた別のお話。
「リクのオリガミに感動したんだよ、きっと」
と笑顔で言ってくれた。
オーナーはテーブルに来るや否や、俺の折った折り紙をみて、これを店に飾りたいんだけどいいかな?と頼んできた。
詳しく話を聞くと、オーナーの父親が昔ドイツに住んでいた日本人の女の子に折り紙をもらったことがあったそうだ。
日本人家族はその後、日本へと帰国してしまったがその時お別れに女の子は折り鶴を父親にプレゼントしていった。
父親はそれを宝物として今でも大切に大切にしていたが、先日、従姉妹の孫にグチャグチャに破られてしまったのだという。
父親は深く悲しんだが幼い子どものしたことを強く責めるわけにもいかない。
責めたとしても、もう誰も元に戻すこともできない。
そんな時に出逢ったこの折り紙、是非父親に見せてあげたい、そして、今度は壊されないように店に飾っておきたいのだと話した。
「その子が作ったものではないけれど良いのですか?」
と言ったけれど、オーナーは
「折り紙にはその人の気持ちが宿るのだと聞いた。
こんなに綺麗に折られた鶴はきっと幸せなものに違いない。だから、これが良いんだ……」
と行ってくれた。
俺はそんなに思ってもらえるならと作った折り紙を全て渡した。
カールは少し寂しそうにしていたから、
「家に帰ったらまたたくさん折るよ。今度は一緒にやろう」
と声をかけたら、嬉しそうに笑った。
そんなこんなで俺の折った折り紙たちは、この店の一番目立つ場所へと飾られることになった。
ホームステイを終えて帰るまでに何度かそのカフェに足を運んだが、俺の折り紙たちは埃を被ることもなく、綺麗に飾られたままだった。
最後に見かけた時には、誰かが折って加えたんだろう、少し歪んだ鶴が家族に加わっていた。
それを見て、エーベル家族の一員に加わった俺のことを見ているようで少し涙がでた。
あれから5年が経ち、俺は日本で大学生になっていた。
エーベル家族とは今でも交流がある。
なかなか会いにはいけないけれど、カールは日本に留学したいといってきている。
カールと日本で会えるのももうすぐかもしれない。
大学生活も2年目に入り、授業にもだいぶゆとりがでてきたころ、俺は高校からの友達である香月 晴と買い物に出かけていた。
香月が行ってみたいお店があるからと普段は降りない駅で降りて、歩いている最中、駅前にぽつんと佇むカフェを見つけた。
普段なら知らずに過ぎてしまいそうなその佇まいになぜか親近感を覚えた。
「香月、ここか?」
「そう。この前、たまたまこの道を通った時にカフェがあるのを見つけて、どうしても入ってみたくなっちゃって。いい雰囲気じゃない?」
ここは日本だし、店の外観も周りも全然違うのに何故かあの【cafe Einhorn 】を思い出す。
ドキドキしながら、足を踏み入れると、中身だけミュンヘンに飛んでしまったような錯覚を覚える。
ああ、ここはあのお店を思い起こさせる。懐かしいな。
料理も美味しく、俺は幸せなひとときを過ごした。
それから、しばらく経って求人誌にあの店の募集記事を見かけた。
あの店で働けたら楽しいだろうなと漠然と思ってしまったが、指定された面接日には行けそうにない。
これは諦めるしかないなと思っていたが、同じ求人誌を見た香月が面接で他の日にもやってもらえるように頼んでみるよ! と言ってくれた。
半分諦めだったが、香月の面接当日、急に俺のスマホに着信があった。
明日特別に面接をしてくれるという。
俺は嬉しくなってドキドキしながら、カフェへと向かった。
扉をノックし、出てきた彼に目を奪われた。
男とか女とか関係なく、人を好きになるってこういうことなんだと気づいた瞬間だった。
「よろしくお願いします」
と声をかけ、彼の笑顔に胸を打たれた。
あれが、俺と彼が出逢った日。
そして、幸せな日々への第一歩。
カフェ店内で一番明るい場所に飾ってある折り鶴の存在に気づいた話はまた別のお話。
あなたにおすすめの小説
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
世間に秘された名門男子校・平坂学園体育科
空手の名選手であった高尾雄一は、新任教師として赴任する
高潔な人格と鋼のように鍛えられた肉体
それは、学園にとって最高の生贄の候補に他ならなかった
至高の筋肉を持つ、精神を削られ意志をなくした青年を太古の神に捧げるため、“水”、“風”、“土”の信奉者達が暗躍する
意志をなくし筋肉の操り人形と化した“デク”
消える教師
山奥の男子校で繰り広げられるダークファンタジー
【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。自称博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「絶対に僕の方が美形なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ!」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談?本気?二人の結末は?
美形病みホス×平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
※現在、続編連載再開に向けて、超大幅加筆修正中です。読んでくださっていた皆様にはご迷惑をおかけします。追加シーンがたくさんあるので、少しでも楽しんでいただければ幸いです。
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
俺は夜、社長の猫になる
衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。
ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。
言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。
タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。
けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。