ある教授夫夫の甘い思い出 〜右手がくれた奇跡シリーズ

波木真帆

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教授会の裏で  <後編>

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「えっ? えっ? なに、すっごく可愛い子」

「でしょう? この子、うちの可愛い直くんだよ」

「えーっ! どういうこと?」

絢斗が見せてくれた画面に映っていたのは、可愛らしいピンクベージュのドレスを着た美少女。
それが、絢斗と磯山先生の可愛い息子の直くんだなんて。

「実はね、今回の家族旅行は結婚式参列を兼ねてたんだ。その結婚式の招待が新夫さんにはサプライズだったから皐月にも言えなかったんだよ」

絢斗はその結婚式について詳しく説明してくれた。
なるほどそういうことなら内緒にしていたのも頷ける。

「それでどうしてこの格好をすることになったの?」

「その結婚式にパンフレットの撮影隊が入ることになっていたから、そこに素のままの直くんが参加して困ったことになったらいけないからって周平くんと敬介くんがドレスと着物を用意してくれたんだよ。それで直くんだけお着替えするのも変だから私も付き合ったっていうわけ」

「なるほど、そういうことか。じゃあ絢斗も着替えたんだ! どんなの?」

「私は着物だよ。これ」

「わぁー! 素敵! よく似合ってる」

「敬介くんが素敵な着物を用意してくれてたからよかったよ」

どんな理由があったからにせよ、愛しい絢斗と可愛い息子である直くんがドレスアップしたんだから磯山先生は嬉しかっただろうな。

「ねぇ、ってことは他の招待客も……?」

「さすが、皐月! 今回の招待客に教え子がいっぱい来てたからせっかくだからみんなにもやらせちゃった!」

絢斗が嬉しそうにスマホを見せると、そこには美人さんたちの集合写真。

「えーっ! この子は敬介くんでしょ。そして……あっ、佳史くん?」

「そう! それでこっちが伊月くんだよ」

「えっ! 伊月くんも来てたの?」

「うん。甲斐くんと一緒に出席してたよ。新夫の実家の櫻葉家で飼われている可愛いミニチュアダックスフンドのフランくんのパパママだって」

「そっか、ブリーダーしてるんだもんね」

伊月くん、とっても幸せそう。
甲斐くんとお付き合いしてるって報告受けて、一緒に夢を叶えるために愛玩動物看護師の資格をとるって言った時はびっくりしたな。卒業後にうちの大学の獣医学部の専門コースに通うんだって話をしてたから、しばらくは大学で伊月くんの姿を見られるかなって思ってたけど、甲斐くんの説得もあって結局桜守大学の獣医学部の専門コースに通うことになったんだよね。

私としては残念だったけど、桜守は元々伊月くんが行きたい大学だったしそれはそれで夢が叶ってよかったんだと思う。無事に資格を取った時は報告してくれたっけ。ふふっ、懐かしい。

「あ、この子。可愛い! こっちの子も!」

「えっと、ああ、この子は尚孝くん。あの・・志摩くんの恋人だよ! あ、そうそう! すごい映像があってね!」

絢斗は嬉しそうにスマホを操作すると今度は写真ではなく、動画を再生した。

――みなさん、一花の投げるブーケが届くように前の方に来てください。

「わぁ、ブーケトスだね。この声、貴船くん?」

「うん。そう!」

医学部だった貴船くんは絢斗の講義を聴講していたこともあって存在はよく知っていた。
でもあの時と比べてずいぶん優しい声をしている。新夫の一花ちゃんのおかげかな。

――じゃあ、いきまーすっ!! えいっ!!

新夫の一花ちゃんが一生懸命なげたブーケはふわっと風に乗って集まった人たちの真ん中にリボンを揺らしながら落ちた。

「あ、さっきの!」

「そう。尚孝くんが取ったの! そうしたらね……」

志摩くんがさっと出てきて、彼の前に片膝をついた。

――これで、尚孝さんが次の花嫁ですね。私の花嫁になってください!

――はい。僕でよければ喜んで……

「わぁーーっ!! 素敵っ、素敵っ!!」

「でしょう? みんなうっとりしてたよ」

「それはそうだよ! あの志摩くんが……王子さまみたいに片膝ついてみんなの前でプロポーズなんて!!」

昔の志摩くんを知っていたら絶対に信じられない。
運命と出会うって本当にすごいな。

「でね、こっちの子は安城くんの恋人だよ」

「えー、安城くんの? どういう子なの?」

「櫻葉グループの社長で、新夫の一花ちゃんとは親戚だって。桜守の子だよ」

「ああ、そうなんだ。じゃあ私たちの後輩だね」

「うん。じゃああの桜に連れて行ってるかもね」

「そうだね」

私たちが勝手に話していたことがどこからかみんなに広がって、今ではそんなジンクスになっていると教えてくれたのは敬介くんからだった。

今年の春に敬介くんが周平くんとあの桜の下でキスをしてから、私たちに実はこういうジンクスがあって……と教えてくれた。それが私たち発祥だと知って驚いていたけれど、それで余計に信憑性が増したって喜んでくれていたな。

「ねぇ、もっと見たいけどそろそろ教授会始まるよ」

「わっ! 本当だ!」

「ねぇ、でもずるいよー! 絢斗ばっかり! 可愛い子たちに囲まれて、私もその場にいたかったな」

「皐月はいつも可愛い子に囲まれてたでしょ。敬介くんとか悠真くんとか真琴くんとかさ」

「確かにそうだけど……」

「わかった。じゃあ、今度こそ直くんに会わせるから楽しみにしてて!」

「絶対だよ!!」

「うん、約束!」

小指を差し出されて、私は子どもの時のように絢斗と小指を絡めた。

そして、その約束はすぐに叶うことになる。

やったね、来週末はうちで餃子パーティーだ!
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