俺の天使に触れないで  〜アルと理玖の物語〜

波木真帆

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アルへのプレゼント

誕生日当日、アルは店を臨時休業にした。
その日はアルの家で2人だけのパーティーをすることになっている。

ドイツ人は誕生日に特別のこだわりを持っていて、パーティーは誕生日である本人が主催するのが一般的だ。
アルも同様に俺と過ごすために念入りに計画してくれたようだ。

どっちが誕生日かわからなくなってしまうほど、アルの家のテーブルには俺の好きな料理が所狭しと並べられていた。

「アル、Alles Gute zum Geburtstagおめでとう!」

Dankeschönありがとう
リクからお祝いの言葉をもらえるなんて私は幸せだ!」

まずはキスとハグをして、ソファーへと向かった。

ソファーの前のテーブルにはすでにあの時買った和紙が置かれていて、アルのやる気がうかがえる。

「アル、どの紙で鶴を折って欲しい?」

そう聞くと、アルは色とりどりの和紙の中から物凄く悩んでから一枚の和紙を俺に手渡した。

それは俺が【cafe Einhorn 一角獣】で折ったものと同じ真っ白の紙。

「これでいいの?」

「いや、これいいんだ。折ってくれるか?」

アルにとってきっと俺との思い出の色なんだろうと思うと、嬉しくてたまらなかった。

俺はその真っ白な和紙で丁寧に鶴を折った。
見ると、隣でアルも俺の手つきを見ながら同じタイミングで折っている。

慣れた手つきに必死に練習したというアルの言葉が甦る。
本当に頑張ってくれてたんだ……。
別に信じていないわけではなかったけれど、実際に折っている姿を見ると感動してしまう。

俺が真っ白な鶴を完成させた時、アルもまた真っ白な鶴を完成させていた。

ほんの少しだけ折り目がズレているのが、アルらしくて良い。

「やっぱりリクの作った方が上手だ」

アルは恥ずかしそうに自分の鶴と見比べていたけれど、それでも嬉しそうだった。

「明日早速店に飾ろう」

店から持ってきた飾りケースの中身を出し、今2人で作った折り鶴を並んで飾っていく。

「ああ、私の願いが叶ったよ。ありがとう、リク」

満面の笑みを浮かべるアルを見て、俺はスッと立ち上がった。

「アルにもうひとつプレゼントがあるんだ」

俺は背負ってきたリュックの中から小さな紙袋を取り出し、

「アル、お誕生日おめでとう。これは俺の気持ちだよ」

と言って手渡した。

「リクから二つもプレゼントをもらえるなんて! 一体なんだ…………えっ? こ、これ……」

「俺の心からの気持ちだよ」

「リク……」

アルは涙を滲ませながら紙袋からゆっくりと俺のプレゼントを取り出した。

アルの手には小さなブーケ。
そう、俺が折り紙で作った5本の赤い薔薇のブーケだ。


「私もリクと出逢えて最高に幸せだよ」

アルは薔薇のブーケを手にしたまま、俺をぎゅっと抱きしめた。

「リク、愛してる……このまますぐにリクを抱きたい」

ストレートに愛を囁かれ、思わず『うん』とうなずいてしまった俺は、アルに抱きかかえられそのまま寝室へと連れて行かれた。


 * * *

俺たちが甘い甘い夜を過ごした翌日、
カフェシュパースの一番目立つ場所に置かれた飾りケースには
2羽の仲睦まじい真っ白い鶴と一緒に、真っ赤な薔薇のブーケが飾られていて、アルは時々そこに目を向けては嬉しそうに微笑んでいた。


※5本の薔薇の花言葉……あなたに出逢えて心から嬉しい
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