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第四章 (王城 過去編)
花村 柊 11−2
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「おお、これは……リンネルか? 白とはまた珍しいな」
あれ? 全く嫌悪感が感じられない……。
それどころかアンドリュー王は目を細めてパールを眺めている。
「ほんと、フワフワで可愛い。
ねぇ、触ってもいい?」
「はい、もちろんです」
冬馬さんがパールの背中にそっと触れると、パールは身動ぐことなく気持ちよさそうに眠り続けた。
「この子、名前なんて言うの?」
「あっ、パールと言います」
「へぇー、真っ白だしすごく似合ってるね」
ぼくの腕の中にいるパールを冬馬さんが笑顔で触ってくれるのは分かるけど、アンドリュー王も何の躊躇いもなく可愛がってくれていることに少しの違和感を感じていたぼくは、思い切ってアンドリュー王に尋ねてみることにした。
「あ、あの……陛下」
「うん? なんだ?」
「あの……このリンネルに何か思うことはありませんか?」
「そうだな、リンネルがこんなに人に懐いているのは初めて見たから驚いたな。それに白いリンネルは珍しいが、実に可愛らしい」
アンドリュー王のその言葉にフレッドは言葉も出せないほど驚いていた。
それはそうだろう。白いリンネルを可愛らしいと言ったのだから……。
「どうしたのだ?」
アンドリュー王はフレッドの様子がおかしいことに気づいたようだ。
ぼくはまだ驚きで話すこともできないフレッドに代わって冬馬さんに尋ねてみた。
「あの、この国での美醜の感覚はどうなっているのですか?」
「美醜って……日本と変わらないと思うけど?」
「本当ですか???」
ぼくは冬馬さんの言葉に今までで一番驚いた。
日本と変わらない??
じゃあもしかして、この時代には白が迫害対象なんていう概念がなかったとか?
これから先の未来に何かしらのきっかけでその概念が生まれてしまったのだとしたら?
もしかしたらこの時代に正しておけば、フレッドが辛い思いをする人生なんて消えてなくなるんじゃ?
そんな想いがぼくの頭の中を次々と駆け巡った。
そして、ぼくはドキドキしながら、冬馬さんに尋ねた。
「じゃ、じゃあ……アンドリュー王は格好良く見えてるんですよね? 冬馬さんだけじゃなくて、国中の人みんなが!」
「ええっ? そ、そんなこと……当たり前じゃない! ってそんなこと言わせないでよ!」
顔から湯気が出そうになる程、顔を真っ赤にして答えてくれた冬馬さんと隣で嬉しそうに笑うアンドリュー王を見ながら、ぼくは気づいたら涙を流してしまっていた。
それにいち早く気づいたフレッドがポケットからハンカチを差し出し、優しく拭ってくれた。
でも、ぼくの涙はなかなか止まらなかった。
「ど、どうしたの? 何か変なこと言っちゃった?」
「いえ……その、なんて言ったら良いのか……」
ぼくが泣くのをみて焦る冬馬さんにフレッドが説明しようとしたのだけれど、どう話したら良いのか悩んでいるようだ。
ぼくは必死で泣くのをやめて、ゆっくりと話し始めた。
「あの、ぼくたちがいた時代のオランディアでは……髪色と瞳の色で美醜が決まってしまうんです」
「髪色と瞳の色?」
「はい。黒は神に愛されし者の象徴として、黒を持つ者は美しく、逆に白は最も醜い者の象徴として迫害されるんです。あのリンネルも迫害されているところをフレッドが見つけて保護したんです」
「ああ……神使であるリンネルになんということを……」
アンドリュー王の青褪めた表情を見て、冬馬さんが優しく背中を摩っている。
そうか、黒だろうが白だろうがこの時代もリンネルは神使なんだ。
「髪色も瞳の色も黒に近づくほど美しいとされていて、白に近づくほど醜いと言われているんです」
「ならば、フレデリックは……」
アンドリュー王はフレッドの白みがかった金色の髪と淡い水色の瞳を見つめた。
「はい。フレッドは生まれた時から、人に嫌悪され愛されることなく育ってきたそうです」
ぼくの言葉に『ああーっ』と頭を抱えながら机に伏した。
「なんということだ……。このオランディアがたった数百年で人の美醜をそんなことで判断するような愚かなことになってしまっているとは……」
「なんでそんなことになってしまったんだろう?」
冬馬さんの言葉にアンドリュー王はハッと息を呑み、
「…………もしかしたら、そんなふうにしてしまったのは私かもしれないな……」
と言葉を漏らした。
「えっ? アンドリュー王が?」
「ねぇ、どういうこと?」
冬馬さんがアンドリュー王に優しく問いかける。
「戦乱後の窮地に陥ったときにトーマがこの国に現れて、今までになかった知識の数々をこの国に齎し救ってくれた、そればかりかその後も王妃となって私に尽くしてくれているのだ。
しかもそのトーマがこの国に存在しない黒目黒髪の美しい顔立ちをしているとわかったら国民たちがトーマを崇めるのは当然だろう?
今やトーマはこの国では神のように扱われている。
それだけのことをしてくれたと、私も国民たちのその扱いには当然だと思っているのだ。
だから、私は国民たちがトーマの姿を褒め称えることを素晴らしいことだとさえ感じている。
しかし、それがフレデリックたちの時代までの数百年の間に黒目黒髪は美しい、対極にある白は醜い存在だと曲解して伝わってしまったのだとしたら……?」
「あ……っ」
アンドリュー王の説明に冬馬さんは驚きの声を上げた。
「だとすれば、フレデリックが辛い想いをしながらここまで歩んできたのは私がはっきりと伝えなかったせいだと言わずにはいられないだろう……」
アンドリュー王はとんでもないことをしたと言わんばかりの苦悶の表情を浮かべ、
フレッドに『申し訳なかった』と謝罪の言葉を口にし、頭を下げた。
フレッドは偉大なるアンドリュー王からのそんな謝罪の言葉に
「陛下、勿体無いお言葉でございます。どうか頭をお上げくださいませ」
「いや、お前がどんな茨の道を歩んで来たのかと考えたらこんな謝罪などでは許されることではない」
「いいえ、陛下。確かに辛いと思った時期もありました。ですが、そのおかげで私はシュウと出逢えたのでございます。神が不憫な私にシュウを与えてくれたのです。それだけで私は幸せだといえます」
フレッドはそう言いながら、ぼくを抱きしめてくれた。
冬馬さんとアンドリュー王の目の前で恥ずかしかったけれど、それ以上にフレッドの言葉が嬉しくてフレッドの腕から抜け出る気にはならなかった。
「そうか……。お前が今、幸せだと思えているのならそれは良かった」
アンドリュー王は少し安堵の表情を見せた。
「ところで、これからどうする?」
冬馬さんの言葉にみんなが一瞬黙ってしまった。
「どうするとは?」
アンドリュー王がその真意を尋ねると、
「だって、いつ元の時代に戻れるかわからないのなら、2人はその間この世界で過ごすと言うことでしょう? 僕たちにそっくりな2人をそのままの状態で居らせるわけにはいかないんじゃない?」
「それは……確かにそうだな」
「そういえば、カーティスさんだったかな、ここに案内してもらったんだけど、ぼくたちを冬馬さんたちと完全に間違えてた」
ぼくはぼくたちをここまで連れてきてくれたカーティスさんの反応を思い出していた。
「ああ、カーティスと会ったのか? 気づかれなくて良かった。あいつは良い奴だが、すぐに騒ぎを大きくするのでな……」
『ははっ』と苦笑いを浮かべると、冬馬さんもまた同じように笑った。
「ねぇ、ブルーノさんに相談しよう。きっと良いアイディア出してくれるよ!」
「ブルーノさんってどなたなんですか?」
「幼少期に私の世話をしてくれていた人でな、今は王城の筆頭執事をしている。私は爺と呼んでいる」
おお、爺やさんか……。
すごい、漫画みたい。
「ねぇ、今 漫画みたいって思ったでしょ?」
そう笑って小声で問いかけてくる冬馬さんにびっくりして
「えっ? なんでわかったんですか?」
と聞き返すと、
「だって、僕もここにきた時そう思ったもん」
と笑ってそう言う冬馬さんにすごく親しみが持てた。
「よし、ブルーノを呼ぼう。悪いようにはしないから安心するといい。今から呼ぶからお前たちは私の部屋にいろ。声をかけたら出てくるんだ」
そう言われて、ぼくたちはパールを連れてアンドリュー王の私室へと入った。
しばらく経って、ブルーノさんが呼ばれた。
顔は見られないけれど、爺やさんと言うだけあって、渋くて落ち着いた声をされている。
アンドリュー王がぼくたちのことを話している。
未来からやってきたなどという荒唐無稽な話を信じてくれるのか心配だったけれど、大した時間もかかることなく、ぼくたちは冬馬さんに呼ばれてアンドリュー王の私屋を出た。
ブルーノさんの目の前に立つと、『おおっ』と声を上げ腰をぬかさんばかりに驚いていたが、
ぼくたちが怪しい者でないということは信じてくれているようだ。
「フレデリックさまとシュウさまでございますね。
お初にお目にかかります、この王城で執事をしておりますブルーノと申します。
本当にアンドリューさまとトーマさまに似ていらっしゃる」
目を細めにこにことぼくたちを見つめるその瞳には一点の曇りも見えない。
心から信じてくれているそのことがとても嬉しかった。
「シュウさまはお美しいお方ですから、いっそのこと長い鬘を着けて女性に扮したら良いのではないですか?」
「おお、なるほど。それは良い考えだな」
「えっ? ぼく、女装するんですか?」
ブルーノさんの思いがけない提案にぼくは一瞬聞き間違えたかと思ってしまった。
「トーマさまの存在はすでに国民に広く浸透しております。そこにトーマさまそっくりの殿方がいらっしゃってはなにかと面倒なことになります。女性であれば間違えられることも少なくなりましょうからそちらの方が宜しいかと存じます」
そう言われると『はい』としか言えないよね。
冬馬さんを見ると、すごく楽しそうな顔をしている。
ぼくが女装するのがそんなに面白いんだろうか?
「問題はこちらのフレデリックさまですね。髪の色がほんの少し違うだけでアンドリューさまに瓜二つ。うーん、女装するには背が高すぎますし、どう致しましょう……」
「ふむ。そうだな……」
ブルーノさんとアンドリュー王は2人揃って顎に手を当て悩んでいる様子だった。
「とりあえず悩んでいる間に柊くんの変装を試してみてもいいかな?」
「えっ? でもウィッグは?」
「前にこっそり視察に行こうとしてウィッグ用意してたことがあったんだけど、結局使わなかったんだ。それで試しに変装してみよう!」
そう言われて、ぼくは冬馬さんに連れられて冬馬さんの私室に向かった。
冬馬さんって結構グイグイくるタイプだな……。
でも、それが全く押し付けがましくなくて嫌に感じないところがみんなに好かれる要因なのかもしれない。
うん、羨ましい。ぼくも見習わないとな!
冬馬さんの部屋は落ち着いた色で纏められていてなんだかすごく安心できた。
何でだろう?
「ほら、こっちに座って」
大きな鏡台の前に座るよう指示されて、ぼくはちょこんと座った。
2人で鏡を覗いていると、本当によく似ている。
でも、冬馬さんの方が大人っぽいな。
「本当に僕たち似てるなぁ。アンディーと彼は言うならば親戚だから似ててもおかしくはないけど、僕たちが似ているのは不思議だよね」
「そうですよね。あの、冬馬さんは今おいくつなんですか?」
「僕はこの前22歳になったよ。こっちに来たのは19になった時だったかな」
そうか、こっちに来て3年って言ってたもんね。
やっぱり20歳超えると大人っぽくなるのかな?
「僕はこの前17歳になりました。この世界に来た日がちょうど17歳の誕生日だったんですよ」
「えーっ! そうなんだ! 若そうだと思ってたけど17歳か……。うん、肌も綺麗だもんね」
「いやいや、冬馬さんのほうが綺麗ですよ!」
「いや、僕なんて5つも上だし……って、似たような顔で何言い合ってるんだろうね……僕たち」
冬馬さんの冷静な言葉に『ふふっ』と2人して笑ってしまった。
「じゃあ、やってみよっか」
そう言うと、冬馬さんはクローゼットの棚の中から箱を取り出した。
蓋を開けて取り出した物は、アンドリュー王やフレッドと同じ髪色のウィッグ。
「あっ、……これ」
「同じ色の方が目立たないでいいかなって用意してもらったんだ」
「ぼく、これつけたかったんです!」
「つけたかったってどういうこと?」
ぼくはフレッドと町へ出かけるときに黒髪が目立たないように青い髪のウィッグをつけていること、
お揃いの金髪がいいと言ったけど、金色は嫌悪されるからダメだと言われたこと、
本当は同じ色をつけてフレッドがいつもどんな思いをしていたのか知りたかったということを説明した。
冬馬さんはぼくの話を真剣に聞いてくれて、
『……そっか……』と一言ポツリと呟いた。
その時の悲しげな表情がすごく印象的だった。
「なら、なおさらこれで良いよね!」
と言ってくれた冬馬さんは煌めくような笑顔に戻っていた。
ウィッグをつける前に少しお化粧をしようと言って、ペタペタといろいろつけられたけど、何をされているのか正直分からなくて、ただただされるがままの状態になっていた。
そして、10分ほど経って、最後にウィッグをつけられた姿を確認して見ると……
そこにはどこからどう見ても女の子にしか見えないぼくの姿があった。
「こ、これがぼく?」
驚いてじーっと鏡を見つめるぼくに冬馬さんは
「ふふっ。可愛いー! 特に何もしてないんだよ。柊くんは元から可愛いし……って、僕に似てるんだった。ははっ。でも、ほんとよく似合ってる」
そう言って笑顔を向けてくれた。
「……でも」
んっ? 何か変なところでもあるんだろうか?
「服はどうにかしないとね!」
そうだ! さすがにこれに男物は合わないもんね。
「僕の変装用に女性用の服も何着かあるんだけど……貸すのは辞めた方がいいから」
「えっ? どうしてですか? ぼく、冬馬さんのならサイズも……」
「いやいや、そうじゃなくて……。
柊くん、やっぱ鈍感なんだ……。
彼も大変だろうな……」
「えっ?」
小声でボソボソと呟く冬馬さんの声はぼくには良く聞こえなかった。
「うん、とりあえずこのまま出よっか。
そして、彼に服欲しいなっておねだりしてみよう」
「えっ? でも、いいのかな?」
「良いから、良いから! 柊くんからのおねだりはきっと彼も喜ぶよ。じゃあ、行こう!」
と、やけに上機嫌な冬馬さんに手を引かれて部屋を出た。
部屋の外ではまだフレッドをどうするかの話し合いが行われていた。
そこに冬馬さんの声が響く。
「ねぇ、見て見て! 準備できたよ!」
その声にフレッドとアンドリュー王、そしてブルーノさんが一斉に振り向く。
ぼくの姿を見た瞬間、3人の身体が固まってしまったように動かなくなった。
やっぱり似合ってなかったのかな?
そう心配になったけれど、冬馬さんがぼくの腕を突いて『ほら! 早く!』とさっきのをフレッドに言うように促してくる。
えっ? でもこんな状態なのに?
喜んでくれるとは思えないんだけど……。
まだ言葉も出せないほど驚いているフレッドたちに近づいていくのも勇気がいるんだけど……と思いながらも、ぼくは『ええい!』と勇気を振り絞ってフレッドに近づいた。
ススっとフレッドの前にやってきたぼくは、フレッドの腕に縋りつき、
「服買って欲しいな……」
とフレッドの目を見つめながら頼んでみた。
『う゛ぅっ、……くそ、なんだこれ……可愛すぎだろ……』
んっ? ボソっと呟いた言葉があんまりよく聞こえなかったけれど、フレッド、今……可愛いって言ってくれた?
「……フレッド?」
「シュウがあまりにも美し過ぎてどうにかなってしまいそうだ! 私と同じ髪色になってくれるだなんて私は夢でもみているんじゃないだろうか?
ああ、幸せだ……私は」
そう言って、ぼくを抱き上げキスをしてくれた。
そして、そのまま抱き抱えたまま、アンドリュー王にお願いをしてくれたのだ。
「陛下……私の大切な伴侶のために服を作らせていただけませんか?」
「私の資産は、言うなればお前のものも同然。好きなだけ買ってやるといい。爺、仕立て屋をすぐに呼んでやれ」
アンドリュー王は快く応じてくれ、その場ですぐに仕立て屋さんまで呼んでくれた。
そこからの行動はあっという間だった。
仕立て屋さんにきてもらっている間だけ一時的に冬馬さんの女性用の服を借りて、ジョシュアさんに採寸をしてもらい、フレッドの分も一緒に仕立ててもらうことになった。
ちなみにフレッドのことは
アンドリュー王の母方の祖母の姉妹の孫(簡単に言えば再従兄弟)ということにしたらしい。
実際にお孫さんはいるらしいけど、王位継承権もない人のことは対して気にはしないらしいのでバレる心配はないだろうとのこと。
再従兄弟でここまで似ているのはどうかと思うけれど、まぁ髪色を変えればそこまで気にはならない……のかな?
怒涛の如く採寸も終わり、フレッドの要求通り2日後には仕上げて持ってきてくれるとのことで、ジョシュアさんは帰っていった。
多分彼は徹夜で仕上げてくれるんだろう……申し訳ない。
いつ、元の世界に戻ってしまうかもしれない身としてはそんなに沢山のものは必要ないと思うんだけれど……なんだろう、いつも大量に注文するんだよね……。
それについてはアンドリュー王も全然気にしていない様子だったし、王族ってみんなこんな感じなんだろうか?
ブルーノさんが【王と王妃の間】に一番近い客間をぼくたちの部屋にと用意してくれて、ぼくたちはそこでお世話になることになった。
王城にいる使用人さんたちには久しぶりに遊びにきた再従兄弟夫婦ということで説明をしてくれているようだ。
とはいえ、ぼくの女装が知られては大変なので、ぼくたちのお世話はブルーノさんが担当してくれるということで大変有り難い。
ぼくたちの部屋を準備してくれるついでにブルーノさんが寝室にパールの寝床を作ってくれているのを見学していると、寝室の左奥側に扉を見つけた。
ここだけなんだか雰囲気が違うし、新しそうな感じがするなぁ。
「ここはクローゼットですか?」
「いいえ、そちらはバスルームでございます」
「ええっ? お風呂? 開けてみても良いですか?」
「もちろんでございます」
ブルーノさんの了承を得てから扉を開けると、そこには綺麗な脱衣所と奥に大きな岩を重ね合わせて造られたような岩風呂があった。
「ええーっ! スゴイ!」
あまりにも本格的な造りに驚いてしまった。
正直、数百年も前のオランディアにお風呂があることも驚いたのだけれど、こんなに素敵なお風呂があるなんて!
ここにいるだけで温泉気分じゃないか!
見ているだけでテンションがあがってしまう。
「こちらのお部屋は以前トーマさまがお使いになっておられましたが、お風呂がお好きなトーマさまのためにアンドリューさまがお造りになったのですよ」
「へぇー!すごい! ここも使ってもいいんですか?」
「もちろんでございますとも。ふふっ。やはり、シュウさまもお風呂お好きなんですね」
ブルーノさんは嬉しそうにそう言うと、パールの寝床を作り終え、寝室を出て行った。
入れ替わるようにフレッドが寝室に入ってきて、
「今日はとんでもない体験をして疲れただろう。
風呂に入ってゆっくり休むとするか」
「フレッドはここにお風呂があるの知ってた? ここのお風呂スゴイよ! 冬馬さん用に作ったから深くもないみたい! これなら1人で入れるからさっと入ってフレッドと代われるね」
「……ああ、そうだな。ゆっくり温まっておいで」
フレッドに送り出されて、バスルームへと足を踏み入れた。
ウキウキしながらさっと服を脱いで浴室へと行くと、いつも入っているフレッドのお屋敷のお風呂よりもずっとずっと小さいのに、なんだかとても広く感じてしまった。
そんな小さな違和感を感じながら、まずは髪と身体を洗うことにした。
準備された泡たちの中に化粧を落とすものもちゃんも入っていて、『ブルーノさん、さすがだな』と思いながら化粧を落とした。
ふう……やっと肌が呼吸できた気がする。
ホッとしながら広々とした湯船に足を入れた。
うん、良い深さだ。
これなら溺れることなんて絶対ないだろう。
冬馬さんもぼくと同じくらいの身長だったから、本当に冬馬さん用に合わせて造ったものなんだな。
手足を伸ばし、お湯をチャポチャポとすくいながら身体に当てる。
なんて気持ちいいんだろう。
『ああーっ』なんて、おじさんみたいな声を出してしまって1人なのについ笑ってしまう。
でも、こんなに気持ち良いお風呂なのに、なぜかなんとなくしっくりこない。
大海原にポツーンと1人放り出されてしまったようで妙に心許ない。
なんだろう、さっきから感じるこの違和感……。
その正体がわからずにぼくはモヤモヤした気持ちのまま湯船に浸かっていた。
なんだろう、さっきから感じるこの違和感……。
『もう、なんなんだろう……』と浴槽に寄りかかった時……、ぼくはわかった。
フレッドがいないからだ!
そう。考えてみれば、この世界に来てから毎日お風呂はフレッドと一緒だった。
深いから、溺れるからとフレッドはずっと一緒に入ってくれていた。
浴槽に入れば後ろから長い腕で抱きしめてくれて、そのフレッドの心音を背中に感じるだけで安心できた。
ああ、そうか……。
ぼくはずっとフレッドに守られていたんだ。
お風呂だけじゃない。
いつでもフレッドは傍にいてくれたんだ。
初めてこの世界に来た時からずっと……。
そうだ、フレッドがいつでもどんな時でも傍で優しくぼくを守っていてくれたから、ぼくはとんでもない体験をしたって前向きに頑張ろうって思えたし、安心できたんだ。
そんな大切なことに今さら気づくなんて遅すぎるけれど、でもちゃんと伝えなきゃ!
ぼくは急いで浴槽から出て、身体を拭くのもそこそこに用意されていた夜着をバサッと羽織ると急いで寝室に繋がる扉を開けた。
フレッドは寝室に置いてあるソファーに1人座っていたけれど、ぼくが慌ただしく扉を開けたので驚いたんだろう、その場に立ち尽くしていた。
「シュウ、どうしたんだ? 髪も身体も濡れたままで……」
濡れたままのぼくの姿を確認すると、慌てて脱衣所にタオルを取りに行こうとしていた。
そんなフレッドの腕を掴んで、
「いいから、ここにいて……話を聞いて……」
そうお願いすると、フレッドはその場に立ち止まった。
「どうしたんだ? 風呂場で何があった?」
心配そうな目で見つめてくれるフレッドにぼくは自分からぎゅっと抱きついた。
いつでもこの目がぼくを見つめてくれてるんだ……。
「……シュウ?」
「ごめんなさい……もう、嫌なんだ……ぼく」
「えっ?」
「嫌なんだよ……」
ちゃんと伝えなきゃと思っているのに、言いたいことが多すぎて気持ちだけが先走ってしまう。
「……うぅ、うっ……」
フレッドに対する想いが込み上げてきて、ぼくは涙を流してしまった。
フレッドに抱きついたまま、泣いているとフレッドが口を開いた。
「……シュウ、気がつかなくて悪かった……。陛下にお願いしてもう一部屋用意してもらおう」
頭を優しく撫でながらそう話すフレッドを見上げると、悲しそうな表情をしている。
どうして? なんでそんな悲しい顔をしているの?
それにもう一部屋って……?
フレッドが違う部屋に行ってしまう?
そんなの嫌だ!
「フレッド! どこにも行かないでよ! ぼく、嫌なんだ……フレッドと離れるの」
「えっ?」
「1人でお風呂に入ってやっと分かったんだ。フレッドと一緒じゃなきゃ、ぼく嫌なんだよ!」
「シュウ!!!」
フレッドの感極まったような声に驚いて顔を上げると、フレッドに噛み付くようなキスをされた。
「んん……っ、あっ……」
唇が離れなくなってしまうほど強く重ねられたと思ったら、『ちゅっ』と大きな音を立てて離された。
「シュウ……良かった!! 良かった……!」
そう言ってフレッドはぼくを抱き抱えると、脱衣所へ行き、大きなタオルを一枚手に取るとまた寝室へと戻って行った。
そして、ゆっくりとぼくをベッドに座らせると、大きなタオルで頭を包んで、優しく髪を乾かしてくれた。
「シュウから……『嫌なんだ』って言われて肝が冷えたよ。驚かせないでくれ……シュウに嫌われたら私は生きていけないと言っただろう?」
ああ、ぼくは気持ちを伝えるどころか勘違いさせてしまっていたんだ。
フレッドにあんな悲しい顔をさせてしまって申し訳ない……。
「フレッド……ぼく、フレッドにずっと守られてたんだってさっきやっと気づいたんだ。フレッドがずっと守ってくれてたから、この世界で頑張ろうって思えたんだよ。この時代に来たのも1人じゃなくて良かった……。フレッドと一緒でほんと良かった」
「ああ、そうだな。シュウ1人がこの時代に来てしまっていたら、私はあの時代で1人どうなっていたことか……。これも神のお導きだろうか……」
「ふふっ。そうだね。ねぇ、そうだ!」
「なんだ?」
「明日からは毎日一緒にお風呂に入ろうね!」
そう耳元で囁くと、片手で顔を覆い『はぁーっ』と大きなため息をついた。
「我慢だ……我慢だぞ……」
フレッドがボソボソと呟く声がほんの少しだけ聞こえてくる。
「フレッドは何かを我慢しているの?」
「えっ? いや、なんでもないよ。
さ、さぁ、今日は疲れただろうからゆっくり寝よう。
私もさっと汗を流してくるから」
慌てたようにお風呂へと向かうフレッドの様子に若干おかしいとは思ったものの、疲れていたぼくはそれ以上に詮索することもできないままそのままベッドに倒れ込み、フレッドがいつ戻ってきたかもわからず寝入ってしまっていた。
あれ? 全く嫌悪感が感じられない……。
それどころかアンドリュー王は目を細めてパールを眺めている。
「ほんと、フワフワで可愛い。
ねぇ、触ってもいい?」
「はい、もちろんです」
冬馬さんがパールの背中にそっと触れると、パールは身動ぐことなく気持ちよさそうに眠り続けた。
「この子、名前なんて言うの?」
「あっ、パールと言います」
「へぇー、真っ白だしすごく似合ってるね」
ぼくの腕の中にいるパールを冬馬さんが笑顔で触ってくれるのは分かるけど、アンドリュー王も何の躊躇いもなく可愛がってくれていることに少しの違和感を感じていたぼくは、思い切ってアンドリュー王に尋ねてみることにした。
「あ、あの……陛下」
「うん? なんだ?」
「あの……このリンネルに何か思うことはありませんか?」
「そうだな、リンネルがこんなに人に懐いているのは初めて見たから驚いたな。それに白いリンネルは珍しいが、実に可愛らしい」
アンドリュー王のその言葉にフレッドは言葉も出せないほど驚いていた。
それはそうだろう。白いリンネルを可愛らしいと言ったのだから……。
「どうしたのだ?」
アンドリュー王はフレッドの様子がおかしいことに気づいたようだ。
ぼくはまだ驚きで話すこともできないフレッドに代わって冬馬さんに尋ねてみた。
「あの、この国での美醜の感覚はどうなっているのですか?」
「美醜って……日本と変わらないと思うけど?」
「本当ですか???」
ぼくは冬馬さんの言葉に今までで一番驚いた。
日本と変わらない??
じゃあもしかして、この時代には白が迫害対象なんていう概念がなかったとか?
これから先の未来に何かしらのきっかけでその概念が生まれてしまったのだとしたら?
もしかしたらこの時代に正しておけば、フレッドが辛い思いをする人生なんて消えてなくなるんじゃ?
そんな想いがぼくの頭の中を次々と駆け巡った。
そして、ぼくはドキドキしながら、冬馬さんに尋ねた。
「じゃ、じゃあ……アンドリュー王は格好良く見えてるんですよね? 冬馬さんだけじゃなくて、国中の人みんなが!」
「ええっ? そ、そんなこと……当たり前じゃない! ってそんなこと言わせないでよ!」
顔から湯気が出そうになる程、顔を真っ赤にして答えてくれた冬馬さんと隣で嬉しそうに笑うアンドリュー王を見ながら、ぼくは気づいたら涙を流してしまっていた。
それにいち早く気づいたフレッドがポケットからハンカチを差し出し、優しく拭ってくれた。
でも、ぼくの涙はなかなか止まらなかった。
「ど、どうしたの? 何か変なこと言っちゃった?」
「いえ……その、なんて言ったら良いのか……」
ぼくが泣くのをみて焦る冬馬さんにフレッドが説明しようとしたのだけれど、どう話したら良いのか悩んでいるようだ。
ぼくは必死で泣くのをやめて、ゆっくりと話し始めた。
「あの、ぼくたちがいた時代のオランディアでは……髪色と瞳の色で美醜が決まってしまうんです」
「髪色と瞳の色?」
「はい。黒は神に愛されし者の象徴として、黒を持つ者は美しく、逆に白は最も醜い者の象徴として迫害されるんです。あのリンネルも迫害されているところをフレッドが見つけて保護したんです」
「ああ……神使であるリンネルになんということを……」
アンドリュー王の青褪めた表情を見て、冬馬さんが優しく背中を摩っている。
そうか、黒だろうが白だろうがこの時代もリンネルは神使なんだ。
「髪色も瞳の色も黒に近づくほど美しいとされていて、白に近づくほど醜いと言われているんです」
「ならば、フレデリックは……」
アンドリュー王はフレッドの白みがかった金色の髪と淡い水色の瞳を見つめた。
「はい。フレッドは生まれた時から、人に嫌悪され愛されることなく育ってきたそうです」
ぼくの言葉に『ああーっ』と頭を抱えながら机に伏した。
「なんということだ……。このオランディアがたった数百年で人の美醜をそんなことで判断するような愚かなことになってしまっているとは……」
「なんでそんなことになってしまったんだろう?」
冬馬さんの言葉にアンドリュー王はハッと息を呑み、
「…………もしかしたら、そんなふうにしてしまったのは私かもしれないな……」
と言葉を漏らした。
「えっ? アンドリュー王が?」
「ねぇ、どういうこと?」
冬馬さんがアンドリュー王に優しく問いかける。
「戦乱後の窮地に陥ったときにトーマがこの国に現れて、今までになかった知識の数々をこの国に齎し救ってくれた、そればかりかその後も王妃となって私に尽くしてくれているのだ。
しかもそのトーマがこの国に存在しない黒目黒髪の美しい顔立ちをしているとわかったら国民たちがトーマを崇めるのは当然だろう?
今やトーマはこの国では神のように扱われている。
それだけのことをしてくれたと、私も国民たちのその扱いには当然だと思っているのだ。
だから、私は国民たちがトーマの姿を褒め称えることを素晴らしいことだとさえ感じている。
しかし、それがフレデリックたちの時代までの数百年の間に黒目黒髪は美しい、対極にある白は醜い存在だと曲解して伝わってしまったのだとしたら……?」
「あ……っ」
アンドリュー王の説明に冬馬さんは驚きの声を上げた。
「だとすれば、フレデリックが辛い想いをしながらここまで歩んできたのは私がはっきりと伝えなかったせいだと言わずにはいられないだろう……」
アンドリュー王はとんでもないことをしたと言わんばかりの苦悶の表情を浮かべ、
フレッドに『申し訳なかった』と謝罪の言葉を口にし、頭を下げた。
フレッドは偉大なるアンドリュー王からのそんな謝罪の言葉に
「陛下、勿体無いお言葉でございます。どうか頭をお上げくださいませ」
「いや、お前がどんな茨の道を歩んで来たのかと考えたらこんな謝罪などでは許されることではない」
「いいえ、陛下。確かに辛いと思った時期もありました。ですが、そのおかげで私はシュウと出逢えたのでございます。神が不憫な私にシュウを与えてくれたのです。それだけで私は幸せだといえます」
フレッドはそう言いながら、ぼくを抱きしめてくれた。
冬馬さんとアンドリュー王の目の前で恥ずかしかったけれど、それ以上にフレッドの言葉が嬉しくてフレッドの腕から抜け出る気にはならなかった。
「そうか……。お前が今、幸せだと思えているのならそれは良かった」
アンドリュー王は少し安堵の表情を見せた。
「ところで、これからどうする?」
冬馬さんの言葉にみんなが一瞬黙ってしまった。
「どうするとは?」
アンドリュー王がその真意を尋ねると、
「だって、いつ元の時代に戻れるかわからないのなら、2人はその間この世界で過ごすと言うことでしょう? 僕たちにそっくりな2人をそのままの状態で居らせるわけにはいかないんじゃない?」
「それは……確かにそうだな」
「そういえば、カーティスさんだったかな、ここに案内してもらったんだけど、ぼくたちを冬馬さんたちと完全に間違えてた」
ぼくはぼくたちをここまで連れてきてくれたカーティスさんの反応を思い出していた。
「ああ、カーティスと会ったのか? 気づかれなくて良かった。あいつは良い奴だが、すぐに騒ぎを大きくするのでな……」
『ははっ』と苦笑いを浮かべると、冬馬さんもまた同じように笑った。
「ねぇ、ブルーノさんに相談しよう。きっと良いアイディア出してくれるよ!」
「ブルーノさんってどなたなんですか?」
「幼少期に私の世話をしてくれていた人でな、今は王城の筆頭執事をしている。私は爺と呼んでいる」
おお、爺やさんか……。
すごい、漫画みたい。
「ねぇ、今 漫画みたいって思ったでしょ?」
そう笑って小声で問いかけてくる冬馬さんにびっくりして
「えっ? なんでわかったんですか?」
と聞き返すと、
「だって、僕もここにきた時そう思ったもん」
と笑ってそう言う冬馬さんにすごく親しみが持てた。
「よし、ブルーノを呼ぼう。悪いようにはしないから安心するといい。今から呼ぶからお前たちは私の部屋にいろ。声をかけたら出てくるんだ」
そう言われて、ぼくたちはパールを連れてアンドリュー王の私室へと入った。
しばらく経って、ブルーノさんが呼ばれた。
顔は見られないけれど、爺やさんと言うだけあって、渋くて落ち着いた声をされている。
アンドリュー王がぼくたちのことを話している。
未来からやってきたなどという荒唐無稽な話を信じてくれるのか心配だったけれど、大した時間もかかることなく、ぼくたちは冬馬さんに呼ばれてアンドリュー王の私屋を出た。
ブルーノさんの目の前に立つと、『おおっ』と声を上げ腰をぬかさんばかりに驚いていたが、
ぼくたちが怪しい者でないということは信じてくれているようだ。
「フレデリックさまとシュウさまでございますね。
お初にお目にかかります、この王城で執事をしておりますブルーノと申します。
本当にアンドリューさまとトーマさまに似ていらっしゃる」
目を細めにこにことぼくたちを見つめるその瞳には一点の曇りも見えない。
心から信じてくれているそのことがとても嬉しかった。
「シュウさまはお美しいお方ですから、いっそのこと長い鬘を着けて女性に扮したら良いのではないですか?」
「おお、なるほど。それは良い考えだな」
「えっ? ぼく、女装するんですか?」
ブルーノさんの思いがけない提案にぼくは一瞬聞き間違えたかと思ってしまった。
「トーマさまの存在はすでに国民に広く浸透しております。そこにトーマさまそっくりの殿方がいらっしゃってはなにかと面倒なことになります。女性であれば間違えられることも少なくなりましょうからそちらの方が宜しいかと存じます」
そう言われると『はい』としか言えないよね。
冬馬さんを見ると、すごく楽しそうな顔をしている。
ぼくが女装するのがそんなに面白いんだろうか?
「問題はこちらのフレデリックさまですね。髪の色がほんの少し違うだけでアンドリューさまに瓜二つ。うーん、女装するには背が高すぎますし、どう致しましょう……」
「ふむ。そうだな……」
ブルーノさんとアンドリュー王は2人揃って顎に手を当て悩んでいる様子だった。
「とりあえず悩んでいる間に柊くんの変装を試してみてもいいかな?」
「えっ? でもウィッグは?」
「前にこっそり視察に行こうとしてウィッグ用意してたことがあったんだけど、結局使わなかったんだ。それで試しに変装してみよう!」
そう言われて、ぼくは冬馬さんに連れられて冬馬さんの私室に向かった。
冬馬さんって結構グイグイくるタイプだな……。
でも、それが全く押し付けがましくなくて嫌に感じないところがみんなに好かれる要因なのかもしれない。
うん、羨ましい。ぼくも見習わないとな!
冬馬さんの部屋は落ち着いた色で纏められていてなんだかすごく安心できた。
何でだろう?
「ほら、こっちに座って」
大きな鏡台の前に座るよう指示されて、ぼくはちょこんと座った。
2人で鏡を覗いていると、本当によく似ている。
でも、冬馬さんの方が大人っぽいな。
「本当に僕たち似てるなぁ。アンディーと彼は言うならば親戚だから似ててもおかしくはないけど、僕たちが似ているのは不思議だよね」
「そうですよね。あの、冬馬さんは今おいくつなんですか?」
「僕はこの前22歳になったよ。こっちに来たのは19になった時だったかな」
そうか、こっちに来て3年って言ってたもんね。
やっぱり20歳超えると大人っぽくなるのかな?
「僕はこの前17歳になりました。この世界に来た日がちょうど17歳の誕生日だったんですよ」
「えーっ! そうなんだ! 若そうだと思ってたけど17歳か……。うん、肌も綺麗だもんね」
「いやいや、冬馬さんのほうが綺麗ですよ!」
「いや、僕なんて5つも上だし……って、似たような顔で何言い合ってるんだろうね……僕たち」
冬馬さんの冷静な言葉に『ふふっ』と2人して笑ってしまった。
「じゃあ、やってみよっか」
そう言うと、冬馬さんはクローゼットの棚の中から箱を取り出した。
蓋を開けて取り出した物は、アンドリュー王やフレッドと同じ髪色のウィッグ。
「あっ、……これ」
「同じ色の方が目立たないでいいかなって用意してもらったんだ」
「ぼく、これつけたかったんです!」
「つけたかったってどういうこと?」
ぼくはフレッドと町へ出かけるときに黒髪が目立たないように青い髪のウィッグをつけていること、
お揃いの金髪がいいと言ったけど、金色は嫌悪されるからダメだと言われたこと、
本当は同じ色をつけてフレッドがいつもどんな思いをしていたのか知りたかったということを説明した。
冬馬さんはぼくの話を真剣に聞いてくれて、
『……そっか……』と一言ポツリと呟いた。
その時の悲しげな表情がすごく印象的だった。
「なら、なおさらこれで良いよね!」
と言ってくれた冬馬さんは煌めくような笑顔に戻っていた。
ウィッグをつける前に少しお化粧をしようと言って、ペタペタといろいろつけられたけど、何をされているのか正直分からなくて、ただただされるがままの状態になっていた。
そして、10分ほど経って、最後にウィッグをつけられた姿を確認して見ると……
そこにはどこからどう見ても女の子にしか見えないぼくの姿があった。
「こ、これがぼく?」
驚いてじーっと鏡を見つめるぼくに冬馬さんは
「ふふっ。可愛いー! 特に何もしてないんだよ。柊くんは元から可愛いし……って、僕に似てるんだった。ははっ。でも、ほんとよく似合ってる」
そう言って笑顔を向けてくれた。
「……でも」
んっ? 何か変なところでもあるんだろうか?
「服はどうにかしないとね!」
そうだ! さすがにこれに男物は合わないもんね。
「僕の変装用に女性用の服も何着かあるんだけど……貸すのは辞めた方がいいから」
「えっ? どうしてですか? ぼく、冬馬さんのならサイズも……」
「いやいや、そうじゃなくて……。
柊くん、やっぱ鈍感なんだ……。
彼も大変だろうな……」
「えっ?」
小声でボソボソと呟く冬馬さんの声はぼくには良く聞こえなかった。
「うん、とりあえずこのまま出よっか。
そして、彼に服欲しいなっておねだりしてみよう」
「えっ? でも、いいのかな?」
「良いから、良いから! 柊くんからのおねだりはきっと彼も喜ぶよ。じゃあ、行こう!」
と、やけに上機嫌な冬馬さんに手を引かれて部屋を出た。
部屋の外ではまだフレッドをどうするかの話し合いが行われていた。
そこに冬馬さんの声が響く。
「ねぇ、見て見て! 準備できたよ!」
その声にフレッドとアンドリュー王、そしてブルーノさんが一斉に振り向く。
ぼくの姿を見た瞬間、3人の身体が固まってしまったように動かなくなった。
やっぱり似合ってなかったのかな?
そう心配になったけれど、冬馬さんがぼくの腕を突いて『ほら! 早く!』とさっきのをフレッドに言うように促してくる。
えっ? でもこんな状態なのに?
喜んでくれるとは思えないんだけど……。
まだ言葉も出せないほど驚いているフレッドたちに近づいていくのも勇気がいるんだけど……と思いながらも、ぼくは『ええい!』と勇気を振り絞ってフレッドに近づいた。
ススっとフレッドの前にやってきたぼくは、フレッドの腕に縋りつき、
「服買って欲しいな……」
とフレッドの目を見つめながら頼んでみた。
『う゛ぅっ、……くそ、なんだこれ……可愛すぎだろ……』
んっ? ボソっと呟いた言葉があんまりよく聞こえなかったけれど、フレッド、今……可愛いって言ってくれた?
「……フレッド?」
「シュウがあまりにも美し過ぎてどうにかなってしまいそうだ! 私と同じ髪色になってくれるだなんて私は夢でもみているんじゃないだろうか?
ああ、幸せだ……私は」
そう言って、ぼくを抱き上げキスをしてくれた。
そして、そのまま抱き抱えたまま、アンドリュー王にお願いをしてくれたのだ。
「陛下……私の大切な伴侶のために服を作らせていただけませんか?」
「私の資産は、言うなればお前のものも同然。好きなだけ買ってやるといい。爺、仕立て屋をすぐに呼んでやれ」
アンドリュー王は快く応じてくれ、その場ですぐに仕立て屋さんまで呼んでくれた。
そこからの行動はあっという間だった。
仕立て屋さんにきてもらっている間だけ一時的に冬馬さんの女性用の服を借りて、ジョシュアさんに採寸をしてもらい、フレッドの分も一緒に仕立ててもらうことになった。
ちなみにフレッドのことは
アンドリュー王の母方の祖母の姉妹の孫(簡単に言えば再従兄弟)ということにしたらしい。
実際にお孫さんはいるらしいけど、王位継承権もない人のことは対して気にはしないらしいのでバレる心配はないだろうとのこと。
再従兄弟でここまで似ているのはどうかと思うけれど、まぁ髪色を変えればそこまで気にはならない……のかな?
怒涛の如く採寸も終わり、フレッドの要求通り2日後には仕上げて持ってきてくれるとのことで、ジョシュアさんは帰っていった。
多分彼は徹夜で仕上げてくれるんだろう……申し訳ない。
いつ、元の世界に戻ってしまうかもしれない身としてはそんなに沢山のものは必要ないと思うんだけれど……なんだろう、いつも大量に注文するんだよね……。
それについてはアンドリュー王も全然気にしていない様子だったし、王族ってみんなこんな感じなんだろうか?
ブルーノさんが【王と王妃の間】に一番近い客間をぼくたちの部屋にと用意してくれて、ぼくたちはそこでお世話になることになった。
王城にいる使用人さんたちには久しぶりに遊びにきた再従兄弟夫婦ということで説明をしてくれているようだ。
とはいえ、ぼくの女装が知られては大変なので、ぼくたちのお世話はブルーノさんが担当してくれるということで大変有り難い。
ぼくたちの部屋を準備してくれるついでにブルーノさんが寝室にパールの寝床を作ってくれているのを見学していると、寝室の左奥側に扉を見つけた。
ここだけなんだか雰囲気が違うし、新しそうな感じがするなぁ。
「ここはクローゼットですか?」
「いいえ、そちらはバスルームでございます」
「ええっ? お風呂? 開けてみても良いですか?」
「もちろんでございます」
ブルーノさんの了承を得てから扉を開けると、そこには綺麗な脱衣所と奥に大きな岩を重ね合わせて造られたような岩風呂があった。
「ええーっ! スゴイ!」
あまりにも本格的な造りに驚いてしまった。
正直、数百年も前のオランディアにお風呂があることも驚いたのだけれど、こんなに素敵なお風呂があるなんて!
ここにいるだけで温泉気分じゃないか!
見ているだけでテンションがあがってしまう。
「こちらのお部屋は以前トーマさまがお使いになっておられましたが、お風呂がお好きなトーマさまのためにアンドリューさまがお造りになったのですよ」
「へぇー!すごい! ここも使ってもいいんですか?」
「もちろんでございますとも。ふふっ。やはり、シュウさまもお風呂お好きなんですね」
ブルーノさんは嬉しそうにそう言うと、パールの寝床を作り終え、寝室を出て行った。
入れ替わるようにフレッドが寝室に入ってきて、
「今日はとんでもない体験をして疲れただろう。
風呂に入ってゆっくり休むとするか」
「フレッドはここにお風呂があるの知ってた? ここのお風呂スゴイよ! 冬馬さん用に作ったから深くもないみたい! これなら1人で入れるからさっと入ってフレッドと代われるね」
「……ああ、そうだな。ゆっくり温まっておいで」
フレッドに送り出されて、バスルームへと足を踏み入れた。
ウキウキしながらさっと服を脱いで浴室へと行くと、いつも入っているフレッドのお屋敷のお風呂よりもずっとずっと小さいのに、なんだかとても広く感じてしまった。
そんな小さな違和感を感じながら、まずは髪と身体を洗うことにした。
準備された泡たちの中に化粧を落とすものもちゃんも入っていて、『ブルーノさん、さすがだな』と思いながら化粧を落とした。
ふう……やっと肌が呼吸できた気がする。
ホッとしながら広々とした湯船に足を入れた。
うん、良い深さだ。
これなら溺れることなんて絶対ないだろう。
冬馬さんもぼくと同じくらいの身長だったから、本当に冬馬さん用に合わせて造ったものなんだな。
手足を伸ばし、お湯をチャポチャポとすくいながら身体に当てる。
なんて気持ちいいんだろう。
『ああーっ』なんて、おじさんみたいな声を出してしまって1人なのについ笑ってしまう。
でも、こんなに気持ち良いお風呂なのに、なぜかなんとなくしっくりこない。
大海原にポツーンと1人放り出されてしまったようで妙に心許ない。
なんだろう、さっきから感じるこの違和感……。
その正体がわからずにぼくはモヤモヤした気持ちのまま湯船に浸かっていた。
なんだろう、さっきから感じるこの違和感……。
『もう、なんなんだろう……』と浴槽に寄りかかった時……、ぼくはわかった。
フレッドがいないからだ!
そう。考えてみれば、この世界に来てから毎日お風呂はフレッドと一緒だった。
深いから、溺れるからとフレッドはずっと一緒に入ってくれていた。
浴槽に入れば後ろから長い腕で抱きしめてくれて、そのフレッドの心音を背中に感じるだけで安心できた。
ああ、そうか……。
ぼくはずっとフレッドに守られていたんだ。
お風呂だけじゃない。
いつでもフレッドは傍にいてくれたんだ。
初めてこの世界に来た時からずっと……。
そうだ、フレッドがいつでもどんな時でも傍で優しくぼくを守っていてくれたから、ぼくはとんでもない体験をしたって前向きに頑張ろうって思えたし、安心できたんだ。
そんな大切なことに今さら気づくなんて遅すぎるけれど、でもちゃんと伝えなきゃ!
ぼくは急いで浴槽から出て、身体を拭くのもそこそこに用意されていた夜着をバサッと羽織ると急いで寝室に繋がる扉を開けた。
フレッドは寝室に置いてあるソファーに1人座っていたけれど、ぼくが慌ただしく扉を開けたので驚いたんだろう、その場に立ち尽くしていた。
「シュウ、どうしたんだ? 髪も身体も濡れたままで……」
濡れたままのぼくの姿を確認すると、慌てて脱衣所にタオルを取りに行こうとしていた。
そんなフレッドの腕を掴んで、
「いいから、ここにいて……話を聞いて……」
そうお願いすると、フレッドはその場に立ち止まった。
「どうしたんだ? 風呂場で何があった?」
心配そうな目で見つめてくれるフレッドにぼくは自分からぎゅっと抱きついた。
いつでもこの目がぼくを見つめてくれてるんだ……。
「……シュウ?」
「ごめんなさい……もう、嫌なんだ……ぼく」
「えっ?」
「嫌なんだよ……」
ちゃんと伝えなきゃと思っているのに、言いたいことが多すぎて気持ちだけが先走ってしまう。
「……うぅ、うっ……」
フレッドに対する想いが込み上げてきて、ぼくは涙を流してしまった。
フレッドに抱きついたまま、泣いているとフレッドが口を開いた。
「……シュウ、気がつかなくて悪かった……。陛下にお願いしてもう一部屋用意してもらおう」
頭を優しく撫でながらそう話すフレッドを見上げると、悲しそうな表情をしている。
どうして? なんでそんな悲しい顔をしているの?
それにもう一部屋って……?
フレッドが違う部屋に行ってしまう?
そんなの嫌だ!
「フレッド! どこにも行かないでよ! ぼく、嫌なんだ……フレッドと離れるの」
「えっ?」
「1人でお風呂に入ってやっと分かったんだ。フレッドと一緒じゃなきゃ、ぼく嫌なんだよ!」
「シュウ!!!」
フレッドの感極まったような声に驚いて顔を上げると、フレッドに噛み付くようなキスをされた。
「んん……っ、あっ……」
唇が離れなくなってしまうほど強く重ねられたと思ったら、『ちゅっ』と大きな音を立てて離された。
「シュウ……良かった!! 良かった……!」
そう言ってフレッドはぼくを抱き抱えると、脱衣所へ行き、大きなタオルを一枚手に取るとまた寝室へと戻って行った。
そして、ゆっくりとぼくをベッドに座らせると、大きなタオルで頭を包んで、優しく髪を乾かしてくれた。
「シュウから……『嫌なんだ』って言われて肝が冷えたよ。驚かせないでくれ……シュウに嫌われたら私は生きていけないと言っただろう?」
ああ、ぼくは気持ちを伝えるどころか勘違いさせてしまっていたんだ。
フレッドにあんな悲しい顔をさせてしまって申し訳ない……。
「フレッド……ぼく、フレッドにずっと守られてたんだってさっきやっと気づいたんだ。フレッドがずっと守ってくれてたから、この世界で頑張ろうって思えたんだよ。この時代に来たのも1人じゃなくて良かった……。フレッドと一緒でほんと良かった」
「ああ、そうだな。シュウ1人がこの時代に来てしまっていたら、私はあの時代で1人どうなっていたことか……。これも神のお導きだろうか……」
「ふふっ。そうだね。ねぇ、そうだ!」
「なんだ?」
「明日からは毎日一緒にお風呂に入ろうね!」
そう耳元で囁くと、片手で顔を覆い『はぁーっ』と大きなため息をついた。
「我慢だ……我慢だぞ……」
フレッドがボソボソと呟く声がほんの少しだけ聞こえてくる。
「フレッドは何かを我慢しているの?」
「えっ? いや、なんでもないよ。
さ、さぁ、今日は疲れただろうからゆっくり寝よう。
私もさっと汗を流してくるから」
慌てたようにお風呂へと向かうフレッドの様子に若干おかしいとは思ったものの、疲れていたぼくはそれ以上に詮索することもできないままそのままベッドに倒れ込み、フレッドがいつ戻ってきたかもわからず寝入ってしまっていた。
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