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第一章
リュシエルの嘘
<sideヴァレリウス>
最近、あのリュシエルが変わった。
方々でそんな言葉を聞くことが増えた。
確かに、少しおかしい。表情も、前とは違う気がする。
自分から挨拶をするようになったし、あの棘のある言い方や、乱暴な行動もしなくなった。
だが、あのリュシエルのことだ。
またすぐ、元に戻るに決まっている。
そうでなければ、おかしい。
騙されるものか
そう思っていたのに……
ここ数日、授業中も静かなままだ。
以前なら勝手に席を立ち、教室を抜け出していたのに。
ふと視線を向ける。
ノートは真っ白。鉛筆を持つこともしていない。
ぼーっと外を眺めたり、つまらなさそうに教科書を見つめている。
やはり、何も変わっていないのか。
そう思った、その時……昨日のテストが返された。
リュシエルはそれを受け取ると、ちらりと見ただけで机に置く。
興味もなさそうだ。
いつもならもっと騒いでいるはずなのに。
おかしい……
ふと気になって、リュシエルのテストを覗く。
えっ……満点?
思わず目を疑った。そんなこと、有り得ない。
リュシエルは授業中、ほとんど何も聞いていかなかったはずだ。
なのに、満点?
まさか、カンニングか?
いや、この教室でそれをするなら、必ず誰かが気づく。
しかも隣の生徒は、半分も取れていない。
つまり、カンニングしても意味がない、ということだ。
となると、これは……
ちらりと、リュシエルを見る。
相変わらず、窓の外をぼんやり眺めている。
満点の答案に、誇る様子も、喜ぶ様子もない。
わからない……
初めて、そう思った。
あいつは、何も変わっていないのか?
それとも、別の何かに変わったのか?
答えが出ないまま、視線を外す。
そのまま午後の授業は終わった。
放課後、廊下の片隅で何か金属が落ちたような音がした。
そして、小さな泣き声。
思わず足を止めた。
曲がり角の先に、見覚えのある金髪が見えた。
リュシエルだ。
その前で、一人の生徒が床にしゃがみ込んで泣いている。
周りには、散らばったお菓子。
またか……
やっぱりな。あいつは、何も変わってない。
大きなため息を吐きかけた、その時……
リュシエルがしゃがみ込むのが見えた。
そして……持っていたお菓子の箱を、その子に差し出した。
「ぼく……甘いもの、あまり好きじゃないから……」
聞こえてきた言葉に、思わず眉が動く。
そんなの、嘘だ。
王城で開かれた茶会でも、リュシエルは人の分まで取って食べていた。
それに、今日あのお菓子が配られたときも明らかに嬉しそうにしていた。
それなのに、自分の分を渡した?
あの、リュシエルが?
泣いている生徒は、何度も頭を下げている。
リュシエルはそれを見届けると、何も言わずに立ち上がった。
そして、そのまま背を向ける。
なせだ……?
理解できない。
リュシエルが、自分のものを誰かに譲るなんて……
胸の奥に、小さな違和感が残ったまま消えない。
まるで、見てはいけないものを見たような……そんな感覚だけが妙にしつこく残っていた。
* * *
次回から、毎日11時投稿になります。
最近、あのリュシエルが変わった。
方々でそんな言葉を聞くことが増えた。
確かに、少しおかしい。表情も、前とは違う気がする。
自分から挨拶をするようになったし、あの棘のある言い方や、乱暴な行動もしなくなった。
だが、あのリュシエルのことだ。
またすぐ、元に戻るに決まっている。
そうでなければ、おかしい。
騙されるものか
そう思っていたのに……
ここ数日、授業中も静かなままだ。
以前なら勝手に席を立ち、教室を抜け出していたのに。
ふと視線を向ける。
ノートは真っ白。鉛筆を持つこともしていない。
ぼーっと外を眺めたり、つまらなさそうに教科書を見つめている。
やはり、何も変わっていないのか。
そう思った、その時……昨日のテストが返された。
リュシエルはそれを受け取ると、ちらりと見ただけで机に置く。
興味もなさそうだ。
いつもならもっと騒いでいるはずなのに。
おかしい……
ふと気になって、リュシエルのテストを覗く。
えっ……満点?
思わず目を疑った。そんなこと、有り得ない。
リュシエルは授業中、ほとんど何も聞いていかなかったはずだ。
なのに、満点?
まさか、カンニングか?
いや、この教室でそれをするなら、必ず誰かが気づく。
しかも隣の生徒は、半分も取れていない。
つまり、カンニングしても意味がない、ということだ。
となると、これは……
ちらりと、リュシエルを見る。
相変わらず、窓の外をぼんやり眺めている。
満点の答案に、誇る様子も、喜ぶ様子もない。
わからない……
初めて、そう思った。
あいつは、何も変わっていないのか?
それとも、別の何かに変わったのか?
答えが出ないまま、視線を外す。
そのまま午後の授業は終わった。
放課後、廊下の片隅で何か金属が落ちたような音がした。
そして、小さな泣き声。
思わず足を止めた。
曲がり角の先に、見覚えのある金髪が見えた。
リュシエルだ。
その前で、一人の生徒が床にしゃがみ込んで泣いている。
周りには、散らばったお菓子。
またか……
やっぱりな。あいつは、何も変わってない。
大きなため息を吐きかけた、その時……
リュシエルがしゃがみ込むのが見えた。
そして……持っていたお菓子の箱を、その子に差し出した。
「ぼく……甘いもの、あまり好きじゃないから……」
聞こえてきた言葉に、思わず眉が動く。
そんなの、嘘だ。
王城で開かれた茶会でも、リュシエルは人の分まで取って食べていた。
それに、今日あのお菓子が配られたときも明らかに嬉しそうにしていた。
それなのに、自分の分を渡した?
あの、リュシエルが?
泣いている生徒は、何度も頭を下げている。
リュシエルはそれを見届けると、何も言わずに立ち上がった。
そして、そのまま背を向ける。
なせだ……?
理解できない。
リュシエルが、自分のものを誰かに譲るなんて……
胸の奥に、小さな違和感が残ったまま消えない。
まるで、見てはいけないものを見たような……そんな感覚だけが妙にしつこく残っていた。
* * *
次回から、毎日11時投稿になります。
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