イケメンスパダリ店主は愛する人が鈍感で無防備で可愛すぎて困っています

波木真帆

文字の大きさ
28 / 104

意識して欲しい

しおりを挟む
欲望の蜜をたっぷりと出し、今度こそと気合を入れて寝室に戻り、ベッドに身体を滑り込ませるとぐっすりと寝入っていたはずの平松くんがすぐに動き出す。

そして、そのまま私の胸元まで擦り寄ってきて

「ふふっ……」

と、嬉しそうに笑いながら深い眠りに落ちていく。

酔っている時といい、眠っている時といい、意識がない時は本当に素直なんだな。

それだけ普段は自分で自分の気持ちを抑えつけているということなのだろう。
早くそれを解き放ってやりたいな。

愛しい彼を腕に抱きながら、私もようやく眠りについた。

平松くんの温もりと甘い匂いのおかげでぐっすりと熟睡した私は、腕の中の彼が身動ぐのを感じて目を覚ました。

さて、この状態を目の当たりにして彼がどんなふうに感じるか、平松くんの様子をこっそり寝たふりをして覗いてみようか。

平松くんは目を覚まして私と抱き合っていることを知るや否や、慌てて布団を捲った。
ホッとしているところを見ると、自分が裸じゃないことを確認していたみたいだな。

もしかして、寝ている間に私が手を出したと思ったのか?
そんなケダモノに思われているとわかっていささかショックを受けたが、平松くんくらい可愛ければそれくらい心配しても無理はない。

だが、大丈夫。
私は意識のない状態では抱いたりはしないよ。
キスはしてしまったが、それはおねだりされたものだから許してもらおう。

平松くんは襲われてないことにホッとしたのか、それからも私から離れる様子はなかった。
それが嬉しくてぎゅっと抱きしめていると、平松くんが笑顔になったり、焦ったり、困っていたり……表情をくるくると変える。

ふふっ。本当に可愛らしい。

昨夜のことを必死に思い出そうとしているようだが、あの表情を見る限りキスのことはもちろん、告白してきたことも覚えていないようだ。

それなら今、私とこうなっている状況が掴めなくても仕方がない。

平松くんは私の腕をそっと離し、ベッドの上で私から少し距離をとった。

ベッドから下りていかないところを見ると、逃げ帰るつもりはないようだな。

「ああーっ! もうっ、何やってんだよ、俺!!」

突然頭を抱え大きな声で叫び出したのをみて、もう我慢ができなかった。
本当に可愛すぎだろう、この子は。

必死に堪えようとしたが我慢できずに笑い声を漏らすと、驚いた様子で私に顔を向ける。

「おはよう。平松くん」

「――っ、わっ、な――っ、えっ、うそっ、起きてた……っ」

私が寝たふりをしていたことに気づかないほど、混乱していたようだ。
可愛いという言葉以外出てこないな。

驚かせたことを謝り、深呼吸させるとようやく落ち着いたようで平松くんの方から昨夜のことを尋ねてきた。

あの……それで、俺……どうしちゃったんでしょうか? なんで、八尋さんと、だ、抱き合って……」

「ああ、そのことか。大したことじゃないよ。昨日平松くんはね、ワインの二杯目を半分くらいまで呑んだところでそのまま眠ってしまったんだ。声をかけたり、肩を軽く叩いたりしたんだけど全く起きる気配がなくて……それで、ベッドに運んだんだ」

流石に私が好きだと言ってキスを強請ってきたなんて言えないからな。
それでも、少しだけは私を意識してもらおうか。

そう思って、話を作ってみた。

「それで片付けを済ませて、寝る支度をして、私はソファーで寝ようと思ってね。寝る前に平松くんの様子を見に行ったんだ。そうしたら……ちょっと魘されていたみたいだったから、そばに寄って手を握って大丈夫だよって声をかけたんだ。そうしたら落ち着いたんだけど、手を握ったまま眠ってしまってね。起こすのが忍びなくて申し訳ないと思ったけど一緒に寝かせてもらったんだ」


そのおかげで久しぶりに・・・・・熟睡できたと告げると、平松くんは安心しながらもちょっと引っ掛かりを覚えたようだ。

ふふっ。きっと私が以前誰かと一緒に寝ていたと勘違いしただろう。
それで少しは私を意識して嫉妬してくれたらいい。

朝食の前に風呂に入るように勧めて湯を張りに寝室を出て、そっと中を窺うとベッドの上で何やら考えているようだ。

私と一緒に寝るのは自分だけだと独占欲を持ってくれたらいいんだがな……。

そんな期待を胸に風呂の用意をして、平松くんを風呂場に案内する。
もちろん私の着替えを持たせて。

「脱いだ服は洗濯機に入れてくれていいからね」

優しさのふりをして、そんな言葉をかけるがただ単純に彼の匂いのする服が欲しいだけだ。
変態だと思われたくなくてそんなことは決して言えないが、以前は我慢できた彼の下着も、キスをしてしまった今では我慢できそうにない。
しおりを挟む
感想 157

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

交際0日婚の溺愛事情

江多之折(エタノール)
BL
死にたくはない。でも、生きたくもない。ふらふらと彷徨う根無し草は、世界の怖さを知っている。救いの手は、選ばれた者にだけ差し伸べられることも知っている。 だから緩やかに終わりを探して生きていた。 ──たった数回の鬼ごっこを経験するまでは。 誠実すぎて怖い人は、4回目の顔合わせで僕の夫となる。 そんな怖がりな男と誠実な男の、結婚生活の始まり。 ■現実だけど現実じゃない、そんな気持ちで読んでください。 ■家庭に関してトラウマを抱えている方は読まない方が良いと思います。

病弱の花

雨水林檎
BL
痩せた身体の病弱な青年遠野空音は資産家の男、藤篠清月に望まれて単身東京に向かうことになる。清月は彼をぜひ跡継ぎにしたいのだと言う。明らかに怪しい話に乗ったのは空音が引き取られた遠縁の家に住んでいたからだった。できそこないとも言えるほど、寝込んでばかりいる空音を彼らは厄介払いしたのだ。そして空音は清月の家で同居生活を始めることになる。そんな空音の願いは一つ、誰よりも痩せていることだった。誰もが眉をひそめるようなそんな願いを、清月は何故か肯定する……。

【完結】もう一度恋に落ちる運命

grotta
BL
大学生の山岸隆之介はかつて親戚のお兄さんに淡い恋心を抱いていた。その後会えなくなり、自分の中で彼のことは過去の思い出となる。 そんなある日、偶然自宅を訪れたお兄さんに再会し…? 【大学生(α)×親戚のお兄さん(Ω)】 ※攻め視点で1話完結の短い話です。 ※続きのリクエストを頂いたので受け視点での続編を連載開始します。出来たところから順次アップしていく予定です。

片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

俺の婚約者は小さな王子さま?!

大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」 そう言い放ったのはこの国の王子さま?! パミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。 今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。 「年の差12歳なんてありえない!」 初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。 ※不定期更新です

借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます

なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。 そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。 「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」 脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……! 高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!? 借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。 冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!? 短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。

処理中です...