ひとりぼっちのぼくが異世界で公爵さまに溺愛されています

波木真帆

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第四章 (王城 過去編)

花村 柊   40−2※

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ぼくたちの絵には白黒がふさわしい。
ギーゲル画伯はそう言ってくれた。
この中ではぼくたちはみんな一緒だ。
髪の色も瞳の色も何も変わらない。

ただそれだけでものすごく満ち足りた気分になるのは、この絵の世界が差別も何もない幸せな空間を表しているからだろう。

「ギーゲル画伯、ありがとうございます。描いてくださった絵、ずっとずっと大切にします」

「そう仰っていただけることが私にとってどんなに嬉しいことか……こちらこそありがとうございます。
奥方さまの描かれる肖像画の完成の折、お披露目を楽しみにしております」

「はい。私もギーゲル画伯のように完成まで頑張ります」

ぼくのその言葉にギーゲル画伯はにこやかな笑顔を見せてくれた。

それからしばらくの間、ギーゲル画伯が描いてくれた絵を見ながらみんなで楽しく会話を繰り広げ、ギーゲル画伯はお弟子さんたちと共に帰っていった。

応接室でアンドリューさまとお父さん、そしてフレッドとぼくと4人でギーゲル画伯の絵を見ながら、

「本当にこの絵、すごいね。僕も初めて見た時一瞬なんで白黒なんだろうと思ったけど、すごくしっくりくるというか、この絵には白黒しか考えられないなって思った」

とお父さんがしみじみそう話した。

「ああ、そうだな。皆本当にいい表情をしている」

アンドリューさまの簡潔な一言に頷きながら、

「これは我々4人の宝物ですね」

とフレッドが嬉しそうにぼくの腰を抱きながらそう言ってくれる。

「アンドリューさまとお父さんの肖像画……あと1週間くらいで出来上がるんだ。
その前に素敵な贈り物をもらえて本当によかった」

ぼくたちが永遠のお別れをする日が近いことをまるで知っているかのようにこのタイミングで絵を贈ってくれたギーゲル画伯。
しかも、ぼくとフレッドの全てを見抜いてくれているようなそんな絵を贈ってくれるなんて。

お父さんたちに完成する日にちの明確な言葉は避けていたけれど、こうやって告げる気になれたのはギーゲル画伯のこの絵のおかげだ。

涙を必死に隠しながらお父さんとアンドリューさまを見ると、お父さんもぼくと同じようにグッと涙を堪えた表情を見せながらも必死に笑顔で

「よかった、本当によかった」

と言ってくれた。
そのお父さんにアンドリューさまがピッタリと寄り添っていて、それがとても微笑ましく見えた。

ギーゲル画伯の絵をケースに入れ、ぼくたちの部屋へと持ち帰った。

「この絵、向こうに帰ったらどこに飾る?」

「ああ、そうだな。やはり、我々の寝室だろう。いや、絵とはいえ、陛下とトーマ王妃にシュウの裸や我々の交わりを見せるわけにはいかないから、やはり我々の部屋の居間にでも飾るか」

フレッドの真剣な表情に思わずそうだねと言ってしまいそうになるけど、いやいや、『絵』だよ???

「そこ、気になる?」

「ああ、もちろんだとも! 陛下だって、絶対に寝室には飾られないと思うぞ」

「本当に? じゃあ、明日お父さんに聞いて、もしお父さんたちが寝室に飾るって言ったら寝室でもいい?」

「ああ、いいぞ。約束しよう。その代わり、違うといえば居間だからな」

「うん、わかった。そうしよう」

気持ち的にはあの絵を飾っていつでも見られるならどこでもいいんだけど、なんとなく寝室とか同じ空間の方が同じように感じられていいのかなと思っただけだ。

でも、フレッドの真剣な姿が面白くてつい言っちゃったけど、でも本当にお父さんたちはどこに飾るんだろうな。
明日お父さんに聞いてみるの楽しみだな。

「ねぇ、お父さんたちの肖像画が出来上がったら、どのタイミングでぼくたち元の世界に戻るんだろう?」

「ああ、そうだな。私もそれをずっと考えていたんだが、やはりあの時と同じ状況になった時ではないか?」

「あの時と同じ状況?」

「そうだ。あの時のことを覚えているか?」

「確か……パールがぼくの服の中で急に暴れ始めて……」

「そう、それで肖像画にぶつかりそうになった瞬間、あの眩い光が私たちを包んでこの時代へと飛ばしたのだ」

「じゃあ、2人で一緒に肖像画にぶつかったら……」

「戻れるのではないかと考えている」

そうか、完成と同時に元の世界に飛ばされるわけじゃないんだ。
なら、ちゃんとお別れの挨拶はできるよね。

お父さんとアンドリューさま、そしてブルーノさんには絶対に挨拶をしたい。
できればヒューバートさんやお城の人たちにも挨拶をしたいけど……そこはちゃんとお父さんたちと考えてしないとな。
急にぼくたちがいなくなったらびっくりしちゃうだろうし。

そこのところの相談もしとかないとな。

ああ、だんだん帰るのが現実的になってきて少し寂しさが募る。
今までは会えただけで幸せなんて思っていられたのはまだまだ先だと思っていたからもあるんだろうな。
あと1週間……。
なんとか笑って過ごせますように……。


「ふれ、っどぉ……も、っと……はげしく、してぇ……」

「シュウっ!!!」

「ひゃあ――っ! あ、あっ……んんっ……ぁあ……っ」

おかしくなりそうなほどに身体の奥が溶け合って、フレッドが激しく腰を動かすたびに奥が擦られグチュグチュといやらしい音が耳に飛び込んでくる。

いつも以上に愛されたぼくの身体はむせかえるほどの甘い匂いの蜜に塗れている。
フレッドはそれがもう何度もイカされたぼくの蜜だとわかっているから、腰を動かしながら嬉しそうにぼくの身体に舌を這わせる。

「――っ! やぁ……っ、な、めないで……はずか、しぃ……」

顎の下をペロッと舐められて、こんなところまで蜜が飛んでいたんだと驚かされる。

「シュウの全ては私のものだよ」

「ぅ――っ、ああっ!」

耳元でそう囁かれた途端、ぼくはもう何度目かもわからない蜜を放った。

「シュウ……愛してるよ」

フレッドはぼくが蜜を放ったのをみて、嬉しそうな表情を浮かべながらぼくの腰をググッと掴み激しい腰の動きを繰り返したあと、ぼくの最奥に何度目かの蜜を弾けさせた。


「フレッド……多分、明日で完成すると思う」

ぼくはフレッドに十分すぎるほど愛されたあと、身体を綺麗に清められフレッドに腕枕をされながらベッドに横になったタイミングでそのことを告げた。

ギーゲル画伯から絵を贈られてから5日。
あの素晴らしい絵に触発されたのか、予定を少し上回るスピードで進んでいた絵は今日にはもうほとんど完成と言ってもいい状態にまで出来上がっていた。
本当はもう今日完成まで終わらせても良かったんだけど、一晩じっくりと完成した絵を頭に描いて、明日気になるところを修正しようと考えたんだ。

でも、本当はそれは建前で、自分自身の中でまだ完成したことに対する気持ちの折り合いがついていなかったからだと思う。

「ぼく……嬉しいけど、寂しいんだ……」

ベッドの中で自分の正直な気持ちを声を震わせながら告げると、フレッドは無言でゆっくりと抱きしめてくれた。
お互いの鼓動が伝わるくらい隙間がないほどに密着して抱きしめられていると、少しずつ心が落ち着いていくのがわかる。

「そうか……シュウ、よく頑張ったな」

フレッドの言葉は絵が完成したことなのか、それとも自分に正直になれたことなのか……いや、多分、どちらもなんだろうと思う。

「お父さんには笑顔を見せたいんだ……」

「シュウ……偉いぞ。なら、私の前では我慢するな。シュウの綺麗な涙を見せてくれ」

頭を優しく撫でられて、フレッドの手の温もりに涙が溢れる。

「うっ、ふぇ……っ、うっ」

フレッドはぼくが泣き続けている間、何も言わずにずっと優しく抱きしめていてくれた。
ああ、フレッドがいてくれて本当に良かった。
大好きで大切なフレッド……フレッドだけはずっとそばにいてね……。

頭を優しく撫でられながら、背中を優しくトントンされているうちにぼくはそのまま眠ってしまっていたようだ。

フッと目を覚ますと、抱きしめられていたままの体勢だったことに驚いた。
きっと腕も痺れているだろうに、どれだけフレッドは優しいんだろう。

でも、フレッドのことだ。
きっとぼくから腕を離そうとすると目を覚ますんだろうな。

ぼくが寝ついた後もしばらくは撫でてくれていただろうフレッドをまだ起こしたくはない。
ぼくはフレッドを起こさないようにゆっくりと身体を正面に向けた。

もうすっかり見慣れてしまったこの部屋の天井とももうお別れか。

初めてお父さんたちと出会った日のことはいつでもまるで昨日のことのように鮮明に甦ってくるというのに。
もうここで寝る日は来ないのかと思うと寂しくなるな。

大体、お城での生活がこんなにも長くなるなんて、サヴァンスタックのフレッドのお屋敷を出たときは思ってなかった。
こんなにも長くお城で生活できたことを幸せだと思って、フレッドと第二の……いや、第三の人生を歩んでいこう。

よし、今日は完成したらすぐにアンドリューさまとお父さんにもあの肖像画をお披露目しよう。
なんと言ってくれるか楽しみだな。
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