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第四章 (王城 過去編)
閑話 アンドリュー王の願い
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「ねぇ、ちょっとはグラっと来ちゃった?」
嵐のような出来事が起こり、フレデリックが伴侶を連れて出て行った部屋で茫然とその場に立ち尽くしていると、突然トーマからそんな声を投げかけられた。
「――なっ! そんなわけが無いだろう!」
「ふぅーん。その割には大事そうに柊くんのこと抱き抱えてたみたいだけど……」
その言葉に内心ドキリとした。
あの可愛らしい言葉と仕草で私の元へと一直線にやってきたあの子。
可愛すぎてぎゅっと抱きしめたくなるほどだった。
『ちゅーして』
そう言いながら、ツンと突き出したあの小さくて柔らかそうな唇が近づいてきたときには、フレデリックやトーマがいることすら忘れて、一瞬それを味わいたいと思ってしまったのは事実だ。
フレデリックに突き飛ばされてその思いは叶わなかったが……。いや、叶わなくて良かったんだ、本当に。
「柊くん、可愛いからアンディー好みかもね。
僕なんかよりずっと素直だし……」
少し拗ねた様子でそんなことを言い出すとは……トーマらしくない。
もしかして妬いているのか?
「トーマ、私が愛してるのは其方だけだ。わかってるだろう?」
私はさっとトーマを抱きしめ頬を優しく撫でた。
トーマは照れながらも頬を撫でる私の手に自分の手を重ね合わせて、
「ごめん、ヤキモチ妬いちゃった」
と小さく呟いた。
「いや、トーマを不安がらせた私が悪い。
私がトーマだけを愛しているとちゃんと分からせたほうがいいな」
「えっ?」
私はそのままトーマを抱き抱え、寝室へと向かった。
「ちょっ……アンディー、まだ仕事中でしょ!」
「仕事よりトーマを安心させる方が私には大事なことだ」
「ああ……っちょ……、まって……」
「待たない」
トーマの弱いところはもう分かっている。
あの痣がどうやら性感帯になっていると気づいたのは偶然だった。
初めてトーマと身体を繋げた時、服を脱がせた肩に見慣れぬ模様を見つけた。
「なんだ、この痣は? 五芒星?」
「ぼ、僕の一族の直系男子にだけ出る痣だよ」
「痛みはあるのか?」
「いや、そんなのはないけど……そんなにじっくり見られると恥ずかしい」
ならばとその痣に口付けると、
「ひぁぁ……っん」
と可愛らしい喘ぎ声をあげたのだ。
「なに? 今の……」
私が口付けた途端、身体の中をビリビリと電流が流れていくような痺れを感じたらしい。
ふふっ。面白いことを聞いたな。
私は指先でトーマの胸の先を弄りながら、痣に吸い付いてみた。
「やぁ…………ぁん、ああ……っ!」
先ほどよりも大きな声を上げたかと思うと、トーマのモノからビシャと白濁が噴き出していた。
「これだけでイッてしまったのか……初なやつだな」
その言葉にパッと顔を赤らめ恥じらうトーマが可愛くてもっとその顔を見ていたくなって、トーマが出した白濁を指先に付け、トーマに見せつけるように舐めとってやると、
「や……っ、そ、んなのきたな……っ」
真っ赤な顔をして私の指を外しにかかった。
しかし、私は驚いていた。
「甘い……、まさか其方が唯一だったとは……」
そう、トーマの蜜が甘いことに気付いたのもこの時だった。
私はトーマとの初めての交わりで私しかわからないことに2つも出会ったのだ。
あの時以来、私とトーマが愛を交わすときにはいつもあの痣を愛でてからというのが約束事となった。
「やぁ……っ、らめっ……そこ、ばっか……、ああ……っん」
「トーマの『だめ』は『もっと』という意味だろう?」
私はトーマと出会うまでは淡白で交わりにもあまり興味もなかったから、自分に嗜虐的な嗜好があるとは思ってもいなかった。
嗜虐的といってもトーマの身体を傷つけたいわけでも苦しめたいわけでもない。
恥ずかしいことを言わせて、鳴かせて、私がいなければ我慢ができないような身体に作り替えたい……ただそれだけだ。
今日は5回ほどイッたあと、トーマはそのまま眠り込んでしまったが、私の愛はちゃんとトーマに伝わったようだ。
柔かな笑顔を浮かべ、私にくっついて離れようとしないトーマの身体を風呂で清め、綺麗な夜着に着替えさせたあと、私はトーマの隣に横たわり、あの子のことを考えていた。
あの子は初めて会った時から可愛すぎたな。
トーマとよく似た顔立ちのあの子は、トーマがこの世界にやってきた頃よりもずっと幼く見えた。
緊張の面持ちをしながらもトーマには最初から心を開いて物怖じせず話をする様は、私にトーマがこの世界に初めてきた時のことを思い出させてくれた。
フレデリックに雛鳥のように守られ愛されて、それを何の躊躇いもなく受け入れているあの子がとてつもなく可愛く見えた。
今まであの子への感情を一体なにと表現していいのか分からずにいたが、今日の出来事でよく分かった。
トーマに対する愛情とはまた違う愛があの子にはある。
そう、あの子は私にとっても可愛い息子なのだ。
くるくると変わる表情と愛らしい言葉遣い、そして心を許したものに見せる屈託のない笑顔。
どれもが私の心を惹きつけてやまない。
どうかあの笑顔が曇ることのないように、ずっと幸せでいて欲しい。
いつか我々と違う時代を過ごすことになったとしても……。
私はトーマだけを一生愛するから、フレデリックも例えどんな世界になっていたとしてもシュウだけを一生愛してやって欲しい。
それが私の……いや、私たちの願いだ。
嵐のような出来事が起こり、フレデリックが伴侶を連れて出て行った部屋で茫然とその場に立ち尽くしていると、突然トーマからそんな声を投げかけられた。
「――なっ! そんなわけが無いだろう!」
「ふぅーん。その割には大事そうに柊くんのこと抱き抱えてたみたいだけど……」
その言葉に内心ドキリとした。
あの可愛らしい言葉と仕草で私の元へと一直線にやってきたあの子。
可愛すぎてぎゅっと抱きしめたくなるほどだった。
『ちゅーして』
そう言いながら、ツンと突き出したあの小さくて柔らかそうな唇が近づいてきたときには、フレデリックやトーマがいることすら忘れて、一瞬それを味わいたいと思ってしまったのは事実だ。
フレデリックに突き飛ばされてその思いは叶わなかったが……。いや、叶わなくて良かったんだ、本当に。
「柊くん、可愛いからアンディー好みかもね。
僕なんかよりずっと素直だし……」
少し拗ねた様子でそんなことを言い出すとは……トーマらしくない。
もしかして妬いているのか?
「トーマ、私が愛してるのは其方だけだ。わかってるだろう?」
私はさっとトーマを抱きしめ頬を優しく撫でた。
トーマは照れながらも頬を撫でる私の手に自分の手を重ね合わせて、
「ごめん、ヤキモチ妬いちゃった」
と小さく呟いた。
「いや、トーマを不安がらせた私が悪い。
私がトーマだけを愛しているとちゃんと分からせたほうがいいな」
「えっ?」
私はそのままトーマを抱き抱え、寝室へと向かった。
「ちょっ……アンディー、まだ仕事中でしょ!」
「仕事よりトーマを安心させる方が私には大事なことだ」
「ああ……っちょ……、まって……」
「待たない」
トーマの弱いところはもう分かっている。
あの痣がどうやら性感帯になっていると気づいたのは偶然だった。
初めてトーマと身体を繋げた時、服を脱がせた肩に見慣れぬ模様を見つけた。
「なんだ、この痣は? 五芒星?」
「ぼ、僕の一族の直系男子にだけ出る痣だよ」
「痛みはあるのか?」
「いや、そんなのはないけど……そんなにじっくり見られると恥ずかしい」
ならばとその痣に口付けると、
「ひぁぁ……っん」
と可愛らしい喘ぎ声をあげたのだ。
「なに? 今の……」
私が口付けた途端、身体の中をビリビリと電流が流れていくような痺れを感じたらしい。
ふふっ。面白いことを聞いたな。
私は指先でトーマの胸の先を弄りながら、痣に吸い付いてみた。
「やぁ…………ぁん、ああ……っ!」
先ほどよりも大きな声を上げたかと思うと、トーマのモノからビシャと白濁が噴き出していた。
「これだけでイッてしまったのか……初なやつだな」
その言葉にパッと顔を赤らめ恥じらうトーマが可愛くてもっとその顔を見ていたくなって、トーマが出した白濁を指先に付け、トーマに見せつけるように舐めとってやると、
「や……っ、そ、んなのきたな……っ」
真っ赤な顔をして私の指を外しにかかった。
しかし、私は驚いていた。
「甘い……、まさか其方が唯一だったとは……」
そう、トーマの蜜が甘いことに気付いたのもこの時だった。
私はトーマとの初めての交わりで私しかわからないことに2つも出会ったのだ。
あの時以来、私とトーマが愛を交わすときにはいつもあの痣を愛でてからというのが約束事となった。
「やぁ……っ、らめっ……そこ、ばっか……、ああ……っん」
「トーマの『だめ』は『もっと』という意味だろう?」
私はトーマと出会うまでは淡白で交わりにもあまり興味もなかったから、自分に嗜虐的な嗜好があるとは思ってもいなかった。
嗜虐的といってもトーマの身体を傷つけたいわけでも苦しめたいわけでもない。
恥ずかしいことを言わせて、鳴かせて、私がいなければ我慢ができないような身体に作り替えたい……ただそれだけだ。
今日は5回ほどイッたあと、トーマはそのまま眠り込んでしまったが、私の愛はちゃんとトーマに伝わったようだ。
柔かな笑顔を浮かべ、私にくっついて離れようとしないトーマの身体を風呂で清め、綺麗な夜着に着替えさせたあと、私はトーマの隣に横たわり、あの子のことを考えていた。
あの子は初めて会った時から可愛すぎたな。
トーマとよく似た顔立ちのあの子は、トーマがこの世界にやってきた頃よりもずっと幼く見えた。
緊張の面持ちをしながらもトーマには最初から心を開いて物怖じせず話をする様は、私にトーマがこの世界に初めてきた時のことを思い出させてくれた。
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今まであの子への感情を一体なにと表現していいのか分からずにいたが、今日の出来事でよく分かった。
トーマに対する愛情とはまた違う愛があの子にはある。
そう、あの子は私にとっても可愛い息子なのだ。
くるくると変わる表情と愛らしい言葉遣い、そして心を許したものに見せる屈託のない笑顔。
どれもが私の心を惹きつけてやまない。
どうかあの笑顔が曇ることのないように、ずっと幸せでいて欲しい。
いつか我々と違う時代を過ごすことになったとしても……。
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それが私の……いや、私たちの願いだ。
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